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ネッド・ローレム/3つのピアノ・ソナタ
米国の現代音楽作曲家のなかでも大御所の一人(と見なされているらしい)、ネッド・ローレムは、第2次大戦後直後の若かりし頃、音楽の勉強のためにパリで暮らしていた。
その時期に、アメリカ人演奏家・作曲家でパリにいたのは、知っているだけで、ゲイリー・グラフマン、飛び級で大学を卒業した直後パリに留学してきたジュリアス・カッチェン、師シュナーベルの元を離れたレオン・フライシャーなど。
当時ドイツは敗戦の混乱期にあり、戦時中にユダヤ人や反政府的とみなされた演奏家はアメリカやスイスなどに亡命していたし、音楽界では著名な演奏家がナチズムとの関係を厳しく追及されて混乱していたはずなので、当時欧州でクラシックの演奏活動が盛んだったのはパリだったのかもしれない。

ローレム、カッチェン、グラフマンは、パリ在住中は親しい友人だったので、音楽だけでなくプライベートでもよく付き合っていたらしい。
カッチェンのDECCA録音集BOXのブックレットには、パリ時代のカッチェンとの親交や彼の演奏活動について、グラフマンとローレムの思い出話が載っている。

ローレムは歌曲の作品で知られているので、ピアノ作品はそれほど数多くはない。
それでも、ピアノ協奏曲が数曲(第4番までは少なくともある)、独奏曲で録音されている曲は、ピアノ・ソナタが3曲、8つのエチュード、ピアノのためのトッカータ、リコーリング、3つの舟歌、など。
ピアノ協奏曲とピアノ・ソナタのそれぞれ第2番は、カッチェンがピアノで弾くことを想定して書かれた作品。
ピアノ協奏曲第2番は1951年の作品で、現代のフランス音楽とガーシュインが融合したような洒落ていて美しい曲。1954年にカッチェンのピアノ、ジャルディーノ指揮フランス国立放送管弦楽団の伴奏でパリで初演された。
ピアノ・ソナタ第2番もやや調性感が曖昧で現代的な乾いた叙情感のある聴きやすい作品。カッチェンがモノラル時代のDECCAに初録音している。

ピアノ協奏曲第4番は左手ためのピアノ協奏曲で、1993年にグラフマンが初演。フライシャーも録音している。これはローレムにしてはちょっと前衛的なタッチの作品。

ローレムの作風は「難解な前衛的手法には走らず、旋律を重視し、変化和音やトーンクラスターを取り入れるなど調性の拡大を試みた」と言われる。
ピアノ作品はだいたい聴きやすいものが多く(特に初期の作品)、ピアノ・ソナタは第1番(1948年)、第2番(1949年)、第3番(1954年)とも作風が似ている。
前衛的な難解さはなく、軽快なリズム感と調性感の強い安定した和声が美しく、さらりと乾いた叙情感と洒落た現代的なセンスのある作品。
テンポの速い楽章は、リズミカルで軽やかなタッチで目まぐるしく動き回って、緩徐楽章はさらりとしたどこかレトロな雰囲気のする叙情感が美しく、現代音楽でもこういう曲ならBGMにもなりそうなくらいに心地よい。

3曲のピアノ・ソナタの録音は、オクラホマ大学の教授でピアニストのトーマス・ランナーズのCentaur盤。
ローレムのピアノ・ソナタ以外の作品を収録したピアノ作品集VOL.2もリリースされている。
ピアノ・ソナタはカッチェンの録音に比べて、かなり穏やかで柔らかいタッチなので、ちょっと緩くて重たい感じがする。
こういう解釈なんだろうけれど、響きがやや長く厚みあり、リズム感がやや鈍くて起伏もそれほど細かくはないので、表現が少し平板な感じはする。
でも、このCDで初めてローレムのピアノ・ソナタを聴けばそうは感じないだろうし、曲想はちゃんと伝ってくる。なにより3曲全部録音しているというのは貴重。

Three Piano SonatasThree Piano Sonatas
(2007/05/29)
Ned Rorem

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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