ガヴリーロフ ~ バッハ/フランス組曲
2010-10-25(Mon)
プロコフィエフのピアノ・ソナタの録音を探していた時に、ガヴリーロフが第8番を録音しているのを見つけて、その時たまたま目に入ったフランス組曲のCD。
フランス組曲は、リヒテル、アンデルジェフスキ、ケンプ、フェルナーとか、抜粋盤はいろいろ持っているけれど、全曲盤はリファレンス用にとりあえず持っているシフの録音だけ。
全曲盤でぴったりくるものがなく、そもそも聴くのは第5番ばかりだし、イギリス組曲の方が好きなので、もう新しく全曲盤を買う必要もないかなあと思っていたところ。
ガヴリーロフというと、ショパンのエチュードとかのバリバリと技巧で押すイメージが強くて、以前ゴルトベルクの録音を聴いた時も、クリスピーなタッチで指が良く回っているけど、変奏別の表情がちょっと一本調子で、色彩感もそれほどなくて単調かな...という印象くらいしか残っていない。
フランス組曲も似たようなものだろうなあと思いながらも、レビューを見るとこれが結構良くて、ちょっと興味が湧いてきて、早速試聴。
このフランス組曲が思いのほか素晴らしくて、ゴルトベルクとは全く違った演奏。
丁寧なタッチと絹のような繊細で柔らかい響きで弾くフランス組曲は、ゴルトベルクやショパンのエチュードを弾いたピアニストと同一人物とはとても思えない...。
ガヴリーロフのフランス組曲は、ちょっとロマンティックな雰囲気がするので、好みにぴったりというわけではない演奏なのに、聴けば聴くほど強く魅かれるところが不思議。
試聴しただけでも、今まで退屈に思えた曲がきらきら輝いて聴こえてくる。
曲ごとにタッチも響きも明瞭を変えているので、表情も曲想もコロコロと移り変わっていくところが鮮やか。
これなら、全曲通しで聴いても飽きずに聴けるはず。
いつも聴いている第5番のAllemandeは、速いテンポにしては優美な雰囲気で、ちょっと夢にいるような霞がたった柔らかい響きがとても印象的。Couranteは力強いけれどやや丸みのあるノンレガートで躍動的、Sarabandeはゆったりと語りかけるような歌いまわしで、思いをめぐらしているような内省的な雰囲気。”Gigue”は確信に満ちたような力強いタッチと躍動感。
どの曲も生き生きとして、音の間から自然な感情がこぼれおちてくるよう。
全体的に”優しく穏やか”なイメージがあったフランス組曲にしては、力強さと柔らかさのコントラストがはっきりしていて、かなりドラマティックなのかも。
ケンプが弾くフランス組曲なみに、ピアノの音がとても美しく、弱音のレガートは絹のようなまろやかさ。
ノンレガートの強いタッチで弾くときは、崩れることない堅牢さがあって安定感が爽快で、特にフォルテが中味の詰まった引き締まった音でとても綺麗。
かなり強いタッチのフォルテなのにまろやかさがあり、割れることも雑な響きになることもなく、こういうフォルテを弾ける人はかなり好き。
柔と剛のバランスがとても良くて、こういう風に偶然に見つけた録音には掘り出しものが結構多い。
フランス組曲の全曲盤ならこれだけで充分かも...と思えるくらいに試聴した印象がとても良くて、早速オーダーすることに。
Youtubeにあった音源で聴いてみると、やっぱり試聴したときの印象どおり、とても素敵なフランス組曲。
これを聴いてしまうと全曲聴かずにはいられない。今回は直観がしっかり当たってました。
J.S.Bach:French Suite No.5 G major BWV 816(1)
ガヴリーロフのフランス組曲のCDは何種類か出ているけれど、一番新しい廉価盤はイギリス組曲第6番とイタリア協奏曲とのカップリング。
イギリス組曲とイタリア協奏曲を聴いていると、フランス組曲とは急にタッチも何もかも違う弾き方になったので、???と思ったら、弾いているのはブーニンだった。
精妙さにやや欠けた粗く感じるタッチで(特にフォルテはきつい)、ピアノの音もそれほど綺麗ではないし、厳かというよりは元気で威勢が良いバッハ。直前にガヴリーロフのフランス組曲を聴いていたので、余計にそう感じてしまう。
[追記]
ガヴリーロフのフランス組曲の録音は、1984年のEMI盤だけでなく、1993年のDG盤もあるのを発見。
基本的な解釈は変わっていないけれど、DG盤の方がフォルテが柔らかくて全体的にやや落ち着いた感じ。音質はEMI盤よりも残響めいたぼわ~としたところがなくて、クリア。
9年近くの年の差が出ているのか、EMI盤の方が自由で伸びやかで快活な演奏。
どちらも良いのでかなり迷ったけれど、音質が好みに近かったので、結局DG盤の方に。でも、EMI盤もやっぱり聴きたくなっているので、そっちも買うかも。
フランス組曲は、リヒテル、アンデルジェフスキ、ケンプ、フェルナーとか、抜粋盤はいろいろ持っているけれど、全曲盤はリファレンス用にとりあえず持っているシフの録音だけ。
全曲盤でぴったりくるものがなく、そもそも聴くのは第5番ばかりだし、イギリス組曲の方が好きなので、もう新しく全曲盤を買う必要もないかなあと思っていたところ。
ガヴリーロフというと、ショパンのエチュードとかのバリバリと技巧で押すイメージが強くて、以前ゴルトベルクの録音を聴いた時も、クリスピーなタッチで指が良く回っているけど、変奏別の表情がちょっと一本調子で、色彩感もそれほどなくて単調かな...という印象くらいしか残っていない。
フランス組曲も似たようなものだろうなあと思いながらも、レビューを見るとこれが結構良くて、ちょっと興味が湧いてきて、早速試聴。
このフランス組曲が思いのほか素晴らしくて、ゴルトベルクとは全く違った演奏。
丁寧なタッチと絹のような繊細で柔らかい響きで弾くフランス組曲は、ゴルトベルクやショパンのエチュードを弾いたピアニストと同一人物とはとても思えない...。
ガヴリーロフのフランス組曲は、ちょっとロマンティックな雰囲気がするので、好みにぴったりというわけではない演奏なのに、聴けば聴くほど強く魅かれるところが不思議。
試聴しただけでも、今まで退屈に思えた曲がきらきら輝いて聴こえてくる。
曲ごとにタッチも響きも明瞭を変えているので、表情も曲想もコロコロと移り変わっていくところが鮮やか。
これなら、全曲通しで聴いても飽きずに聴けるはず。
いつも聴いている第5番のAllemandeは、速いテンポにしては優美な雰囲気で、ちょっと夢にいるような霞がたった柔らかい響きがとても印象的。Couranteは力強いけれどやや丸みのあるノンレガートで躍動的、Sarabandeはゆったりと語りかけるような歌いまわしで、思いをめぐらしているような内省的な雰囲気。”Gigue”は確信に満ちたような力強いタッチと躍動感。
どの曲も生き生きとして、音の間から自然な感情がこぼれおちてくるよう。
全体的に”優しく穏やか”なイメージがあったフランス組曲にしては、力強さと柔らかさのコントラストがはっきりしていて、かなりドラマティックなのかも。
ケンプが弾くフランス組曲なみに、ピアノの音がとても美しく、弱音のレガートは絹のようなまろやかさ。
ノンレガートの強いタッチで弾くときは、崩れることない堅牢さがあって安定感が爽快で、特にフォルテが中味の詰まった引き締まった音でとても綺麗。
かなり強いタッチのフォルテなのにまろやかさがあり、割れることも雑な響きになることもなく、こういうフォルテを弾ける人はかなり好き。
柔と剛のバランスがとても良くて、こういう風に偶然に見つけた録音には掘り出しものが結構多い。
フランス組曲の全曲盤ならこれだけで充分かも...と思えるくらいに試聴した印象がとても良くて、早速オーダーすることに。
Youtubeにあった音源で聴いてみると、やっぱり試聴したときの印象どおり、とても素敵なフランス組曲。
これを聴いてしまうと全曲聴かずにはいられない。今回は直観がしっかり当たってました。
J.S.Bach:French Suite No.5 G major BWV 816(1)
ガヴリーロフのフランス組曲のCDは何種類か出ているけれど、一番新しい廉価盤はイギリス組曲第6番とイタリア協奏曲とのカップリング。
イギリス組曲とイタリア協奏曲を聴いていると、フランス組曲とは急にタッチも何もかも違う弾き方になったので、???と思ったら、弾いているのはブーニンだった。
精妙さにやや欠けた粗く感じるタッチで(特にフォルテはきつい)、ピアノの音もそれほど綺麗ではないし、厳かというよりは元気で威勢が良いバッハ。直前にガヴリーロフのフランス組曲を聴いていたので、余計にそう感じてしまう。
![]() | French Suites (2005/08/30) Andrei Gavrilov 試聴する(米amazon) |
[追記]
ガヴリーロフのフランス組曲の録音は、1984年のEMI盤だけでなく、1993年のDG盤もあるのを発見。
基本的な解釈は変わっていないけれど、DG盤の方がフォルテが柔らかくて全体的にやや落ち着いた感じ。音質はEMI盤よりも残響めいたぼわ~としたところがなくて、クリア。
9年近くの年の差が出ているのか、EMI盤の方が自由で伸びやかで快活な演奏。
どちらも良いのでかなり迷ったけれど、音質が好みに近かったので、結局DG盤の方に。でも、EMI盤もやっぱり聴きたくなっているので、そっちも買うかも。
![]() | French Suites Bwv 812-817 (2003/04/01) Andrei Gavrilov 試聴する(国内盤にリンク) |
tag : バッハ
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。