トラーゼ ~ プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第3番 

2010, 11. 25 (Thu) 18:00

トラーゼのプロコフィエフのピアノ協奏曲全集は、(私にはまだよくわからない第5番を除いては)どの曲ともあまりに個性的なので、好みに合えばこんなに面白く聴けるプロコフィエフも珍しい。
トラーゼの全集の白眉は第2番だけれど、第3番も他のピアニストではなかなか聴けないユニークさ。

トラーゼが米国を拠点に活動しているだけあって、トラーゼの録音に関する米国のamazonサイトのレビューの数はかなり多いし、評価もとても良い。
日本では、このトラーゼの全集はあまり人気がないらしく(ほとんどレビューがないし)、わりと人気のある(らしい)アシュケナージの録音に比べると、アーティキュレーションに凝った豊かな表現と、重戦車のような迫力と濃厚な叙情感。これは好みがはっきり分かれるに違いない。

第3番は”スピードが勝負”とかプロコフィエフが言っていたらしく、総じて速いテンポで軽快な演奏は多い。聴いているときは結構面白いけれど、聴き終わったら、一体どんな曲だったっけ?と、なかなか記憶に残らない。

トラーゼの第2番はとても暗くて重々しい深刻なトーンの演奏だったけれど、第3番は一転して冒頭から猛スピードのピアノ・ソロ。
この始まりからして、この第3番の演奏も個性的になりそうな予感。
トラーゼのテンポは急速部分ではかなりの猛スピード。そのわりに音も響きも明瞭で軽やかで音にも色彩感があって、騒々しさや単調さは感じない。
特に左手の存在感が強いところと、不協和音の響きが鮮やかに聴こえてくるところが面白い。
中間部の緩徐部分はテンポがかなり落ちて、まったりしたタッチで叙情感たっぷり。色彩感のある音色が美しく、前後の急速部分とのコントラストがとても鮮やか。
全体的に、リズムや強弱のコントラストを強調して、これ以上はないというくらいにメリハリがついている。スピード感があってタッチの切れの良いので、力感と量感のあるフォルテは重厚ではあるけれど、鈍重な感じは全くしない。
鋼のように弾力のある引き締まった音で弾くフォルテは、勢いと力強さは怒涛の如く凄いものがあるけれど、音が割れることも濁ることもないところが、やたらにバンバンと鍵盤を強打して荒っぽい演奏のピアニストとは違うところ。
ショスタコーヴィチの自作自演のピアノ協奏曲第1番のような破天荒なスピード感と、カプースチンのような重戦車のごとき力感・量感とが相まった面白さ。
とあるレビューには《田園をけたたましいエンジン音を立てて爆走していくハーレー》と形容されていた。あまりにぴったりなので、これは笑えました。

楽章間の表情の変化はもちろん、プロコフィエフのピアノ協奏曲やピアノ・ソナタは、中間部で180度表情が急変することが多いので、初めて聴く曲の時は、楽章が変わったんだろうか?と思ってプレーヤーのトラック表示をよく確認していた。(最近は曲を覚えたので、そういうことはしなくなった)
トラーゼの演奏が魅力的なのは、シベリアの熊のごときパワフルさと、繊細で濃厚な叙情性との両方が共存していて、その両極の間を表情がコロっと急転直下しても、自然におさまってしまうところ。
オケもトラーゼのピアノに合わせたように、表情がダイナミックに変化し、強奏時は大音量で迫力もあってロシア的な野生味のある地鳴りのような轟音だったり、叙情的な部分は濃密でややネットリした音と表現になったりと、伴奏部分も聴いていて面白い。

第1番は、トラーゼにしてはわりと軽快で爽やか。若々しいプロコフィエフが書いた作品らしい溌剌としたところが聴きやすいし、第2楽章の叙情感も濃厚。
第4番は第3番の雰囲気に近くて、スピード感もあって、音があちこち飛び跳ねて、かなり賑やか。
第4番は、どちらかというと、ベロフの演奏の方が軽やかで落ち着きがあって好きだけれど、トラーゼの第4番は面白いことは面白い。

5 Piano Concertos5 Piano Concertos
(1998/03/17)
Alexander Toradze (Piano),Valery Gergiev (Conductor),Kirov Orchestra

試聴する(米amazon)


このCDのレビューで参考になったのは2つ。これを読んでほとんどCDを買う気になったし、念のための試聴した感触もとても良かったし。実際にCDで聴いてみても、レビューどおり極めて個性的。

トロンボーンを吹きによるクラシックの嗜好(全集のレビュー)
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