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アンダ ~ ブラームス/ピアノ協奏曲第2番
今年最初の曲は、とりわけ好きなベートーヴェンかブラームスで。明るく伸びやかで堂々とした曲がいいなあ...となると、ピアノ協奏曲になるでしょう。
ベートーヴェンなら《皇帝》、ブラームスなら第2番のコンチェルト。
普通なら《皇帝》の方になるんでしょうが、この曲はあまり好きではないので、ブラームスのピアノ協奏曲の方を。

ブラームスのピアノ協奏曲は第1番、第2番とも名盤がひしめく、ロマン派のピアノ協奏曲の傑作中の傑作。
特に難曲の第2番は、音楽性以前に、まず腕力・筋力・体力のないピアニストでは歯が立たないに違いない。誰かが”ピアニストに血と汗を要求する曲”と言っていたはず。
ヴィルトオーゾと言われるピアニストならほとんど録音しているのではないかと思うけれど、名盤のピアニストをみれば、80歳を超えて録音したバックハウスを筆頭に、ゼルキン、ギレリス、アラウ、ルービンシュタインというベテランから、若い頃に録音したツィメルマン、ゲルバー、カッチェン、etc.。

私の定番は、カッチェンとアンダ。時々、アラウ(ライブ録音)、たまにゼルキン。
アラウのブラームスのコンチェルトは、テンポが遅くて有名だけど、ライブ録音になると全く別人。第2楽章のスケルツォなんか、終盤になると怒涛の勢い。
ゼルキンは、セルとオーマンディと録音した2種類があって、全然雰囲気が違っているのが面白い。セル盤は張り詰めた緊張感で取り澄まされたブラームス。オーマンディ盤は明るいタッチでイタリアの陽光が差し込んでいるよう。
ゼルキンとアラウのスタジオ録音以外はあまり聴かれていないはず。マイナーというか、今ではあまり聴かれていない録音の方がなぜか気に入ってしまうので。

第2番はカッチェンとゼルキンの録音については以前書いたはずなので、今回は、年末のショパンのワルツに続けて、再びアンダのピアノで。
昨年はかなり集中的にアンダのCDを集めました。アンダは聴けば聴くほど好きになっていくピアニスト。
バルトークのピアノ協奏曲全集は昔から持っていて、これとモーツァルトのピアノ協奏曲全集が、アンダの録音の中で有名で評価の高いもの。
それはそれで好きだけれど、アンダの録音で一番好きなのはベートーヴェンとブラームス。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番は個人的なベストかベストに近いし、ディアベリも素敵。
ブラームスならこの第2番のピアノ協奏曲が素晴らしくて、50分近くかかる長大な曲の隅ずみまで、アンダのピアノの美しさが味わえてしまう。

アンダのブラームスの第2番の録音は3種類。フリッチャイ/ベルリンフィル(1960年)、クーベリック/バイエルン放送響(1962年のライブ録音)、カラヤン/ベルリンフィル(1967年)と、指揮者とオケがそれぞれ違って、有名なのはカラヤンとの共演盤。
こういう時は指揮者で選ぶので、聴いているのはフリッチャイ盤。次に聴きたいのはクーベリックとのライブ録音。クーベリックはアラウのブラームスのピアノ協奏曲第1番でも、ライブ録音で指揮していてこれがとてもよかったので。

アンダのブラームスは、アンダらしく明快なフレージングとディナーミクで、造形力のある明晰なブラームス。
といっても、フォルテは力強いタッチでブラームスらしい重みがあるけれど、ピアニッシモと緩徐部分は美しい弱音のニュアンスが繊細で、優美でしなやか。
硬派な感じはするのに、優しさが垣間見れるし、理性と感情が拮抗してどちらにも偏らないバランスのとれたところがアンダらしい。
アンダのモーツァルトやベートーヴェンのコンチェルトと同じように、音が綺麗で音自体に表情があるかのようにニュアンス豊か。
こんなに煌きのある音でこの難曲のコンチェルトを聴けるなんて、そう多くはないはず。

第1楽章 Allegro non troppo
アンダのピアノは、フォルテではちょっと骨っぽい硬さがあって、重たくないクリアな音。
弱音になると、甘くはないけれど、柔らかく優しげな表情。この弱音の響きと表情がとても魅力的。
ブラームス特有の厚みのある音を弾いていても、粘り気がない切れの良い音なので、音がごちゃごちゃと混濁することなく、明瞭なフレージングで複数の旋律線がくっきり。
パワーが結構いる曲だけど、そういうことを感じさせずに涼しげですっきりしたタッチが気持ちよい。(やたら重苦しく弾かれるのは好きではないので)
アンダはモーツァルトでもベートーヴェンでも、品の良い色彩感のある綺麗な音で、硬質の澄んだ煌きがあるので、この音を聴くだけでもうっとりする。

第2楽章 Allegro appassionato
いろんな録音を聴いても、どうしても力が入って弾いてしまうスケルツォ楽章。Allegro appassionatoなので、当然といえば当然なんだろうけど。
緩々したタッチのアラウでさえ、ライブではかなり速くてシャープなタッチで、終盤は加速してハイテンションの演奏だった。
でも、アンダはとてもしなやか。このスケルツォをさらりとした哀愁を漂わせて、こんなに美しく、力まずに弾けるピアニストはそうそういないだろうと思えるくらい。
68小節で左手のファ、ラ、レ...と軽いスタッカートで上行するところのタッチと響きとか、アンダのピアノを聴いていると、こういう細かなところで耳が引きつけられてしまうことが多い。
この曲の中では、このスケルツォが曲も好きだし、アンダの演奏が素晴らしく素敵なので、この楽章だけはいつもリピートして聴きたくなる。

第3楽章 Andante
色彩感のあるアンダのピアノの音がキラキラと煌いて、まるで蝶が舞うような軽やかさと美しさ。
硬質で水気を帯びた音色にしっとりとした潤いがあるせいか、とても瑞々しい感じがする。

第4楽章 Allegretto grazioso
イタリアの陽光が差し込んでいるような明るい色調の楽章。
アンダのピアノはリズミカルさはやや抑えた感じがするので、弾けるような明るさはないけれど、透明感のある水気のある音が綺麗で、瑞々しく爽やかな雰囲気。
少しボヘミアン的な自由さと哀愁も感じるけれど、この楽章もアンダらしい引き締まった優美さが美しい。

                              

このアンダのブラームスの録音は、DGから分売盤で今でも入手可能。
他にアンダのブラームスの録音がなかったらしく、カップリングはギレリスの『4つのバラード』。
Brahms: Concerto pour piano no. 2; BalladesBrahms: Concerto pour piano no. 2; Ballades
(2006/08/08)
Emil Gilels;Geza Anda

試聴する(米amazon)


私が聴いているディスクは、アンダのDG録音の大半を収録したBOXセット『Troubadour of the Piano』。
すでに廃盤で、米amazonだとMP3ダウンロードが可能。
有名なバルトークのピアノ協奏曲全集は入っていないけれど、バルトークは昔からの定番なので全集で持っている人が多いはず。
このBOXセットには、ピアノ協奏曲はシューマンやブラームスが入っているけれど、大半は独奏曲。ショパン・シューマンの独奏曲の有名な録音に加えて、ベートーヴェンのディアベリ、シューベルトの最後のソナタと、とても個性的な録音が入っているのが嬉しい。
クーベリックと録音したグリーグのピアノ協奏曲が入っていないのがちょっと残念だけれど、とても珍しいバルトークの《ピアノとオーケストラのための狂詩曲》が入っている。
タイトルの"Troubadour of the Piano"という言葉は、フルトヴェングラーがアンダを「吟遊詩人」と喩えたことに因んだもの。

Troubadour of the Piano (Spkg)Troubadour of the Piano (Spkg)
(2005/09/13)
Geza Anda、 他

試聴する(米amazon)


ブラームスのピアノ協奏曲第2番のCDを探すときに参考になるブログは、<ハルくんの音楽日記>
”ブラームス ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調op.83 名盤”
”ブラームス ピアノ協奏曲第2番 続・名盤”

一般的に有名なメジャーな録音ばかりではなく、マイナーな録音もかなり多く取り上げているので、あまり知られていないけれど優れた異聴盤をいろいろ聴きたい人には参考になります。

tag : ブラームス アンダ

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(非公開コメント受付中)

yoshimiさん、明けましておめでとうございます。今年も、よろしくお願い申し上げます。

ブラームスのピアノ協奏曲第2番ですか、私の好きな曲の1つです。上げられている録音では、バックハウス(ベーム)とゼルキン(オーマンディ)を持っていますが、バックハウスの方が好きです。後は、モノラルで、バックハウス(シューリヒト)も好きですが、この曲はやはり、ステレオ録音の方が好きです。
バックハウスはやはり凄いです
matsumo様、こんにちは。
新年おめでとうございます。
こちらこそ今年もよろしくお願い致します。

ブラームスの曲の演奏は、陰翳の濃いロマンティックな演奏が好きなので、バックハウスのブラームスは好みとは違うのですが、バックハウスは永遠のベスト盤ですね。

この曲はとても好きなので、名盤と言われるものはかなり聴きましたが、ベームと録音したバックハウスのゆったりと懐の深い演奏は、晩年の彼しか出せない味わいだと思います。
それにしても、1967年録音というと80歳を過ぎているのに、この難曲であれだけ技巧が安定しているのは凄いです。これには本当に驚きました。
明けましておめでとうございます
yoshimiさん、明けましておめでとうございます。

新年にブラームス。いかにもyoshimiさんらしいですね。
僕は、ごく普通に「皇帝」でした。(笑)

拙ブログをご紹介頂いてありがとうございます。
紹介枚数が多い分だけ、それぞれは簡単にしか触れていないので大したことは無いのですが、とても光栄です。

ピアノのジャンルに関してはこちらのブログが非常に参考になります。せっかくですので拙ブログにリンクを貼らせて頂きますね。

それでは、本年もよろしくお願いします。
やっぱりブラームスです
ハルくん様、こんにちは。
新年おめでとうございます。
こちらこそ今年もよろしくお願い致します。

《皇帝》にすると、例のごとくカッチェンが私の愛聴盤になるんですけど、どうも《皇帝》とは相性がもう一つ良くなくて、好きな3番や4番ほどには曲自体に強い愛着を持って書けないんですよね~。
でも、昨年初めて聴いたエゴロフの《皇帝》はとても好きですなんけど、これはもう書いてしまいましたし。
ということで、やっぱりブラームスのコンチェルトになりました。

ハルくんさんの記事では、いわゆる世間一般の定番以外で紹介されている録音で、興味を引かれるものが多いので、よく参考にさせていただいてます。
オケの方は、私はさっぱり判断がつかないので、記事を拝見してなるほど~と、勉強させてもらってます。
今年もいろんな録音を取り上げてくださいね。
それから、リンクの件、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

明けましておめでとうございます
明けましておめでとうございます。

今年も、またブログにお邪魔させてくださいね。
大好きな音楽を始め、時にはパン作りまで、教えていただくことばかりです。

ブラームスのコンチェルト2番は大好きな曲。
アンダの演奏で聴いたことはなかったので、yoshimiさんのお勧めならさっそく聴いてみなくてはいけませんね。

今年もよろしくお願いいたします♪
アンダのブラームスは素敵です
マダムコミキ様、新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

ブラームスに限らず、アンダの録音はほとんど好きなので、ぴったり波長が合うピアニストの一人です。
名盤と言われるもので好きなものは少ないのですが、アンダのブラームスについては、名盤だと評価する方も何人か知っています。
アンダのピアノの音はとても綺麗なので、ソノリティに敏感な方にはお薦めですし、ブレンデルがお好きな方にも合いそうな気がします。

アンダ賛
はじめまして。くらとしおです。久しぶりにアンダのモーツアルトの22番を聞いておりました。ブラームスの2番は、好きでよく聞いております。

私も、フリチャイ&アンダの演奏が白眉だと思います。カラヤンの演奏は、2楽章の解釈が違ってしまい肌に合いませんのでほとんど聴きません。クーベリックもいいです。これも、2楽章の演奏が圧巻です。力任せにひいている演奏が多いですが、劇的に盛り上がるところであんだけ抑制の効いた気持ちの込め方ができるアンダの演奏は、そうざらにない演奏だと思います。フリチャイとBPOのやけに民主的な関係も演奏に実によい節制と調和を感じます。楽器の響きの充実がなんともすばらしいです。私は、LPで毎回聴いていますが充実した時間です。

参考までに、豪腕ライナーもこの曲がものすごく好きで2回のステレオ録音を残しています。特に、初めの吹き込みのギレリスとの演奏は、まったくアンダの演奏が好きな方にはなじみませんが、実によく考えられた演奏です。ブラームスなのにいろんな音が聴こえてきます。こんな旋律ひいてたんだと感心もしますが高度に調和していてそれでいてさらっと演奏している寒気さえ感じる快演です。これは、ヴィクトローラの英盤プレスで聴くと際立ちます。
ご教示ありがとうございます。
くらとしお様、はじめまして。

ご訪問、コメントありがとうございます。
また、いろいろ詳しく解説していただいて、参考になりました。

残念ながら、私はLP世代ではないので、ほとんどCDで音楽は聴いてますが、LPだと違って聴こえる部分もいろいろあるのでしょうね。
聴き比べできない分、今のところCDで聴くだけでも、充分満足できる演奏でした。

ギレリスに関しては、ベートーヴェン、ブラームスの演奏を聴いても、あいにくと相性が悪いです。
唯一、ベートーヴェンの31番ソナタは素晴らしい(でも、かなり特異な)演奏だと思っています。

探してみるとYoutubeにライナー&ギレリスの音源がありました。
音の録り方は良いですね。解像度が高いというか、音がクリアで残響による混濁が少なく、おっしゃるとおり細部の音まで明瞭に聴こえます。
ギレリスの演奏は、ヨッフムと録音した時のような、(無理に)しなしなとした叙情表現をしないところは、良く思えます。
難点といえば、(特にフォルテの難所になると)力を込めてバリバリと弾いているので、叙情が吹き飛んで無粋に(私には)聴こえるところでしょうか。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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