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グールド ~ プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第7番
昨年の夏頃からよく聴いたのがプロコフィエフ。今年はプロコフィエフイヤーだし、まだ未聴のCDが残っているので、ピアノ・ソナタやピアノ協奏曲は今年も時々聴くことになりそう。

プロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番は、ソコロフのライブ録音を聴いて、これ以上のものは聴けないと思うので、今のところ録音収集は打ち止め。
第7番はトラーゼのライブ録音も良かったし、名盤中の名盤のポリーニも聴き疲れはするけれど、たまに聴くとやっぱり凄い。
もう一つ、ふだんは聴かないのに、時々思い出したように聴くのがグールド。ソコロフやトラーゼを聴いてから聴き直してみると、やはり同じくらいに素晴らしい。
なぜか、グールド大好きな人でも、この録音を聴いたという人をあまり見かけない。
プロコフィエフに限らず、有名なベルクやヒンデミットの録音も、現代ものということもあって、あまり聴かれていないような...。
グールドは結構レパートリーが広いので、シェーンベルクやスクリャービンの録音もあるけれど、シェーンベルクならヒルやアスポースといった叙情性の強い演奏の方を聴いているし、スクリャービンはアムランやソコロフとかで聴きたい。

プロコフィエフとスクリャービンのピアノ・ソナタをカップリングした分売盤。
Scriabin: Sonata No. 3 in F-Sharp Minor, Op. 23 & Prokofiev: Sonata No. 7 in B-Flat Major, Op. 83Scriabin: Sonata No. 3 in F-Sharp Minor, Op. 23 & Prokofiev: Sonata No. 7 in B-Flat Major, Op. 83
(2008/01/08)
Glenn Gould

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グールドが1967年にスタジオ録音した第7番は、軽快でシャープな打鍵の切れの良さと、色彩感と響きのバリエーションが豊かな音が美しく、とても洗練されたタッチのプロコフィエフ。

第1楽章 Precipitato
色彩感豊かな音色と軽やかな打鍵で、重苦しさのない密やかさと乾いた妖艶さが美しい。
それほどバンバン強打せずとも、フォルテやアクセントはしっかり音の詰まっているし、キビキビと軽快でシャープなリズム感。
中間部の緩徐楽章に入って、曲半ばあたりになると重音の響きが重なってかなり厳しい雰囲気に。
時折使うスタッカート気味のノンレガートはさすがにとても軽やか。
音が重なっても濁りがあまりなく、旋律線の音色や響きの違いで立体的に聴こえるし、全体的にすっきりと引き締まった印象。
シャープでリズミカルな歯切れの良いタッチと音色・響きが多彩な変化で、変形された主題が繰り返し登場してやや単調な感じがする第1楽章が、とても面白く聴ける。

第2楽章 Andante caloroso
やや調子の外れた和声がどことなくレトロな感じのする曲。ここはわりと弱音で密やかに弾く人が多いかもしれない。
グールドはかなり大きめな音で音の厚みがあって重層的。この楽章も曲想の移り変わりに合わせて音も響きもカラフルに変化。

第3楽章Precipitato
機関銃の弾丸のような打鍵のポリーニは殺伐としていたけれど、グールドのタッチは鋭く軽やかで、都会的に洗練されたようなスマートさを感じさせる。
スピード感がかなりある上に、バンバンと強打せずとも力感は十分あって、乱暴な音で聴き疲れするようなこともなく。
バッハを弾くときのように、テンポが速くても、絡みあう複数の旋律線を分離させて、それぞれの流れがリズム・音型がくっきり浮かび上がってくる。
和声がつぶれて濁ることもないし、旋律がごちゃごちゃした錯綜感もなく、流れが滑らかですっきりしたフォルム。左手が時にかなり強く出てくるのも、グールドらしい弾き方。
なぜか終盤の跳躍するところ2ヶ所で、明らかに間が空いているのがちょっと不自然な感じはするけど。(技巧的な問題?)
特に印象的なのは、この速いテンポでも、美しい色彩感のある音で、響きも多彩に変化していくところ。こういう風に弾けるというのはかなり珍しい(と思う)し、意外でちょっと驚き。
ソコロフ(やトラーゼ)も、宝石のように煌きのある色彩感豊かな美音でダンスしているような旋律の歌い方だけれど、テンポをかなり落として弾いている。グールドほどの速いテンポをとると、こうは弾けないかも。
グールドの弾く第3楽章は、ここだけ続けて何回聴いても飽きないくらいに素晴らしく良くて、ポリーニよりもよく聴いているし、ソコロフと同じくらいに好きな演奏。

Prokofiev Sonata No. 7 in B flat major: Precipitato - Gould



グールドはスタジオ録音(1967年)以外に、1961年に放送用録音も残していたようで、Youtubeにそのライブ映像が残っている。
スタジオ録音とは全楽章ともかなり違った解釈。両方聴けばその違いがよくわかるし、この6年の歳月の開きで、これだけ解釈が変わるというのが面白いところ。
特に違いがよくわかる第3楽章は、61年のライブ映像では、全体的にテンポはかなり遅いので、スピード感とシャープさがなくて、まったりと気だるい感じ。
打楽器的な奏法をあえてとらずに、柔らかいタッチ、スタッカートもかなり鈍く弾いている。そのせいか、曲想の変化、リズム感、強弱・緩急のコントラストが弱め。
一風変わった弾き方なので、面白いことは面白いけれど、”グールドの”バッハと同様、”グールドの”プロコフィエフを聴いている気分。スタジオ録音の方は穏当というか、至極まっとうな演奏(だと思う)。
ライブの演奏の方がグールドファンには受けそうな気はするけど、私はファンでもないし、作品自体を聴くならやっぱりスタジオ録音で聴きたい。

Glenn Gould-1961-[Prokofiev]-Piano Sonata No.7, op.83-Mov 3



<グールドの録音に関する過去の記事>
グールド~アルバン・ベルク/ピアノ・ソナタ
ヒンデミット/ピアノ・ソナタ第3番
グールド&メニューイン~バッハ・ベートーヴェン・シェーンベルクのヴァイオリンとピアノのための作品集

tag : プロコフィエフ グールド

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随分聴きました
こんにちは。グールドは一度聴きたかったので、よい盤を紹介いただきました。ブログで紹介されていたガヴリーロフによるバッハのフランス組曲を聴いて、随分心地良い感じでした。つぎはグールドでバッハを聴こうかな,と思っていましたので。あわせて注文しようかと。

プロコフィエフのソナタ7番は少しだけ気にしていたら随分集まりました。ガヴリーロフ、ホロヴィッツ、アルヘリッチ、スルタノフ、リヒテル、ペトロフ、フランソワ、ガヴリリュク、ソコロフ、ポリーニ.....ポリーニは痛い感じの音でしたね。ガヴリーロフ、リヒテル、ペトロフあたりがしっくりきました。音の煌めきが綺麗で。ソコロフは異質で違う曲のように聴こえて、違う曲として気持よく聴こえる感じです。

この曲ばかり気になって、ほかの美しい曲に気がつくことに遅れましたが。このような攻撃的な曲と、束の間の幻影のような曲が同じ作曲家から出てくることが面白いなあ、と思っています。
作風の違いは面白いですね
ken様、こんにちは。

グールドは現代ものはまっとうな演奏をしてますので、ベルク、ヒンデミットなども良いと思います。
バッハの方は、”グールドの”バッハですね。(曲にもよりますが)
バッハは多様な解釈がされていますので、グールド以外にも良いものはたくさんあります。
ヴェデルニコフがお気にいられたようですが、彼のバッハは定評があります。イギリス組曲よりもパルティータの方が聴きやすいと個人的には思いますが。グールドと聴き比べると面白いはずです。

プロコフィエフの7番が大変気に入られているようですね。
ポリーニは音はシャープで聴き疲れしますが、テクニックは万全。これ以上のものはなかなか出てこないみたいです。この路線だとグレムザーも良いです。
ソコロフは音楽の方向性が違いますが、このタイプならトラーゼも面白いかもしれません。

プロコフィエフの6番も、7番と同じかそれ以上の難曲で、構成・内容とも面白い曲です。
8番は作風がかなり変わり、叙情的な美しい曲です。こっちはソコロフとガヴリーロフが弾いてますね。(両方ともCDをお持ちだと思いますが)

ストラヴィンスキーも初期には「春の祭典」を書き、新古典主義時代には「プルチネルラ」を書いてますから、全く違う作風の曲を書くこともあります。特に現代の作曲家は作風が多様で、変遷も激しいです。
ショスタコーヴィチの「レニングラード」(第1楽章は有名です)と「24の前奏曲とフーガ」も、交響曲とピアノという違いはありますが、作風が全然違います。
いろんな作品を聴かれると面白い発見があると思います。
ヴァレンティーナ・リシッツァも
グールド、この7番は良いですね。圧倒されます。

ヴァレンティーナ・リシッツァという人の演奏もYoutubeにアップされていて、こちらも気味良かったです。

https://www.youtube.com/watch?v=GDxIYorkrVI&list=UU6UbiyGEGkF5iuqKRsShCOg
グールドの現代曲はいいですね
はんきち様、こんにちは。

グールドのバッハは非常に個性的ですが、現代曲の方が変なクセがなくて普通に聴けます。
せっかくご紹介いただいたのですが、生憎リシッツァは昔から私の好みとは合わないピアニストでした..。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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