クリストフ・ルセ ~ バッハ/イギリス組曲第2番

昨年夏頃から、少しずつ集めてきたチェンバロの録音。
NMLでも鈴木雅明やダントーネなど、名の知られたチェンバロ奏者の録音を多数聴けるので、手持ちのCD以上にいろんなチェンバリストの演奏を聴いている。
最近はピアノとは違った音と奏法にも慣れたせいか、ピアノとは別の楽器として、チェンバロの演奏を聴く回路が頭に中にできたらしい。

チェンバロ盤は、バッハのパルティータ、イギリス組曲、ヴァイオリンソナタの録音を収集中。
チェンバロは奏者が少なく、名盤・定番がそれほど多くないので、ピアノ盤よりも収集がかなり楽。
イギリス組曲は荘重・華麗な演奏が理想的なイメージ。
ピアノ盤だと、曲単位ではホルショフスキの5番、アンデルジェフスキの5番(ライブ)や6番。全曲盤になるとベストと思えるものがなかなか見つからない。
結局、たまたま聴いたレオンハルトの新盤が素晴らしく良くて、伸びやかで格調高く、荘重華麗と、イギリス組曲のイメージにぴったり。
その後で見つけたクリストフ・ルセのイギリス組曲も素晴らしく、こちらは速めのテンポで、躍動感とスピード感に溢れた若々しさに厳かさも加わっている。
古楽信奉者では全然ないけれど、ピアノ盤も含めて考えても、全曲盤はレオンハルトの新盤とクリストフ・ルセが今のところベスト盤。

English Suite No. 2 in A Minor, BWV 807, Prelude - J. S. Bach (Christophe Rousset)



Christophe Rousset Box SetChristophe Rousset Box Set
(2010/02/23)
Christophe Rousset

試聴する(米amazon)
イギリス組曲とフランス組曲の全曲がカップリングされて、さらに「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」が抜粋収録。この小曲集を元に、平均律曲集やインヴェンションとシンフォニアが編集されたので、なじみのある曲がたくさん入っている。
2003年~2004年の新しい録音なので、ヨハネス・リュッカースの音がとても綺麗。
フランス組曲にはイギリス組曲のような荘重さは求めていないし、曲自体にさしたる拘りを持っていないので、チェンバロでもピアノでもどちらでも聴ける。すっきりした音が好みなのでよく聴くのはピアノ盤。
全曲盤なら、ピアノ盤は柔らかく澄んだ響きがとても綺麗なガヴリーロフ、チェンバロ盤はルセ、この2つあれば今は充分。

                              

ルセのイギリス組曲の録音の一番最初は第2番。
冒頭にもってきたのはこの曲が得意なせいかもしれないけれど、これは本当に颯爽として鮮やか。6曲中一番気に入っている演奏。
イギリス組曲は最初のプレリュードの規模が大きく、ここをどう弾くかで演奏の良し悪しが決まるという人もいる。たしかにプレリュードを聴き比べると一番よくわかる気はする。

ルセのイギリス組曲はどれも気に入っているけれど、第5番のプレリュードはレオンハルトくらいの少し遅いテンポの方が好みに合っている。
この曲はピアノでもかなり速いテンポで弾く人が多くて、スピード感はあるけれど、荘重さに欠けるといつも感じるところ。
ピアノ盤で好きなのは、かなり遅いテンポのホルショフスキのライブ録音。荘重で厳粛、それにピュアなものを感じてくる。チェンバロなら、テンポがやや遅めのレオンハルトの新盤。こちらは荘重にして華麗で、どちらも格調の高さを感じさせるもの。

ルセのチェンバロは、ヨハネス・リュッカース1632年・1745年製。
昔聴いていたルイジチコーヴァのモダン・チェンバロの音がガチャガチャと金属音が煩くて、チェンバロに対する私のイメージをかなり悪くしていた原因の一つ。
最近聴いたチェンバロ録音は、どれも古楽器の復元・コピーモデルを使っているので、音はそれぞれ特徴が違うけれど、まろやかで色彩感豊かなとても綺麗な音がする。
ルセのチェンバロの音は、そのなかでもとりわけ美しく、煌くような輝き、鮮やかな色彩感、まろやかさでしっとりした響きが魅力的。
ピアノとは違う色彩感の豊かさと、倍音を多く含んだ多層的な響きには、荘厳で華麗な雰囲気が漂い、純度の高いピアノの響きとは違った美しさ。
それに、チェンバロの奏法独特のテンポやリズム感、アーティキュレーションに対する自分の好みが、ピアノ演奏を聴く時とは違っているところが自覚できるのが面白くもあるところ。
ルセの演奏は、軽快なテンポとリズミカルな躍動感があって、明るい色調で颯爽としている。
レオンハルトのような格調の高さは感じないけれど、堂々とした構えで崩れることのない安定感があって、バランスはとても良い感じ。

I. Preludeは、速いテンポと軽快なタッチで、リズム感とスピード感が良く、とても颯爽としたプレリュード。低音の響きの厳しさは、ちょっとぞくっとするようなカッコ良さ。輝きと色彩感のある音なので華やかさもあって、これは私の理想的なイメージとぴったり。

一転して、しっとりとした憂いを感じさせる響きのII. Allemande。ルバートはかけてはいるんだろうけれど、ベタベタしたところはなく、ほどよい濃さの叙情感。ややゆったりしたテンポなので、空間の中で音が流麗に響いていくよう。

III. Couranteはとても軽快でリズミカル。装飾がかなり多いのかもしれないけれど、ゴテゴテ感がなくて、とても洒落た感じ。

ゆったりとしたテンポのIV. Sarabandeは、アルペジオで弾く和音がギターのような哀愁を帯びた華麗さがあって、とても美しい響き。

V. Bourree I-IIは、かなり速いテンポで、切れの良いリズム感とスピード感が爽快。イネガル奏法を多用しているらしく、一本調子の単調さはないし、それでいてテンポやリズムが崩れた感じはしなくて、躍動感のあるブーレ。

VI. Gigueも速いテンポで、弾むようなリズム感と開放感のある明るさが素敵。声部もそれぞれの線が明瞭で、縦と横の線がぴったりと揃って、きりっと引き締まった印象。


                              

バッハのチェンバロ録音を収集するときに参考にしたサイトは<朝歌>
”J.S.Bach(バッハ)とLute(リュート)が好きな”方が開設しているサイトで、バッハの主要な曲別について、録音の評価とコメントが載っている。
《イギリス組曲》では、レオンハルトの新盤、ルセ、曽根麻矢子、渡邊順生の評価が高い。
チェンバロに詳しい人でも、推奨盤は人によって結構違う。好みの方向性が違うとハズレることが多いので、いくつかのサイトやブログの推奨盤を試聴してみると、この<朝歌>さんの評価が私の好みに一番合っていた。

チェンバロの様式別カタログ
チェンバロ製作者の久保田彰氏のホームページにあるチェンバロのギャラリー。様式別の特徴やチェンバロの写真がいろいろ載っている。
実物を見たことがないけれど、チェンバロの写真を見ると、楽器というよりも美術工芸品のような美しさ。典雅なフォルムと内部に描かれた図柄がとても綺麗。

タグ:バッハ ルセ

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コメント

ルセのチェンバロ

yoshimiさん、こんにちは。
結局ルセのチェンバロのCDを買ってみて
演奏そのものは気に入ったのですが~
いざ聴こうとすると、どうもピアノの方に手が伸びてしまうアリアです。
チェンバロに対する苦手意識はかなり薄れたんですけどね。
やっぱりピアノの方が音として好きなんですね。
どうやらまだ、別楽器としての意識の回路が確立されてないみたいです。(笑)
まあ、それはそれとして、チェンバロでの演奏も知っておいた方が
ピアノを弾く上でもプラスになりそうなので、聴きますが~。
苦手意識が薄れたということは、これから好きになる可能性も十分あるわけですし♪

チェンバロの様式別カタログ、いいですねえ。
チェンバロって本当に美術工芸品の域に達してますね~。
こんなのが家にあったら素敵。(実際は全然似合わないけど・笑)
やっぱり自分でも弾いてみたいです。
聴いてるだけでは分からない良さが色々とありそうです。

チェンバロ、弾いてみたいですね

アリアさん、こんにちは。

あら、ルセのCD、買われたのですね~。いつもながら素早い!
チェンバロは聴き慣れるのに、ちょっと時間がかかりますね。
私はようやく慣れて、凝ったアーティキュレーションが楽しく思えるようになりました。

チェンバロとピアノとでは聴きたい曲が違うので、フランス組曲、ゴルトベルク、平均律はやっぱりピアノがほとんど。
チェンバロだと、続けて聴いていると、なぜか音色に飽きてしまうようなので。
チェンバロで聴くこともありますが、ピアノの方がピアニストによる音色と表現の違いが大きく感じるせいか面白いです。
でも、アンタイのゴルトベルクは、チェンバロとはいえ、かなり魅かれるものがありますけど。

チェンバロの写真を見ていたら、段々欲しくなりますよね~。
同じく、私の家にも全然合いませんが。
年代もののピアノもレトロ感があって好きなのですが、それとは違った美しさは、まるでバロック時代にタイムスリップしたような感覚がします。
職人芸で作るので(それに需要も少ないし)、全然凝っていない普及モデルでも、家庭用の一番小さいグランドピアノ並のお値段はするようです。
それに調律してもすぐに狂うので、自分で調律できる程度の知識は必要らしいです。
木製なので湿度に弱いので、日本の気候だと夏場は空調必須かも。
やっぱり、美術工芸品はメンテナンスに手間がかかります。

チェンバロを教えている人もいらっしゃるらしく、練習記ブログもいくつかありました。
ピアノとはメカニズムが全く違うので、何度か自分で弾いてみないと、感覚的にわからないものがたくさんあるでしょうね。
音大で短期間の入門(体験)講座でも開催してくれないかなあ。
チェンバロの講座を持っている学校は少なそうですけど。
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◆プロフィール◆

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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