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レーゼル ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集(旧盤)
レーゼルがベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を再録音したということなので、旧東ドイツ時代の1988年~1991年にかけて録音した旧盤(Berlincalssics)を聴き直してみた。

どの曲も、レーゼルらしく余計な飾りをつけずに、やや地味ながらも堅実なベートーヴェン。
逸ることのない安定したテンポで、不自然な淀みや揺らぎもなく、細部まで明瞭で精巧。
音の粒立ちが良く、どんなパッセージの流れも滑らか。ケンプのレガートが絹のような質感だとすれば、レーゼルのレガートは、真珠のネックレスのようにコロコロした粒が綺麗に揃っているような感覚。
スケールは滑らかでドライブ感もあり、アルペジオを重ねた響きは濁りなく重層感が華やか。
音色は明るめで暖かみがあり、響きはクリアで伸びやか。
情緒過剰な繊細さや威圧的な力強さとか、聴き疲れるようなところがなく、過不足なく(とでもいうのか)無理のない自然な流れを感じさせる。
でも、そういうところが逆に物足りないと思ってしまう曲や楽章もある。

レーゼルのピアノ協奏曲BOX。
Piano ConcertosPiano Concertos
(2006/10/24)
Peter Rosel 他

試聴する(分売盤にリンク)
収録曲のなかで一番好きなのはプロコフィエフの第2番。シューマンも堂々とした演奏でかなり好き。

レーゼルのベートーヴェン全集のなかで好きな演奏は、第1番と第4番。「皇帝」もいいと思うけれど、もともと特に好きな曲ではないので。
第1番は、速いテンポで若者らしい自由闊達で活気に満ちたタッチで弾いている人が多い。
レーゼルは、そういう方向とは違って、テンポは速くはないし、タッチやフレージングも柔らかく滑らかなので、スピーディで勢いよく..というわけではない。
喩えていえば、白百合のように品良くしとやか。よくコントロールされたテンポと一音一音きっちりと弾きこんでくるタッチは、落ち着いた品の良さを感じさせ、ベートーヴェンらしい構造堅牢な安定感もあって、いつも元気な少年が走りまわっているような演奏ばかり聴いている、とても新鮮に聴こえる。(そういえば、アンダも品よく愛らしく弾いていた)

第1楽章のカデンツァは、ベートーヴェン自作の3種のうち、未完成(か紛失)のバージョンを珍しく弾いている。未完成部分は、レーゼルが数小節補完している。
このカデンツァは、普通弾かれるバージョンと比べて、ピアニスティックなところがやや薄め。
この楽章のレーゼルの演奏からいえば、この珍しいバージョンのカデンツァの方が、雰囲気も流れも似合っている気はする。

第3番は、5曲のコンチェルトの中では最もロマン派に近くて、旋律からしてとてもロマンティック。
そのわりに、レーゼルは(予想どおり)ロマンティックな味付けは少なく、かなりあっさりした感じがする。
ルプーみたいにロマンティシズム濃厚なのは苦手だけれど、もう少しロマン派よりに情感濃い目の方が好きなので、私の好みとはちょっと違う。

第4番も優美で落ち着いたタッチで、喩えて言えば、第1番が貴族の令嬢だとすれば、こちらはハプスブルグ家の若かりし頃の女帝マリア・テレジア風?。
第1楽章は安定したテンポで、レーゼルの透明感のある明るく伸びやかな音と適度なメリハリのある歌いまわしには落ち着きと風格がある。
静かに沈潜するような第2楽章でも、レーゼルが弾くと悲壮感は薄めで、さらりと淡い哀感漂う。レーゼルの音色が明るく暖かいので、どことなく白い光がさしこんでいるような明るさがあるような。
第3楽章は、この楽章にしてはそれほど軽快なタッチや響きではなく、響きも厚めで重厚な感じ。

音質面は、私の好みとはちょっと違っていた。ベルリン教会で録音したせいか、残響がやや長く、ピアノの音が滲んだような感じがするし、ピアノの音が少し遠くて小さい。特に第4番の音質はかなり気になる。(でも、何度も聴いていたら、耳が慣れたせいか、音の滲みは気にならなくなった)

再録音は、スイスのVeveyにあるSalle del Castilloでのライブ録音。
レーゼルのホームページでスケジュールを確認すると、4月9日に第2・3・4番、10日に第1・5番を演奏している。
ルカ教会で録音したモーツァルトの音質がとても良かったので、せっかく録音するなら、モーツァルトプロジェクトのように、1曲づつ時間をかけて、ルカ教会でセッション録音して欲しかった気がしないでも...。
それでも、今時のライブ録音は音質も良いので、少なくとも既発盤よりはずっと良い音で聴けるはず。

こちらは旧盤の第5番。
Beethoven - Piano Concerto No. 5 in E-flat major, Op. 73 "Emperor" - I. Allegro



<関連情報>
[第89回N響オーチャード定期]ソリスト:ペーター・レーゼル(インタビュー)(2015年12月20日・羽田空港にて)

レコード芸術12月号/インタビュー記事>
12月発売予定の『ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集』については、ほんの少し触れているだけ。記事の半分くらいモーツァルトのピアノ協奏曲に関する話だった。
この記事の冒頭部分に、”2016年3月にソロの小品とバッハを録音した”と書かれていた。
レーゼルのホームページで3月の予定を確認すると、確かにドレスデンでバッハと小品集を録音している。

7.-11. Dresden Lukaskirche
CD-Produktion King Records mit zwei Solo-CD
Bach, Partiten 2 und 4, Italienisches Konzert u. a. Klavierstücke verschiedener Komponisten

(ソロCD制作:キングレコード2枚のソロCD
バッハのパルティータ第2番&第4番、イタリア協奏曲他、様々な作曲家のピアノ作品)

小品集は『ユーモレスク/ピアノ小品集』として今年6月に発売済み。
バッハ録音がリリースされるのは、早くても来年中。とても好きなパルティータ第2番が入っているので、なるべく早く発売して欲しい。

tag : ベートーヴェン レーゼル

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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