*All archives*



『レーゼルの芸術 ピアノ独奏曲編』 ~ バッハ=ブゾーニ編曲集(1) シャコンヌ、前奏曲とフーガ
ブゾーニとくれば、まず思い浮かぶのが《シャコンヌ》。
この曲はキーシンの20歳頃の録音で聴いて以来、ブゾーニ作品のなかでも、ヴァイオリンソナタ第2番と並んで好きな曲なので、知っているピアニストの録音を見かけたら時々聴いている。
ブゾーニは編曲ものの方がオリジナルよりも有名だと思うけれど、オリジナルはかなり独創的でユニークな曲が多い。
有名なのは、長大な《対位法的幻想曲》や最終楽章に男声合唱をおいた《ピアノ協奏曲》(誇大妄想的という人もいるけど)など。
晩年の2台のピアノのための《バッハのコラール《幸なるかな》による即興曲》は、調性感が曖昧になった幻想的な雰囲気で、かなり現代音楽風。

ブゾーニの《シャコンヌ》は、ロマン派的な荘重華麗な編曲でバッハとは異質な気はするけれど、インテンポでメカニックが安定した、どちらかというと端正な演奏が好きなので、定番はストイックなミケランジェリと、流麗で大伽藍のような華麗な響きのキーシン。
いずれもメカニックの切れが良いけれど、ミケランジェリはEMI時代のモノラル録音なので、音質がずっと良いキーシンの方が頭に刷り込まれてスタンダード化している。
テンポが揺れて感情移入過多のタイプは許容範囲外なので、情緒的なシャコンヌの代表のようなグリモーは全く合わず。
オピッツもかなりロマンティックだとは思うけれど、ドイツ的な重厚さと力強さに加えて、かなりの迫力に白熱感。オピッツのベートーヴェンとブラームスは全然魅かれなかったけれど、これだけ気合の入ったシャコンヌを聴くと、好みと違っていても惹き込まれてしまう。


《シャコンヌ》は、レーゼルもブゾーニ編曲集で録音している。
レーゼルのソロ録音は全て聴いてみることにしているし、《シャコンヌ》以外は聴いたことがない曲が多いので(ケンプ編曲版で聴いた曲はある)、勉強も兼ねて聴いてみた。

Piano Arrangements of Works By BachPiano Arrangements of Works By Bach
(1994/09/06)
Bach、Ferruccio 他

試聴する
分売盤が入手可能。
レーゼルのソロ録音集BOXにも収録されている。

Works for PianoWorks for Piano
(2008/07/08)
Peter Rosel

試聴ファイルなし



無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 - シャコンヌ
レーゼルらしく、冒頭から速いテンポであっさりとしたタッチ。
全体的にインテンポで、ロマンティックさよりも骨格のかっちりした端正さのあるシャコンヌ。
キーシンを比べると華やかさが薄いけれど、澄んだ響きが清明さを感じさせるし、弱音の柔らかく粘り気のない表現がさりげなくて良い感じ。

重音移動の速いパッセージをスタッカート的なノンレガートで、それもペダルを入れずに弾いているところがいくつか。
タッチがとても軽やかで、響きの重層感がなくて、曲に重みがない感じがするところ。いつも聴いている《シャコンヌ》のイメージとは違っていて、初めて聴いた時はかなりの違和感。
何度か聴いていると慣れてきたけれど、どうもこの響きを聴くと居心地が悪い。
こういう重音でテンポの速いアルペジオを弾くところは、ペダルを使っている人が多い。
レーゼルは、楽譜でスラーがかかっていない部分では、あまりペダルを使っていないので、意図してペダルを多用しないようにしているらしい。
ノンレガートで弾いているところを除けば、それ以外のところは響きの厚みを出して荘重な雰囲気。
強弱・緩急のコントラストも必要なところはしっかりついているので、クライマックス部分になると、タッチも力強く勢いも増していき、レーゼルにしてはかなり白熱感と高揚感があって、結構聴き応えあり。


前奏曲とフーガ ニ長調 BWV 532
これは初めて聴いた曲。原曲がオルガン曲のせいか、シャコンヌとは違ってロマン派的な香りは薄く感じる。
この曲と次の《トッカータ、 アダージョとフーガ》では、原曲のオルガンの響きを考えたのか、レーゼルはスタッカート的なノンガレートではなく、もう少し軽やかで柔らかい響きで、ややレガート寄りのノンレガート。
カラフルな色彩感のある音色と重層的な響きは、まるでオルガンを聴いているような気がしてくる。
レーゼルの明るく澄んだ音がこの曲にとても似合っていて、とても晴れやかで清々しい雰囲気。
何度も聴けば聴くほど素晴らしくて、どうしてこんなに澄み切った清明なピアノが弾けるのかしら。

冒頭は序奏らしく、ファンファーレ的に明るい。
前奏曲に入ると清明だけれど賛歌のような喜びに溢れた美しい旋律で、クリスマスに聴きたくなりそう。
フーガへ移行する部分は、テンポが落ちて静かに眠りにつくように。
フーガの冒頭は、子供のピアノの練習曲みたいなシンプルな旋律。とっても可愛らしくて、このごろイギリス組曲やパルティータのフーガばかり聴いていた耳には、とても新鮮。
やがて音の密度が増して、音色も響きも多彩になり、弾むような躍動感とシンフォニックに音が重なっていく。
同じような音型で構成される素朴な旋律と荘重な和声の響きは、教会建築のような揺ぎない構築感があって、このアルバムの中では一番気に入った曲。

Bach / Busoni - Prelude & Fugue in D major BWV 532 - Rösel (1986年録音)



トッカータ、 アダージョとフーガ ハ長調 BWV 564
これはキーシンのCDで聴いたことがあるけれど、どうもトッカータが好きには慣れなかったせいか、あまり記憶に残っていない。
レーゼルのピアノで聴いても、トッカータの冒頭はやっぱりう~んという感じ。途中で叙情的な旋律が出てきても、《前奏曲とフーガ》ほどには魅かれない。
アダージョの旋律は、そこはかとなく哀感が漂うとても静かで綺麗な旋律。終盤は悲愴感を訴えるように力強いフォルテに。
フーガになると、符点のついたリズム感が面白くて(すぐにカッコウを思い出した)、とっても楽しげ。子供
がうきうきして遊んでいるような無邪気で可愛らしい雰囲気。
こういう曲を聴くと、どうもすぐにクリスマスを連想してしまう。
レーゼルのピアノの響きは透明感があった明るい音色で、和音も濁りなく良く鳴っているので、《前奏曲とフーガ》と同じく、こういう清明で響きの厚みのある曲にはぴったり。


<関連記事>
バッハ=ブゾーニ編曲「シャコンヌ」

ブゾーニ/ピアノ協奏曲(男声合唱付き)

ツィンマーマン&パーチェ ~ ブゾーニ/ヴァイオリンソナタ第2番

ブゾーニ/バッハのコラール《幸なるかな》による即興曲(2台のピアノのための)

tag : バッハ ブゾーニ レーゼル

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

シャコンヌ
yoshimiさん、こんにちは。
シャコンヌ、実はあまり色んなピアニストで聴いたことがなくて
CDとして持ってるのが、なんとラローチャだけなんですよー。
これから色々聴いてみようと思ってたところなんです。
まずはキーシンかな、なんて思ってたんですけど
レーゼルもなかなか良さそうですね。今度聴いてみよう!

あ、そうだ、ウゴルスキの左手だけのもとても好きです。
CDではなくてYouTubeで見たんですけど、ほんとお気に入り。
左手だけであれほどの音楽を創り出すことができるというのもすごいし…
あ、それはブラームスの功績でもあるんですけど(笑)
本当に素晴らしい演奏ですね。

yoshimiさん、アンデルジェフスキが大阪でも弾くのご存じでした?
東京と所沢は知ってたんですけど、大阪は全然知らなかったのでびっくり。
バッハとシューマンの東京公演とは違って、大阪はモーツァルトの協奏曲で
それだけが残念なのですが~
(バッハとシューマンだなんて私のためのプログラムかと思ったのに!笑)
モーツァルトでもいいので(失礼)聴きに行こうと思ってます♪

http://www.osaka-phil.com/schedule/detail.php?d=20110519
アンデルジェフスキが来るなんて!
アリアさん、こんにちは。

シャコンヌを聴くなら、こちらでCD評があるので、ご参考にどうぞ。(キーシンは載ってませんけど)
http://homepage3.nifty.com/kyushima/cd/Chaconne.html

私の好みから言えば、キーシンがベストで、ミケランジェリは音質を気にしないなら、これも同じくらい良いと思います。20歳代のキーシンはほんとに冴えてました。(最近はもう一つですが)
キーシンのCDにはクライスレリアーナもカップリングされてますね。(こっちは、ほとんど聴いたことがないですが)

ドイツ的というか重厚で男性的なのはオピッツ、ロマンティックなのがお好きならグリモー、というところでしょうか。
レーゼルはちょっと地味なので、ファーストチョイスにはお勧めしませんが、異聴盤の一つとして聴くには良い演奏だと思います。

ブラームス編曲版は、ウゴルスキの演奏がやっぱり良いですね。
”ウゴルスキ”のブラームスとでもいうべきなんでしょうが、これ以上のものはなかなか聴けないでしょう。
スタジオ録音のCDも持ってますが、Youtubeの方がテンポがゆったりと情感が深くて、私もライブの方が好きです。
ウゴルスキのヘンデルヴァリエーションもなかなか凄くて、ブラームスと相性が良いです。

アンデルジェフスキが大阪にくるとは、まさに晴天のへきれき!
関西は、大物の外来アーティストがほとんど素通りしていきますからね~。
アンデルジェフスキはソロで聴きたいので、それにモーツァルトなので(20番は好きですけど)、私は今回は見送りです。
最近デュオを組んでいるF.P.ツィンマーマンとヴァイオリンソナタを弾くなら、絶対行くんですけど。
たぶんそう度々来阪することはないでしょうから、じっくり生演奏を聴いてきてくださいね~。
ブゾーニ
こんにちは。
ブゾーニといえば、昔によく読んでいた吉田秀和の「LP300選」に紹介されていた(近代のなかでかなり重要、というような記述でした)こともあり、FMで「ファウスト博士」を聴いたことがありました。内容はほとんど覚えていません…。
ピアノ協奏曲は以前から気にしているのですが、まだ機会がないのです。なんだかコワイ気もして^^
「シャコンヌ」はミケランジェリのをたまに聴いていますが、録音はやはりちょっと古いですね。
ブゾーニには隠れた名曲がいろいろありそうです
吉田様、こんにちは。

ミケランジェリの《シャコンヌ》は、1950年代のライブ録音があって、これは音質はかなりマシですが、スタジオ録音ほどの緊張感がない感じがします。
EMI盤は、何回かリマスタリングし直しているようですが、元のテープの音質が良くないんでしょう。

私の頭のなかでは、ブゾーニ=ピアノになっているので、オペラは全然聴かないこともあって、「ファウスト博士」は未聴です。
ピアノ協奏曲は長大ですから、体力と気力のある時にどうぞ。構成は少し変わってますが、内容自体はそんなに奇抜なものではないです。
ヴァイオリン協奏曲も書いてますが、これは2回聴いてもよくわからないまま。
ヴァイオリンソナタの第2番の方は、ブゾーニ自身が、自分の作品番号1だと言ったくらいの自信作です。
旋律が綺麗ですし、伴奏もピアニスティックで、《シャコンヌ》以上によく聴いたかもしれません。ツィンマーマンやクレーメルが録音してます。
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。