スメタナ/弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」、ピアノ三重奏曲 

2011, 03. 07 (Mon) 12:00

スメタナといえば、真っ先に浮かんで来るのが交響詩《わが祖国》のなかの「モルダウ」。
初めて「モルダウを聴いたのが、子供の頃に聴いた(たぶん)クーベリックの来日公演のCM。
TVの深夜番組の間に度々流れていて、たしかシンフォニーホールのコンサートだったはず。

他に聴いた曲といえば、スークの録音でヴァイオリンとピアノのための《わが故郷より》
《わが祖国》の第4曲「ボヘミアの森と草原から」の室内楽バージョンのような、郷愁に溢れた叙情豊かな曲。
この曲は、スークとパネンカのスタジオ録音をCDで持っているけれど、Youtubeで偶然見つけたのが、とても珍しい(!)ライブ映像。
パネンカのお髪が真っ白なのでかなり晩年のコンサート。ピアノ三重奏曲も同じコンサートで弾いているらしい。

Smetana " Z domoviny" part 1 Josef Suk & Jan Panenka



スメタナのプロフィールを調べると、耳鳴りと難聴で晩年には失聴してしまうという作曲家にとっては悲劇的な運命。
失聴後の作品で、耳鳴りの音が表現されているのが、弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」の終楽章。
弦楽だけの曲は全くといっていいほど聴かないけれど、この曲は耳鳴りと関連があるというので、一度は聴いてみようと思っていた。
作品解説によると、第4楽章は「民族的な要素を音楽で扱う道を見いだし、せっかく仕事が軌道に乗り出して喜んでいたところへ、失聴というカタストロフィーが襲いかかり挫折するところまでを描く」とスメタナが記していたという。
冒頭は陽気で楽しげな曲想。そのうち急に暗雲が垂れ込めるように、突如テンポが落ちて、曲想が一変。
失聴という運命に見舞われたような不気味で悲愴感漂うトレモロが静かに鳴り響き、第1ヴァイオリンが高音でキーキーという保持音を奏でる(これが耳鳴りの音らしい)。
一瞬、長調の旋律が流れるけれど(これはほのかな希望を表しているらしい)、最後は再び不吉なトレモロが鳴りながら、フェードアウト。
聴力を失っても耳鳴りが続くことがあるので、もしかしたらヴァイオリンが弾いているようなキーキーという音にずっと苦しめられていたのかもしれない。

Smetana String Quartet No. 1 in E Minor (IV)



この曲のエンディングはあまりに暗いので、次はピアノ三重奏曲の方を。
これはこれで、冒頭から悲愴感漂う旋律が流れている。
ピアノ三重奏曲は1855年の作品なので、まだ30歳くらいの若い時に書いたもの。
そのせいか、重苦しさはあるけれど、弦楽四重奏曲第1番に垂れ込める陰鬱さはさほど強くなく、若者らしい激しい感情が渦巻く疾風怒濤のような雰囲気。

Smetana Piano Trio G minor 1st movement Part 1 Suk, Panenka, Fukačová


急速楽章の両端楽章には、感情が奔流するような激しさがあるし、緩徐楽章に当たるはずの第2楽章も短調の主題部分は速いテンポで細かな起伏がつき、強い哀感と少し不安感が交じり合ったような旋律。
第1楽章の中間部では、長調の穏やかな旋律や舞曲風の明るめの躍動感のある旋律が出てくるように、第2楽章の中間部も長調の旋律がのどかな雰囲気で、清涼剤のようにほっと一息。
主題が再現された後、終盤部ではどこかしら牧歌的な旋律(ブロッホのコンチェルトグロッソにちょっと似ている感じ)が現れたりと、明暗が激しく交錯する。
ところどころ、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲(たぶん)を連想するような旋律が流れてくるし、やっぱりチェコの民俗音楽的な薫りはする。

第3楽章は、小刻みな音で繋がる旋律が続いて、まるで小走りしているかのよう。追いたてられるような疾走感があって、とても軽快。
中間部は、テンポも曲想も一変して、静かに瞑想するようでちょっとノクターン風。
ここの旋律がとても美しくて、高音域のピアノが弾く旋律は夢見るような輝きがあり、ヴァイオリンとチェロが弾く旋律は、頬に優しく触れられているように柔らか。
終盤で低音から高音域へと駆け上がってから、エンディングへ向かって主題が現れるところは、とても雄大で爽やかな雰囲気。


ピアノ三重奏曲は、全編にわたって緩急・明暗のコントラストが強く、緊張と弛緩を絶えず繰り返しているように曲想が急変し、情念が濃厚で結構重たい曲。
叙情感がかなり濃いと思っていたドヴォルザークのピアノ五重奏曲や三重奏曲でさえ、スメタナに比べればずいぶん穏やかに聴こえる。
ブラームスも結構重たいけれど、さらに強い明暗のコントラストと濃い陰翳をつけて、激情的なタッチにしたような印象。
ブラームスはとても好きなので、スメタナも聴き慣れれば、ドヴォルザークよりも陰翳が濃く、舞曲のような民族色がやや薄い(気がする)せいか、かえって聴きやすくはある。
スメタナの室内楽曲やピアノ曲は感情的な重たさを感じるので、聴いていて疲れるものがあるにはあるけれど、ピアノ三重奏曲も弦楽四重奏曲も全然嫌いなというわけではなく、逆にかなり魅かれるものがある。
特に緩徐部分や長調の旋律は、《モルダウ》や《わが故郷より》と同じように、とても美しくメロディアス。
スメタナとは思ったよりもずっと相性が良さそうだし、少なくとも、ドヴォルザークよりははるかに好みに合っていた。

タグ:スメタナ スーク パネンカ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。

0 Comments

Leave a comment