フライシャー ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集 

2011, 03. 29 (Tue) 18:00

ずいぶん以前に買っておいたジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団&レオン・フライシャーのベートーヴェン交響曲・ピアノ協奏曲全集。
ちょうど、フライシャーが両手のピアニストとしてカムバックした録音を続けて聴いた頃に買ったもの。
1950~60年代は、フライシャーが右手を故障する前に、セル&クリーブランド管とブラームス、シューマン、グリーグ、それにこのベートーヴェンと、名だたるピアノ協奏曲を相次いでスタジオ録音をしていた。

フライシャーと同世代のアメリカ人ピアニストで有名なのは、ウィリアム・カペルとジュリアス・カッチェン、それに、ゲイリー・グラフマン。
1953年にカペルが飛行機事故で若くして早世し、60年代には、フライシャーは右手の故障で事実上演奏活動から引退して指揮者の道に入り、数年後、カッチェンは肺がんでパリで亡くなる。当時のアメリカ音楽界にとっては度重なる痛手だったという。
カッチェンの友人だったグラフマンも、1979年に右手薬指を故障。左手のピアノ曲をレパートリーにして演奏活動を続け、カーティス音楽院で教育活動も行い、今では米国ピアノ界の大物らしい。
あのユジャ・ワンがグラフマンに師事していたのは最近知って、なぜかユジャ・ワンに親近感が湧いてきたりして...。

Symphonies 1-9 / Piano Concertos 1-5Symphonies 1-9 / Piano Concertos 1-5
(2007/06/12)
Leon Fleischer, George Szell,Cleveland Orchestra他

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このBOXセットは、チェリビダッケ以外に交響曲全集をもう1セット持っておきたかったことと、ピアノ協奏曲が全曲入っているので分売盤をバラバラ買うよりは保管に便利だと思ったので、購入。でも、普通の1枚ものCDケースに入っていたので、スペース削減にはならず。


ベートーヴェンのコンチェルトは、第2番と第5番はほとんど聴かないので、判断がつくのは残り3曲。
第1番と第3番は、かなりテンポが早く、指回りも軽やかですこぶる良くて、若者らしい溌剌とした演奏。
第1番はそうでもなかったけれど、第3番はどちらかというと、指揮者とオケがテンポを主導している感じがして、ピアノがそのテンポについていくために、指をくるくる回しているような印象。
とてもせわしない感じがする。リスナーレビューはわりと良かったけれど、この曲は一番ロマンティシズムが強いコンチェルトだと思っているので、ちょっと勢いが良すぎて。

この3曲のなかで一番良く思えたのが第4番。
テンポはやっぱり速いけれど、第3番のような慌しさはなくて、テンポが速いバックハウスやカッチェンよりは少し落ち着いている。
歯切れの良いタッチと緩急・強弱のコントラストが明確なところは、同じくらいの年齢で録音したカッチェンのスタジオ録音に良く似ている印象。
違うところは、時々急き込むように速くなることはあるけれど、テンポは速いなりにもわりと安定していること。それに、やや音質が軽くて線が細いので、繊細さがあって、ちょっと優美な雰囲気。
硬質でしっかりしたタッチが好きな私としては、左手があまり強くないし、弱音部分のタメもきつくなく、全体的にちょっと軽やかかなという感じ。
私の好みとは少し違っているので、定番として聴くことはないだろうけれど、30歳前後のフライシャーの切れの良い、若々しくも繊細さを感じさせるピアニズムは、とても瑞々しくて新鮮。

                            

右手の故障に見舞われて数十年後、ようやく治療法が発見されて右手でピアノを弾くことができるようになったフライシャーは、カムバック後にベートーヴェンの『皇帝』をコンサートで弾いたという。
若かりし頃のような指裁きではなかったらしいけれど、最後まで弾ききったフライシャーに聴衆は拍手喝采したそうです。
これはバッハのカンタータ『楽しき狩こそわが悦び』BWV208,第9曲『羊は安らかに草を食み』。同曲を録音したCD『トゥー・ハンズ』もリリースされている。


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