アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第5番 

2012, 01. 10 (Tue) 18:00

ベートーヴェンの初期の1ケタの作品番号のピアノ・ソナタ群のなかで、有名なのは第8番の《悲愴ソナタ》。
第9番はピアノ学習用の曲で有名だし、第1番・第4番・第7番は比較的録音も多い。
逆に、演奏機会があまり多くはないと思うのが、第2番、第5番、第6番。
第2番と第6番は長調の明るいタッチの曲で凄く好きというわけではないけれど、陽気で楽しげなベートーヴェンは聴いていて楽しい。
第5番は、第1番や第8番のように、激しい感情が渦巻く短調の曲で、いかにもベートーヴェンらしいと思わせる曲。

この曲の第3楽章、どこかで聴いたことがあると思ったら、映画『敬愛なるベートーヴェン』で使われていたたのを思い出した。(この映画のタイトルは日本語がおかしい。”親愛なる”か”敬愛する”が正しいと思うけど)
この映画では、3大ソナタとか7大ソナタではなくて、あまり一般的に知られていない《ディアベッリ変奏曲》の第29変奏と《ピアノ・ソナタ第32番》の第2楽章が使われていた。《交響曲第9番》と《大フーガ》がテーマになっていたので、あえて晩年のピアノ作品から選んだのかな。(サントラの曲目リスト

Complete Piano Sonatas & ConcertosComplete Piano Sonatas & Concertos
(1999/11/09)
Claudio Arrau

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ピアノ・ソナタ第5番ハ短調 / Sonate für Klavier Nr.5 c-Moll Op.10-1

4楽章構成だった第4番とは違って、第5番は3楽章構成。
解説にある”明快な形式、和声を多用しないくっきりとした音像、めりはりの効いた速度設定”どおり、とても見通しの良い曲。無駄なくシンプルで、明と暗/緊張と弛緩のコントラストが明快で鮮やか。


第1楽章 Satz Allegro molto e con brio
ハ短調の激しく暗い情熱を感じさせる第1楽章の冒頭主題は、重厚な和音とシャープに駆け上がる符点のリズムが対照的。すぐに長調の明るく伸びやかな第2主題に変わるが、どことなく憂いが漂い、短調が忍び込んでいたりして、全体的に陰翳が濃い。

Arrau - Beethoven sonata no.5 op.10 no.1 (I) - Allegro molto e con brio


第2楽章 Satz Adagio molto
初期のピアノ・ソナタの第2楽章は、第3番や第7番を聴いているとベートーヴェンにしてはかなり叙情的なものが多い気がする。この曲は穏やかで平和的な雰囲気が、ハイドン時代のピアノ・ソナタを思い出させるところがある。

第3楽章 Satz Prestissimo
不安感や焦燥感のようなものを感じさせる短調の冒頭主題。
嵐の前の予感みたいな雰囲気がするので、第1楽章に似て暗い曲想なのかと思ったら、高音部から一気に下行きしていく細かいパッセージが軽快で、どことなくユーモラス。
すぐに転調してゆったりしたテンポの明るい雰囲気の第2主題。細かいパッセージと分厚い和音が入り混じって、力強く。
ラストは冒頭主題が静かに現れて力を抜いたタッチ。これで終わり?と思わず思ったくらいにあっさり。

レーゼルはかなり速いテンポで、一気に駆け抜けるようなタッチ。全体的に短調の部分が多く、明暗・緩急のコントラストも強い曲だけれど、暗さや翳りはやや薄い。
アラウの旧盤を聴くと、テンポが遅いせいもあってか、陰翳が強くなり、長調の部分であっても、漠然とした不安感が底流に流れている印象。

Arrau - Beethoven sonata no.5 op.10 no.1 (III) - Finale (Prestissimo)





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