レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 2 』 ~ ピアノ・ソナタ第9番 Op.14-1 

2011, 09. 22 (Thu) 07:00

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第9番は、全音のソナタ・アルバムにハイドン・モーツァルトと一緒に収録されている。
この曲は、ベートーヴェンの初期のソナタの中でもかなり好きなので、今でもたまに弾いたりする。
和音が多いけれど、歯切れよいタッチで、それでいてどこか軽やかでレガートな曲...というイメージをずっと持っていた。

3年ほど前にライブ録音したレーゼルの第9番を聴くと、最初はかなり優雅な雰囲気を感じたけれど、これはとても柔らかいレガートなタッチがあまりに印象的だったため。
1970~80年代の若い頃の録音をよく聴いていたせいか、レーゼルがこういう柔らかいタッチと音で弾くというイメージがなかったので。
繰り返し聴くと、ふんわり羽毛のような軽やかさと、歯切れよく弾力のある和音とのコントラストがよくきいていて、柔剛のバランスがとっても良い感じ。
和音、スケール、アルペジオのどれも、音の粒立ちが粒も揃って、安定したテンポでリズミカル。
ライブのせいか、盛り上がるようなクレッシェンドやテンポの速い細かいパッセージのダイナミズムが爽快。
レーゼルの音はタッチが多彩で色彩感が豊かだけれど、ブレンデルのような線の細い宝石のような色とりどりの煌きのある音とは違って、木質感のある落ち着いた色合いとやや線の太めの丸みのある響きが心地良い。
色彩感豊かな音を出すピアニストは多いので、レーゼルの音はやや地味なのかもしれないけれど、ベートーヴェンを聴くならこういう音の方が落ち着きがあって、ずっと似合っているように私には思える。
それにしても、自分の下手なピアノで聴くよりも、レーゼルやアラウの演奏で聴くと、なんて素敵な曲なんだろうと再認識してしまう。特にベートーヴェンのピアノ・ソナタは、たとえ有名な曲でなくても、彼らの録音を聴けば聴くほどどの曲も好きになっていくのがよくわかる。


2008年10月1~2日、紀尾井ホールのライブ録音。収録曲は順に第9番、第30番、第6番、第23番。
ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集2ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集2
(2008/12/25)
レーゼル(ペーター)

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ピアノ・ソナタ 第9番 ホ長調 / Sonate für Klavier Nr.9 E-Dur Op.14-1 [ピティナの作品解説]

第1楽章 Satz Allegro
冒頭の和音の伴奏は、新しい始まりを感じさせるように明るく軽快。いつも"出発"、"旅立ち"という言葉が浮かんで来る。
続いて、右手と左手が同じ音型を受け継ぎながら、対話していくような軽やかなパッセージ。ここは、まるで室内楽曲を聴いているような気がする。
レーゼルのやや残響が多い感じの柔らかい響きがとても優しくて優美。ブレンデルよりも優雅な雰囲気がするくらい。
切れの良いフォルテの和音連打の部分との対比が鮮やかで、ややさっぱりした表現のわりに、表情がコロコロと変化していく面白さがある。
短調に転調した中間部では、左手アルペジオの伴奏と右手のオクターブの旋律とが溶け合って、憂い漂うパッショネイトな雰囲気。とてもベートーヴェンらしさを感じるせいか、この楽章で一番好きなところ。

第2楽章 Satz Allegretto
和音主体の悲愴感を帯びた短調。レーゼルはわりとさらりとしたタッチで弾いているせいか、穏やかな叙情感があって、暗さはあまり感じない。中間部は、"束の間の平安"のように、とても穏やかで美しい旋律の長調。

第3楽章 Satz Rondo-Allegro comodo
冒頭の左手の伴奏の三連符の分散和音が軽快。伴奏が下行していくところが面白い。
続いて、両手が対話していくように、交互に受け渡ししていくスケール。
中間部はベートーヴェンらしい三連符の分散和音と和音で構成されたダイナミックな展開。三連符の1拍目を繋げると主題旋律になる。

レーゼルは、かなり速いテンポでキビキビとした切れのよいタッチが主体。
中間部はダイナミックなアルペジオと弾力のあるフォルテで、力強いけれどとても軽やか。
柔らかいタッチも交えながら、タッチとペダリングで和声の響きや残響の長さをいろいろ変えているので、わりとシンプルな構成の曲のわりに、表情が多彩に変化する。



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