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レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 6 』 ~ ピアノ・ソナタ第18番「狩」 Op.31-3
すっかり秋めいて、薄い水色の空が高くて爽やか。お弁当をつくってピクニックにでも行きたくなってくる。
こんなに気持ちの良いお天気の日に聴きたくなるのは、明るく楽しげに野原を駆け回っているようなベートーヴェンのピアノ・ソナタ《狩》。
この曲は、ベートーヴェンの標題付きのピアノ・ソナタの中でもあまり有名ではない第18番目のソナタ。
第17番《テンペスト》があまりに有名なので、その影に隠れてしまったのかも。
でも、疾風怒濤のような《テンペスト》から雰囲気が一変して、明るく晴れやかで、躍動感に心が弾むような曲想は、聴いていてもとても気持ちが良い。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタの中でも特に好きな曲の一つ。

よくあるとおり、副題はベートーヴェンがつけたものではなくて、この軽快な曲想と狩猟用の角笛(ホルン)に似た部分があるので、《狩》と名づけられたらしい。
聴いていても、野外で獲物を追って、駆け回っているような情景が浮かんでくるような曲で、曲想と副題がぴったり。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集6ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集6
(2010/12/22)
レーゼル(ペーター)

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ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 / Sonate für Klavier Nr.18 Es-Dur Op.31-3 [ピティナの作品解説]

4楽章構成で、珍しく緩徐楽章がない。第3楽章のメヌエット以外は、どの楽章も躍動的。
ほんとに野原を駆け巡って狩をしているような情景が音楽になっているよう。

第1楽章 Allegro
冒頭主題は和音で構成されたゆったりとした少し優美な旋律。
Ritardant からa tempo へとテンポが移り変わり、音自体も四分音符の和音から四分音符/十六分音符主体の2~3声の旋律へ変わっていくので、テンポが速く軽快な感じが増していく。
左手の同音連打はリズミカルで軽快で、46小節から始まる右手の第2主題の旋律は心が浮き立つような軽快なタッチで、開放感があってとても爽やか。
第1主題が展開されながら繰り返し現れて、そこに第2主題が加わっているので、緩急が絶えず交代していく。
まるで狩へ旅立つ前に期待で膨らむ気持ちや、楽しそうに支度している様子が表現されているような情景が思い浮かんでくる。
曲全体の曲想の変化と流れを考えると、この第1楽章がこの曲全体の序章のような印象もする。


第2楽章 Scherzo-Allegretto vivace
第2楽章は、野原を駆けめぐって狩をしているような躍動的なスケルツォ。
ほとんどの音にスタッカートの指示があり、速いテンポで軽やかに弾かないと、バタついて騒々しくなりそう。
スタッカートのアルペジオは、野原を疾走するように軽快。
右手の主題だけでなく、左手の伴奏の旋律もとても楽しげで、何かを追っているような雰囲気。
時折、鐘のように打ち鳴らされる同音連打が、軽やかな旋律の流れを断ち切っているのは、角笛の音?、それとも、獲物を狙った銃声?
この楽章を聴いていると、目の前で《狩》をしていると情景が浮かんで来る。

(もともとあまりリズム感は良くないと思う)アラウはテンポがやや遅くて、ちょっと重たい。レーゼルのライブ録音はテンポが速くて軽やか。
Arrau - Beethoven sonata no.18 op.31 no.3 "La Chasse" (II) - Scherzo (Allegretto vivace)



第3楽章 Menuetto-Moderato e grazioso
緩徐楽章の代わりのようにおかれたメヌエットは、とても明るく優美で伸びやか。
第2楽章がまさに"狩"をしているかのように躍動的だったのとは、対照的な曲。
ベートーヴェンのメヌエットは優美だけど、可愛らしすぎないのが品の良いところ。
中間部は和音で旋律が推移していき、雰囲気がかなり変わって、まどろむように静かだったり、激しいフォルテだったり。
息を吸ったり吐いたりしているようなところがある。
このメヌエットを聴いて思い出したのは、旋律と展開や雰囲気良く似ている気がする第9番の第2楽章。


第4楽章 Presto con fouco
これも"狩"を連想させるような躍動的な楽章。"タランテラのリズム"をベースにしているという。
左手の軽快な分散和音と、右手の符点のようなリズムが組み合わさって、流れるように滑らかでありつつ、リズミカル。
複数の単純な音型が右手と左手の両方に現れて、いろいろな組み見合わせで機動的に展開されていく。
この運動性は、テンペストの第3楽章に良く似ているといわれれば、そういう気もしてくる。


レーゼルは、メヌエット以外の急速楽章では、ピアニッシモでもフォルテでも、スタッカートが軽やかで、バタつくことなく、旋律の流れがとても滑らか。
リズムを正確に刻むので、テンポが安定してカッチリとしたリズミカル。
どちらかというと、野性味があるというより、ちょっと優雅な感じで品良くまとまって、貴族が楽しむ《狩》という感じはするけれど、生き生きした躍動感と心が弾むような楽しさが溢れている。

レーゼル自身、とっても楽しそうに弾いているみたいで、聴いていても、明るく快活で気持ち良い演奏。
レーゼルは、旧東独時代にも《狩》を録音している。他に録音したのは、《悲愴》《月光》《テンペスト》《熱情》《テレーゼ》《ハンマークラヴィーア》。
標題付きの名曲が並ぶ中で、《狩》だけが唯一マイナー。この曲はレーゼル自身、弾くのが好きで得意とする曲なのかもしれない。

tag : ベートーヴェン レーゼル

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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