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耳鳴治療記録(1)
1年間ほど続いた耳鳴りも、今ではすっかり静かになり、たとえ鳴っていても気にならないレベル。
日常生活に全く支障のない状態になったので、一つの区切りとして、発症当時(2010年3月上旬)以降の生活や、その間試行錯誤したことを思い出して、まとめてみました。
これはあくまでも個人的なケースなので、他の人が同じことを実践してみたとしても、性格や症状も人によって違いますので、同様の効果が得られるかどうかはわかりません。

耳鳴りの症状
耳鳴りの音質や種類は、1年ほどの間にいろいろ変化していた。
発症当初は左側の頭上方からピーという甲高い高音の金属音が聴こえる。
耳鼻科で検査すると、内耳性の耳鳴り。右耳の聴力も正常範囲ぎりぎりまで低下。
やがて右耳から低音が聞こえ始めて、音の数種類に徐々に増加。
しかし、2ヶ月も経てば、耳鳴りにもすっかり慣れてしまった。

梅雨くらいまでは耳鳴りを意識していたような気がするが、夏になると耳鳴りに悩まされた記憶があまりない。
10月に入って、秋になり涼しくなると、突如耳鳴りが大きく聴こえてきて、それまで耳鳴りのことが全く気にならないほど、静かだったのに気がついた。
それから耳鳴りの種類が増えて、この状態が春先まで続く。

秋~冬にかけて、以前よりも鳴っている音が増えて、合計5種類くらい。
昼間によく聞こえるのはそのうち3~4種類。音パターンは、頭頂部の中高音(ジ~~ジ~)、右耳は高音(ピー)と低音(ブーン)・低音のリズムパターン(コロコロコロコロやウ~ンウ~ウ~ン)やモールス信号。
左耳は、夜中によく聴こえる。低音モールス信号や中低音のルルルルルルルル。モールス信号のパターンは不規則。
ジ~~、ピー、ブーン以外は、リズミカルで度々パターンが変化する。配管のゴボゴボとか、お御輿の掛け声みたいな音とかも聞こえるときがあった。

今年春になると、左側の耳鳴りがかなり小さくなった。右耳の低音が静かなときに大きくなることを除けば、両耳と頭の上部でいつも鳴っていた音もやがて静かに。
完全に消滅していないにしても、ほとんど聴こえなくなった音もあるし、1年前とは見違えるように静か。もうBGM化している。
ほとんど聴こえないこともかなりあり、鳴っていても気にもならないし、意識していないことも多い。

耳鳴りが鳴っている場合は、ピーという高音はほとんどなく、かなり小さい音量のジー、シー、ザーという雑音性の耳鳴り。これは全く気にならない。
低音の耳鳴りは相変わらず時々聞こえてくるけれど、これもマスキング可能なレベル。
感音性耳鳴りはほとんど完治しないという現実を考えれば、耳鳴りで悩むことがないので、ほぼ回復したと言って良いと思う。

耳鳴りに対する心構え
発症時にいろいろ調べたところ、耳鳴りの原理自体が解明されておらず、特効薬や完治させる治療法がない。
耳鳴りを完全に失くすということは、発症後しばらくして早々に諦めて、一生共存できるように、悪化させないことを目的にした。
不可能なことを望むのではなく、50%で充分と割り切る方が精神衛生に良い。

この頃、インターネットで耳鳴り関係の情報を随分収集した。
そのときに見つけた”耳鳴りの自然経過”「耳鳴りホームページ」の左側フレームにある「耳鳴りの自然経過」の図)という説明によれば、耳鳴りの病状の推移には主に3パターンがあるという。
多くの人は比較的早期に順応して、耳鳴りの音量はかなり低減していくという経過をたどる。
しかし、徐々に悪化してそれが長期にわたって続くというケースも若干あり、原因はいろいろ。
とにかく、どうすれば初期の軽症を悪化させずにすむのかを第一に考えた。

ネガティブ思考とストレスを避ける
収集した情報のなかで、”新しい耳鳴りの理論”というホームページもとても役に立った情報。
耳鳴りに対して、頭のなかでネガティブな音だと判断すると、大脳内で不安・苛立ち・緊張などのマイナスの感情が起こり、これが悪循環となって、耳鳴りがさらに大きくなる...という原理を説明していた。
なるほど~と思ったので、耳鳴りに対しては、ピーピー鳴っていても、ネガティブな感情を抱かないように心がけた。

この原理を読んだ時に思い出したのが、「予言の自己成就(自己実現、自己達成とも言う)」という理論。
私が学生時代から強く影響を受けた米国の社会学者ロバート・K・マートンが論じたもの。
要するに、ある望まざる悪い出来事が起こるのではないかと予想し、その不安に捉われて自己の思考・行動が悪い方向へと向かってしまい、結果的に(本来は実現しなかったであろう)その出来事が現実化してしまう現象を指す。ネガティブ思考になると、この悪循環に陥る可能性がある。

ストレッサーとなるものに対しては、除去する・無視する・近づかないと、極力ストレス源は減らし、それが無理な場合でもマイナス感情(不安、後悔、怒り、失望など)を出来る限り持たない、トラブルを避ける、など、精神的・感情的に安定した状態が続くように、常に心がけていた。
よく眠る、音楽を聴く、ピアノを弾く、趣味の情報を検索する、ショッピングに行くなど、ストレスを溜め込まないこと。出来る限り、好きなもの、快適な精神状態になれるものに囲まれるのが一番。
強いマイナス感情を持つと、それが頭にこびりついて、思考も感情もそれに捉われてしまうので、絶対に避けないといけない。
常にポジティブ思考で、精神的に落ち着いて穏やかな状態でいることがなにより。(といっても、これがなかなか難しい)

治療方法の見通し
発症初期のうちに、耳鳴りの治療法を医療関係のホームページ、掲示板、ブログ、本などで調べて、病状に合わせて必要となる療法の知識をインプットしておいた。
最初から、精神安定剤・睡眠薬などの薬や、専門の医療器具(TCIなど)は可能な限り使わないことに決めていたが、耳鳴りが悪化したときにどういう治療方法の選択肢があるのか情報は収集しておいた。
特に、耳鳴緩和、不眠解消、精神安定剤としてよく処方されているベンゾジアゼピン系(benzodiazepine)の睡眠薬・抗不安薬・抗けいれん薬は、長期服用すると依存性が出るし、減薬・断薬時の離脱症状が酷いため、絶対に使うつもりはなかった。(もともと風邪薬・胃腸薬・鎮痛剤などの市販薬・処方薬も、症状がよほど酷くない限り飲まなかったので)

<参考情報>耳鳴治療に限らず、ベンゾジアゼピン系薬剤の危険性については情報多数。[2012.8追記]
医療大全:うつ病:抗不安薬・睡眠薬依存… 離脱症状減らす『やめ方』[読売ONLINE/yomiDr.(ヨミドクター)]
佐藤記者の「精神医療ルネサンス」抗不安・睡眠薬依存(1)~(6)[読売ONLINE/yomiDr.(ヨミドクター)]
抗不安薬による常用量依存の恐ろしさ [腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へ ー中枢性過敏症候群ー 戸田克広]
ベンゾジアゼピン [精神医療の真実  聞かせてください、あなたの体験]

 『ベンゾジアゼピン - それはどのように作用し、離脱するにはどうすればよいか』(通称アシュトンマニュアル)(ヘザー・アシュトン教授 (DM, FRCP)2002年8月改訂) ※「補遺」も含む。
英国のニューカッスル大学神経科学研究所ヘザー・アシュトン教授が著した『アシュトンマニュアル』は、ベンゾジアゼピンの作用、副作用、離脱症状、減薬法などをまとめた本。英語など10カ国語のマニュアル全文が、”benzo.org.uk”のウェブサイトで公開中。。
「抗不安・睡眠薬依存(8)マニュアル公開記念・アシュトン教授に聞いた」[佐藤記者の「精神医療ルネサンス」]
記事中で、離脱を目指す際の注意事項について、アシュトン教授が6項目あげている。


ネット上の耳鳴治療に関する情報を調べると、この種の薬物療法は対処療法に過ぎない。
耳鳴り緩和・馴化には、症状がまだ軽い初期段階で、TRT療法などの音響・音楽療法、認知行動療法、心理療法により、耳鳴りやそれに関連する症状(不眠、精神不安定など)の悪化を防ぐことが第一であり、ベストの治療法だと考えた。
治療法に関する知識や見通しをある程度持つことができたので、むやみに不安を抱かず、ハイリスクの薬や効果も定かではない民間療法に手を出さずに済んだという点が一番良かった。
必要であれば、TRT療法を行っている耳鳴専門治療で有名な総合病院に電車で30分ほどで通院することができるという環境だったので、これも安心材料の一つだった。

TRT療法というと、TCI器を使うものと思われているが、TRT療法開発者のウェブサイトの説明を読むと、TRT療法自体はTCI器がなくてもできる。
TCI器などの装着型サウンドジェネレーターを使う場合は、慢性患者対象で医師が必要だと判断した場合のみ。
それに急性期または慢性期であっても、TCI器を使わずTRT療法を行うことはできる。


服用薬
薬(ビタミンB12と代謝改善薬-カルナクリンだったような)は、減薬しながら、2ヶ月間だけ飲んで中止。
両方とも耳鳴緩和には効かないことで有名。毒にもならない薬とビタミン剤なので、一応飲んでみた。
効かないといわれるわりに、服用し始めてから2週間くらいで、耳鳴りが小さくなっていったのは確か。(でも、因果関係はよくわからない)
その後は日々変動があって、なかなか安定的に低い状態にならなかった。
1ヶ月過ぎてからは、大きな改善は見られなかったが、聴力は正常範囲下限から元通りに回復。(この段階で医師は投薬をもうやめましょうかと言っていた。まだ耳鳴り残っていたんだけど)
もう少し薬を服用して様子を見たかったので、徐々に薬を減らしていき、特に悪化する兆候もなかったので、服用中止。
それ以降も、精神安定剤・睡眠導入剤などを含め、薬は一切使わなかった。通院もせず。

ビタミンB12については、ベジタリアンにやや近い食生活をしているので、おそらく不足気味だったはず。
そのため、発症初期には効果があった可能性が全くない..とは言えないのかもしれない。
※動物性の食物を全く摂取しないタイプのベジタリアン(ビーガン)は、ビタミンB12が欠乏するため、普通はサプリメントまたは添加食品でビタミンB12を補充する。

耳鳴りと共存する方法
耳鳴りを気にしないようにする方法は、自己流でいろいろ試してみた。
耳鳴りから意識をそらすために実践したことは、音楽を聴く、ピアノを弾く、お料理をする、パンやお菓子を作る、ショッピングセンターに買い物に行く、など。
その目的は、耳鳴り以外の音が頭の中にはいってくる状態にしておくこと。
同時に、耳鳴り以外に集中できることがある状態にすること。いろいろな作業をすることで、耳鳴りから意識がそれるし、作業音で耳鳴りがマスキングできる。
音ではなくとも、仕事上でのライティングや読書も、作業中は耳鳴りを忘れやすいという点では多少効果があった。

また、頭のなかでいろいろ考えことをする(耳鳴り以外のこと)、記憶のなかから好きな音楽を頭の中で再生するなど、意識を別のことに向けることで、耳鳴りへ注意が向かうことが少なくなる。

試用したツール
TCIなどの医療機器を使うのは、悪化した時に試してみようと考えていたので、それまではできるだけ身近にあるものを使うようにした。

耳鳴りから意識をそらすマスキング効果と精神的安定の両方が期待できることを目的に、手持ちのクラシックのCDをプレーヤーやパソコンで再生するようにした。(「耳サプリメント」CDやラジオは使わず)
音を聴くのであれば、精神的に満足度の高い音を聴きたいと思ったので、クラシックを中心に所蔵する音楽CDのストックから、音のタイプやメロディなど、何でも好みのものを選ぶことができた。
外出するときは、周囲の環境騒音でマスキング可能なため、ヘッドフォン・イヤフォンで聴くウォークマンも使っていない。

とても効果的だったのはピアノ演奏。
電子ピアノの場合は、音量が調節できるので、ボリュームを落として、ヘッドフォンなしで弾いていた。
ピアノ演奏をヘッドフォンで長時間聴くと、頭痛がしてくるので(耳にも悪そう)、いつもヘッドフォンは使っていない。
ピアノを弾く時は、曲によって楽譜を見ながら、または、暗譜のどちらか。目・耳・手指・足(ペダル)と記憶など、身体のいろんな部分を同時に使わないといけないので、意識が音楽に集中する効果が高い。

就寝方法
発症当初1週間くらいは別として、音楽やノイズ、ラジオなどは全く流さず、以前と同じ状態で寝ることにしていた。
入眠するのに1時間くらいかかるので、無理に寝ようとせず、眠くなるまで音楽を聴いたり本を読んだりしていたら、自然に眠くなっていった。
もともと、細切れ睡眠や不規則睡眠が普通だった生活をしていたので(特に、春~夏にかけて毎年睡眠障害を起こす)、長時間睡眠に対して拘りがない。とにかく4~5時間眠れれば良く、後は仮眠するなり、そのまま起きているなり、そのときの状態で違っていた。
それに、電車内であろうが、高速道路近くで車騒音の煩い場所であろうが、騒音を気にせずどこでもすぐに眠れてしまうので、それが幸いしたのか、耳鳴り状態でも薬なしで眠ることができた。

枕は高枕。枕が低い(頭が水平に近い状態)と耳鳴りが大きくなるので、羽毛枕を2個ずらして重ねて高枕にして、肩を枕に乗せていた。
もともとフラットな枕だと起床したら頭痛がするので、絶対に高枕でないといけない体質。
昔からこのスタイルで寝ていたが、以前より少し頭が高くなるように傾斜角度が45~60度くらいになる姿勢。
同時に、右側の低音耳鳴りを聴こえにくくするために、体の右側を下にして、横向きで寝ていた。これで閉塞感が解消するので、とても眠りやすくなった。

就寝前にしてはいけないことは、パソコンを使うこと。
モニターの明るい光で頭や目がすっかり冴えて寝入りにくくなる。
パソコンの電源はさっさと切って、ベッドにもぐりこみ、それから寝入るまで、だいたい1時間くらい。
最近は寝入るのに30分もかからなくなっている。10分くらいで寝入ってしまうこともある。

音楽療法
耳鳴りという音に対しては、音で対処するのが一番良さそうに思ったので、音楽を利用する方法をいろいろ試してみた。

 音楽を聴く
発症後しばらくの間、聴いていた音楽はバッハ。
モーツァルトはふだんはそれほど聴いていないし、それよりもバッハやベートーヴェンが好きなので、このときに聴きたいと思ったバッハばかり聴いていた。
バッハの曲は旋律も和声もシンプルで、ロマン派のように感情的な振幅が少なく、精神的な鎮静効果が高い。
ベートーヴェンの音楽は、バッハよりも低音部が強く意志的な力強さがあり、音質・精神面の両方で、このときの状態にはあまり向いていない気がした。

音楽療法というと、特定の作曲家にこだわりがなければ、モーツァルトを聴く人が多い。
曲や演奏スタイルによって、音がかなりシャープだったり、音量がかなり大きい賑やかな曲も多い。
モーツァルトといっても、曲や演奏家を選ぶ必要はあると思うので、必ずしもモーツァルトなら何でも良いというわけではないと思う。(ピアノ協奏曲とかは好きだけど)
個人的には、モーツァルトに拘る必要はないと思っていたので、精神安定効果が高いと自分で自覚している音楽を聴いていた。

バッハの2曲は、いずれもシンプルなメロディに美しい和声、柔らかい音と穏やかな表現で、ピアノの音も美しい演奏。
これを聴くと、かなり精神的に安定するし、耳鳴りから意識をそらすことができたので、モーツァルトではなくとも充分効果はあった。(これはあくまで個人的な音楽的嗜好に基づいた感想)

当初は、耳鳴りから意識を遠ざけることを目的に音楽を聴いていた状態だった。
発症後1ヶ月くらいで、普通に音楽を聴く状態に戻り、聴く音楽も元通り幅広くなった。
単に音を聴くのではなく、耳鳴りの煙幕をかいくぐって、音をきっちり聴き取るように、音楽を聴くことに意識を集中して聴いていた。

発症からしばらくの間よく聴いていた曲
 ◎バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻(ティル・フェルナー)
 ◎バッハ/フランス組曲(アンドレイ・ガヴリーロフ)

それ以外に時々聴いていた曲
  バッハ/パルティータ第1番(ピョートル・アンデルジェフスキー)
  バッハ/パルティータ第6番(第1楽章)(ユーリ・エゴロフ)
  バッハ/フランス組曲第5番(ヴィルヘルム・ケンプ)
  ブラームス/ヴァイオリンソナタ第1番(第1楽章)(ジュリアス・カッチェン&ヨゼフ・スーク)
  ブラームス/後期ピアノ小品集(ジュリアス・カッチェン)

 音楽療法の効果
個人的に思うのは、かなりの音楽好きでないと音楽療法の効果が高くならない気がする。
この療法は個人差が大きく、日ごろ音楽を聴かなかった人や、音楽を聴き流している人には、それほど高い効果は期待できないと思う。
音楽を聴くときは集中し、感情・精神面で深くシンクロしながら聴き、良い音楽を聴くと精神的に充実して安定した状態になれる...という人なら、音楽療法から高い効果を得られる可能性はある。
ただし、音楽療法は私のような初期に軽症だった耳鳴りには効果があるとしても、それよりも重い病状でどの程度効果が期待できるかはわからない。

聴く音楽を選ぶ必要があるので、耳と精神安定にはあまり良くなさそうな音楽は避けた。
耳鳴りが増幅しかねないような音楽(電子楽器や金属的な音、大音量で騒々しい音楽など)の効果・影響はわからない。

また、聴覚過敏症にかかっている場合は、モーツァルトと言えど、高音域の音は耳に響いて痛いようなので、なるべく低音域(チェロ、ホルンなど)の曲にするか、それとも、音楽ではなく、自然の環境音の方が良いのかもしれない。
私は、自然環境音は全く使わなかったので、その種の音の効果については何とも言えない。

ここで言う「音楽療法の効果」というのは、耳鳴りから意識をそらす、耳鳴りを気にせず他のことに意識を集中するという訓練ができた、また、精神面・感情面での安定につながった、という意味。
”耳鳴りを治す”という意味では全くないので、絶対に誤解しないように。
「モーツァルトを聴いて耳鳴り・難聴を治す」という類の本も出ているが、モーツァルトを聴いて耳鳴りが治るとはとても思えない。”○○を飲めば○○が治る”という民間療法と同じようなものだと思っている。
人によっては何らかの効果がある可能性も絶対ないとは言い切れないとはいえ、音楽にそんな治療ができると、間違っても過大な誤った期待をしてはいけない。

 ピアノを弾く
音楽を聴くだけでなく、ピアノを弾くことも趣味の一つだったので、耳鳴り対策にピアノ演奏を活用した。
ピアノは、幼稚園~高校時代まで、ずっとレッスンを受けていた。大学入学後はレッスンは受けず、家でピアノを弾くことも少なくなり、社会人になってからはほとんど弾かなくなってしまって、長いブランク。
その代り、クラシックやジャズのCD・FMを聴くことが日常的になっていった。思えば幼少の頃からずっとクラシックを聴いて育っていた。
趣味どころの話ではなく、クラシックは空気のようなもの。聴けなくなると窒息してしまいそう。
数年前、ある方のブログでヴァイオリンのレッスン記を拝見してから、なぜかピアノが弾きたくなってしまい、再びピアノを弾き始めた。

電子ピアノの場合は、ボリュームをほぼ最小近くに落として、耳鳴りが聴こえる状態にして、ヘッドフォンなしで弾いていた。
大事な点は、ピアノの音で耳鳴りをかき消さないこと。耳鳴りを聴きながら、ピアノを弾いていくところがポイント。これが耳鳴りから意識をそらず訓練になる。
アコースティックピアノの場合は、フォルテでバンバン弾かないこと。ピアニッシモくらいで音量を落として弾いた方が訓練になると思う。

ピアノを弾く時は、楽譜を見ながら弾くか、暗譜で弾くかのどちらか。
いずれも、譜面、鍵盤、記憶などに意識を集中させないといけない。
さらに、ピアノは他の楽器に比べて弾く音がとても多く、指回りの良さなどの運動能力(筋力・反射神経など)も必要になる。
身体のいろんな部分を同時に使って弾く楽器なので、ピアノを弾くことにひたすら集中すると、いつの間にか耳鳴りのことはすっかり忘れて、聴こえなくなっている。

弾く曲は、耳鳴りが聴こえにくくなりやすい急速系の曲。
緩徐楽章の場合は音が少ないため、耳鳴りが聴こえやすくなるので避けていた(それにもともと急速系の曲が好きなので)。
弾くのは、バッハ、ベートーヴェンが多く、たまにブラームスなど。
バッハの場合は、対位法が多用されているので、右手だけでなく左手の旋律にもかなり注意する必要があって、耳鳴りに対する注意が低下しやすいように感じる。
それに、バロック音楽は形式性が強く、ロマン派のような感情的な振幅が少ないため、曲にもよるが、精神的な鎮静効果も高くなると思う。
ベートーヴェンは、バッハよりも和声的に厚みがあり、ディナーミク(強弱)の変化が頻繁でその落差も大きいことから、耳鳴りが聴こえにくくなる。それに、気分的に高揚感や力強さを感じる曲が多い。

ピアノの練習は、だいたい毎日2時間くらい。冬は指が冷えるので隔日が多かった。
ピアノを弾いた後は、耳鳴りが小さくなっていることも多いし、さほど気にならない状態になる。
ピアノを弾くといっても、耳鳴り対策のためと義務的に弾くのではなく、あくまでもピアノを弾くことが好きで、楽しいと思って弾くことが大事。
この対処法は、ピアノという楽器に限らず、他の楽器(ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ギター、etc.)でも応用できる可能性はあるけれど、楽器の音が耳鳴りを増幅するケースもあるので、個人差があると思う。

マスカー療法
春になって気がついたことは、暖かくなるとパソコンのファンの音が急に大きくなって、これが耳鳴り以上に煩い。
パソコンを使っていると、高音の耳鳴りも一緒になって増幅して、ピーピー煩いけれど、電源を切ると耳鳴りだけが残る。やがて、その耳鳴りも小さくなって、聴こえなくなり、その状態が数時間続く。
注意して観察してみたら、大体5時間以上は静かなことが多い。その後で、ピアノを弾いたり、クッキングしたりすると、耳鳴りが静かな(気にならない)状態がずっと続いていた。

これは、「マスカー療法」の原理に近いのかもしれない。
マスカー療法は、耳鳴りよりも大きい音を聴き、この効果でマスカーが消えた後でも、耳鳴りがしばらく聴こえなくなるという仕組み。個人差があり、その効果があまり長時間持続しないらしい。
”マスカーを使用しないマスキング療法”という方法があるが、私の場合はヘッドフォン・イヤフォンは使わず、耳をオープンにしてパソコンのファン&モーター音を聴いているところが違う。

そういえば、昨年も暑くなるにつれて耳鳴りが小さくなって、夏はほとんど聴こえなかった(耳鳴りのことをすっかり忘れていた)のは、同じ理由なのかもしれない。
家の中には、パソコン以外にも、クーラーや扇風機もあるので、ファン・モーター音には事欠かない。

季節によって、日常生活の騒音環境が変わる。
春~夏にかけて、空調機器など家の中の騒音が増え、窓を開けているので、外部からの騒音(クーラー室外機、自動車音、セミや昆虫の鳴き声など)も入ってくる。今から思えば、耳鳴りがこれらの騒音でマスキングされていたらしい。
ああいう機械音とか乗り物内の騒音など、一定のリズムを刻む音がなぜか心地よく、電車や飛行機でもすぐに眠りこんでしまうので、それほど嫌いな音ではない。
日常生活騒音のマスキング効果で、騒音が消えた状態でも、耳鳴りが小さくなり聴こえなくなるのか、それとも、血流が悪いため気温が上がると血流が改善されて、耳鳴りも軽くなるのか。その両方が要因なのかもしれないが、はっきりとはわからない。

現状では、完全に耳鳴りが100%完全に消滅したわけではないが、音も静かだし聴こえないことも多い。(右耳の低音耳鳴りによる閉塞感が少し残っているので、周囲が静かになると圧迫感を感じることはある)
耳鳴りが聴こえていたとしても、特に気にすることもなく、何の感情も湧かないので、今や単にBGM化している。

苦痛度
発症後2ヶ月の時点で、耳鳴の苦痛度(THI:Tinnitus Handicap Inventory)チェックリストで点数をつけてみると、たしか2点くらいしかなかった。
この時点ですでに、耳鳴りは精神的にもQOLにも、何ら大きな悪影響を与えていなかったことになる。
実際、なかなか静かになってくれないのには閉口したが、ネガティブ思考に陥ることはなかった。これはその後も変わらず、今では完全に0点。

また秋になると、耳鳴りが大きく聴こえてくる可能性は残っている。それでも、音量は確実に小さくなっているので、耳鳴りに悩まされることはないだろうし、実際、昨年の秋以降も右耳の閉塞感を除けば、全くと言ってよいほど悩むことはなかった。
少なくとも、この状態から大きく悪化するとは思えない。そうなったらその時に悩めば良いことだし、そもそも将来の病状など予測不可能なので、それについて考える必要も意味もないでしょう。

以上

その後の経過は、耳鳴治療記録(2)へ]

tag : 音響・音楽療法

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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