音のイリュージョン ~ イリュージョンフォーラムの”錯聴体験” 

2011, 11. 18 (Fri) 18:00

今まで読んでいた音楽関係の本は、作曲家・演奏家の伝記、音楽評論、作品解説、音楽エッセイにノンフィクションなど。
最近、サックスの『音楽嗜好症』を読んだり、音楽療法と治療法があるのを知って、科学的・医学的な観点から音楽にアプローチした文献をいろいろ探すようになった。
よく見かけるのは音楽療法の本。方法論やケーススタディが載っている理論書では、主に子供の養育・教育、高齢者のアルツハイマー、精神的疾患、ターミナルケアを主に扱っている。
耳鳴治療の一つに「音楽療法」というものがあるけれど、専門書ではほとんど扱っていない。
また、「音響療法」という場合はホワイトノイズや自然音などを使う療法のことを指し、歌やインストゥルメンタルを使うときは「音楽療法」という用語が使われているようだ。

音楽と聴覚の関係をテーマにした本では、脳における音楽の知覚・認識を扱ったものがいろいろ出ている。
そのなかでちょっと変わった視点の本だと思ったのが、錯覚の一種である「錯聴」の解説書『音のイリュージョン 知覚を生み出す脳の戦略』(柏野牧夫著、岩波科学ライブラリー)。

「錯覚」といえば、思い浮かべるのは、"エッシャーのだまし絵"などでよく見かける「錯視」。
大阪南港の天保山には「現代館」というトリックアートの施設ミュージアム(今は閉館)があって、これはかなり変わった美術館だった。
心理学検査で使われていたロールシャッハテストも「錯視」なのかも。「錯聴」の方はあまりピンと来ないものがある。

音のイリュージョン――知覚を生み出す脳の戦略 (岩波科学ライブラリー 168)音のイリュージョン――知覚を生み出す脳の戦略 (岩波科学ライブラリー 168)
(2010/04/24)
柏野 牧夫

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「錯聴」のパターンがいろいろ上げられていて、それが実際に体験できるサイトが、<イリュージョンフォーラム>
「錯聴」の方は、言葉自体あまり聞いたことがなかったし、実際にこれだけまとまって体験できるのは珍しい。
「錯聴」だけでなく、「錯視」の体験用ファイルも多数ある。


「錯聴」の簡単な説明:http://www.brl.ntt.co.jp/IllusionForum/ja/auditory.html

「錯聴一覧」トップページにあるタブ[錯聴一覧]で、37種類の錯聴が体験できる。

雑音が挿入された「マスキング」関係の錯聴ファイルもいくつかある。
「スライダー」を移動させて数値設定を変えると、雑音の条件がいろいろ変化する。
錯聴ファイルによって、周波数、長さ、間隔、音圧など、雑音が変化する条件が異なる。
雑音の長さや間隔を変化させると、パルス型やザーという雑音型などの耳鳴り音に似た感じの音になる。

錯聴の原理については、各錯聴ファイル画面の右上にある[説明を読む]をクリックすると、画面の下側に、サンプル音声の条件と錯聴の原理の説明が表示される。

私が実際に各錯聴ファイルを聴いてみて、耳鳴りの疑似体験ができそうだと思ったファイルは以下の通り。
「ヘッドフォン」と表示されているファイルでは、ヘッドフォンを使わないといけない。

マスキング関係のファイル
「マスキング」とは、耳鳴り治療でいう「マスキング」ではなく、耳鳴り音のような雑音によって発生するマスキング効果のこと。
知覚的補完 - 「マスキングレベルの可能性の法則」(レベルの関係)(周波数帯域の関係)(両耳間差の関係)
知覚的補完 - 「時間領域の生起条件」(ギャップ)(欠落部分の長さ)
視聴覚統合 - 「マガーク効果」(雑音が入ると、目に見える映像に影響されて、違った音声(言葉)に聴こえてくる)

耳鳴り音に似たノイズ音のファイル
空間知覚 - 「両耳ビート」(両耳の位相差と周波数変化)
空間知覚 - 「両耳マスキングレベル差」

たとえば、 「両耳マスキングレベル差」では、ヘッドフォンで聴いていても、ターゲット音がなかなか聴こえない。
これは聴力自体が落ちているのか、耳鳴りが邪魔しているのか、どっちなんだろう?
音量を変化させると、ターゲット音の聴こえ方が違う。
B・Dでは、音量を上げるより、絞った方がターゲット音が聴こえやすい。これは、音量を上げると、ターゲット音も雑音も両方とも大きくなるが、雑音の方がその度合いが強いので、マスキング効果が高くなるため。
また、雑音が少ない環境で方耳で聴く時と、雑音の多い環境で両耳で聴く時の違いもわかる。


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