イッサーリス ~ チェロ作品集 『Cello World』
2011-05-23(Mon)
たまたまチェロ&ピアノバージョンの《G線上のアリア》をYoutubeで聴いていたら、以前は苦手だったチェロの音がとても耳に心地良い感じ。
いつの間にか、音に対する好みが変わったらしい。
これはチェロの曲もいろいろ聴いてみなければ...と思って、ラックのあちこちに長い間眠っていたチェロのCDを探しだしてきた。
チェロが苦手なわりには、なぜかチェロが入っているCDが数十枚。室内楽はチェロが入っている曲が多いし、カップリングでたまたま入っていることもあるし。
ブラームスの二重協奏曲とピアノ三重奏曲以外は、ほとんどちゃんと聴いたことがないので、無駄にならなくて良かった~。やっぱり思い立ったときにCDは買っておくものです。
まず最初に聴くのに良さそうなのは、チェロ名曲集。
イッサーリスとマイスキー、ヨーヨー・マのCDを昔買ったのは覚えていたのに、ヨーヨーのCDが行方不明。どこにいったんだろう?
イッサーリスとマイスキーを両方聴いてみると、やっぱりマイスキーは私には合わない。豊饒で深い音色は魅力的には思うけれど、ルパートとアゴーギルがたっぷりかかった感情移入が激しい弾き方には疲れてしまう。
イッサーリスの方は、スチール弦ではなく、ガット弦を使っているので(これも初めて知ったか、全然記憶になかった)、響きが穏やかで落ち着いて、とても品の良い響き。
表現もわりとさらっとしている。といっても、理知的で硬い感じがするハインリヒ・シフのような弾き方ではなくて、しっとりとしてはいるけれど、べたつかない叙情感がほど良い感じ。
イッサーリスのチェロ曲集の選曲を見ると、チェロ曲に詳しくない私でもかなりのこだわりを感じる。
定番ものもいろいろ入っているけれど、ちょっと毛色の変わった曲もちらほら。
特に好きなのは、ベートーヴェン、シューマン、ドビュッシー、ベルリオーズ、サン=サーンス、ドヴォルザークにヴェイン。
作曲家自体が好きだったり、原曲が好きな場合は、やっぱりチェロで聴いても好きなことが多い。
シューマンだけは、ピアノソロよりもチェロ曲の方が馴染みやすいし、シューマンは《チェロ協奏曲》と《幻想小曲集》は有名だったはず。
ブックレットの曲目解説は、イッサーリス自身が書いている。音楽関係の本も何冊か出版しているので、文章も書ける人らしい。
インタビュー:スティーブン・イッサーリス(September 2, 2010)[英文]
Beethoven/Andante and variations for mandolin & piano in D major, WoO 44/2
珍しいチェンバロ伴奏。ベートーヴェンをチェンバロで弾かれるのはあまり好きではないけれど、ガット弦のチェロとチェンバロの響きが不思議とよく合っている。
Schumann/Sonata for violin & piano No. 3 in A minor, WoO 27 Intermezzo
Debussy/Nocturne and Scherzo, for cello & piano, L. 26
わりと好きなドビュッシーの曲。ドビュッシー独特の軽快さや諧謔さがチェロの響きで落ち着いた雰囲気に。
Berlioz/La Captive for voice & piano (or orchestra), H. 60 (Op. 12)
なぜかベルリオーズの歌曲はとても好きで、歌曲集のCDを持っている。
この曲も聴いたことがあるけれど、チェロ&ピアノが伴奏しているのは珍しいかも。
Felicity Lottの歌声がとても綺麗。
Faure/Morceau de Concours, for flute & piano (or strings, arranged) in F major (original title: "Morceau de Lecture")
Leonard/Donkey & Driver, for cello & piano
これは笑える!チェロの低音がドンキーの雰囲気そのもの。サン=サーンスの《動物の謝肉祭》といい勝負。
Saint-Saens/The Swan (from "Carnival of the Animals"), original (for 2 pianos & ensemble)
伴奏が珍しい2台のピアノ版である上に、指揮者のティルソン・トーマスとダドリー・ムーア(誰だったっけ?)がピアノを弾いているという、面白い顔合わせ。
いつも聴く《白鳥》よりも、かなり華麗なピアノでファンタスティック。なかなか洒落てます。でも、シンプルにピアノ伴奏は1台の方が、チェロが引き立って聴こえる。
※どこかで名前を聞いたことがあると思ったムーアのプロフィールを調べてみたら、ピアノ・オルガンが弾けるし、ジャズピアニストで作曲家としても有名な人だった。
Villa-Lobos/O canto do cysno negro (Song of the Black Swan), for violin & piano, A. 123
Dvorak/Romantic Piece No. 4 for violin & piano ("Larghetto"), B. 150/4 (Op. 75/4)
これはヴァイオリン&ピアノのレパートリーの名曲。
この曲を聴くときは、スークのヴァイオリン(とホレチョクのピアノ)と決まっているけれど、イッサーリスのチェロもやや抑制気味のタッチが情感深くてとても良い感じ。
Martinu/Piece for 2 cellos, H. 377
Popper/Elfentanz for cello & piano, Op 39 "Dance of the Elves"
Julius Isserlis/Souvenir russe
イッサーリスは音楽家の家系で、この曲はイッサーリスの祖父が作曲。明るく少し古典的な雰囲気がちょっとブロッホの《コンチェルト・グロッソ》に似ているかも。
Tavener/The Child Lived, for soprano & cello
珍しくもタヴナーの歌曲。タヴナーの作品集も録音しているので、イッサーリスとタヴナーは親交があるらしい。
Rachmaninov/Lied (Romance), for cello & piano in F minor, TN ii/32
Scriabin/Romance for voice & piano
ショパン的な作風だったスクリャービン初期の頃の作品のような、調和して安定した和声とメロディアスな旋律。
Tsintsadze/Chonguri
Seiber/Dance Suite for cello & piano
昔懐かしいダンス風のジャズ(?)のような曲。(これがCDラストの曲だったなら、気が抜けそう。エンディングでなくて良かった)
Carl Vine/Inner World, for cello & amplified CD
オーストラリアの作曲家カール・ヴァインの《Inner World》。
このチェロ曲集のCDは、元々、前曲《Dance Suite》で終るはずだったらしい。
録音セッションが始まってから、たまたま耳にしたVineの《Inner World》にイッサーリスが惚れこんだので、これが最後の収録曲に。
チェロを弾いているのはイッサーリスではなく、David Pereira。この曲を献呈されたチェリスト。
多重録音をデジタル加工しているので、ほんとに全てチェロで弾いているとは思えないような曲。
イッサーリスが20世紀のチェロ作品の古典だと言うとおり、まさに現代音楽そのもの。
現代音楽のなかでも電子音楽系が好きな人なら、とても面白く聴ける曲。
このCDには収録されていないカザルスの《鳥の歌》。イッサーリスのチェロ独奏で。
Steven Isserlis - Song of the Birds

<チェロの周波数特性に関する記事>
チェロの倍音がどれくらい出ているか知りたかったので、チェロの周波数特性を解析した記事をインターネットで検索すると、とっても参考になる記事がいろいろ。
やはりチェロの豊かな響きが、チェロ独特の倍音成分の多さを視覚的・物理的に分析したいという欲求を刺激するからでしょうか。
物理は昔からさっぱりわからなかった私には、チェロの倍音がこんなに豊かなのだと目で見てよくわかるとても貴重なデータ。
「目で見る 楽器のサウンド」(工房ミネハラ)
「音色」に関する数学的ハッタリ的考察 -準備編-
いつの間にか、音に対する好みが変わったらしい。
これはチェロの曲もいろいろ聴いてみなければ...と思って、ラックのあちこちに長い間眠っていたチェロのCDを探しだしてきた。
チェロが苦手なわりには、なぜかチェロが入っているCDが数十枚。室内楽はチェロが入っている曲が多いし、カップリングでたまたま入っていることもあるし。
ブラームスの二重協奏曲とピアノ三重奏曲以外は、ほとんどちゃんと聴いたことがないので、無駄にならなくて良かった~。やっぱり思い立ったときにCDは買っておくものです。
まず最初に聴くのに良さそうなのは、チェロ名曲集。
イッサーリスとマイスキー、ヨーヨー・マのCDを昔買ったのは覚えていたのに、ヨーヨーのCDが行方不明。どこにいったんだろう?
イッサーリスとマイスキーを両方聴いてみると、やっぱりマイスキーは私には合わない。豊饒で深い音色は魅力的には思うけれど、ルパートとアゴーギルがたっぷりかかった感情移入が激しい弾き方には疲れてしまう。
イッサーリスの方は、スチール弦ではなく、ガット弦を使っているので(これも初めて知ったか、全然記憶になかった)、響きが穏やかで落ち着いて、とても品の良い響き。
表現もわりとさらっとしている。といっても、理知的で硬い感じがするハインリヒ・シフのような弾き方ではなくて、しっとりとしてはいるけれど、べたつかない叙情感がほど良い感じ。
イッサーリスのチェロ曲集の選曲を見ると、チェロ曲に詳しくない私でもかなりのこだわりを感じる。
定番ものもいろいろ入っているけれど、ちょっと毛色の変わった曲もちらほら。
特に好きなのは、ベートーヴェン、シューマン、ドビュッシー、ベルリオーズ、サン=サーンス、ドヴォルザークにヴェイン。
作曲家自体が好きだったり、原曲が好きな場合は、やっぱりチェロで聴いても好きなことが多い。
シューマンだけは、ピアノソロよりもチェロ曲の方が馴染みやすいし、シューマンは《チェロ協奏曲》と《幻想小曲集》は有名だったはず。
ブックレットの曲目解説は、イッサーリス自身が書いている。音楽関係の本も何冊か出版しているので、文章も書ける人らしい。

![]() | Cello World (1998/07/28) Steven Isserlis 試聴する(米amazon) |

珍しいチェンバロ伴奏。ベートーヴェンをチェンバロで弾かれるのはあまり好きではないけれど、ガット弦のチェロとチェンバロの響きが不思議とよく合っている。


わりと好きなドビュッシーの曲。ドビュッシー独特の軽快さや諧謔さがチェロの響きで落ち着いた雰囲気に。

なぜかベルリオーズの歌曲はとても好きで、歌曲集のCDを持っている。
この曲も聴いたことがあるけれど、チェロ&ピアノが伴奏しているのは珍しいかも。
Felicity Lottの歌声がとても綺麗。


これは笑える!チェロの低音がドンキーの雰囲気そのもの。サン=サーンスの《動物の謝肉祭》といい勝負。

伴奏が珍しい2台のピアノ版である上に、指揮者のティルソン・トーマスとダドリー・ムーア(誰だったっけ?)がピアノを弾いているという、面白い顔合わせ。
いつも聴く《白鳥》よりも、かなり華麗なピアノでファンタスティック。なかなか洒落てます。でも、シンプルにピアノ伴奏は1台の方が、チェロが引き立って聴こえる。
※どこかで名前を聞いたことがあると思ったムーアのプロフィールを調べてみたら、ピアノ・オルガンが弾けるし、ジャズピアニストで作曲家としても有名な人だった。


これはヴァイオリン&ピアノのレパートリーの名曲。
この曲を聴くときは、スークのヴァイオリン(とホレチョクのピアノ)と決まっているけれど、イッサーリスのチェロもやや抑制気味のタッチが情感深くてとても良い感じ。



イッサーリスは音楽家の家系で、この曲はイッサーリスの祖父が作曲。明るく少し古典的な雰囲気がちょっとブロッホの《コンチェルト・グロッソ》に似ているかも。

珍しくもタヴナーの歌曲。タヴナーの作品集も録音しているので、イッサーリスとタヴナーは親交があるらしい。


ショパン的な作風だったスクリャービン初期の頃の作品のような、調和して安定した和声とメロディアスな旋律。


昔懐かしいダンス風のジャズ(?)のような曲。(これがCDラストの曲だったなら、気が抜けそう。エンディングでなくて良かった)

オーストラリアの作曲家カール・ヴァインの《Inner World》。
このチェロ曲集のCDは、元々、前曲《Dance Suite》で終るはずだったらしい。
録音セッションが始まってから、たまたま耳にしたVineの《Inner World》にイッサーリスが惚れこんだので、これが最後の収録曲に。
チェロを弾いているのはイッサーリスではなく、David Pereira。この曲を献呈されたチェリスト。
多重録音をデジタル加工しているので、ほんとに全てチェロで弾いているとは思えないような曲。
イッサーリスが20世紀のチェロ作品の古典だと言うとおり、まさに現代音楽そのもの。
現代音楽のなかでも電子音楽系が好きな人なら、とても面白く聴ける曲。
このCDには収録されていないカザルスの《鳥の歌》。イッサーリスのチェロ独奏で。
Steven Isserlis - Song of the Birds



<チェロの周波数特性に関する記事>
チェロの倍音がどれくらい出ているか知りたかったので、チェロの周波数特性を解析した記事をインターネットで検索すると、とっても参考になる記事がいろいろ。
やはりチェロの豊かな響きが、チェロ独特の倍音成分の多さを視覚的・物理的に分析したいという欲求を刺激するからでしょうか。
物理は昔からさっぱりわからなかった私には、チェロの倍音がこんなに豊かなのだと目で見てよくわかるとても貴重なデータ。


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