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”音楽耳鳴り”に関する概要と文献(1)
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"音楽耳鳴り"とは
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"音楽耳鳴り"は、あまり知られていない耳鳴りの一種。英語では、"Musical Tinnitus"と言う。
実際に"音楽耳鳴り"を経験した(している)ことがあっても、病院で受診していないケースもあるため、症例報告が少ない。

この症状が米国で一般的に注目される契機となったのが、神経科医で著作家のオリヴァー・サックスが書いた『妻を帽子をまちがえた男』。
<追想>という章のなかで、頭のなかで音楽が聴こえてくると訴える高齢女性患者2名の症例が報告されている。
脳波検査の結果から、てんかん性の症状によるものだった。けいれんではなく、音楽が頭のなかで意志とは無関係に鳴ることから、この時は著者は”音楽てんかん”と表現していた。
この本が米国でかなりの反響を呼んで、同じ経験をしたと訴える投稿や手紙が、新聞のコラム欄やサックスの元に多数寄せられた。実際、サックスの患者でこの症状がある人も多いという。
このあたりの話は、サックスの最新刊『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』に書かれている。同書でも『音楽幻聴』という章で、”音楽耳鳴り”を訴える患者の複数の症例が具体的に紹介されている。

耳鳴りで聴こえてくる音には数種類のパターンがあり、単純な音が聴こえる耳鳴りは、"tonal tinnitus"(純音性)と"pulsatile tinnitus"(拍動性)の2つに分類されている。
また、"noisiform tinnitus"(雑音性)という分類もある。
聴こえてくるのが音楽の場合は、"musical tinnitus"(音楽性)という。

"Musical Tinnitus"(音楽耳鳴り)の医学用語としては、"Musical hallucination"(音楽幻聴)が一般的に使われている。
British Tinnitus Association(BTA)(英国耳鳴協会)のホームページでは、音楽耳鳴りは、"Musical hallucination"または"Musical Tinnitus"と言われると説明されている。

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”音楽耳鳴り”に関する概説(BTAホームページ)[要約]

"耳鳴り"で聴こえてくる音は、通常は単純な音(ブーブー、リ~ンリ~ン、シーなど)だが、その音がより複雑でエモーショナルになり、音楽が聴こえてくる場合がある。

この現象"Musical hallucinations"(音楽幻聴)は、"Musical Tinnitus"(音楽耳鳴り)とも言われる。
典型的に聴こえてくるのは、シンプルなメロディの短い断片で、日ごろ聴いている音楽や子供の頃によく聴いていた音楽のもの、特に賛美歌やキャロルであったりする。
難聴者の場合、現在の聴力レベルで聴こえてくるものとは違って、それを初めて聴いた時と同じように聴こえてくることがある。

"音楽耳鳴り"の経験者は、男性よりも女性に多く、年齢は60歳を越えていることが多い。さらに、一人暮らしの人や、難聴者もその経験者となりやすい。
ほとんどの経験者において、”音楽耳鳴り”の根本的な原因は不明であるが、時に重い病気が原因であることもある。非常に稀ではあるが、脳内血管の障害や脳腫瘍が原因となる場合があるが、てんかんやアルツハイマー病患者の場合の方が経験者は多い。

音が聴こえるタイプの耳鳴り同様に、"音楽耳鳴り"でも、数多くの薬が原因・要因だと責められて続けている。しかし、その関連性は強くはないと考えられ、たいていの"音楽耳鳴り"ケースでは、薬が原因ではない。
唯一の例外はopiumベースの薬(tramadol, morphine sulphate, oxycodone)であり、稀ではあるが音楽耳鳴りを引き起こすことがある。

"音楽耳鳴り"が聴こえると、深刻な精神的な病気の兆候ではないかと不安に思う人もいる。統合失調症で聴こえるのは、"人の声"であって、音楽が聴こえることは実際に極めてまれであり、”音楽耳鳴り”との間に関連性はないと考えられている。また、強迫性障害で音楽が聴こえることはあるが、強迫性障害が稀な症状であり、"音楽耳鳴り"経験者の大半は精神疾患を持っていない。

"音楽耳鳴り"に根本的な原因がある場合は、それを除去・治療すれば解決することはできる。
最も共通していて治療しやすい原因は難聴であり、補聴器を装着することも考えられる。多くの人の場合、症状について説明を受け、深刻な潜在的原因がないと安心すれば、"音楽耳鳴り"のわずらわしさが減少する。
依然として"音楽耳鳴り"が支障になり続けるのであれば、治療のために薬を使用することが適切かもしれない。いろいろな選択肢があるので、医師とよく話し合うようにすること。

(以上、要約終わり)


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"音楽耳鳴り"に関する文献リスト
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"音楽耳鳴り"に関して、過去の研究・症例データを収集するため、以下の方法で文献検索を行い、2種類の文献リスト(書誌事項、治療薬の事例)を作成した。

◆文献検索・リスト作成方法 (最終抽出文献数:120件)

1)使用DB:Pubmedのオンラインデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)
  検索キーワード: ((songs OR tunes OR melodies OR music) AND hallucination) OR (musical AND hallucination)
  ヒット件数:209件
  最終抽出件数:113件
  スクリーニング方法:除外した文献は、
    1)精神疾患患者が対象
    2)"Musical hallucination"の分析が目的ではない一般的読み物記事
    3)1990年より以前に発表された文献(20件)
      [1990年Berrios論文以降の文献を抽出]

2)使用DB:米国NIHの臨床試験DB’ClinicalTrials.gov’(http://clinicaltrials.gov/ct2/home)
   検索キーワード:"musical hallucination"では該当文献なし。

3)オリヴァー・サックスの著書(症例が載っている)
   『妻を帽子とまちがえた男』(晶文社、1992年1月)
     (The Man Who Mistook His Wife For A Hat: And Other Clinical Tales,1985年)
   『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』(早川書房、2010年7月)
     (Musicophilia: Tales of Music and the Brain, 2007年)

4)British Tinnitus Association(BTA)の資料で参考文献とされている論文4件
  (全てPubmedの検索結果に全て含まれている)

5)インターネット検索等
  CiNii 国立情報学研究所論文情報ナビゲータおよびメディカルオンライン、インターネット検索により
  日本語文献を検索。タイトル・抄録(入手できたもののみ)でスクリーニング。
  日本語論文3件および関連論文1件の計4件を抽出。英文文献1件も追加。

最新版の文献リスト(PDF)
「"音楽耳鳴り"に関する概要と文献(2) 文献リスト改訂(2012年5月)」からダウンロードできます。

(参考資料)文献レビュー要旨メモ.pdf[ダウンロード](更新日:2011年6月18日)


なお、この記事では、一般的にイメージされる"幻聴"と混同されるのを避けるため、"音楽耳鳴り"という言葉を使っている。
ただし、作成したリストでは、医学用語の直訳として”音楽幻聴”を使用している。


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利用上の注意
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記事本文および作成したリスト類は個人的な参考資料として作成したものであり、その内容・翻訳文・要約文・医学用語等については、厳密な正確さを期したものではありません。
この記事およびリストを参考にされる場合は、必ずご自身で論文原文・原典もお読みください。また、医学的な内容については、医療専門家にご確認ください。


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リスト更新履歴
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2011/6/12 暫定版アップロード
2011/6/13 修正版アップロード(文献追加、記載内容の追記・訂正)
2011/6/18 確定版アップロード(文献追加、記載内容の追記・訂正)、参考資料アップロード

2012/6/9  改訂版を別記事「"音楽耳鳴り"に関する概要と文献(2) 文献リスト改訂(2012年6月)」にアップロード


tag : 音楽耳鳴り オリヴァー・サックス

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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