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ポール・ジェイコブス 『Busoni ;the Legendary Recording』 ~ ブゾーニ/6つのソナチネ
ブゾーニの《ソナチネ》といっても、ピアノを初めてしばらくしてから練習する易しいソナチネとは全く違う。
ソナタほどに規模が大きくはないけれど、幻想的な和声や対位法がちりばめられているので、現代音楽のピアノ曲を練習するには良いのかも。
1910年~1920年の10年間に6曲が作曲され、最も現代音楽的な第2番から、一番人気があり録音も多い《カルメン幻想曲》として知られる第6番まで、作風が随分違っている。
第6番はわかりやすいし、面白いけれど、それ以外で聴きやすいのは第3番《子供のために》。

ジェイコブスの作品解説によると、ブゾーニの後期の作曲様式で書かれた優れた作品で、多様な作風は表現主義から新古典主義へと急速に作風が変遷している。
このCDの良いところは、ブックレットの作品解説がジェイコブス自身によるもので、文章量が多くて(とくにブゾーニの《ソナチネ》は詳しい)、内容もわかりやすいところ。

Busoni;the Legendary RecordingBusoni;the Legendary Recording
(2000/07/24)
Paul Jacobs

試聴する(allmuisc.com)


ソナチネ第1番/Sonatina No.1 Kind.257(1910年)
冒頭こそ昔のソナチネ風の調和的な可愛らしい主題が登場するけれど、かなり自由な形式で旋律や和声もドビュッシーを連想させるような幻想的なところがある。
時に、メシアンのようなオスティナートによる切迫感のある旋律も出てくるし、形式性が稀薄なので、全体的に捉えどころのない摩訶不思議な雰囲気。
ジェイコブスの解説によると、全体の形式は伝統的なソナタ形式をとらず、主題や第2主題を変形した断片的な旋律が次々とコラージュされ、長調と短調が何度も移り変わり、時々12音技法的な旋律も現れる。
2連符と3連符のクロスリズムでリズミカルに旋律を並置したり、2拍子の12音技法の部分に3拍子の第2主題を組み合わせたりといろんな手法を使っている。

ソナチネ第2番/Sonatina No.2 Kind.259(1912年)
ブゾーニのソナチネの中で、拍子記号も調性もなく、最も"現代音楽的"な作品。
いろいろな旋律がコラージュのように現れ、ブゾーニ風だとわかるような和声が稀薄。
和声自体は歪んで尖ったところはないので、曖昧模糊とした雰囲気がファンタスティック。

ブゾーニの後期作品を高く評価しているブレンデルによれば
「ブゾーニはポスト・モダンという言葉が誕生するまえのポスト・モダン的な作曲家だっとといえるところがあります。」
「《ソナティネ第2番》はもっとも重要なピアノ曲だと思いますが、ここでブゾーニは近代的への音楽的発展をとげようとしてます。つまり、調性を離れたのです。」 
(以上、『対話録「さすらい人」ブレンデル』より)

ソナチネ第3番「子供のために」/Sonatina No.3 "Ad usum infantis" Kind.268(1915年)
わかりやすい旋律がいくつか出てくるけれど、冒頭の哀感のある主題がとても綺麗。
続いてまどろむような雰囲気の曲想に変わって、調性がやや曖昧な和声が幻想的だったり、子供が遊んでいる情景をイメージさせるような古典主義的な単純な旋律と伴奏が出てきたり、ヴァイオリンソナタ第2番に出てくるような行進曲風の旋律が入っていたり。
コラージュのように、様々な情景が移り変わっていく。

ソナチネ第4番「キリスト生誕1917年の日に」/Sonatina No.4 "In Diem Nativitatis Christi MCMXVII" kind.274(1917年)
前半は、調性がやや曖昧で不可思議な雰囲気の和声で、曲想や旋律が少し第3番と似ている。こっちの方がとらえどころがない感じ。
主題部に続いて、突然曲想が全く変わり、練習曲みたいに両手のユニゾンでスケールらしき音階が速いテンポで展開。
再び主題に戻って、まるで何事もなかったのように、ふんわり浮遊感ともやもや感のある曲が続いていく。
中間部は、旋律的に歌謡性のないゆったりとした和音に変わり、靄のかかったようなぼんやり重たく厚みのある響き。
その和音が両手のユニゾンで出てきたり、両手で交互に弾かれたりしながら、再び主題に立ち戻っていく。
キリスト生誕の日がテーマなので、重苦しく厚みのある響きと和音が厳粛さをかもし出し、和声の響きは幻想的でも神秘的でもあり。
不可思議で幻想的・神秘的な旋律と和声を聴くと、現代的な宗教曲とでもいうべき曲なのかも。

ソナチネ第5番「大ヨハン・セバスティアン氏によって」/Sonatina No.5 "In Signo Joannis Sebastiani magni" Kind.280(1918年)
バッハのコラールを連想させるような対位法の旋律。
でも、かつて編曲したコーラル前奏曲とは全く違うタイプの曲。
調性感が崩れたような現代的な和声と、どこかしら密やかというか不可思議な雰囲気。
それでも、ソナチネ6曲中のなかでは、わりと聴きやすい方かもしれない。

ソナチネ第6番「ビゼーの「カルメン」に基づく室内幻想曲」/Sonatina No. 6 super Carmen, "Kammerfantasie" ("Chamber Fantasy") Kind.284(1920年)
《カルメン》に登場する有名な旋律がいくつも織り込まれ、"幻想曲"というタイトルどおり、とてもファンタスティック。
冒頭の旋律(原曲の主題の一つ?)を聴くと、軽快でとても可愛らしい旋律で始まり、続いてとってもロマンティックな旋律に変わる。
ここを聴いていると、ようやく馴染みのある世界に戻ってきたような気がする。
中盤には、とても有名な旋律「ハバネラ」と「闘牛士の歌」が出てくるし、和声も比較的調性感があって安定している。
この曲が《ソナチネ》の中で最も有名で録音も多いのもよくわかる。
現代音楽が苦手な人でも、この曲なら居心地が悪くならない程度にすんなり聴けるはず。
「ハバネラ」は、最初はゆったりしたテンポで。繰り返しになると、テンポが加速して、終盤の華やかな「闘牛士の歌」へとなだれ込んでいく。
このままフィナーレになって明るく終るのかと思っていたら、花が一気に萎んでいくように勢いを失い、悲愴感のある「前奏曲」が流れ始め、最後は幻想的で不気味な響きのなかにフェードアウト。

Paul Jacobs plays Busoni Sonatina No. 6 "Super Carmen"



tag : ブゾーニ ジェイコブス

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ジェイコブスの解説
Yoshimiさん、こんばんは。

僕が唯一良く知っている、いや良く聞いているジェイコブス。
Yoshimiさんの解説を読みながら、聞いています。
ちょうど今、解説最後のソナチネの6で、カルメンの曲が流れているところです。

解説はとても興味深く、しかし僕には分からないことだらけ。
でもいい音楽は、やっぱりいい。
毎度ながらうまく言えないけど、とにかく聞いていて相性の良い曲が多い、ジェイコブスです。

ところで、なんで9月20日投稿になっているのでしょう?
再度公開しました
アメーバの友さん、先ほどは失礼しました。
追記して、公開し直しました。

ブゾーニのこの曲集は珍しいので、聞いたことがある人は少ないでしょう。
聴けば聴くほど、摩訶不思議な曲集です。

ブゾーニ作品でポピュラーなのは、一連のバッハ編曲ものです。
特に有名なのが、ピアノ独奏版に編曲した『シャコンヌ』。

名盤というと、キーシンとミケランジェリだと個人的には思いますが、ミケランジェリはシャープで厳粛な古いEMIの録音が良く(音質悪し)、キーシンのスタジオ録音は、和音の響きが美しく、叙情性も強くてドラマティックです。キーシンが20歳くらいの録音とはいえ、完璧な技巧と完成度の高さが凄い。

スタジオ録音(前半の一部)
http://www.kissin.dk/music/chaconne.mp3

ライブ録音(後半部分のみ)
http://www.youtube.com/watch?v=GwpVDkOXqTE
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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