ポール・ジェイコブス ~ ジェフスキ/ノース・アメリカン・バラード 

2011, 11. 23 (Wed) 18:00

フレデリック・ジェフスキの代表作といえば、《"不屈の民"変奏曲》。
チリの政治闘争歌 "El pueblo unido jamas sera vencido!(団結した人民は決して敗れない!)"を元にした変奏曲で、技巧的にかなりの難曲。でも、ピアニスティックな華麗さにメロディの美しさ、さらに闘争的な力強さとが相まって、かなりドラマティックで哀愁を帯びた主題旋律は一度聴いたら忘れられないほどに印象的。

《"不屈の民"変奏曲》と並んで有名な作品が、1978年に作曲された《ノース・アメリカン・バラード》。
ポール・ジェイコブスの委嘱により作曲されたもので、現代アメリカの代表的ピアノ作品と評されている。[作品解説/Wikipedia]

ジェイコブスは、CDのブックレットに自ら作品解説を書いていることが多い。
このアルバムの作品解説によると、ジェフスキーのジャズの即興テクニックを効果的に使った作品を何曲か聴いたジェイコブスは、ジェフスキに「とっつきやすくて、いかにもアメリカ的」な作品を書いてくれないかと頼んだところ、生まれたのが《ノース・アメリカン・バラード》。
4曲ともアメリカの歌を元にしたもので、元々の歌詞が暗示している現実の厳しさを、陽気なオプティミズムが圧倒している曲だという。
スコアを調べると、かなりポリフォニックな書法が使われている部分があり、メロディ素材はほとんど全て元の旋律の断片から作り出されているので、聴けばすぐに原曲のメロディが思い出せるはずらしい。(米国人にとっては)
ジェイコブスによる作品解説は、「このアルバムに収録された作品は、ピアノという楽器を隅から隅まで知り尽くした彼ら(コープランド、ボルコム、ジェフスキ)が書いた、演奏は難しいけれども弾いていて楽しい曲なのである」という言葉で結ばれている。

ブルース、バラード&ラグ アメブルース、バラード&ラグ アメ
(1996/10/25)
ジョイコブス(ポール)

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輸入盤・国内盤とも廃盤。収録曲の大半を、レクチャーコンサートで弾いたライブ録音『ストラヴィンスキー:4手ピアノのための音楽集』がCDで出ているけれど、音はクリアでややデッドな音響。ジェイコブスの色彩感の豊かなピアノを聴くならスタジオ録音で。

1.Dreadful Memories/恐ろしい思い出 (1978)
1931年のケンタッキーの炭鉱ストライキのときに、モリー・ジャクソン女史が歌った歌が原曲。

2.Which Side Are You On?/ あなたはどっちの味方? (1978)
原曲は、同じくケンタッキーの鉱山ストライキを撮ったドキュンタリー映画で、フローレンス・リース女史が歌っていたもの。

特に演奏機会が多いのが、次の2曲。

3.Down By The Riverside/川辺を下って(1979)
原曲は、ベトナム戦争や核廃絶デモなど、事あるごとに替え歌にして歌い継がれてきた曲。
ジェイコブスの冒頭主題は草原にそよぐ風のように軽やかで素朴なタッチ。残響はそれほど多くなく、音色はすっきりとクリア。
不協和音が入ってくると、平和な日常に亀裂が生じたように混沌としていく。
調和と不協和とで響きと雰囲気が一変するので、コントラストが鮮やか。
不協和音は荒くざらついた音色でどこかしら焦燥感のようなものが漂う。
調性的に安定している主題を弾きつつ、不協和音の伴奏と対旋律を弾くところの扱い方が上手く、それぞれの旋律線がくっきりと弾き分けられ、クリアな響きと相まって、とても明晰な演奏。

Frederic Rzewski: Down By The Riverside (1979)




4.Winnsboro Cotton Mill Blues/ウィンスボロ綿工場のブルース(1979)
映画《ノーマ・レイ》のように、紡績工場の作業現場を表現した曲。
前半では、紡績機械を模した音がメロディをかき消しかねないほど。
最後にこの賑やかな音がピアノの高音部へ移行し、喜びとなって爆発する、という曲。
2台のピアノ版もあり、ジェフスキが米国現代音楽の演奏で定評のあるアーシュラ・オッペンスと録音している。

ピアノが表現するのは、紡績工場の紡織機が一斉に唸っているような音。
ジェイコブスはピアノは、低い唸りが羽音のように重なって、かなり不気味な殺伐とした不気味な雰囲気がする。
まるで紡織機の動きを耳で聴いているかのように、リアリティ充分。

Frederic Rzewski: Winnsboro Cotton Mill Blues (1979), part 1/2



後半は、ムーディなジャズのような旋律と曲想になり、それが軽快なタッチに変わって、楽しげ。
紡績工場の労働者たちが、休憩時間に食事や飲み物でほっと一息ついている様子?
最後に再びミニマル的な紡織機の音が高音で演奏されて、そのまま機械の回転が勢いを失って止まるかのように、デクレッシェンドしてフェードアウト。

Frederic Rzewski: Winnsboro Cotton Mill Blues, part 2/2



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