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ポール・ジェイコブス ~ シェーンベルク/ピアノ作品集
お世辞にも聴きやすいとはいえないシェーンベルクのピアノ作品。
それでも、何人ものピアニストの録音をずっと聴いていると、好きかどうかは別として、不思議と耳も慣れてきて、普通に聴けるようにはなる。

さすがに21世紀の代表的なピアノ作品だけあって、録音は多い。
グールド、ポリーニ、内田光子、シェーン・ベルク、ピーター・ヒル、それに、シェーンベルクと懇意だったエドゥアルト・シュトイアーマン、このジェイコブスなど、この他にも多数。

鋭いリズム感と速いテンポで軽快なのがグールド。粘りのないタッチで重たさがなく、聴きやすさと面白さではグールドが一番。
情念漂うのは内田光子。色彩感が非常に豊かで強弱のコントラストが強く饒舌。弱音部は繊細で感情が沈みこむような内省的な雰囲気がする。
ジェイコブスも感情的なものが強く表現されているけれど、一音一音の発音が明瞭で音が淀まず明解。線が太くて声部ごとの線が明解に描かれ、感情が内面に篭もることなく、外面へ噴出していく。感情豊かでありつつ明晰。
ポリーニは音に強弱がついて並んではいるけれど、叙情感が薄くのっぺりと無機的な感じがするので、どうもあまり好きにはなれない。
穏やかな叙情感と透明感があるのはヒル。弱音部分はやや沈み込むような暗さと静けさがある。これを聴いたときは、シェーンベルクはなんて叙情的な音楽だろうと思ったもの。
シュトイアーマンは叙情感をやや抑えて理知的な印象。ちょっと重たいけれど、理性と感情のバランスが一番良い気がする。彼のOp.23の録音を聴いていると、なぜかベルクのピアノソナタがデジャヴのように浮かんで来る。
個人的な好みとしては、グールド、ジェコブスが面白くて聴きやすい。Op.23はシュトイアーマンで。

ジェイコブスは、メインのレパートリーが現代音楽。
戦後、欧州へ渡って、現代音楽を中心に演奏活動をしていた。
その後、米国へ帰国してからも現代音楽のソロや室内楽演奏を中心に、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、ジェフスキ、ドビュッシーなどの現代曲や、バッハ=ブゾーニの編曲ものとオリジナル作品を録音している。
なぜかチェンバロ演奏もできる人なので、キャリアはかなりユニーク。
ベートーヴェンのライブ録音もあるけれど、これはすこぶる速いテンポでかなり特異なタッチの演奏。
彼は、1961年からニューヨークフィルハーモニーの公式ピアニストに指名され、1974年からは公式チェンバロ奏者にもなっていたので、米国ではよく知られていたらしい。

Schoenberg: Piano MusicSchoenberg: Piano Music
(2002/08/04)
Paul Jacobs

試聴する(英amazon/NONESUCHの原盤へリンク)

【収録曲】
 《3つのピアノ小品 Op.11》 (1909,1924)
 《6つのピアノ小品 Op.19》 (1911)
 《5つのピアノ曲 Op.23》 (1920-23)
 《ピアノ組曲 Op.25》 (1921-23)
 《ピアノ曲 Op.33A/B》 (1928/31)
※各曲の内容については、過去記事の「ピーター・ヒル ~ シェーンベルク/ピアノ曲集」に書いています。


ジェイコブスとグールドのどちらの演奏を聴いても、シェーンベルクが"無機的"だと感じることはないし、無調でモチーフがメロディアスでない現代音楽であっても、多彩な表情といろいろな感情の起伏があることがよくわかる。
シェーンベルクのピアノ作品は、聴き慣れてしまえば、あちこちに飛び跳ねて散乱したような音の配列が、実はこんな表情や情感を持っていたのだという発見があるし、ロマン派のロマンティズムとは違った新鮮な叙情感が意外に面白く思えてくる。

ジェイコブスの演奏で《ピアノ組曲 Op.25》
Arnold Schoenberg: Suite per pianoforte op.25 (1921)



グールドのバッハは好きではないので滅多に聴かないけれど、彼の現代もの-ベルク、ヒンデミット、プロコフィエフ、それにこのシェーンベルクは、どれも奇抜さがなくて至極まっとうな演奏なので、構えることなくすんなり聴ける。
グールドファンでは全くないので、バッハを聴くときはマイナスのバイアスが多分かかっているけれど、現代ものを聴くときはプラス・マイナスのバイアスは両方ともゼロ。
演奏自体が素晴らしく良いと思うし、自然に好きだと言えるので、グールドが弾く現代ものは誰にでもお勧め。

グールドの演奏で《ピアノ組曲 Op.25》
Arnold Schoenberg - Suite for Piano, I-II



<関連記事>
ピーター・ヒル~シェーンベルク/ピアノ曲集


tag : シェーンベルク ジェイコブス

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遅れましたが…
本年もよろしくお願いいたします。
元旦早々、インフルエンザ問題が発生しバタバタしていました。

シェーンベルクのピアノ曲は、ソロではポリーニ、コンチェルトはブレンデルしか持っていませんし、普段あまり取り出すことはないんです。ウェーベルンやベルクと比べると(特に中期以降)ハードルが高いかなと・・・
グールドのはよさそうですね。ご紹介のyoutube拝見してみますね。
こちらこそ
吉田様、新年おめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

年末は寒かったので、インフルエンザにかかる人、増えているかもしれませんね。
10年以上前にかかった時は、2日飲まず食わずで寝込みました。病院で点滴してもらいましたが、かなり効きますね。
ここ数年は予防接種せずとも風邪をひくことがなくて、なぜか元気です。

シェーンベルクは好んで聴くことはないのですが、面白い録音を見つけたら、持っているCDも聴き直してます。
聴きやすさ・面白さなら、グールドが一番良いようには思います。
コンチェルトなら、内田光子かアックスが私には聴きやすかったです。
シェーンベルクも初期の作品は、後期ロマン派的で比較的わかりやすいですね。

ベルクとウェーベルンは、ピアノ作品が少ないのであまり聴かないのですが、ベルクのピアノソナタや歌曲はとても好きです。
ソナタならグールドの録音がマイベストですが、グールドのバッハに否定的だったブレンデルも、ベルクの演奏は評価してました。

ウェーベルンのピアノ曲は、シェーンベルクよりとっつきが悪くて、何度聴いても苦手です。
例外的に「ヴァイオリンとピアノのための4つの小品」という曲はわりと好きなのですが、室内楽とか管弦楽曲の方が音色が増えるので、ソロよりは聴きやすく感じます。
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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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