『レーゼルの芸術 室内楽曲編』 ~ フランク/ヴァイオリンソナタ 

2011, 09. 07 (Wed) 18:00

『レーゼルの芸術 ~ 室内楽曲編』で、予想もかけず気に入ってしまったのが、フランクの《ヴァイオリンソナタ イ長調》[作品解説(Wikipedia)]

このフランクのヴァイオリンソナタの演奏は、一風変わっているという印象
この曲に期待されるようなロマンティックな叙情感とは違い、やや清流のような透明感のあるクールな叙情感で、楷書的なかっちりとした構成感を強く感じる。感情移入過剰気味の演奏が苦手な人には、もしかして合うかも。

レーゼルの芸術~室内楽曲編(8枚組) Peter Rösel : Chamber Musicレーゼルの芸術~室内楽曲編(8枚組) Peter Rösel : Chamber Music
(2007/01/01)
Peter Schreier

試聴ファイルなし
収録曲情報(HMVのCD情報)

この曲は旋律がとても美しく、ピアノ伴奏が充実しているのでわりと好きではあるけれど、曲自体に情緒的にベッタリしたところがあるせいか、感情移入が過剰ぎみのヴァイオリニストの演奏が多くて、あまり好きな録音が多くはない。
ヴァイオリニストで選ぶなら、スーク&パネンカ。スークの音色や叙情感はどの曲を弾いていても好きなので。パネンカのピアノも品良く端正なところがスークのヴァイオリンとよく合っている。(スークはピアニストのハーラとも再録音している)
チョン・キョンファ&ルプーやダンチョフスカ&ツィメルマンはヴァイオリンが情緒過剰すぎて好みに合わず。
試聴だけしたカントロフ&ルヴィエなら、とっても良さそうな感じ。
チェロ・ソナタ版もヴァイオリン版と同じくらい好きで、これはイッサーリスのチェロ&スティーヴン・ハフのピアノ伴奏で。

レーゼルのピアノとクリスティアン・フンケのヴァイオリンで聴くと、フンケのヴァイオリンの音がちょっと変わっていて(と私には聴こえる)、むせび泣いているような音がする。(リマスタリングのせい?)
小刻みなヴィブラートをずっとかけているような振動を感じることと、かなり暗~い雰囲気の高めの音で、音も細くて尖ってキーキー鳴るので、これは苦手なタイプの音色。
フンケの演奏自体は、起伏がそれほど大きくなく、情緒過剰なところを感じさせない。そもそも、この音色で情緒過剰気味に弾かれてしまうと、ちょっと引いてしまいそう...。

この曲のレーゼルのピアノは、いつもながら冒頭から清流のように透明感がある音色がとても美しい。
芯のしっかりしたクリアなピアノの響きが、フンケの線の細いすすり泣くようなヴァイオリンの暗さを自然に中和しているような気がする。
ピアニスティックなピアノ伴奏が目立ってしまいがちな曲ではあるけれど、録音方法の関係からか、ヴァイオリンを差し置いて前面に出てくることはなく、ヴァイオリンの背後でさらさらと流れている。
レーゼルのピアノは、楷書的にきっちり一音一音をクリアに鳴らしていき、和音の響きも充実しているので、とても安定感がある。フンケのヴァイオリンに比べると、表現にメリハリがあって、叙情表現も細かやでやや強め。
もともとかちっとした構成感とほどよい叙情感のあるピアノを弾く人なので、力強く明確なタッチに安定感があり、フンケの線の細いヴァイオリンをしっかりと支えているような印象がする。

全体的にかなりスタティック(静的)な雰囲気の演奏で、第1楽章でもり上がっていくところでも、ヴァイオリンはクール、ピアノの勢いもやや控えめ。
第2楽章のパッショネイトな曲想でもかちかちっとした楷書的なタッチで、白熱するというよりも、青白い炎がちらちらまたたいているようなところがある。
さらさらとしたべたつきのない叙情感とかっちりした構成感を感じさせるので、こういうのをドイツ的というのかもしれないけれど、ドイツ人でももっと白熱した演奏をする人はいるだろうから、理知的というかモダンでクールなというのか、冷んやりとした雰囲気が漂っている。
フンケのヴァイオリンの音色だけは好きにはなれないけれど、レーゼルのピアノの透き通った美しい音とほどよい叙情表現は清々しくて、いつもながら魅力的。ヴァイオリンとピアノとはどこか異質なところを感じなくもないけれど、不思議と独特の世界を作っている。

                                

フンケ&レーゼルの音源がYoutubeにないので、クリスチャン・フェラス&ピエール・バルビゼで。
フェラスは、カラヤンがソリストとして重用し、悲劇的な最後で知られるヴァイオリニスト。
バルビゼはフェラスの良き伴奏者だった。ピアニスト青柳いづみこさんの師でもある。(著書『ピアニストが見たピアニスト』に「バルビゼ」の章があり、フェラスについても書かれている。)

波間に漂うようにゆったりとした主題が物憂げな第1楽章。フランス人同士の演奏だからというわけでもないだろうけど、情緒過剰にならず、流麗な歌いまわしで、ふんわりした浮遊感と揺らぎがあり、凛とした気品漂う演奏。

Christian Ferras Pierre Barbizet - Cesar Franck Sonata



第1楽章と対照的に、激しい曲想の第2楽章。ピアノパートがちょっとブラームス風(?)で、とてもピアニスティック。
Cesar Franck - Violin sonata - Christian Ferras (Mov.2)



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2 Comments

マダムコミキ  

聴き入りました♪

こんにちは。
バルビゼとフェラスの演奏に聴き入ってしまいました。
ヴァイオリンも素晴らしいけれど、バルビゼのピアノにも魅せられました。
品のある演奏ですね。
レーゼルの伴奏もぜひ聴いてみたいですね~。
そして前回のタスミンリトルも美しかったです。
ベルトって知らなかったのですが、こんなシンプルで美しい曲があるとは…。

2011/09/08 (Thu) 09:09 | EDIT | REPLY |   

Yoshimi  

バルビゼとフェラス

マダムコミキ様、こんにちは。

バルビゼとフェラスの演奏、素敵ですね~。
この曲はベッタリとまとわりつくような演奏が多いようには思いますが、この2人の場合は、ふんわりとした浮遊感や揺らぎがあって、独特の雰囲気がします。
レーゼルは、フランスものを弾くには、真面目すぎて洒落たところがないのであまり向いているとは思いませんが、透明感のある硬質なピアノが好きなので、私が聴くと200%くらいプラス側のバイアスがかかってます。

《鏡の中の鏡》は、ペルトにしては数少ないピアノを使った作品ですが、これは人気がありますね。
ペルトは15年くらい前に、一時流行ってましたが、最近はそれほどでもないようです。

2011/09/08 (Thu) 09:45 | EDIT | REPLY |   

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