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『対話録「さすらい人」ブレンデル~ リストからモーツァルトへの道程』
ブレンデルのピアニズムを知るには一番良いのでは...と思ったのが、『対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程』。
ピアニストにしては筆の立つブレンデルは、『楽想のひととき』、『音楽のなかの言葉』という音楽評論集の著作があるが、本書は、音楽ジャーナリストのマルティン・マイヤーとブレンデルが対話した内容を記録したもの。
対話録にしては、ブレンデルの話は、簡潔ながらポイントが明瞭で論理的で、ブレンデルの音楽に対する考え方が詰め込まれた充実した内容。

対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程対話録「さすらい人」ブレンデル リストからモーツァルトへの道程
(2001/10/09)
マルティン マイヤー

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本書の紹介文;音楽の本のはなし 「第18回 名教師と名演奏家」

対話録の内容は、主に3つのパートに分かれている。

まず最初に出てくるのは「伝記」。
ブレンデルの生い立ち、音楽教育、ピアニストとしてのキャリアに関するもの。
今までは、通り一遍のプロフィールくらしか読んだことがなかったので、意外なことが多かった。

彼自身、自分は「天才少年」ではなかったと言い、実際、彼の演奏を聴いていると、「天才的ピアニスト」という印象を持ったことがない。
秀才タイプの人がコツコツと努力して積み上げてきたような、緻密で精巧な職人芸のように感じる。
ブレンデルの世代で、16歳以降アカデミックな音楽教育を一切うけていなかったピアニストはかなり珍しいのでは。
アカデミックな教育には全く興味がわかなかったそうで、唯一受講したのが、わずか数回のエトヴィン・フィッシャーのマスター・クラス。その他に、エドゥアルト・シュトイアーマンの夏期講習にも参加している。

ブレンデルの演奏の特徴の一つは、声部の分離が明瞭で立体感のあるポリフォニックなところ。
バッハ弾きでもないのに、どうしてこういう弾き方をするようになったのか、ずっと不思議に思っていた。
ブレンデルはアルトウール・ミッヒルに師事して作曲を勉強。17歳のデビュー時には、完全にポリフォニックな作品を書いていたという。
彼のピアノの響きの基礎がポリフォニーにあるのは、「直接ピアノの先生ではなく、作曲の勉強を通して身についたことで、のちにその傾向はますます強くなっていきました。」

ウィーンに出てきたのは1950年。ウィーンで誰かに師事したことがなかったので、ブレンデルは「完全にアウトサイダー」だったという。
「アウトサイダーという立場は嫌いではありませんでした。今でもそうです。・・・私はどこかのグループ、一派、派閥に属したことがありません。」
アカデミックな世界を好まず、弟子をとらないことで有名なブレンデルとはいえ、少数ながら弟子といえるピアニストがいる。私が知っているのは、若手の中でも評価が高いポール・ルイス、バッハの《平均律曲集第1集》の録音で注目されたティル・フェルナー。
フェルナーのバッハ録音については、「ほかのピアニストが私とは違う視点で、もっと上手く弾いてくれているのを喜んでいます。その一例が若手のティル・フェルナーです。」とブレンデルは評している。

ブレンデルは初見は苦手だが、記憶力は良い方で、暗譜も特に速いというわけではないけれど、2週間くらいすれば覚えているという。
ちなみに、昔読んだ本のなかで印象的だったのは、初見が苦手なミケランジェリ。それに、練習しないとすぐに忘れるので、レパートリーが限定されていた。
逆に、暗譜が得意なピアニストのエピソードは数多いが、特にポリーニの暗譜力は有名。たしか、ほとんどの曲は1度弾くと覚えてしまうらしく、あの難解なシェーンベルクの作品は「3回」弾いてやっと覚えたという。
アルゲリッチはルームメイトが弾いていたプロコフィエフ(か何か)をベッドの中で眠りながら聴いていたら、いつの間にか暗譜していたという。
この2人くらいの暗譜力になると、まさに超人的。

                       

2つめは「作曲家論・作品論」。
彼のレパートリーである、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、リスト、バッハ、モーツァルト、シューマン、ブラームスなど。現代の作曲家ではブゾーニ、シェーンベルク。
ハイドン、ベートーヴェン、シューベルト、リストについては、ブレンデルの著書『音楽のなかの言葉』で詳しく論じられているので、両方読むとブレンデルの作曲家に対する考えがずっと理解しやすくなる。

ブレンデルは、同じ曲を何度も録音するので、ベートーヴェンやモーツァルトなどは時期と伴奏者が異なる数種類の盤がある。
これがかなりややこしく、CDを買うときに録音年代を必ずチェックしないといけないし、同じ曲の録音をいくつも集めないといけないので、CDコレクターとしては、楽しい半面、収集するのが大変。
VOX時代の録音については、ブレンデル自ら編集していたという。ライブとスタジオ録音とは全く別物だと割り切って、スタジオ録音は編集して当然と思っているところは、アラウと一緒。

「20代の頃には、すでに、ほんのわずかな例外を除いて、生涯つきあうことができると感じた作品しか弾きませんでした。」
「重要な作品とは終始生活をともにし、間隔を置きながらも繰り返し演奏していきたいと思ってきました。再び曲を探求し、新たに自問自答することで、現在の自分の理解を再確認するのです。こうした曲は、音楽家としての自分をよりよく知り、自らの成長を意識的に確かめるための手がかりなのです。」

ブゾーニに関する評論は少なくないので、ブレンデルのブゾーニ評が面白い。
「ブゾーニはとても進歩的な一面を持った人でした。対照的なものをあえてかけ合わせたのです。美しく明瞭な様式を好む一方で、モティーフを駆使した構造を完全に解放して、音楽が子供のように自由に浮遊することを望みました。なんとも詩的な発想ですが、不思議な矛盾があります。この矛盾が彼の晩年の作品を生み出したわけですけれど。」

ロマン主義的なバッハ編曲と批判されることもあるブゾーニ編曲について、「ブゾーニのバッハが素晴らしいのは、そうした教会の残響をうまく表現しているところ」だという。
ブレンデルが特に評価しているのは、ブゾーニの後期作品。
それまでの(40歳くらいまでの)作品は"亜流"であって、例えば、彼の作品のなかでもブゾーニらしい作風を確立したと言われる《ヴァイオリンソナタ第2番》は"ブラームス風"。
この曲は、ブゾーニ作品のなかで《シャコンヌ》と並んで気に入っているので、大好きな"ブラームス風"の作風が理由なのかと思い当たった。

また、20世紀を代表する現代音楽作曲家なのに、なぜか聴衆には不人気のシェーンベルク。彼のピアノ協奏曲はブレンデルの重要なレパートリーで、録音も残っている。
ブレンデルのシェーンベルク評で面白かったのは、「シェーンベルクはいつも怒りながら曲を書いていた人です。ある時期までに書き上げられなかった作品はたいてい、未完のまま終ってしまいました。《期待》はとても感情の起伏が激しく、一音一音、ひとつの和音から次の和音にいたるまで、即興的に書かれています。」
無調時代の作品である《期待》が、「感情の起伏の起伏が激しく、即興的」とブレンデルは言う。少し不思議に思えたので、実際に聴いてみたら全くその通り。テンポがコロコロと変化し、「モノドラマ」らしく曲の表情もドラマティック。

                       

3つめは「演奏解釈」について。
彼が尊敬するのは、フィッシャー、コルトー、ケンプ。
この中で私がよく聴くのは、ケンプ。彼は一般にはスタジオ録音の方がよく聴かれている。
音の綺麗なブレンデルなら、スタジオ録音の方を好むと思っていたけれど、ブレンデルが評価しているのは、50年代のモノラル録音。
リストの《伝説》、ブラームスの《後期ピアノ作品集》は尊敬の念を持って聴いているほどの愛聴盤らしい。
個人的な印象では、ケンプのモノラル録音は、技巧的に粗いと感じるところがあって、特にフォルテの雷のような強打をすることがあり、これがかなり耳に響く。

逆に、ブレンデルが否定的な最たるピアニストはグールド。
ブレンデルの評はごもっともと思うことばかりではあるけれど、よく言われる「天才だから許される」という言葉を思い出してしまった。
ブレンデルに言わせると、グールドは「何としても聴衆を驚かせなくてはならない、たとえ作曲家の意図に反しても意外なことをしたいという演奏家」の典型。
これは、ブレンデルとは正反対のピアニズム。ブレンデルの信条は、「作曲家が書いた指示に従うというのは、安易で自動的なことではなく、そこに書かれている記号を指示を理解する必要があり、それには大いなる想像力が、個々の作品に対する集中力が求められ、全体的な関連性のなかでその指示にどのような意味があるのかをつねに自問自答しなければならない。」
ただし、グールドがモスクワのリサイタルで弾いたアルバン・ベルク《ピアノ・ソナタ》だけは、「かれは珍しく作品に忠実な弾き方をしているだけではなく、私が知る限りこの作品の最高の演奏のひとつになっています。」と賞賛している。
グールドの現代音楽の録音はどれもまっとうなものなので、彼のヒンデミットやプロコフィエフについても、ブレンデルは肯定的な評価をするのではないでしょうか。

ブレンデルを評する時によく使われるのは、"懐疑主義者"、"インテリ"、"理知的"という言葉。

懐疑主義者という評は当たっているようで、ブレンデルも、「早い時期から懐疑的で、ある種の自信と不可欠な疑心暗鬼な気持ちが、自分の中で共存している」と自己分析している。

でも、"理知的"という部分については、ライブ映像を見ていると、時々ややオーバーパフォーマンス気味で(若い時のツィメルメンほどではないけれど)、どう見ても感情というか、テンペラメントの強い人のように思えてくる。

「本当は長い年月をかけて自らの感情を正しくコントロールしていく必要があります。ノヴァーリスの言葉「芸術では、カオスは秩序の花々の間からほのかに光輝かなくてはならない」。私はカオス、つまり感情を尊重しています。でも、秩序の花々があって初めて芸術として成立するのです。」

「私は「インテリ」と呼ばれることに対して、あまりにも画一的な見方なのでいつもある種の憤りを覚えてきました。理知的な側面だけを語られるのは心外です。人々が考えているよりも私は感覚的に反応していることが多いのです。まず何よりも自分の感覚を信じている演奏家ですが、理性によるコントロール機能を利用しているだけです。私にとって感情とはアルファでありオメガでもある。つまり、全てが感情から発せられ、人を介した感情として戻ってこなくてはならないということです。もちろん、そこで理性というフィルターを使う必要があります。感情の質を観察し、評価し、時間とともに高貴で重要なものと、そうでない偽りのものを区別するフィルターです」

と、ブレンデルは明確に言っている。
本当は感情的というか、感情豊かな人なのだろうけど、それを自覚していかにコントロールするかを常に心がけているのではないかという気がする。
ミケランジェリのように自らの感情を抑制しているような(と私には思える)演奏ではなくて、理性と感情のバランスにつねに配慮しているのだと思う。
そのせいか、彼の演奏と曲の間にワンクッションはさまった感覚を覚えるところがあって、自らの感情とそれをコントロールする理性との葛藤が、演奏と曲との距離感や間合いのようなものを感じさせるのかもしれない。


ブレンデルのピアニズムを理解するのに、本書はとても役立つのは間違いない。
私にとっては、彼の演奏を聴くよりも、彼の著作や評論を読んだ方が、ピアニストとしてのブレンデルを理解しやすかった。
彼の書いたものを読んでから、彼の録音を聴くと、そういうことだったのかと思えることもいろいろ。
ブレンデルは、自分の演奏解釈を的確な言葉で論理的に説明できるだけの文才があるし、さらに、その言葉どおり演奏で表現できる技術を持っているピアニスト。
なにより、自己認識がしっかりした人で、技術と感情のコントロール力に優れたピアニストなのだろうと、この対話録を読んで改めて思ったのだった。




tag : ブレンデル 伝記・評論

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とても参考になります
Yoshimi様、こんばんは。

たいへんすばらしい記事をお書きくださり、本当にありがとうございます。
この本は、初心者の私にはほとんど理解できませんでした。友人に、こんなに難解な本を理解するにはどうしたらよいかと相談したところ、「巨匠クラスのひとが晩年に語ったものを素人が易々と理解できるはずもない。けれども、その方面に詳しいひとの捉え方とかを見れば、取り掛かりのヒントが得られるかもしれない」と言われました。
しかし、クラシックに精通している知己もなくあきらめていたのです。

以前、コメントのお返事でもごていねいに何度もアドバイスいただきましたが、今回さらにこうしてYoshimi様の詳しいご感想をまとまってうかがうことができ、本当にうれしく感謝いたします。
いまの自分にはまだまだ理解がおよばないところがありますけれど、将来のために貴重な参考とさせていただきます。

それで、もしよろしければYoshimi様のお考えをお聞かせいただけるとありがたいのですが……この対話録はどのような読者を想定していると思われますでしょうか?
なぜこのような質問をさせていただくかと申しますと、私はまだクラシックの初心者であるため、どのくらいの知識や鑑賞経験があるひとならばこの対話録を理解できるのか、ちょっと見当がつかないからです。
なにを基準にすればよいのかもわからないのですが、私はいま、鑑賞を意識して約一年、かろうじて聴けている曲が30曲くらいです。いまの段階ではこの本を理解するのは困難です。それに、実際にピアノが弾けないものにはやはり相当むずかしいのではないかと感じました。
妙な質問で申し訳なく存じますので、とくにお答えいただかなくてももちろん結構です。
理解するということ(1)
さと子さま、こんにちは。

お褒めいただいて、どうもありがとうございます。そういっていただくと、書いた私の方が嬉しいです。
でも、私がこの文章を書いているわけではなくて、ブレンデルの本から抜粋している部分が多いですから、ちょっと面映く感じます。

> 友人に、こんなに難解な本を理解するにはどうしたらよいかと相談したところ、
>「巨匠クラスのひとが晩年に語ったものを素人が易々と理解できるはずもない。

大変失礼ながら、ご友人の言葉は誤った考え方です。権威主義的な考え方ですから、忘れましょう。
ブレンデルも文中でこう言ってます。
「音楽学者で「単純にならずにできるだけ簡単な言葉で」、わけのわからない専門用語をできるだけ避けて文章がかける人が少なすぎます。」

優れた能力と文才のある人ほど、物事の本質を簡潔な言葉で伝えることができます。
ただし、そういうことが問題になるレベルの本ではありません。口語体なので読みやすいですし、ブレンデルの発言も論理的でわかりやすく、内容的にも難解ではありません。

>この対話録はどのような読者を想定していると思われますでしょうか?
ブレンデルもインタビュワーも、具体的な読者層は全然想定していないと思います。
あえて言うなら、”音楽が好きな人”、”ブレンデルに興味がある人”といったくらいでしょう。想定しなければならないほど、特殊でも難解でもありませんから。
音楽用語や作品構造分析はひじょうに少ないので、音楽を知らない人が普通に読んでも、「文章としては」理解できるものです。
あとは、音楽用語や歴史の知識、曲と演奏を聴いたことがあるかどうかが、理解度が変わると思います。

> なぜこのような質問をさせていただくかと申しますと、私はまだクラシックの初心者であるため、どのくらいの知識や鑑賞経験があるひとならばこの対話録を理解できるのか、ちょっと見当がつかないからです。
「どのくらいの知識や鑑賞経験」と言われても、誰も応えられないと思いますよ。
知識の量と種類の問題、鑑賞経験の量と質の問題、それぞれありますから、基準や目安は、具体的にどうこう言えないです。
アカデミックな教科書のような体系的な本だと、必要な知識体系がはっきりしているので、入門・初級・中級など明確に分類ですますけど。
普通の本は、難しいか易しいかは言えても、これを読みこなす人の条件を上げるのは、無理だと思います。
例えば、アドルノの音楽書は難解ですから、音楽の専門家でも理解するのは難しいでしょう。でも、誰なら理解できるかという条件など設定不可能です。
それに、たとえ目安を設定しても、それとは全く異なる読者は続出するでしょうから、現実的にも無意味です。

ブレンデルは極端な人で、アマチュアのリスナーが演奏を理解するには、
「ありとあらゆる録音を聴いてきた演奏家と同じようにするべきでしょう。説得力のある録音をいろいろ比較して探して、その理由を考えてみるのです。良い版の楽譜で作曲家が実際に書いた譜面を読んで、どこまでの解釈が可能で許されるかを把握したうえで、楽譜を見ながら聴き比べることができればさらによいでしょう。この基本的なことを知っているのと知らないのとでは、演奏の評価が変わってきます。」と言ってます。
でも、全部しなくて良いですよ!でないと、彼のCDを聴く人が激減して、彼が困るでしょうね~。

大事なのは彼が言っているように、「説得力のある録音をいろいろ比較して探して、その理由を考えてみるのです。」
要するに、”優れた演奏の異聴盤をたくさん聴いて、違いがどこにあるのかよく考えなさい”と彼は言っているのです。全くその通りだと思います。
「その理由を考える」ときに、楽譜をチェックして解釈の違いを把握すること、タッチ・アーティキュレーション・強弱・和声の響きなど、それぞれのポイントにおける演奏の違いを、言葉で明確に説明すること。これができれば、理解が深まっているのだと思います。
理解するということ(2)
さと子さま、続きです。

> なにを基準にすればよいのかもわからないのですが、私はいま、鑑賞を意識して約一年、かろうじて聴けている曲が30曲くらいです。いまの段階ではこの本を理解するのは困難です。

私がよくわからないのは、「理解」の具体的な内容です。
どういう状態であれば、「理解」したと納得されるのかわからないので、お答えしようがない部分があります。

言及されている作曲家や曲を”知らない”ので、具体的に何を言っているのか経験的に理解できない、難しい、と思ってしまうのでしょうか?
それなら、その作曲家の曲を聴けば理解できるようになります。あわせて、簡単な伝記や作品解説をしっかり読むことです。

「理解する」というのは大事ですが、知っていることを確認するのではなく、知らないことを知ることが読書の最大の目的だと思います。
知らないことが出てきたら、それに関して調べるなり、実際に曲を聴けば良いことです。
100曲の曲が紹介されていて、それについて書かれている内容を理解したいなら、100曲全部聴きましょう。さらに異聴盤も数曲聴けば、より理解が深まります。

1年に聴いている曲が30曲というのは、正直申し上げて、少ないと思います。
1つの曲に時間をかけて何十回も聴くか、多くの曲を知るために1~2回くらいしか聴かないか、それは個々人のスタイルです。
ブレンデルの本に出ている曲と演奏を聴くなら、数が多いので、ときどきは、後者のスタイルが必要でしょう。
それが無理なら、興味のある作曲家に絞って、順番に聴いていきましょう。

私はもう25年くらい音楽を聴いていますし、ピアノも子供の頃から10年間くらい習っていました。
それだけ時間をかけていれば、この本に出てくる曲や作曲家はほとんど知ってますから、理解できただけでしょう。

>それに、実際にピアノが弾けないものにはやはり相当むずかしいのではないかと感じました。
そんなことは絶対にないですよ!ピアノが弾けなければ理解できない内容は、とても少ないです。
ピアノを弾けるに越したことはありませんけど、弾けるといってもレベルもいろいろありますし、この本を読む(理解する)のに、ピアノの演奏経験は全く必要ありません。

あまり「理解」することにこだわり過ぎている様な気がします。
知らない作曲家や曲が多いなら、経験的にわからないのが当然です。
興味をもった作曲家や曲、ピアニストから、順番に聴いていけば良いのではないでしょうか。
深くお礼申し上げます
Yoshimi様、こんばんは。

これほどごていねいなお返事を本当にありがとうございます。以前に何度もアドバイスをいただいておりますし、今回も私の気持ちをたいへんよくご理解くださったうえでのご助言をいただき、心より感謝申し上げます。

>優れた能力と文才のある人ほど、物事の本質を簡潔な言葉で伝えることができます。ただし、そういうことが問題になるレベルの本ではありません。口語体なので読みやすいですし、ブレンデルの発言も論理的でわかりやすく、内容的にも難解ではありません。
>音楽用語や作品構造分析はひじょうに少ないので、音楽を知らない人が普通に読んでも、「文章としては」理解できるものです。あとは、音楽用語や歴史の知識、曲と演奏を聴いたことがあるかどうかが、理解度が変わると思います。
>この本を読む(理解する)のに、ピアノの演奏経験は全く必要ありません。

この対話録がどういう本であるかは、これらのご説明でたいへんよくわかりました。ちょうど私が知りたかったことを十分にわかりやすくお書きいただきありがとうございました。

>要するに、”優れた演奏の異聴盤をたくさん聴いて、違いがどこにあるのかよく考えなさい”と彼は言っているのです。全くその通りだと思います。「その理由を考える」ときに、楽譜をチェックして解釈の違いを把握すること、タッチ・アーティキュレーション・強弱・和声の響きなど、それぞれのポイントにおける演奏の違いを、言葉で明確に説明すること。これができれば、理解が深まっているのだと思います
>100曲の曲が紹介されていて、それについて書かれている内容を理解したいなら、100曲全部聴きましょう。さらに異聴盤も数曲聴けば、より理解が深まります。

実際にどうすればよいか、非常によくわかりました。懇切丁寧なご説明をありがとうございます。

>1年に聴いている曲が30曲というのは、正直申し上げて、少ないと思います。

このご判断をおうかがいできてとてもうれしいですね。自分では多いのか少ないのかまったくわかりませんでした。

>ブレンデルの本に出ている曲と演奏を聴くなら、数が多いので、ときどきは、後者のスタイルが必要でしょう。それが無理なら、興味のある作曲家に絞って、順番に聴いていきましょう。

具体的なアドバイスを本当にありがとうございます。Yoshimi様のご提案をもとに自分に合うスタイルを考えていこうと思います。

私へのアドバイスのために、何度も長いお時間を割いてくださり本当にお礼申し上げます。
Yoshimi様の数々のご助言のおかげで、私もほんの少しずつ前へ進んでいるような感じがいたします。
いまちょうど、ディアベリ変奏曲を楽しんでいます。以前は自分には聴き馴染むことは無理だと思い込んでいましたが、Yoshimi様のアドバイスに従って楽譜を眺めながら(音として理解することはできないのですが)聴いているうちに、私なりにこの曲を味わい楽しむことができるようになりました。
これもYoshimi様のおかげです! 本当にうれしく感謝いたします。
これからもYoshimi様のアドバイスを大切に参考とさせていただきながら、鑑賞と読書の幅を広げていこうと思います。
登山に似ているのかも
さと子さま、こんばんは。

口頭で申し上げれば早いのですが、文章となるといろいろ説明する必要があるので、長くなってしまいました。

お返事を書いていて思ったのは、”ブレンデルって良いこと言うなあ!” ということです。
彼の言葉が頭のなかにちゃんと残っていたので、かなり引用しましたが、いずれも尤もだと思う文章が多くて、印象が強かったのだと思います。

この本の文章をかなり大量にメモしているので、こうやって引用するのが楽でした。ワープロって、本当に便利ですね。
学生時代は、好きな本の文章を何時間もかけて、手書きで転記したものです。

>いまちょうど、ディアベリ変奏曲を楽しんでいます。以前は自分には聴き馴
>染むことは無理だと思い込んでいましたが、Yoshimi様のアドバイスに従っ
>て楽譜を眺めながら(音として理解することはできないのですが)聴いてい
>るうちに、私なりにこの曲を味わい楽しむことができるようになりました。

それは良かったですね!お役に立ててなによりです。
どの録音をお聴きでしょうか?
ブレンデルなら、何回も録音していますね。私は”20世紀の偉大なピアニストシリーズ”のライブ録音で聴いています。晩年のも少し聴きましたが、良いものだと思います。
この曲は、個性的な録音が多いので、CDは10枚以上持っています。
聴き比べると、ピアニストの解釈の違いが大きくて、面白いものです。

さと子さまは、向学心が強くて努力家の方ですので、地道に聴いたり、読んだりしていけば、理解がどんどん深まると思います。
膨大に気くべき曲があるので、最初の方は大変ですね。
CDにすると、ピアノ作品に関して数百枚聴けば有名な曲はほとんど知っているでしょうし、それくらいの量を聴いた頃から、自分なりの好みとか聴き方のスタイルなどがはっきり定まってきて、自信がもてるのではないかと思います。(人によって違うとは思いますけど)


登山と一緒で、なかなか頂上は見えないですし、クラシックの世界の場合は頂上に達することはありえません。でも、少しずつでも、頂上に近づいているような感覚を持てるようになれば良いですね。
そこそこスピードを意識したいと思います
Yoshimi様、こんばんは。

何度もごていねいなお返事をいただき、本当にうれしく拝読いたしました。

>お返事を書いていて思ったのは、”ブレンデルって良いこと言うなあ!”ということです。

読書もご鑑賞もすでに膨大なご経験がおありのYoshimi様が、そのように思われるのですね。私は音楽に関する本はこの対話録がはじめの一冊ですし、他のピアニストが書いた本も知りません。
Yoshimi様のおかげで、この本の価値がとてもよくわかりました。

>学生時代は、好きな本の文章を何時間もかけて、手書きで転記したものです。

手書きなさっていたのですね! そのようなご努力がいま活かされていらっしゃるのでしょうね。私もずいぶん遅まきながら見習いたいと思います。といっても、キーボードはとても楽ですね。

私が聴いているディアベリ変奏曲は2001年のライブ録音です。『音楽のなかの言葉』にあるこの変奏曲に関する評論や、ブレンデルのレクチャーDVDも参照しながら聴いています。各変奏曲の性格がだんだん自分にも少しわかるようになってきてとてもおもいろいです。
Yoshimi様はさすが、10枚以上も聴いていらっしゃるんですね。私もそのうちがんばって異聴盤を聴いてみようと思います。

>さと子さまは、向学心が強くて努力家なので、

これにはびっくりしました。ダラダラ過ごして結局何もせずにすぐ寝てしまう毎日です。Yoshimi様からのせっかくのアドバイスもなかなか実行できず、ああ、申し訳ないなあと頭が痛くなる思いをしていますよ。

>CDにすると、数百枚聴いた頃から、自分なりの好みとか聴き方のスタイルなどがはっきり定まってきて、それなりに自信がもてるのではないかと思います。

こういった目安はたいへんありがたいですね。数十枚くらいで何とかなるかと暢気にかまえていましたが見当はずれでした。
Yoshimi様が登山にたとえてくださったので、ちょっと思い出しましたけれど、私は山登りが趣味だったのですが、そういえば数十山と数百山ではやはり認識できている量も質もたいへん大きく異なりました。
それなりの経験はどんな趣味にも必要なのですね。

CDを数百枚聴き、並行して作曲家の伝記なども読むことを考えれば、そこそこ効率よくスピードを上げないといけないなあと思わされました。
僭越ですが、Yoshimi様のようなすぐれた先達のかたとお話させていただくと、自分の問題点が明らかになってきます。具体的な方法もわかってきましたし、これからはスピードアップも心掛けて取り組んで行こうと思います。
のろまな私に活を入れていただくようなアドバイスに本当に感謝いたします。
質と量
さと子様、こんにちは。

>私が聴いているディアベリ変奏曲は2001年のライブ録音です。『音楽のな
>かの言葉』にあるこの変奏曲に関する評論や、ブレンデルのレクチャー
>DVDも参照しながら聴いています。各変奏曲の性格がだんだん自分にも
>少しわかるようになってきてとてもおもいろいです。
レクチャーDVDまで見られているのですね。
本を読むよりもいろいろわかることが多いと思います。
ブレンデルのライブ録音は面白いですね。スタジオ録音よりも自由度が高い演奏のように思います。

>私もそのうちがんばって異聴盤を聴いてみようと思います。
ちなみに、異聴盤なら、定番のR.ゼルキン、話題のアンデルジェフスキ、個性的なソコロフやムストネン、若手のルイスなど、たくさん出ています。

>数十枚くらいで何とかなるかと暢気にかまえていましたが見当はずれでした。
どれだけの作曲家とジャンルをカバーするかによりますね。
1人の作曲家でそれほど多作でなければ、それだけでも、自分なりの聴き方ができるようになるかもしれません。


>私は山登りが趣味だったのですが、そういえば数十山と数百山ではやはり
>認識できている量も質もたいへん大きく異なりました。
>それなりの経験はどんな趣味にも必要なのですね。
数百山というのは、凄いですね!私は登山というか、運動するのが億劫な無精者ですから、考えられない世界です。
趣味に限らず何でもそうですが、質も大事ですが、量をある程度こなさないと、質を評価できるだけの知識や経験がストックできないですね。

>CDを数百枚聴き、並行して作曲家の伝記なども読むことを考えれば、そこ
>そこ効率よくスピードを上げないといけないなあと思わされました。
作品解説もしっかり読まれると良いと思います。
音楽用語がたくさん載っていますし、作品や演奏に対する批評を読むと、どういう表現を使っているのかわかるので、参考になると思います。

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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