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ケンプ 『バッハ作品集・編曲集』
ヴィルヘルム・ケンプの録音集『Steinway Legends』を試聴していたら、冒頭3曲はケンプ自身の編曲によるバッハのコラール前奏曲が入っている。
この3曲は、ケンプのDG盤『バッハ作品・編曲集』にも収録されている。
ケンプのバッハ編曲集には、このステレオ録音以外に、1955年のモノラル録音があるらしく、Youtubeで数曲登録されている。
音質はステレオ録音の方がはるかに良く、ケンプの柔らかく多彩な音色がとても綺麗に響いている。

1978年のステレオ録音は、ケンプが80歳を超えた頃の演奏。
技巧的な衰えがあるとかよく言われるけれど、私は全然気にならない。
たしかに、イギリス組曲第3番を異聴盤と聴き比べると、タッチの切れが悪かったり、テンポがやや遅めで穏やかなトーンになっているのは感じるけれど、聴き比べしない限りは、そういうことは気にせずに聴ける。

バッハとその編曲作品を弾くピアニストは数多くいれど、ケンプが編曲したバッハ作品を聴くなら、ケンプ自身の演奏が一番。独特の深い味わいがある。
柔らかな響きと多彩の音色、立体感のあるポリフォニックなところに加えて、独特の親密感のある(でも情緒的ではない)しっとりとした叙情感と気品のある演奏は、ケンプのピアノでしか聴けない。
ケンプのバッハは、編曲ものに限らず、滑らかなレガートでピアノの響きがとても美しく、ときにオルガンのような重なる響きがシンフォニックでもあり、何度聴いても飽きることがない。

ケンプが演奏する姿を映像で見ていると、背筋を伸ばしてポーカーフェイスでとても毅然とした雰囲気がする。
演奏にもその雰囲気が乗り移ったかのように、ケンプの演奏には、バッハに限らず、リストやベートーヴェンでも、独特の気品がある。
『対話録「さすらい人」ブレンデル』で、「弾いている時に、ほとんど身体を動かさず、表情も全く変わらないピアニストがいます。コルトーもそうだったし、ケンプもいつも毅然として座っていました。」とブレンデルが回想していた。

English Suite No. 3 / Capriccio BWV 992 / Transkriptionen fur KlavierEnglish Suite No. 3 / Capriccio BWV 992 / Transkriptionen fur Klavier
(1993/09/01)
Wilhelm Kempff

試聴する(英amazon)

このアルバム収録されている編曲作品は、いずれも有名なものばかり。コラール前奏曲以外の編曲もいろいろ入っている。
コラール前奏曲は、ケンプとブゾーニの編曲で有名。ブゾーニ編曲版の方が和音に厚みがあり、やや華やかに聴こえるせいか、ケンプ版よりも弾く人が多いかも。
コラール前奏曲以外の編曲作品は、《フルート・ソナタ第2番》の「シシリアーノ」、《チェンバロ協奏曲第5番》の「ラルゴ」、《カンタータ第29番》の「シンフォニア」。曲名は知らなくても、旋律はよく知られている曲ばかり。


《フルート・ソナタ第2番》の"シシリアーノ"
モノラル録音とステレオ録音の音源があり、これはステレオ録音の方。
ケンプらしい気品のある美しい音色に抑えた哀感がさらさらとつぶやくように流れていく。

Bach-Kempff - Siciliano from Flute Sonata No 2 BWV 1031




《チェンバロ協奏曲第5番》より"ラルゴ"
昔から知っていた旋律だったのに、曲名を知ったのはこのアルバムを聴いて。

J. S. Bach / Wilhelm Kempff : BWV 1056 - II. Largo




《カンタータ第29番》より"シンフォニア"
タイトルどおり、ピアノ1台でもオーケストラのような重層感と明るい輝きで華やか。

Wilhelm Kempff plays J.S. Bach's Prelude from Cantata, BWV 29



<アルバム収録曲>
J・S・バッハ作品
 - イギリス組曲第3番 BWV.808
 - カプリッチョ 『最愛の兄の旅立ちに寄せて』 BWV.992

J・S・バッハ作品のピアノ独奏編曲版(ケンプ編曲)
 - コラール 『来たれ、異教徒の救い主よ』 BWV.659
 - コラール 『今ぞ、そのとき』BWV.307/734
 - フルート・ソナタ第2番BWV.1031~シシリアーノ
 - コラール 『わが心の切なる願い』BWV.727
 - コラール 『主よ、人の望みの喜びよ』
 - コラール 『甘き喜びのうちに』BWV.751
 - コラール 『神よ、われら汝に感謝す』
 - コラール 『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』
 - チェンバロ協奏曲第5番~ラルゴ
 - コラール 『主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる』BWV.639

バッハ以外の収録曲
 - ヘンデル:チェンバロ組曲第9番~メヌエット(ピアノ版:ケンプ編曲)
 - グルック:『オルフェオとエウリディーチェ』より(同) オルフェオの嘆き、精霊の踊り

<参考記事>
"ヴィルヘルム・ケンプ、85歳、最後のコンサートと彼の言葉"(作曲家・中村洋子さんのブログ<音楽の大福帳>)


tag : ケンプ バッハ

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やはりピアノソロがいい
Yoshimiさん、こんばんは。

Bach: English Suite No.3; Capriccio BWV 922 / Transcriptions for Piano
穏やかに始まる曲があったかと思えば、急テンポな曲もあり、力強い曲もありとバリエーションに富んでいて飽きが来ない感じがします。
18番目の曲は美しく、最後まで聞きたくて購入しそうになったけど、思いとどまりました。24番目の曲を聞いた時には、なぜかどこかの住宅販売の洒落たコマーシャルをつい思い出して、そうかあの曲は、バッハだったのかと。あと、27番目の曲は、高音がとても綺麗な曲で素敵な曲でした。
最後にWilhelm Kempff plays J.S. Bach's Prelude from Cantata, BWV 29 は、僕が先日オルガン奏者の方をジェイコブスと間違えた時に演奏していた時の曲ですね。同じ曲でも演奏者の違いや楽器の違いでまた違った感じを受けました。

ケンプのバッハは格調高いです
アメーバの友さん、こんばんは。

トラックNo.1~9は《イギリス組曲》、No.10~15は、《カプリッチョ”最愛の兄の旅立ちに寄せて”》です。
それぞれ組曲形式になっていますので、曲ごとに曲想や様式が異なるため、とても多彩な作品になっています。

No.18は、《シシリアーノ》ですね。これはYoutubeに、異なる楽器バージョンの音源があります。

No.24は、ジェイコブスのCDにも入ってますよ。そっちはブゾーニ編曲版ですけど、原曲が同じだとすぐにわかるはずです。明るく清々しいので、とても好きな曲です。

NO.27は、バッハではなく、グルックのオペラ《オルフェウスと エウリディーチェ》のなかの"精霊の踊り"の編曲です。これもYoutubeに別人の音源があります。

”Wilhelm Kempff plays J.S. Bach's Prelude from Cantata, BWV 29”については、当然のことならが、ピアノとオルガンという楽器の違いで全然違って聴こえますね。

ケンプとジェイコブスでは、楽器はモダンピアノですので、楽器による違いも多少あるでしょうが、それよりも、奏法とピアニズム、さらに、編曲版の違いによる部分が大きいです。

ヴィルヘルム・ケンプは大変高名なピアニストで、全盛期には、ベートーヴェン演奏で、バックハウスと人気を二分していたそうです。
ケンプが亡くなって20年ほどが経ちますが、いまでも多くのファンをもち、録音も多岐にわたっているので名盤も数多いです。
特にケンプの絹のような繊細なレガート、優れたタッチコントロールと巧みなペダリングによる音色・響きの美しく多彩なところが、素晴らしいです。
さらに、リストでもそうでしたが、彼の弾くバッハはとても格調高く、気品があります。こういうバッハを弾ける人は、もう(ほとんど)いなくなりました。
ケンプのバッハは最高ですね
こんにちは。
ケンプのバッハを聴きながら清々しい気持ちになっています。
ケンプの演奏は本当に大好きで、ベートーヴェンは当然ですが、バッハも改めて言うに及ばずで、本当に素晴らしい♪
こんな風にバッハをピアノで表現できる人は他にいないと、私も言いたくなってしまいます(笑)
格調高いとか、気品があるとか、言葉で表現できない深さと透明感を感じますね。
CDで今も聴けるのが幸せです。
ケンプのバッハは、奥が深いですね
マダムコミキさま、こんにちは。

ケンプのバッハがどういうものか表現するのが難しくて、”格調高い”とか”気品がある”という言葉を使うしかないのですが、独特の奥深さがあって、他のピアニストでは聴けない音楽ですね。
私は他のピアニストが弾くバッハやベートーヴェンもケンプと同様に好きなので、曲によって一番好きな演奏はいろいろ違っています。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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