イッサーリス&ハフ ~ フランク/チェロ・ソナタ(ヴァイオリンソナタ編曲版) 

2011, 11. 12 (Sat) 12:00

スティーヴン・イッサーリスとスティーブン・ハフは、チェロ&ピアノの曲集~フランク、ラフマニノフ、ブラームスに加えてチェロの小品集のアルバム~をいくつか録音している。
初めはちょっと珍しい取り合わせのような気がしたけれど、同じ英国人同士で音楽性が合うのか、メンタリティ的に相性が良いのか、どのアルバムもチェロとピアノのバランスが良く、特にハフのピアノのソロの時以上に煌くような美しさがあって素敵。
ハフが好きな人でも、彼の室内楽曲の録音を聴いていない人が多いようなので、ピアノパートが技巧的に難度の高いフランクとブラームスの録音はかなりお勧め。

ラフマニノフ&フランクのチェロソナタアルバムは、フランクのチェロソナタを聴くために買ったCD。
チェロソナタ以外に小品が4曲カップリングされていて、特にフランクの声楽曲2曲が思いもかけず良い曲だった。

Cello Sonatas / Oriental Dance / PreludeCello Sonatas / Oriental Dance / Prelude
(2003/07/08)
Steven Isserlis,Stephen Hough 他

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ラフマニノフで何度も聴いた曲といえば、《ピアノ協奏曲第2番》、《パガニーニの主題による狂詩曲》、小品の《ヴォカリーズ》、《前奏曲<鐘>》くらい。
どうもラフマニノフとは相性がかなり悪いらしく、試聴した時に予想したとおり、このチェロソナタもあまり面白いと思えなかった。
それでも、第1楽章と第4楽章は、ピアノパートがとても華やかで、曲はともかく、ハフのピアノだけ聴いているだけでも楽しい。
それに、第2楽章のスケルツォの冒頭部分は、嵐が迫り来る中を馬が疾走するような雰囲気。ここは、大好きな《パガニーニ狂詩曲》に出てくるような音の動きと旋律に似ているので、わりと好きな部分。
それ以外の叙情的な部分はあまり心情的に迫ってくるものがなくて、そもそもチャイコフスキーなどのロシア的叙情漂う作品は全く合わないので、ラフマニノフも同じらしい。
カップリングされている《前奏曲ヘ長調Op.2-1》の穏やかで美しい旋律は、どこかで聴いたことがあると思ったら、この曲はピアノ独奏曲の編曲版だった。


フランクの《チェロソナタ》は、《ヴァイオリンソナタイ長調》のチェロ版で、よくチェリストが弾いている。
イッサーリスのチェロの響きが好きなのと、なによりハフのピアノ伴奏が試聴しただけでも素晴らしかったのが、このCDを聴きたくなった理由。
ピアノパートは、伴奏の域を超えて、ピアノパートだけ聴いていても立派な曲に聴こえる。
イッサーリスのガット弦を張ったチェロの響きは、穏やかで奥深くてじわ~と染みてくるような心地良さがある。チェリストの中では、ウィスペルウェイのチェロと並んで好きな音。
チェロはあまり聴かないし、技巧的なことはヴァイオリン同様わからないので、音色と表現が好みに合うかどうかは直観的に決まる。
イッサーリスのチェロの音が奥ゆかしいせいか、あまり感情的にウェットな演奏にならずに、さらさらと淀みなく流れているような感覚がするので、とても聴きやすい。
マイスキーやヨーヨー・マのような、深く豊饒な音と感情移入が強い弾き方は、長時間聴いていると疲れてくるので。

ハフのピアノはいつもながら、技巧的に難しいピアノパートを軽々としたタッチで弾きこなして、鮮やか。
ピアノソロの時と同じように、ピアノの音は色彩感豊か。線のやや細いシャープなタッチで、宝石がきらきら煌くような輝きと澄み切った音色がとても美しい。
叙情表現も、粘らずにすっきりとしているけれど、細部まで丁寧に弾きこんでいるので、繊細で叙情豊か。
ピアニッシモでは、線がちょっと細いので華奢な感じがするけれど、弱音でもピアノはしっかりと鳴っているので、弱々しくはない。
もともとピアノパートがピアニスティックに書かれているので、ヴァイオリンより目立ってしまいがちな曲。
音域が低いチェロだと、高音域のピアノの方がよく聴こえてしまうので、ピアノが音量を上手くコントロールしないと、チェロの音がかき消されてしまう。
ハフのピアノは、ソロの部分ではかなり強くシャープなタッチで弾いているけれど、チェロが主旋律を弾いてピアノが伴奏に回るところは、音量を抑えている。
ピアノが前面に出てきてチェロをかき消すことなく、ピアノとチェロがうまく噛み合ってバランスがとても良い。
この曲は、ヴァイオリンの音色で聴くよりも、深みのある落ち着いたチェロの音色で聴く方がずっと心地良い感じがする。
                            
                           


フランクのカップリング曲は声楽曲2曲で、《空気の精(Le Sylphe)》《天使の糧(Panis angelicus)》
ソプラノは、レベッカ・エヴァンス。2曲ともチェロとピアノが伴奏に回るという珍しい(と思う)フォーマット。
ソプラノが歌う清らかな旋律の美しさがストレートに伝わってくる。

《空気の精(Le Sylphe)》では、ピアノはずっと伴奏に回り、チェロが時々ソプラノと一緒に旋律をユニゾンで弾いてデュエットしている。ソプラノが休んでいるときは、チェロが主旋律を弾いて、ピアノ伴奏とデュエット。

César Franck - Le Sylphe
(Gabriella Létay Kiss, soprano;Adrienne Hauser, piano;
Tibor Boganyi, violoncelle)




《天使の糧(Panis angelicus)》はとても有名な歌。
クリスマスの時によく合唱やテノール/ソプラノ歌手が歌っている。
原曲は、フランクの《荘厳ミサ曲イ長調》の「天使の糧(パン)」。ミサ曲では、サンクトゥスとアニュスデイの間に歌われる聖体祭賛歌。

ジェシー・ノーマンが歌う《天使の糧》
Jessye Norman sings Panis Angelicus




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2 Comments

ゆり  

声楽曲

こんばんは。ムジカさん!

空気の精(Le Sylphe)と天使の糧(Panis angelicus)の2曲聴かせていただきました。
ソプラノの伸びやかな美しい声が落ち着いたチェロとピアノの伴奏で引き立てられて、高揚した聖らかな気持ちになりました。
先日の”レクイエム”の演奏を聴いて以来、人間の声の持つ共感性というか直接性というか、よくわかりませんが魅力を感じています。

いつもクラッシック音楽を楽しく解説していただき勉強になります。
おかげでクラッシックが好きになって来たようです。

2011/11/14 (Mon) 00:18 | EDIT | REPLY |   

Yoshimi(musica)  

声楽曲も良いですね!

ゆりさん、こんばんは。

作曲家のフランクは、教会のオルガニストだったので、ピアノ作品はオルガン的な響きがしますし、声楽曲も敬虔な雰囲気があって、品が良いですね。

15年くらい前に合唱・声楽曲にかなり凝った時期があり、CDを200枚くらい集めました。
女声かカウンターテナーが好きなので、持っているCDも女声歌手のものが多いです。
人間の声は立派な楽器ですね。特に美しい声というのは、まるで天からの贈り物のようです。
モーツァルトの「レクイエム」などの宗教曲というのは、曲自体のもつ宗教性と人間の声とが一体化したところに魅力があるように思います。
歌曲となると、恋愛や人生について歌った曲が多いので、また違った印象になるでしょう。

ベートーヴェンは声楽曲はあまり書いていませんが、大曲ばかり残してます。
荘厳ミサ(ミサ・ソレムニス)、ハ長調ミサ、それに第9の「歓喜の歌」は有名ですが、歌曲は少しだけです。
私が一番好きな声楽曲は、ベートーヴェンの「合唱幻想曲」です。ピアノとオケと合唱、ソリストという大編成で20分くらいの曲です。
完成度が低いだの、実験的だのと評判がやや悪い曲ですが、ピアノ独奏の華やかさと最後の合唱部分の高揚感が気に入っています。

これはグリモーがピアノを弾いている「合唱幻想曲」の後半です。
前半もYoutubeにあります。
パソコンが無事戻ってきたときにでも、ゆっくり聴いて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=8C58rU2Ed64

「マタイ受難曲」の有名なアリアも美しい曲です。
これはカウンターテナーのマイケル・チャンスのライブ録音です。
http://www.youtube.com/watch?v=dHbOOe8n2gY

クラシックは奥が深いので、いろいろな発見がありますから、飽きることがないですね!

2011/11/14 (Mon) 01:47 | EDIT | REPLY |   

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