ソコロフのバッハ (1) 

2011, 09. 29 (Thu) 18:00

グレゴリー・ソコロフは、現存するピアニストでは最高という評価もあるほどのピアニスト。
録音しないことで有名で、ライブ録音も最近はほとんど許諾していない。
そのせいか、海賊盤のCD-Rがたくさん出回っている。
正規音源はnaiveレーベルから出ているBOXセットが2種類。どれも素晴らしい演奏ばかり。
それに、若い頃録音したショパンのピアノ協奏曲第1番のCDが国内盤で今でも入手可能。可憐な白百合のような清楚で美しいショパン。これが私が最も好きなこの曲の演奏の一つ。

ソコロフのバッハというと、《フーガの技法》と《パルティータ第2番》が有名。
《フーガの技法》は今の私にはまだ理解できないものがあるので、もっぱら聴くのは《パルティータ第2番》。
ひきつけるような圧力と求心力のある音を持っているソコロフの演奏は、集中力・凝縮力がとても高い。
バッハ弾きが多数録音している《パルティータ第2番》とはいえ、このソコロフの演奏は並のバッハ弾きよりもはるかに魅きつけられる。

ソコロフのバッハ演奏は、Youtubeでかなり聴くことができる。
以下、《ゴルトベルク変奏曲》全曲、バッハの平均律曲集やバッハ=ブゾーニのコラール前奏曲集から数曲。

バッハ《平均律クラヴィーア曲集第1巻》プレリュードとフーガ ハ長調 BWV846
ノンレガートとレガートな響きが重なりあうプレリュードが独特で、とても魅力的。
左手第1拍目の音に強いアクセントがつき、持続音のように残響が長くなっている。まるで、浮かび上がってくるような響きがとても面白くて、さらに、この音がつながっていくと、一つの副旋律になっている。
この響きの上を、スタッカート的なノンレガートの旋律が流れていて、これがとっても可愛らしい。
右手と左手の旋律のコントラストの面白さは、最初聴いたときはかなりも違和感。でも、レガートなプレリュードが元々好きではなかったので、聴きなれるとソコロフの演奏はとっても新鮮に思えてきた。
今では数ある演奏のなかでも一番好きなプレリュード。
続くフーガも、飛び跳ねるようなリズムとノンレガートを多用したアーティキュレーションがユニークで、一風変わったフーガ。

Sokolov plays Bach's Prelude & Fugue BWV 846




バッハ《ゴルトベルク変奏曲》
第5変奏。このすこぶる速いテンポでも、声部の分離が明瞭。それぞれ独自の響きで動いていく3つの旋律が、並行して流れながら、立体感的に絡んでいくような感覚が面白い。

J. S. Bach - Goldberg Variations BWV 988 - 6. Variatio 5 (6/32)



バッハ=ブゾーニ編曲/コラール前奏曲 《Nun freut euch, liebe Christen gmein》 BWV 734
これも随分速いテンポで、ちょっとコミカルな感じの曲。ソコロフらしく声部の弾き分けが上手くて、各声部の動きがそれぞれ明瞭。
特にスタッカート気味の細かいパッセージの音が軽やかで粒も綺麗に揃っているところが気持ちよい。

Sokolov plays Bach Nun freut euch



バッハ=ブゾーニ編曲/コラール前奏曲《Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ》 BWV639
バッハ=ブゾーニ編曲集のなかでも、とりわけ静寂で厳粛な曲の一つ。
ゆったりとしたテンポのインテンポで、わりと淡々と弾いている。
右手の旋律が宙空へ抜けるようにクリアに響いているのが耳に残る。

Grigory Sokolov plays Bach-Busoni Ich ruf zu dir


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2 Comments

アメーバの友  

No title

Yoshimiさん、こんばんは。

「Sokolov plays Bach's Prelude & Fugue BWV 846」は、とても面白い弾き方ですね。これと言って特に興味を持って聞いたことがなかった曲ですが、思わず最後まで聞き入ってしまいました。

「Grigory Sokolov plays Bach-Busoni Ich ruf zu dir 」は、僕にとってはもう毎日の日課のように聞いています。その日の振り返り、色々な思いを整理しながら。音楽を楽しむというより、何か自分の心の整理の為に。
いい曲だと思います。

2011/10/28 (Fri) 22:53 | EDIT | REPLY |   

Yoshimi  

ソコロフは素晴らしく良いピアニストです

アメーバの友さん、こんばんは。

「Prelude & Fugue BWV 846」は平均律曲集では最も有名な曲です。
彼はグールドと同じように、ノンレガート奏法で弾いてます。
グールドはテンポが随分遅く、デフォルメ感も強いので私の許容範囲外ですが、ソコロフは音楽の流れがとても良いと思います。
ソコロフの演奏は、聴き慣れた曲でさえ、とても新鮮で生気が蘇ったような感覚を覚えます。

《Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ》、随分気に入られているのですね。
ソコロフとジェイコブスでは弾き方が違うので、ソコロフの方が静寂な趣きがあって、ジェイコブスはより叙情感が強いかもしれません。
この曲も好きなことは好きですが、たまに聴くには良くとも、いつも聴くには私には重い曲です。
私がいつも聴くなら、清々しく晴れやかな《Wachet auf, ruft uns die Stimme》。クリスマスの朝のように爽やかで、これは何回聴いても飽きません。

2011/10/29 (Sat) 00:28 | EDIT | REPLY |   

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