*All archives*



アックス&サロネン/フィルハーモニア管 ~ シェーンベルク/ピアノ協奏曲
<鎌倉スイス日記>さんの"超私的「ランキング」ピアニスト編 Vol.2 第29位"で紹介されていたのが、エマニュエル・アックス。
アックスは、米国を代表するピアニストの一人...だと思うけれど、日本ではあまり人気がないらしい。
キャリアも長いので、私も名前だけはよく知っているのに、アックスの録音はほとんど持っていない。
そもそも名盤と言われる録音といっても、すぐには思い浮かばない。

ランキングの記事を読むと、定評のある録音は、プレヴィンと録音したベートーヴェンの協奏曲、アイザック・スターンやヨーヨーマとの室内楽、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲」など。
そういえば、メンデルスゾーンのピアノトリオは最近、新譜がでていたはず。試聴した気はするけれど..。
それに、珍しくもジョン・アダムスやココリアーノなど現代音楽もレパートリー。
中でも、シェーンベルクの《ピアノ協奏曲》が素晴らしいという。

シェーンベルクの《ピアノ協奏曲》というと、ポリーニ、グールド、ブレンデル、内田光子など、さすがに現代音楽の名曲だけあって録音が多数。
ポリーニは殺伐としていてどうにも好きにはなれないけれど、ブーレーズと録音した内田光子の演奏は、とてもカラフルな色彩感と情緒過剰なくらいの表現。
それがシェーンベルクの音楽の"無機質"なところと融合して、面白いことは面白い。でも、何度も聴いていると、あまりに饒舌すぎる気がしてくる。
シェーンベルクの音楽としては、もう少し無機的な冷んやりした感触が欲しくなる。(好みの問題でしょうが)

ピアノ作品の場合は、マイベスト盤となる録音がないか、いつも探しているようなもの。
好きな曲でも、そういう録音が見つかっていない曲がかなりある。シェーンベルクの《ピアノ協奏曲》もその一つ。
なので、早速、アックス&サロネン指揮フィルハーモニア管のCDを買って聴いてみると、これはレビューどおりの素晴らしさ!
シェーンベルクのピアノ協奏曲は、本当はこんなに美しい叙情的な音楽だったというのが、とても新鮮な驚き。
今まで聴いたどの演奏よりも、自然な流れと透明感のある瑞々しい叙情感がとても美しい。
何の抵抗も違和感もなく、すっと身体のなかに浸透してくる感覚がするので、シェーンベルクの音楽は難解だというイメージがすっかり消えてしまったほど。

カップリングのリストのピアノ協奏曲は、ややはったりのあるようなオドロオドロしい威圧感を感じるものがあり、誰の演奏を聴いてみても、もう一つ好きになれない。
アックスの弾くリストのコンチェルトは、そういうところが全くなくて、流麗で品の良い叙情感漂うロマン派音楽になっているとは思うけれど、やっぱり曲自体を好きにはなることはなさそう。

Piano Concerti 1 & 2 / Piano ConcertoPiano Concerti 1 & 2 / Piano Concerto
(1993/12/14)
Esa-Pekka Salonen (Conductor), Philharmonia Orchestra of London, Emanuel Ax (Piano)

視聴する(米amazon)

エマニュエル・アックスのプロフィール[KAJIMOTO]

シェーンベルクのピアノ協奏曲は、まるで「喜怒哀楽」を表現しているのではないかと、いつも感じるし、そういうイメージで聴くと、各楽章の性格がわかりやすい。
そういえば、ブレンデルが「シェーンベルクはいつも怒りながら曲を書いていた人です。」と言っていた。

一番好きなのは第1楽章の演奏。
Andanteらしく、少しゆったりとしてテンポで始まる冒頭のピアノの音は、とても瑞々しく柔らか。
旋律を"歌う"ようなレガートで軽やかに弾いているのがとても美しい。
呟くようなモノローグ的なタッチとレガートな旋律の流れなので、まるで静かに語りかけているかのようにも聴こえる。
この楽章は曲想の変化が多彩で、瑞々しい叙情感が溢れていて、なぜか清々しい自然の風景のイメージが浮かんでくる。
ピアノが楽しそうにおしゃべりしているかのように、ささいたり、声のトーンが上がって賑やかに話しているよう。
曲想がコロコロと転換していくにつれ、ピアノのタッチや音色、強弱も起伏も明快に変化していくので、表情がとても豊か。

第1楽章の終わりは物々しいトランペットで終って、第2楽章のMolt Allegroへ繋がる。
まるで怒っているかのように、鋭くシャープなタッチの重音がフォルテであちこち飛び跳ねて、荒々しい曲想。

好きかどうかは別として、第3楽章のAdagioも印象的。
かなり賑やかで躍動的なので、ロマン派的なゆったりと叙情的なAdagioとは無縁。
力強く感情が激しく昂ぶっているように強奏する部分が多く、旋律と和声には現代的な得たいの知れない不安感が溢れているように思える。
さすがに最後はピアノソロがAdagioらしい静寂さで終っているけれど、不安や焦燥感に満ちたような現代的なアダージョ。

第4楽章はGiocoso(陽気に、楽しげに)。無調の世界であっても、"陽気で楽しげ"に聴こえないことはない。
和声的には全然楽しげな雰囲気ではない気がするけれど、リズムや音の配列にはコミカルなものがあって、ちょっと飄々としたところがある。

サロネンが指揮しているせいか、透明感と少し冷んやりとした潤いのある音が北欧風の音楽のようなイメージ。
ピアノとオケの音の瑞々しさや色彩感がよく映えていて、その掛け合いがとても魅力的。
なぜか、調性がないはずなのに、不思議なことに調性音楽のように調和的にさえ聴こえてくる。

この曲と演奏がどんなに素敵なのか、私のボキャブラリーと表現力では、とても伝えることができないので、実際聴いてみるに限ります。
"難解"でとっつきの悪そうなシェーンベルクの音楽に対するイメージが、ちょっと変わるかもしれません。

<関連記事>
内田光子 ~ シェーンベルク/ピアノ協奏曲


tag : シェーンベルク アックス フランツ・リスト

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。