*All archives*



英国耳鳴協会(British Tinnitus Association)の概要(1) 歴史・組織・財政
世界に耳鳴協会(Tinnitus Association)はいくつかあるが、アメリカ耳鳴協会と同様、歴史が古く、耳鳴り患者のサポートと耳鳴り研究促進を精力的に活動を行っているのが、英国耳鳴協会(British Tinnitus Association:BTA)
政府からの財政支援は受けていないため、BTA活動は会員と支援者の善意(会費・寄付・ボランティア)によって全て成り立っている。

英国耳鳴協会(以下、BTA)のミッションは、「教育的プログラムを通じて予防を奨励すること、および、医学的研究プログラムを通じて永久に続く耳鳴り(head noise)の治療法を追求すること」。
1979年に設立され、1992年に完全な非営利団体(Charity)として登録。本部はシェフィールドで、スタッフは合計7名。
※英国では、非営利団体として認定されるには、独立した行政機関であるチャリティ委員会(Charity Commission)への登録が必要。

BTAに関する情報サイト
- BTAのホームページ
- BTAのFacebook
- Sounds of Tinnitus[Youtube]:1970年代に製作されたBTAの広報用レコードが音源。様々なパターンの耳鳴音を収録。

※米国耳鳴協会に比べて、BTAは俳優やYoutubeを活用した広報活動はあまり行っていない。BTAのホームページ上には、耳鳴り患者が登場する動画が多数掲載されている。

-------------------------------------------------------------------------------------
BTAの歴史
-------------------------------------------------------------------------------------
今では耳鳴りはメディアでも良く登場するテーマだが、今から40年ほど前には、耳鳴りについて語られることがなかった。
1979年、王立全国聴覚障がい者協会(Royal National Institute for Deaf People:RNID)がロンドン大学病院に助成金を支給。
当時のロンドン大学病院の耳鼻咽喉科長は、英国に人工内耳を導入したことで著名なJames Graham Fraser。
Fraserは、耳鳴り研究の助成制度を設け、研究担当者に若いJonathan Hazellを指名した。
※Dr.Hazellは、1980年代にDr.Pawel Jastreboff博士と共に、TRT療法を開発したことで有名。

マスカー装置の誕生
Hazellは、当初5年間、耳鳴関連文献を全て読破するのに費やしたが、そこには耳鳴りの原因や治療法への言及がほとんどなかった。
Hazellは、耳鳴り研究のパイオニアであるJack Vernonがいる米国Oregon Institute of Hearingを訪問。
二人が噴水が静かに湧き出る庭園で話をしていた時、Hazellは耳鳴りがほとんど聴こえなかった。
Vernonは、噴水の穏やかな雑音がこの"ミラクル(奇跡、魔法)"を実現したのだと判断。
その噴水音を録音して、他の耳鳴り患者に聞かせたところ、彼らも同じように耳鳴りが緩和されたのだった。
この単純な出来事がきっかけで、マスカー(今で言うホワイトノイズ・ジェネレーター)が誕生した。
Vernonに説得された補聴器メーカーがマスカー装置を製造。テストしてみると、マスカーがいくつかの症例で効果があるとわかり、Hazellが英国にそのアイデアを持ち帰った。

BTAの設立
1978年までには、耳鳴りは以前よりは広く知られるようになったが、英国の家庭医(GP:ファミリードクター)や病院の医師たちは患者に対して、‘You’ll have to learn to live with it’(耳鳴りと共に生きることに慣れないといけないでしょう)と言うだけだった。
耳鳴り患者たちはセルフ・ヘルプ(自助)グループを作っていったが、その中にいたのが、障害者運動家で難聴の代議士、そして後に貴族となるJack Ashley(RNIDの理事会メンバー)と、彼の同僚理事であるJack Shapiro。

BBCプロデューサーとして、Ashleyは耳鳴りを含めた難聴のシリーズ番組を製作した。
その放送後、RNIDへ、耳鳴りに対して対策(時々は治療に関して)を求める数千の電話が殺到した。
1979年7月、RNIDが下院のGrand Committee Roomで行った会議では、300人以上が参加。RNIDのトップであるMichael Reedも同席した。
その会議で、VernonとHazellは、耳鳴り患者や進行中の研究について説明。Ashleyは、耳鳴り患者の状況を改善するために、議会の内外でキャンペーンを行うことを約束した。
セルプ・ヘルプグループを増やすことや協会(BTA)設立に関する討議を経て、RNIDの評議会が検討した結果、英国耳鳴協会(BTA)が誕生した。

BTAの活動拡大と非営利団体化
国中にセルフ・ヘルプグループが生まれ、耳鳴り患者に対する理解や患者同士の助け合いを促進するため、定期的会合を行ったり、著名な数人の耳鳴り専門家を訪問するなどの活動を展開。
彼らの勢いに押されて、RNIDはオフィスと秘書Pamela Kennedyを提供、協力するようになった。

耳鳴りニュースレターが、RNIDの機関誌『Hearing』(後の『Soundbarrier』)に掲載される。
RNIDは、Hazellをヘッドとする医学研究組織を設立、同僚はRoyal Ear HospitalのGraham Fraser。
1981年、CIBA Foundationがシンポジウムを行い、その会議録が初の耳鳴り関連書籍として出版された。このシンポジウムが、後のInternational Tinnitus Seminarの元となる。

パブリシティに耳鳴りのテーマが登場する機会が増えたことで、頭の中のノイズが想像上のものでも不吉なものでもなく、"耳鳴り"として一般に知られるようになった。
クリニック(診療所)が耳鼻咽喉科の中に設けられ、audiologist(聴覚訓練士)やHearing Therapists(言語聴覚士)が耳鳴り治療も手がけるようになった。

1982年以降、BTAは毎年会議を開催。1990年まで活動や社会状況の進展に伴い、BTAの独立的非営利団体化の実現可能性が検討された。
1991年、新しい独立した非営利団体として、BTAが誕生。

BTAの活動の現状
現在は、6人の選任チームにより事務局が運営され、協会に対する数千の問い合わせに対応している。
四半期ごとに全会員へ送付している協会誌『Quiet』が有名になり、耳鳴り分野に関する指導的な雑誌として認められている。

最近の数年間に渡って、BTAは数多くのキャンペーンを支援し、医学専門家に情報提供。
社会的な大騒音に過剰にさらされる危険性を認識してもらうため、学校向け教育パックも作成した。
"Don’t Turn it Off, Turn it Down (secondary)"、"Safe & Sound (primary)"。この両方のイニシアティブは幅広く賞賛されている。

BTAを支援するProfessional Advisers’ Committee(PCA)は、英国における耳鳴り分野の活動・研究で著名な人々で構成。
BTAホームページからダウンロードできるセルプ・ヘルプ用資料の大半の作成に助力している。
数年間に渡って展開された"Younger Person’s project"では、年次会合、電話・メールによるサポート、優れた情報冊子"Sound Matters"を製作。
BTAが提供する定期的な最新情報のメール更新サービスにより、最新の治療法や研究内容を知ることができる。

1994年以降、開催されている"Counselling Training Seminars"(現在の"Tinnitus Adviser Training")は、毎年に2回、時には3回実施。
このトレーニングコースは非常に人気があり、参加者の大半は聴覚分野の専門家で、地域での耳鳴りサポートに関連した仕事を行っている。
BTAのオフィススタッフは全てこのコースに参加し、耳鳴りに特化した英国内のヘルプライン(電話相談)を運営している。

過去数年間にわたって、BTAは"Tinnitus Awareness Week"のプロモートにも参加。
このイベントは、耳鳴りの社会的認知を高め、良質なサポートや情報に対する"気づき"に役立っている。
耳鳴り患者が感じている孤独感を取り除き、支援を提供し、上手く対処できるようになっている。
BTAは耳鳴りに関する広報活動の一環として、家庭医(GP)、科学者、図書館向けに毎年ポスターを配布。

BTAは、耳鳴り関連の情報や患者へのサポートを提供するだけでなく、ロンドン大学聴覚研究所やバーミンガム大学で行っている耳鳴り分野の研究も支援している。
ロンドン大学聴覚研究所向けに、耳鳴研究のリサーチフェローのスポンサーとなるプロジェクト(2008年~2013年)を実施。耳鳴治療法開発を長期的目標にして研究を促進する。
バーミンガム大学については、同大Barnes教授と米国バッファロー大学Salvi教授が連携した研究(2010-2012年完了予定)を支援中。

-------------------------------------------------------------------------------------
組織・スタッフ
-------------------------------------------------------------------------------------
パトロン:The Duchess of Devonshire, DL (2009年~)

プレジデント:The Rt. Hon. Sir Stephen Sedley(2006.11~)
(初代:The Rt. Hon. The Lord Jack Ashley of Stoke(設立者)、2代目The Rt. Hon. The Lord Robert McLennan of Rogart.)

Ambassador:DJ Eddy Temple-Morris
DJのEddy Temple-Morrisは耳鳴り患者であり、新しい世代の耳鳴り患者との橋渡しとなっている。
Eddy Temple-Morrisのメッセージ(Tinnitus Awareness Week)

理事会(trustee)=運営評議員会(Council of Management)
Chairman:Roy Bratby
trustee(理事):6名
Vice President(ヴァイスプレジデント):3名
※ヴァイスプレジデント:プレジデントを補佐又は代理する役員。約款などに特別の規定がない限り、理事でなくても良い。

Professional Advisers' Committee(PCA)
英国内の優れた耳鳴り専門家によるアドバイザー委員会。
PAC Chair、PAC Vice Chair、他8名の合計10名構成。
PACの目的
 - 『Quiet』誌などのBTAが発行する全文献の医学的・科学的内容を精査
 - 耳鳴りに関する医学的・科学的領域での助言
 - 耳鳴り研究の特定分野に対する支援または支援しないことの医学的・科学的メリット・デメリットに関する助言
 - 研究戦略の定式化における支援、および、研究助成申請に関わる方針と手続きに関する支援

PCAの活動については、<The Professional Advisers' Committee - who we are and what we>に詳しく記載。

本部スタッフ
 CEO
 イベントマネージャー
 グループ・コーディネーター兼管理担当者
 会員管理責任者(アドミニストレーター)
 会計担当者Finance Officer)
 コミュニケーションマネージャー兼編集者(Quiet Magazine)
 以上、各1名、合計6名

 他に、産休・育児休暇取中者 1名

-----------------------------------------------------------------------------
会員制度
-----------------------------------------------------------------------------
個人会員(Individual membership)
   年会費15ポンド(英国外の会員は20ポンド)

企業会員(Corporate membership)
  Gold members :年会費445ポンド
    Puretone Ltd
    The Tinnitus Clinic Ltd

  Silver members :年会費295ポンド (公共団体・慈善団体は195ポンド)
    PC Werth
    Sandwell and West Birmingham Hospitals NHS Trust
    Doncaster and Bassetlaw Hospitals NHS Foundation Trust
    The Royal Hallamshire Hospital


-------------------------------------------------------------------------------------
ファンドレイジング
-------------------------------------------------------------------------------------
BTAを資金面で支援するための方法は、「Fundraising Guide」(PDF)で詳しく説明されている。
会員制度以外での資金調達方法は、以下の通り。

- オンライン寄付JustGivingVirginmoneygiving経由での寄付
- オンラインショッピングまたは検索: everyclick.com経由
- JustTextGiving(Vodafone):Vodafoneの携帯電話を使った新サービス。独自コード TBTA00 と寄付金額(例:TBTA00 £10)をテキストメッセージとして送信することで、自動的にBTAへの寄付が受け付けられる。
- Payroll giving:給与天引方式の寄付。
- その他の支援方法:携帯電話・インクカートリッジのリサイクル、お天気くじ、eBay利用

「Gift Aid」
「Gift Aid」制度を使った場合、寄付金額1ポンドにつき、25ペンスが歳入関税庁(HMRC)からBTAに支払われる。
この制度では、寄付を受けた機関は寄付金以外に寄付者の所得控除額を税務署から受け取ることができる。
オンライン寄付サイトはなく、書面での寄付申し込みのみ。
昨年、BTAがHMRCに要求した支払金額は、8200ポンド以上になる。これは、ヘルプ・ラインの2000回以上の電話に応答する費用をカバーできる金額である。


>> (2)に続く


-------------------------------------------------------------------------------------
備考
-------------------------------------------------------------------------------------
英国耳鳴協会の概要(1)および(2)は、同協会の英文ホームページから適宜抜粋・要約したものです。
正確な内容については、原文をご確認ください。

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。