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ハンス・アイスラー/ピアノ作品集、子供の国歌
今年が没後50年にあたるドイツの作曲家ハンス・アイスラー。
彼は東ドイツ国歌を作曲したことで知られている。
アイスラー作品の録音は、Berlin Classicsから多数リリースされているので、NAXOSのNMLで会員なら全曲聴くことができる。
ピアノ作品を聴いてみると、シェーンベルクとベルクが融合したような作風。
わかりやすく親しみやすいシェーンベルクというか、やや理性的で感情過多でないベルクというか...。
シェーンベルクの高弟の一人だから、シェーンベルク的な作風を感じさせるのも当然かと思うけれど、管弦楽曲は映画音楽風な曲も結構多くて、現代音楽風ではあっても、かなり聴きやすい。
アイスラーは意外と面白そうな作曲家なので、少し調べてみた。

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アイスラー関連サイト
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The North American Hanns Eisler Forum
アイスラーのミニ伝記や時代別作品解説、ディスコグラフィー、レビューなどがが揃っている。
A Virtual Tourでは、ハイスラーの生涯を次の5区分に分けて解説;ベルリンのROaring20年代、ブレヒトとの創造的パートナーシップ、ナチスによる追放、ハリウッドでのInterlude、廃墟から立ち上がって。
各時代のアイスラーの行動や作風の特徴が載っており、代表作の録音の一部が試聴できる。

Internationale Hanns Eisler Gesellschaft[ドイツ語サイト]
「Noten」(楽譜)で、ジャンル別にアイスラーの作品紹介があり、曲によってはリンク先の楽譜サイトリンク先のサイトで2分程度試聴できる。

「CDs」(ディスコグラフィ)では、ジャンル別にリリースされたCDが列記されており、各CDはamazonサイト(曲によっては試聴ファイルあり)にリンクしている。
例;ピアノ・ソナタ第1番

以下は日本語サイト。
ハンス・アイスラー:プロフィールと作品リスト[知られざる近代の名匠たち]
ハンス・アイスラーと旧東独国歌[コンスタンツ通信]
アドルノ、ベンヤミン、アイスラー~30年代の「引き裂かれた半身」をめぐって~ (細見和之)[カールスプラッツのポプラの木]
『ブレヒトと私/会話と歌のなかのハンス・アイスラー』(BERLIN Classics, 2006)|竹峰義和 2007年01月29日[SITE ZERO Review]
この記事中に書かれていた《子供の国歌/Kinderhymne-"Anmut sparet nicht noch Mühe"》とは、ブレヒトがドイツ再生の願いを子供達に託した詩に、アイスラーが曲をつけた有名な歌。
この歌の解説が、<ハンス・アイスラーとベルトルト・ブレヒト>(木工房ろくたる)というブログ記事に載っている。
アイスラー自身が歌っている録音が残っている。作曲者の自作自演の歌が聴けるというのは珍しいかも。

Hanns Eisler - Kinderhymne - Bertolt Brecht


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アイスラー:ピアノ作品集
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現在入手できるアイスラーのピアノ作品集のCDは、Berlin Classics盤『ハンス・アイスラー:ピアノ作品集』(Hanns Eisler - Klaviermusik,1996)。ピアニストは、エルバー、オルベルツ、シュテッキクトの3人。

『アイスラー;器楽作品集』(Hanns Eisler – Instrumentalmusik,2008)には、4手のためのピアノ作品である序曲「ノー・モア・ピース」、序曲「母」の2曲が収録されている。

Eisler-Edition Vol. 7Eisler-Edition Vol. 7
(2008/07/08)
Siegfried Stockigt, Gerhard Erber, Walter Olbertz

試聴する


年代によって作風が変遷しているので、冒頭4曲は他の曲とは随分作風が違う。

1. Allegro moderato and Walzer (1922)
2. Allegretto and Andante: Allegretto(1922)
3. Moderato

調子ハズレのワルツ、優雅というより騒々しいパロディのような曲。

4. Allegretto and Andante: Andante(1922)
この曲はいくぶんシェーンベルク風なところを感じるけれど、まだまだパロディ風?


ピアノ・ソナタの第1番と第2番》、《4つの小品》、《8つの小品》は、どれも似たような音の動きの旋律なので、1度聴いたくらいでは、どれがどの曲かよくわからない。
いずれもベルクのピアノ・ソナタやシェーンベルクのピアノ小品を連想させる部分が多い。
アイスラーの曲はシェーンベルクよりも、旋律の歌謡性があるせいか、ずっと叙情性が強いので聴きやすい。
重音が多く使われているので、和声の響きが豊か。
ピアノ・ソナタは、他の小品に比べると、特に突発的なフォルテが頻出する。
どの曲も"andante"はテンポはややゆったりしているが、落ち着きのないというか、いつも動き回っているような動的な印象。
allegroやallegrettoになると、目まぐるしく音が移動したり、突発的なフォルテが頻発して、とにかく騒々しい。
旋律はロマン派のような歌謡性はないけれど、とっても饒舌で表情豊か。
和声も歪みや濁りのある不協和音ではなくて、調性感を感じるので、耳障りはそんなに悪くはない。

 Piano Sonata No.1, Op.1(1923)
ベルクのピアノ・ソナタとシェーンベルクのピアノ小品を合体したような曲に聴こえる。
両端楽章のAllegroでは、叙情的な旋律はベルク風。
その前後にシェーンベルク作品に似て音があちこちに散乱し、突発的に急き込むようなフォルテが挟まれ、強弱のメリハリが過剰なくらいに強調されている。
フォルテの間に静謐な弱音部が挟まれたようで、叙情と喧騒が頻繁に交代する。
音の並びはベルク風でも、ディナーミクが全く違うので、同じような旋律の断片が聴こえてくるのに、曲想が全く違う。
中間のIntermezzoは、重苦しい行進曲風。第1楽章よりもゆったりと静かな部分は多いけれど、やっぱり基本的に騒々しい。

Eisler - Piano Sonata Op.1 (I)



 4 Piano Pieces, Op.3(1923)
I. Andante con moto
II. Allegro molto
III. Andante
IV. Allegretto

 Piano Sonata No.2, Op.6(1924)

《8つのピアノ小品》は、《4つのピアノ小品》よりもリズム、旋律、テンポなど音の配置がずっと多様化しているので、こっちの方が面白い。
 8 Piano Pieces, Op.8(1925)
No. 1. Allegretto
No. 2. Kraftig, energisch
No. 3. Theme and variations - Gemtlich
No. 4. Allegro con fuoco
No. 5. Poco allegretto grazioso
No. 6. Hastig, aufgeregt
No. 7. Andante
No. 8. Allegro

プロフィールを読むと、この頃に師のシェーンベルクと袂を分かち、独自の作風をつくり上げていく。
たしかにこの後、作風が変わっているのがわかる。

たぶんアルバム中、最も聴きやすいのがこの《子供のためのピアノ小品》。
タイトルどおり子供にもわかりやすいように、他の曲集よりも旋律の歌謡性・叙情性も強くて、調性感もある。
短調で哀感を帯びた曲想の曲が多く、全体的にフォルテも控えめなので、今までとはかなり違った作風。
 9. Klavierstucke fur Kinder, Op.31:Theme and Variations(1932)
主題と10と変奏。無声映画の劇伴を聴いている気がする。

同じ曲集中の《主題と変奏》よりは、この《7つの小品》ちらの方がより古典性が強い感じ。
 Klavierstucke fur Kinder, Op.31:7 Piano pieces(1932)
No. 1. Allegretto
No. 2. March (Kleiner Kanon in der Oktav
No. 3. Andantino
No. 4. Praeludium I
No. 5. Praeludium II
No. 6. Fughetta
No. 7. Scherzo

Hanns Eisler - Op. 31 (Theme and Variations, 7 piano pieces)



《7つのピアノ小品》Op.32では作風がかなり変化し、古典的な趣きのある端正な曲集。
曲名には「Invention」、「Chaconne」という、バロック音楽のような題名がついている。
No.2はモーツァルトの曲に使われているような旋律が主題。曲名はわからないけど、『アマデウス』を見て覚えた旋律なので、かなり有名はなず。
以前の12音技法的な曲とは音の配列が全く違っているし、旋律自体が断片的なものから、より息の長いまとまりのある旋律になって、メロディアスに。
1925年までに書かれたピアノ作品(ピアノソナタ第1番&第2番、4つとピアノ小品、8つのピアノ小品)が、至るところでベルクやシェーンベルクを連想させるような曲だったのに比べると、これはそういうところがかなり少なくなっている。
特に第7曲「Rondo」は現代的なフーガ風で面白い曲。

 7 Klavierstucke, Op. 32(1932)
No. 1. Invention
No. 2. Allegrett
No. 3. Allegro moderato
No. 4. Chaconne - Andante con moto
No. 5. Allegretto scherzando
No. 6. Andante con moto
No. 7. Rondo - Allegretto


《ソナチネ》になると、古典性が稀薄になり、2年前に書かれた《7つのピアノ小品》よりも、旋律が断片的でいくぶん前衛的?。
やや陰鬱とした内省的な雰囲気が強い。
 Piano Sonatine, Op.44, "Gradus ad Parnassum"(1934)

 Overture

1938~47年は、米国亡命時代。
《変奏曲》も《ピアノ・ソナタ第3番》もベルクのピアノ・ソナタのような旋律がたびたび出てくる。
古典的な趣きはなく、再び前衛的な作風に戻ったような曲。
 Variations(1941)
Themeと11の変奏、Codaと3つのフィナーレで構成。

 Piano Sonata No. 3(1943)
I Viertel/ⅡAdagio/Ⅲ Allegro con spirito

Eisler - Piano Sonata No.3; I Viertel


 3 Fugues(抜粋)(1946)
最初の”G minor”は、厳粛で息が詰まるような圧迫感のあるフーガ。最後はなぜか長調に転調して終わっている。


アイスラーは、1947年に悪名高いマッカーシーによる「赤狩り」で共産主義支持者の疑いをかけられ、1948年に米国出国を余儀なくされる。その後、東ドイツへ渡り、東ベルリンで暮らす。
東ドイツ国歌《廃墟から甦り》を作曲したのは有名。商業音楽(劇・映画・テレビ向けの音楽)を書いたりしていたという。
1955年には、アラン・レネ監督による有名なドキュメンタリー映画『夜と霧 Nuit et brouillard』の音楽を作曲している。


tag : アイスラー 東ドイツ

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アイスラーとブレヒト
Yoshimiさん、こんにちは!
このところ、体調を崩して久方ぶりにYoshimi さんのブログ拝見しました。

以前にも書きましたが、Yoshimiさんのブログを読むと”利口”になります。
小手先の”小利口”ではなくて、魂の飢えを払拭させてもらえる何かがあります。良い生き方をしなくてはと、思わせてくれます。

さて、アイスラーについてはクラッシック初心者の私には聴いたことも、また彼についての知識も全くありませんでしたが、
記事中やリンク先の曲、全部聴かせてもらいました。

ピアノ曲は少し現代音楽風なところもありましたが違和感なく綺麗な曲だと思いました。特にOp32は変化はありますが、しっとりとして曲の中にはいっていけました。

この作曲家が旧東独国歌の作曲家であり、あのブレヒトとも親交厚かったとは!
旧東独国歌を聴きましたが、「そして太陽はこれまでになく美しく輝き、ドイツを遍く照らし出す」 「廃墟から復活して、未来に向おう」と理想を掲げ、人間愛に満ちた良い曲です。
この曲は日本でも評判になったドイツ映画『グッバイ・レーニン』の最後の方の部分で使われていたのですね。私もこの映画は印象に残っています。

ところが、長い亡命生活ののち、みずからが故国として選択したDDRが、社会主義国家の理想を体現するどころか、スターリン主義へとますます傾斜していってしまいます。晩年のアイスラーがブレヒトについて証言している言葉に彼の芸術に対する熱い思いを感じます。

彼ら2人、アイスラーとブレヒトが生涯を賭して追い求めつづけたものの、DDRという国家体制下においては〈死産〉に終わってしまった来るべき”芸術の理念”! 
「後に生まれる者たちに」こそ伝えたいという強い思いがあったのではないでしょうか・・・(竹峰義和 サイトゼロ レヴューより一部引用)

ブレヒトについては、『三文オペラ』 『肝っ玉お母とその子供たち』など、日本でも上演され、私も観劇していますが、底辺に生きる民衆の悲喜劇や、たくましく生きる一人の母親の目線から戦争の虚しさを訴えかける反戦劇です。
それは、決して社会主義体制を鼓舞する内容でなく、体制を越えた人間愛を訴えていると思います。

また、アイスラーによって回想されるブレヒトにまつわるエピソードの中で、果たしてブレヒトはマルクス主義者であったかという問題を投げかけているのが、たいへん興味深く、
私からいえばアイスラーもまたマルクス主義という狭い枠の中で取り上げられる作曲家ではないような気がしてなりません。

二人とも政治体制を超えた、”芸術家”だった!
それが言いたかったので、投稿しました。
だらだらと音楽内容には関係ない長文失礼しました。
社会主義国家と芸術
すず子さん、こんばんは。

また記事をお読みになれるほどに回復されて良かったですね。
記事は個人的な記録として書いていますが、関連情報もいろいろと載せて、なるべくインフォマティブな内容にしたいと思っています。

アイスラーは、シェーンベルクよりははるかに聴きやすいですが、小難しいベルク風なところもあります。
映画音楽もかなり書いていますが、現代音楽風なところが多いです。(作品にもよりますが)

演劇を観ることはありませんので、あいにくブレヒトの戯曲については全く不勉強です。
戯曲で知っているのは、シェイクスピア以外では、学生時代によく読んでいたカミュの作品くらいでしょうか。

同じ社会主義国でも、ソ連と東欧諸国(東ドイツ、チェコ、ハンガリーなど)では、それぞれ音楽(それに芸術)と国家の関わり方に違いがあるのではないかと思います。
ソ連については、ショスタコーヴィチ関係の資料や証言など、いろいろと残っているので、凡その状況がわかりますが、東ドイツなど他の国はどうだったのか、知りたい気がしてきました。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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