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アイスラーのドキュメンタリー映画音楽 (1) 夜と霧
ハンス・アイスラーのディスコグラフィを見ていると、映画音楽の作品がかなり多い。
ユダヤ人のアイスラーは、ナチス・ドイツによって音楽活動を禁止され、国外の都市を転々として活動を続けていたが、1938年に米国へ亡命。
その時代には、クラシックだけでなく、映画音楽などの映像用作品も数多く残している。

ハンス・アイスラーが作曲した映画音楽で最も有名なのは、おそらくアラン・レネ監督によるアウシュヴィッツのドキュメンタリー映画『夜と霧/Nuit et brouillard』。[作品解説(ぴあ映画生活)]
1955年の作品なので、アイスラーが米国を去って、東ベルリンに定住した時代に書いたもの。

"夜と霧"というと、みすず書房が出版しているヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』をすぐに思い出した。
原著の初版が1947年なので、これが映画の原作本かと思ったけれど、原題には"夜と霧"という言葉は使われていない。

"夜と霧"という言葉は、1941年12月7日に出されたヒトラーの総統命令"Nacht und Nebel"のこと。[Wikipediaの解説]
この言葉は、ヒトラーが心酔していたというリヒャルト・ワーグナーの『ラインの黄金』の第3場「ニーベルハイム」で登場する。
この総統命令がもとで、ナチス占領地域で収監されていた人たちが、密かに行方もわからずにどこかへ(おそらく収容所へ)連行されていったという。
ナチスの収容所にまつわる事実を象徴的に表現するのに、フランクルの著書の邦題にもドキュメンタリー映画のタイトルにも、"夜と霧"という言葉が使われているようだ。

Nuit et Brouillard


この映画では、モノクロの過去のリアル記録映像、カラーの現在の風景、それに淡々としたナレーションが流れる。
現代音楽と調性音楽が混在するような、ややゴツゴツとした肌触りの劇伴音楽が、不思議なくらいに映画にマッチしている。
映画の最初と最後では悲愴感のあるドラマティックな音楽が、映画の途中では、現代音楽風の不安感や切迫感を感じさせる音楽がかなり使われている。
それとは逆に、映像のイメージとかなりギャップのある音楽がついているシーンもある。
グロテスクな映像に、風景描写のような淡々とした音楽や、日常的な単なる作業風景のようなコミカルな音楽が流れているところは、逆にその映像と事実の異常さ、不気味さが際立っている。
ナチスの看守たちにとっては、収容所でのあらゆる行為は、単に毎日行うべきルーティンな作業でしかなかったのだということを象徴しているのだろうか。

収容所の看守に関するノンフィクションとしては、ヘルガ・シュナイダーの『黙って行かせて』(2004年、新潮社)という本がある。
アウシュヴィッツで看守になるために、当時4歳の娘を省みずに家を出たナチス親衛隊員の母親との50年後の再会と対話。
当時の収容所での"仕事"の様子や、いまだにヒトラーを敬愛しユダヤ人に対する憎しみの気持ちを持ち続けている女性の心理を描いたもの。


tag : アイスラー

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フランクル
こんにちは。
フランクルの「夜と霧」は今読んでいます。半年ほどかかってまだ終わりません(→_←)
読むのが遅いうえに乱読なもので…。
小説と映画との関連はどうなのでしょう。読み終えたら観てみますね。
映画の原作者は
ポンコツスクーター様、こんばんは。

映画の原作者を調べてみると、ジャン・ケイヨールという人でした。
戦後直後に強制収容所の実態は広く知れ渡ってしまいましたし、ナチスが撮影した記録映画なども公表されていたと思います。

この映画とフランクルの著作とは、内容はほとんど似ているとしても、直接の関係はないようです。(ケイヨール氏が原作・脚本を書くときの参考にしたとは思いますが)

フランクルの本は読んではいませんが、出ているのは知っていました。(みすず書房の本は大学時代によく読んでいたので)。
収容所の話を読んだのは、有名な「アンネの日記」とか、ドキュメンタリー本などです。読んでいて、だんだん気分が悪くなってきましたけど...。
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