ソコロフ ~ ハイドン/ピアノ・ソナタ Hob.XVI:37(No.50)
2012.02.21 09:00| ♪ グレゴリー・ソコロフ|
ピアノ学習者がまず最初にハイドンのピアノ・ソナタを弾く機会は、全音版のソナチネアルバム、次にソナタアルバム。(昔はそうだった。今は変わっているかも)
ソナチネアルバムで弾いたハイドンの曲はすっかり忘れてしまったけれど、ソナタアルバムの方で練習した曲はよく覚えている。
ソナタアルバムの収録曲は、Hob.XⅥ:35、27、37、36、34、40、49、28の8曲。
短調はHob.XⅥ:34、36の2曲。残りは長調。
私が練習したのは、Hob.XⅥ:35、37、49、短調の34。もしかしたら36も練習したかも。
全く練習した記憶にないのが、Hob.XⅥ:27、40、28。
録音を聴いてみると、印象に残る曲ではなかったので、練習したとしても忘れている可能性はある。
一番よく練習されているのは、たぶんHob.XⅥ:35と37ではないかと。ピアニストの録音も多い。
たまたまYoutubeで、グレゴリー・ソコロフの弾くハイドンのピアノ・ソナタの録音をたくさん見つけてしまった。
以前はなかったのに、ソコロフファンらしき人が大量にソコロフのライブ録音をYoutubeにアップロードしている。
ソコロフはスタジオ録音・ライブ録音とも長年にわたって出していないので、指揮者のチェリビダッケの存命中と同じように、海賊盤やら放送・放映された音源が多数出回っている。
ソコロフの弾くハイドンで一番面白かったのは、Hob.XⅥ:37の第1楽章。
子供の時は、のどかにダンスでもしているようなテンポで弾いていたので、わりと優雅な曲だな~なんて思っていた。
初めてブレンデルの録音でこの曲を聴いたら、大違い。
猛スピードで目が回りそうなくらい。まるでコマネズミが忙しそうに走り回っているみたい。
録音をいろいろ聴いてみると、やや遅めのテンポで弾いているピアニストも時々いる。第3楽章のFinaleがPresto ma non troppo なので、第1楽章のAllegro con brioは、それよりも遅いテンポにしているらしい。
第1楽章は、ソコロフはかなり速いテンポ。演奏時間にして5分少々なので、ブレンデルと同じくらいに速い。
タッチが軽やかで細く柔らかい音色のブレンデルは、スピード感はあるけれど音が指先でちょこまか動いているようで、時々塊のように密集していて、幾分こじんまりした曲という感じがする。
ソコロフはノンレガート気味なシャープなタッチで切れ良く、装飾音を含めて全ての音が明晰でクリア。
スタッカートのように短く切ったタッチで弾くと、とても可愛らしくて、ちょっとユーモラス。
全体的にキビキビとリズミカル、明解なフレージングで、スピード感と弾けるような勢いが気持ちよい。
フレーズ末尾の処理の違いが明瞭で聴き取りやすいせいか、コロコロと細部の表情がよく変わる。きり上がっていくような音の切れがあり、スタイリッシュ?とでも言おうか、カッコよく颯爽としている。
第1楽章を聴いていて、すぐに連想したのは、ベートーヴェン《ロンド・カプリッチョ”失われた小銭への怒り”》。
ソコロフがこういうタイプの曲を弾くと、スピード感とリズミカルなところにユーモラスな雰囲気が加わって、ほんとに絶妙。
Sokolov Haydn sonata Hob XVI.37 (第1楽章)
この音源は第1楽章のみ。全楽章録音されている音源は2002年のロンドン・リサイタル(Youtubeの音源。音質は良くない)。
第2楽章は打って変わって、深く内面に沈潜し、滲み出てくるような悲愴感が重苦しい。
第3楽章は、ブレンデルとソコロフでは、全く雰囲気が違っている。
楽譜上のテンポ指定は、Presto ma non troppo。
ブレンデルが第1楽章と同じような速いテンポで、タッチも短く軽やかで歯切れ良い。
ソコロフの方は、第1楽章よりもかなり遅めのテンポで、ノンレガートなタッチは少なく、音もしっとり柔らかい。
長調に変わっているので冒頭は明るい雰囲気...のはずなのに、第2楽章の哀感を帯びた雰囲気を引きずっているかのように、どこかしら哀しさが吹っ切れないような...。
テンポ設定が楽譜指定とはかなり違うために、ソコロフの演奏解釈は作曲者の意図に沿ったものではないのだろうけれど、各楽章の性格が明確に異なる組み立てになって、曲自体はずっと魅力的に聴こえる。
第1楽章の弾けるように駆け抜けていくユーモラスな面白さから、重苦しい第2楽章を経て、第3楽章で再び快速テンポで終わるよりは、最終楽章はやや遅めのテンポでしっとりとた情感と透明感のある明るさのあるソコロフの弾き方が、気持ちとして自然な流れに感じる。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ソナチネアルバムで弾いたハイドンの曲はすっかり忘れてしまったけれど、ソナタアルバムの方で練習した曲はよく覚えている。
ソナタアルバムの収録曲は、Hob.XⅥ:35、27、37、36、34、40、49、28の8曲。
短調はHob.XⅥ:34、36の2曲。残りは長調。
私が練習したのは、Hob.XⅥ:35、37、49、短調の34。もしかしたら36も練習したかも。
全く練習した記憶にないのが、Hob.XⅥ:27、40、28。
録音を聴いてみると、印象に残る曲ではなかったので、練習したとしても忘れている可能性はある。
一番よく練習されているのは、たぶんHob.XⅥ:35と37ではないかと。ピアニストの録音も多い。
たまたまYoutubeで、グレゴリー・ソコロフの弾くハイドンのピアノ・ソナタの録音をたくさん見つけてしまった。
以前はなかったのに、ソコロフファンらしき人が大量にソコロフのライブ録音をYoutubeにアップロードしている。
ソコロフはスタジオ録音・ライブ録音とも長年にわたって出していないので、指揮者のチェリビダッケの存命中と同じように、海賊盤やら放送・放映された音源が多数出回っている。
ソコロフの弾くハイドンで一番面白かったのは、Hob.XⅥ:37の第1楽章。
子供の時は、のどかにダンスでもしているようなテンポで弾いていたので、わりと優雅な曲だな~なんて思っていた。
初めてブレンデルの録音でこの曲を聴いたら、大違い。
猛スピードで目が回りそうなくらい。まるでコマネズミが忙しそうに走り回っているみたい。
録音をいろいろ聴いてみると、やや遅めのテンポで弾いているピアニストも時々いる。第3楽章のFinaleがPresto ma non troppo なので、第1楽章のAllegro con brioは、それよりも遅いテンポにしているらしい。
第1楽章は、ソコロフはかなり速いテンポ。演奏時間にして5分少々なので、ブレンデルと同じくらいに速い。
タッチが軽やかで細く柔らかい音色のブレンデルは、スピード感はあるけれど音が指先でちょこまか動いているようで、時々塊のように密集していて、幾分こじんまりした曲という感じがする。
ソコロフはノンレガート気味なシャープなタッチで切れ良く、装飾音を含めて全ての音が明晰でクリア。
スタッカートのように短く切ったタッチで弾くと、とても可愛らしくて、ちょっとユーモラス。
全体的にキビキビとリズミカル、明解なフレージングで、スピード感と弾けるような勢いが気持ちよい。
フレーズ末尾の処理の違いが明瞭で聴き取りやすいせいか、コロコロと細部の表情がよく変わる。きり上がっていくような音の切れがあり、スタイリッシュ?とでも言おうか、カッコよく颯爽としている。
第1楽章を聴いていて、すぐに連想したのは、ベートーヴェン《ロンド・カプリッチョ”失われた小銭への怒り”》。
ソコロフがこういうタイプの曲を弾くと、スピード感とリズミカルなところにユーモラスな雰囲気が加わって、ほんとに絶妙。
Sokolov Haydn sonata Hob XVI.37 (第1楽章)
この音源は第1楽章のみ。全楽章録音されている音源は2002年のロンドン・リサイタル(Youtubeの音源。音質は良くない)。
第2楽章は打って変わって、深く内面に沈潜し、滲み出てくるような悲愴感が重苦しい。
第3楽章は、ブレンデルとソコロフでは、全く雰囲気が違っている。
楽譜上のテンポ指定は、Presto ma non troppo。
ブレンデルが第1楽章と同じような速いテンポで、タッチも短く軽やかで歯切れ良い。
ソコロフの方は、第1楽章よりもかなり遅めのテンポで、ノンレガートなタッチは少なく、音もしっとり柔らかい。
長調に変わっているので冒頭は明るい雰囲気...のはずなのに、第2楽章の哀感を帯びた雰囲気を引きずっているかのように、どこかしら哀しさが吹っ切れないような...。
テンポ設定が楽譜指定とはかなり違うために、ソコロフの演奏解釈は作曲者の意図に沿ったものではないのだろうけれど、各楽章の性格が明確に異なる組み立てになって、曲自体はずっと魅力的に聴こえる。
第1楽章の弾けるように駆け抜けていくユーモラスな面白さから、重苦しい第2楽章を経て、第3楽章で再び快速テンポで終わるよりは、最終楽章はやや遅めのテンポでしっとりとた情感と透明感のある明るさのあるソコロフの弾き方が、気持ちとして自然な流れに感じる。
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