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Musical Ear Syndrome(MES) [Musical Hallucination]
"Musical Ear Syndrome"とは、米国で主に使われている用語で、"Musical Hallucination"(音楽幻聴)を別の言葉で表現したもの。
特に精神疾患にかかっていない人の頭の中で、耳鳴りのように音楽が聞こえてくる症状を指す。
英国では、"Musical Hallucination"の代わりに使われている言葉は、"Musical Ear Syndrome"ではなく"Musical Tinnitus"(音楽性の耳鳴り)である。
医学文献では、精神疾患の有無に関わらず、"Musical Hallucination"を使われている。

[参考]過去記事:”音楽耳鳴り”について ~ 概要と文献


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オリヴァー・サックス著 『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々』
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"Musical Ear Syndrome(MES)"に関する文献は、論文が数十件公開されているが、書籍はわずか。
おそらく、MESを扱った書籍のなかで、最も読まれているのは、数年前に出版された脳神経科医オリヴァー・サックスの著書『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々』(原題:Musicophilia: Tales of Music and the Brain)。
本書では、「音楽幻聴」("Musical Hallucinations")に一章があてられているが、これは"Musical Ear Syndrome(MES)"と同じ症状の複数の症例が報告されている。

音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々
(2010/07)
オリヴァー・サックス

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[参考]過去記事:”脳の虫”と”音楽幻聴” ~ オリヴァー・サックス著『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)- 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』より


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Neil Bauman 『Phantom Voices, Ethereal Music & Other Spooky Sounds (2nd Edition): Musical Ear Syndrome』
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"Musical Ear Syndrome(MES)"だけを扱った医学書は大変珍しく、『Phantom Voices, Ethereal Music & Other Spooky Sounds (2nd Edition): Musical Ear Syndrome』くらいしか見つからない。
著者は<Center for Hearing Loss Help(CHLH)>のExecutive Directorで難聴治療の専門家のNeil Bauman博士。彼自身も難聴者。
博士は、ペンシルヴェニア州知事の<Advisory Council for the Deaf and Hard of Hearing (聾者と難聴者に関する諮問委員会)>の副議長、<Self Help for Hard of Hearing People (SHHH)>のメンバー。
"Musical Ear Syndrome"という造語を編み出した人でもある。

Phantom Voices, Ethereal Music & Other Spooky Sounds (2nd Edition): Musical Ear SyndromePhantom Voices, Ethereal Music & Other Spooky Sounds (2nd Edition): Musical Ear Syndrome
Neil G. Bauman (Author)
Integrity First Publications
(February 11, 2011)

商品説明

※eBook copy(PDF版,$16.99)は、Center for Hearing Loss Helpのウェブサイト"Books to Help You Cope with Your Hearing Loss" でオーダーできる。
※幻覚(音声、音声以外)を引き起こす恐れのある薬や物質のリストの付録あり(Appendix 2)。

目次:
1.Sane or psychotic - What Do You Think?
2.Distinguish psychiatric from non-psychiatric auditory hallucinations
3.Some characteristics of auditory hallucinations
4.How our brains create auditory hallucinations
5.What's in a name?
6.Understanding Musical Ear Syndrome
7.Causes of Musical Ear Syndrome
8.Musical Ear Syndrome and the health care community
9.Alleviate or eliminate Musical Ear Syndrome
Appendix 1 : The uncanny parallels between Charles Bonnet Syndrome(CBS) and Musical Ear Syndrome(MES)
Appendix 2 : Drugs that can cause hallucinations - auditory and otherwise


「7.Causes of Musical Ear Syndrome」(MESの原因)[小見出し](訳文)
1.難聴/音刺激の欠如
2.薬
3.ネガティブな感情的要因(不安・ストレス・心配、うつ状態)
4.疲れ(過労)
5.絶え間ない背景騒音
6.歯の詰め物&補聴器
7.脳異常
8.人工内耳移植手術
9.聴覚過敏症


「9.Alleviate or eliminate Musical Ear Syndrome」(MESの緩和または消去)[小見出し](訳文)
セルフ・ヘルプでできること:
1.脳障害とその他の病気を除外(rule out)するための適切な治療を求める
2.薬を除外(rule out)する/薬を変える
3."Musical Ear Syndrome"について知る
4.不安感・ストレスレベルを下げる(気にしない!)
5.音楽幻聴(音楽性の耳鳴り)に固着(fixate)しない
6.音楽幻聴(音楽性の耳鳴り)が偽のものだと自分の脳に信じさせる
7.生のリアルな音楽で音楽環境(Sound Environment)を豊かにする
8.社会的にアクティブになる


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Center for Hearing Loss Help (CHLH)
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"Musical Ear Syndrome(MES)"の説明は、Center for Hearing Loss Help (CHLH) という難聴者支援NPOのウェブサイト<Tinnitus & Other Phantom Sounds - Musical Ear Syndrome>に載っている。
CHLHのExecutive Directorは、上記の『Phantom Voices, Ethereal Music & Other Spooky Sounds (2nd Edition): Musical Ear Syndrome』の著者であるBauman博士。

ここでは、精神疾患による"Musical Hallucination"と、精神疾患のない人(難聴者など)が経験する"Musical Ear Syndrome"の特徴と両者の違い、"Musical Ear Syndrome"の定義(症状・原因)、対処法が載っている。

MESの原因(要約)
MESを引き起こす原因は数多く存在する。
最も重要な要因は適切な音刺激の欠如。理論的には、生活世界が静寂すぎるようになると、脳が自分自身で音を作り出す、ということである。
これが高齢者の難聴者にMESが多い理由である。第1にしばしばかなり重い難聴である。第2に、典型的に生活環境が静か。第3に、配偶者に先立たれた後一人で暮らしている。
さらに、難聴のため、社会的活動から退いており、充分な社会的相互関係を持っていない。これが静寂な生活にさらに拍車をかけている。
同時に難聴という状態に気鬱になり、自分の身に起きていることに不安になる。これがPhontom soundを悪化させている。
その他の原因は、薬と薬物治療である。高齢者は加齢するにつれ、ますます多くの薬を服用する傾向がある。不運なことに、音楽幻聴を引き起こす薬は数多い。
稀なケースでは、脳異常(腫瘍、感染症)が原因になる。


MESをコントロールする(要約)
主要な方法を上げると、
1.Musical Ear syndromeについてできる限り学ぶ。ファントムサウンド(頭の中で聴こえる音楽)に関する恐れや不安を減らすことができる。
2.音環境(environment with sounds)を豊かにする。脳に現実の生の音を聞かせることで、脳はPhontom noiseを作る必要を感じなくなる。
3.音楽を引き起こしているかもしれない薬の服用をやめる(医師の許可の下で)。
4.Phontom soundに固着(fixate)しない。その代わり、自分の生活を愛することに集中すれば、頭の中の音楽にあまり注意を払わなくなるだろう。
5.難聴で頭の中で音楽が聴こえる場合は、ポジティブな側面を考える。実際、頭の中の音楽に楽しみを見出している人もいる。補聴器やオーディオ機器なしで、他のどこで美しい音楽を聴くことができるだろう?


Musical Ear Syndrome Online Support Group [mdjunction.com]
"Musical Ear Syndrome (MES)"専門のオンラインサポートグループ。

 参考記事:Musical Ear Syndrome – Auditory Memory versus Auditory Hallucinations(Hearing Health & Technology Matters, LLC)


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ドキュメンタリー映画"Musical Ear Syndrome"
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"Musical Ear Syndrome"に関する非常に珍しいドキュメンタリー映画が英国で製作された。
全編で12分という短編映画で、英国最大の短編映画コンペティション<2011 Virgin Media Shorts film competition>で賞にノミネートされた。
Bauman博士は2004年に"Musical Ear Syndrome"という造語を作り出したが、"Musical Ear Syndrome"について実際に映画が製作されるとは想像だにしなかったと言う。

このドキュメンタリー映画は、リヴァプールの映画製作者Ian Gamester氏が、彼の祖母Cath Gamesterさんの病気をテーマに製作したもの。
Cathさんは、抗うつ薬を医師に処方されてから、"Musical Ear Syndrome"に苦しんでいる。
彼女は、何種類かの同じ歌が繰り返し聞こえてくるので、誰かが大音量でレコードをかけているのだと最初は思っていた。
1日24時間昼夜の別なく、頭のなかで音楽が止まることなく鳴り続けていると言う。

ドキュメンタリー映画"Musical Ear Syndrome"[Virgin Media Shorts 2012](英語音声、字幕なし)



ドキュメンタリー映画に関するオンライン記事
"Film-maker's focus on family nets him award nomination."[The Free Library]
"Skelmersdale film maker shortlisted for top award"[Ormskirk and Skelmersdale Advertise]

記事中のGamester氏の話によると...
-MESは、本質的には、聴力におけるギャップを脳が塞ぐ(plug)ときに起こるもの。
-もし、失われた周波数帯があると、脳がその隙間を埋めようとする。そして、声、または賛美歌や国歌などの良く知られた歌を作り出してしまう。
-Cathの場合は、複数の薬を投与されたことが引き金となった。
-彼女は、こもった音の音楽が聴こえてきたので、隣人が大音量で音楽をかけているのかと思ったが、ビンゴ会場に行くと国歌が聴こえてきたので、何か異常があるのだとわかった。
-病院で再検査した結果、"musical ear syndrome"だと診断され、原因は薬だと判明した。これは稀な副作用の一つ。

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利用上の注意
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記事中の日本語翻訳文は厳密な精度を期したものではありません。
正確な内容については、リンク先の原文をお読みください。

tag : 音楽耳鳴り オリヴァー・サックス

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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