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耳鳴り治療薬情報(4)イチョウ葉エキス
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◆イチョウ葉エキスの臨床試験報告の概要
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イチョウ葉エキスは、ドイツなどで耳鳴り治療用に医薬品として処方されていることで有名。
治療効果について研究論文を探してみたところ、その効果についてポジティブ・ネガティブの両方の臨床試験結果が発表されている。

ネガティブな結果の臨床試験としては、英国で行われた大規模な臨床試験(2001年)があり、耳鳴り緩和効果はプラセボと大差なかったという結果だった。

最近、イチョウ葉エキス関連の文献を探してみると、ドイツの研究者による文献レビューが発表されていた。
このレビュー論文では、過去の臨床試験報告の方法論の妥当性を評価し、結果の信頼性についても言及している。
要点は以下の通り。
1)イチョウ葉エキス「EGb761®」(Dr. Willmar Schwabe GmbH&Co.KG)は、複数の臨床試験で耳鳴り治療用の効果が確認されている。
2)「EGb761」以外のイチョウ葉エキスを使った臨床試験では、その有効性が否定されているが、試験・統計手法に方法論上の欠陥があり、これが影響しているかもしれない。
3)イチョウ葉エキスの効力は製品によって異なり、成分・製法・製剤・服用量などに左右される。ある特定の製品の臨床試験結果を異なるイチョウ葉エキス製品全体に適用して一般化するのは非合理的である。

また、日本の国立健康・栄養研究所が「イチョウ葉エキスの有効性および安全性」という見解を公表している。要点は以下の通り。
1)欧米では医薬品とサプリメントという品質の異なるイチョウ葉エキスが使用されており、臨床試験でその効力が確認されているのは、医薬品グレードのもの。市場に存在するイチョウ葉エキス製品に医薬品と同等の効力があるとはいえない。
2)日本で使われている製品はイチョウ葉エキスの抽出方法が欧米と異なるため、抽出方法の異なる製品が同一品質であるかどうかは判断できない。


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◆英国の大規模臨床試験に関する報告
 Effectiveness of Ginkgo biloba in treating tinnitus: double blind, placebo controlled trial(BMJ,2001)
Author:Drew S, Davies E.(Pharmacology Department, Division of Neuroscience, University of Birmingham)
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この論文は、耳鳴り治療におけるイチョウ葉エキスの効力を調査するため、2001年に英国で実施された臨床試験の結果報告。

坪野吉孝氏(山形さくら町病院精神科・早稲田大学大学院客員教授)の旧ホームページ「Tsubono Report」で、「NEWS イチョウ葉エキス、耳鳴りに効果なし。」というタイトルの日本語解説が、2001年に掲載されている。
それによると、イチョウ葉エキスのサプリメントは、「ドイツでは医薬品として承認されており、同国で処方される薬剤の5位以内に名を連ねている」というくらいポピュラー。
英国バーミンガム大学の研究グループが、慢性耳鳴りをもつ18-70歳の英国人1,121人に、イチョウ葉エキスを12週間投与したところ、耳鳴りに対しても、脳血流の循環不全と関係するその他の症状に対しても、プラセボに勝る効果はなかったと結論している。
ただし、原文を読むと、使用したイチョウ葉エキスは「LI 1370」(Lichtwer Pharma)

臨床試験の概要:
- 二重盲検・プラセボ対照試験。メールと電話(問題解決や回答照会の場合のみ)により実施。
- 被験者数:慢性耳鳴り患者1121人。
- イチョウ葉エキス「LI 1370」を使用。
- 実薬・偽薬とも、50mg/回を1日3回(合計150mg)、12週間服用。
- 評価方法:質問表による主観的評価。被験者は試験開始前、開始後4週間、終了時(12週間)、終了後2週間後に、質問表を返送。(聴覚的検査は実施せず)

臨床試験に対する批判(von Boetticher"Ginkgo biloba extract in the treatment of tinnitus: a systematic review.")
- 医薬品臨床試験の実施基準(GCP:Good Clinical Practice)の最小レベルさえ満たしていない。
- 医師と被験者との個人的コンタクトを要求していないため、被験者の存在・身元も確認不能で、医学的検査も聴覚検査も行われていない。
- スクリーニングした1426人の被験者のうち、さらに除外・辞退(withdrawn)した305人の理由が不明。被験者を1組のペアにしてコード付与するルールが一環していない。


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◆過去の臨床試験報告に関する文献レビュー
 Ginkgo biloba extract in the treatment of tinnitus: a systematic review.
Neuropsychiatr Dis Treat. 2011;7:441-7. Epub 2011 Jul 28.
Author:von Boetticher A. Ear, Nose and Throat Surgery, Lueneburg, Germany.
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数種のイチョウ葉エキスを使用した無作為化プラセボ対照試験も、近年出版された複数の文献レビューも、それぞれ異なる結果を示している。
この論文は、以上の臨床試験やレビューについて、方法論の質的評価を行い、個々のイチョウ葉エキスに対する有効性のエビデンスの概略を提示することを目的とする。(以下は抜粋・要約)

(1)Pubmed検索による文献調査およびメーカーへの情報照会の結果、この論文のスクリーニング基準をクリアしたのは無作為化プラセボ対照試験8件。
いずれも全試験で規格品イチョウ葉エキス「EGb761」が使用されており、プラセボに対して統計的に有意な優越性を示していた。

(2)3件の無作為化プラセボ対照試験については、研究実施とレポーティングのいずれか、または両方の過程で、大きな欠陥があったため、レビューから除外した。
具体的には、イチョウ葉エキスの種類が不明、投薬量が過少、投薬期間が短かすぎる、被験者の面談による身元確認・医学的検査が実施されていない、統計データの取扱いに一貫性がない、被験者の合併症による主観的評価への影響、などの問題がある。

(3)イチョウ葉エキスの効力に関して近年公開された文献レビューでは、プラセボに優る効果がないと結論づけたものが数件ある。それらは、異種のイチョウ葉エキスを研究した論文を無批判に一まとめにして論じたり、研究方法の欠陥について言及していない。反対に、「EGb761」に関する研究結果のレビューでは、その有用性を認めているものがある。

(4)イチョウ葉エキスの効力は、成分(抽出プロセスで決まる)・有効成分の生物学的利用能(組成と生薬製剤で決まる)・服用量に依存する。同じ植物から異なる製造プロセスで製造されたイチョウ葉エキスは、生物学的同等性があると想定する(assume)ことはできない。
従って、異なる種類のイチョウ葉エキスを使った臨床試験結果をひとくくりにして、全体的な結論を導きだすのは非合理である。


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◆イチョウ葉エキス「EGb761」について
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「EGb761®」は、ドイツのDr Willmar Schwabe GmbH & Co KG Pharmaceuticals(Dr.W.シュュワーベ製薬)が製造するイチョウ葉エキス製品。(EGB:Extractum Ginkgo biloba)
海外で販売されている製品名は、「テボニン EGb761®(Tebonin EGb761®)」
「EGb 761®」はドイツを含む数カ国で認知症、耳鳴り・めまい・末梢動脈閉塞性疾患などの血管疾患治療薬として承認されている。複数段階の製造プロセスは特許取得ずみ。服用後の個々人の反応は予測できない。

"Review shows: EGb 761® optimizes standards of life for tinnitus patients!"
Dr.W.シュワーベ製薬サイトでも、上記のvon Boetticherの文献レビューが紹介されている。

Dr.W.シュワーベ製薬の日本法人、日本シュワーべ・グリーンウエーブ(株)は、2008年に国内販売権をアサヒアンドヘルスケア(株)へ譲渡。イチョウ葉エキスの名称を「シュワーベギンコ」に統一した。
「EGb761®」は「アセトン」でエキスを抽出しているが、「シュワーベギンコ」は、日本の食品衛生法の規定により、「エタノール(アルコール)」抽出している。


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◆イチョウ葉エキスの品質と使用上の注意について
 「イチョウ葉エキスの有効性および安全性」
  (独立行政法人国立健康・栄養研究所)

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耳鳴り治療に限定してはいないが、イチョウ葉エキス製品の品質・有効性の違いについて見解が公表されている。(以下は抜粋・要約)

-ヨーロッパで使用されているイチョウ葉エキスには、医薬品グレードと食品グレードがあり、品質面で異なる。
-ヒトの臨床試験を行っているのは医薬品グレードのもの。
-ドイツの植物由来の薬品を評価する委員会(通称Commission E)が承認しているイチョウ葉エキスは、製造法、フラボノイド・テルペノイド・ギンコール酸の量が規格に合致したもののみ。
-海外のイチョウ葉エキスの規格品基準で一般的なのは、「フラボノイド類を24%以上、テルペノイド6%以上を含有し、ギンコール酸の含有量が5ppm以下」。
-製造法は、欧米ではアセトン抽出、日本ではエタノール抽出(食品衛生法の関係でアセトンが利用できない)。アセトン抽出品とエタノール抽出品が同等かどうかの判断はできない。
-イチョウ葉エキスに関する有効性と安全性の研究は、医薬品グレードのイチョウ葉エキスを利用した研究結果であり、市場に存在するイチョウ葉エキス関連商品で同等の効果があるとは言えない。
-さらに、ある薬理作用があるということは、過剰に摂取すれば、別の望まない効果が発現することが予想できる。
-イチョウ葉エキスを適切に利用する上でのポイントは、1)規格基準があり、その製品の品質に問題がなく、安全性がある程度把握できるものを利用すること、2)効果をあまりにも期待して過剰に摂取しないこと、3)疾病があり、医薬品を用いた治療を行っている人は、医薬品を用いた治療を優先させ、また医師等の専門家の助言を受ける。

「健康食品」の素材情報データベース-イチョウ (国立健康・栄養研究所)
「イチョウ」の成分特性・品質、製剤の有効性・安全性に関する臨床試験結果概要、参考文献などが記載されている。

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◆参考情報
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イチョウ葉エキス情報
「Ginkgo Biloba leaf extract」(Herbal Medicine: Expanded Commission E Monographs)[American Botanical Council]
米国植物協議会(American Botanical Council:ABC)が出版しているドイツのコミッションEのメディカルハーブ情報。ABCのウェブサイトで閲覧できる。
イチョウ葉エキス情報は、コミッションEが1994年に出版し、新しい科学的研究に基づき修正されたものを、ABCが2000年に出版したデータ。
「コミッション E」は、ドイツで販売されるハーブの安全性と効能を審査するためにドイツ政府が設立した委員会。科学者、毒物学者、医師、薬剤師から構成。300種以上のハーブの使用法、副作用、薬物相互作用に関する情報を公開している。

イチョウ葉エキスについて(FAQ)[熊本県薬剤師会]
健康食品と医薬品の違い、成分、効能・効果、禁忌、相互作用、用法・用量等の情報。

日本国内のイチョウ葉エキスに関する規格基準
イチョウ葉エキス健康補助食品の規格基準((財)日本健康・栄養食品協会)
日本国内の規格基準。これを満たした食品には「JHFAマーク」がつけられている。

イチョウ葉に含まれるギンコール酸について
アレルギー物質であるギンコール酸がイチョウの葉と外種皮に多く含まれている。
ドイツのCommission Eによる医薬品規格では、イチョウ葉エキス中の含有量は5ppm以下。
イチョウ葉の有害成分ギンコール酸について [生薬、薬用植物(薬草)と身近な野生植物のページ]
参考:EGb761(イチョウ葉エキス)の薬理活性について [同]

イチョウ葉食品に関する製品テスト
イチョウ葉食品の安全性-アレルギー物質とその他の特有成分について考える-(サマリー、html)報告書全文(PDF)[2002年11月、国民生活センター]


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備 考
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日本語訳は厳密な精度を期したものではありません。
英文および日本語情報とも、個人的な視点によって抜粋・要約したものです。
正確な内容は、日本語および英語の原文をお読みください。
また、この記事は、本文中に記載している医薬品・サプリメントの摂取・購入を推奨するものではありません。


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更新履歴
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2012.2.5  初稿作成
2012.3.16 文献レビュー等の内容を追加し、全面的に加筆修正
2012.3.18 参考情報追加
2012.3.20 参考情報追加
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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好きな写真家:アーウィット

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