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耳鳴りと栄養・サプリメント(4)GABA、バレリアン
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GABA サプリメント 
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サプリメントのなかで、GABAやイチョウ葉エキスは耳鳴りに効くと言われている。
米国では、GABAやイチョウ葉などをミックスした耳鳴専用サプリメントが販売されている。

イチョウ葉エキスについては、ドイツで使われている医薬品「GEb751」(Dr.Schwabe製薬)の効力が複数の臨床試験で確認されているが、サプリメントについてはデータがない。
医薬品とサプリメントでは品質が異なるため、医薬品で効力が確認されていたとしても、サプリメントが同じ効力を持っていることにはならない。

国立健康・栄養研究所のデータベース情報によれば、サプリメントで摂取するGABAにおける耳鳴り治療効果の有無について、信頼性の高い臨床試験データ・科学的論文が今のところ発表されていない。
 「健康食品」の安全性・有効性情報:γ-アミノ酪酸(ギャバ)(「健康食品」の素材情報データベース)[(独)国立健康・栄養研究所]

GABAは、「血液脳関門を通らないため、食べ物で摂取しても脳には到達しない」と言われている。
「血液脳関門」の用語解説 :日本薬学会)
従って、体外からサプリメントとしてGABAを摂取しても、それが脳内に取り込まれることはない。
しかし、一方では、GABAを摂取すると、血圧やコレステロール値が低下したり、ストレスマーカーであるクロモグラニンAやコルチゾールの増加が抑制されたり、低下するというストレス抑制効果を示すデータが実際に存在している。

この矛盾に対する説明として諸説あるらしく、高田明和浜松医大名誉教授の解説では、「血液中に溶け出したGABAは腸管などに作用し、腸管から脳中枢に行く迷走神経系を刺激することで、リラックスなどの効果をもたらしている」と説明している。(前編の1ページ目)
 「GABA成分が働くメカニズムとは(前編) 高田明和浜松医大名誉教授に聞く」[日経ビジネス]

また、横越英彦静岡県立大学教授の説明では、”GABAを与えると成長ホルモンが増加ため、GABAの投与量に比例して大脳皮質や小脳のたんぱく質の合成速度が上がることが、脳機能に与える影響の原因ではないか"としている。
 「脳機能に影響を与える食品成分」 [社団法人全国はっ酵乳乳酸菌飲料協会]

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参考情報:バレリアン
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(1)バレリアンに関する情報データベース
ドイツの薬用植物の評価委員会ミッションEは、バレリアンの「不眠症」、「精神不安」などに対する使用を承認している。
耳鳴りに効くというわけではないが、いろいろ情報を調べると、GABA受容体と関係があるらしい。
バレリアンに関する詳しい情報が記載されているのは、日本語サイトでは国立健康・栄養研究所、海外の英文サイトでは米国国立衛生研究所のデータベース。

「健康食品」の素材情報データベース:セイヨウカノコソウ(俗名:バレリアン)[独立行政法人国立健康・栄養研究所]
「Dietary Supplement Fact Sheet-valerian」(National Institutes of Health:アメリカ国立衛生研究所)
バレリアンの成分とGABAとの関連性に関して、過去の複数の研究結果が紹介されている。

(2)バレリアンの成分と作用、有効性、安全性
バレリアンの成分と作用
-バレリアンに含有されている多くの化学的成分が特定されてるが、催眠効果をもたらしているのがどれなのかは、動物実験でもin vitro試験でも解明できていない。
-単一の有効成分ではなくて、複数の成分が独立して、または相乗的に作用した結果ということがありえる。

-バレリアンの催眠効果をもたらしている主要な成分は2つのカテゴリーだと提示されてきた。最初のカテゴリーは、バ​レ​レ​ン​酸​と​そ​の​誘​導​体を含む精油の主要成分を構成しているもの。動物実験で確認されているが、これらをほとんど含まないバレリアン抽出物も催眠効果があるため、他の成分が催眠効果をもたらしてい可能性がある。
-2つめのカテゴリーは、イリドイド由来のvalepotriatesを含むもの。valepotriatesとその誘導体は、in vivo試験で催眠作用は確認されたが、貯蔵や水溶液環境では不安定で崩壊するため、その作用を評価するのが困難。
-バレリアン抽出液がもたらしているかもしれない催眠効果のメカニズムは、シナプス間隙中のGABAを増加させるというもの。
-シナプトソームを使ったin vitro試験の結果、バレリアン抽出物は脳の神経終末からGABAを放出し、GABAを神経細胞内に再取り込みされるのをブロックする。さらに、GABAを破壊する酵素をバレレン酸が阻害する。
-バレリアン抽出物は量的には催眠効果を引起すに充分な量のGABAを含有しているが、GABAが血流脳関門を越えて催眠効果をもたらしているのかはどうか不明。
-グルタミン酸が水溶液中に存在するが、アルコール抽出物中には存在せず、血流脳関門を越えてGABAに変換されるのかもしれない。
-以上の成分が植物中に含まれるレベルは、植物が収穫される時期に左右されており、バレリアン製剤の含有量は一定していない。

バレリアンの有効性に関する臨床試験結果
異なる臨床試験研究結果が公表されており、その解釈を複雑なものにしているのは、臨床試験の被験者が少なく、使用したバレリアンの種類や投薬量が異なるため、試験結果がそれぞれ違っていること、または、被験者の高い脱落率がもたらす潜在的なバイアスを考慮していなかったである。
全体的に言えば、バレリアンの催眠効果について過去の臨床試験のエビデンスは決定的なものではない。

(以上、出典:「Dietary Supplement Fact Sheet-valerian」(National Institutes of Healthを要約)


バレリアンの安全性
カナダ保健省から出されたナチュラルヘルス製品に関する注意喚起情報(090116)によれば、バレリアン含有製品について、1990年1月1日~2008年5月31日までに31件の有害事象の報告があり、そのうち15件が幻覚や悪夢など精神的なもの。

(3)バレリアンに関する臨床試験報告と論文レビュー
バレリアンに関しては、かなり多くの臨床試験報告とレビューが公開されている。
いくつかピックアップしてみると、2002年のドイツの臨床試験では、不眠症やその他の睡眠障害に対してバレリアンの有効性が示されている。
しかし、その他の臨床試験では、主観的指標(睡眠の質)の改善には効果があるが、客観的指標では効果が確認できない、または、プラセボと効力では大差がない、などバレリアンの有効性を否定する研究も多い。
この臨床試験結果のばらつきについては、使用したバレリアンの品質の相異、試験方法の違い(用量や服用期間など)、有効性を判断する指標の測定方法の違い、プラセボの不使用などが原因として考えられるという分析がある。

Efficacy and tolerability of valerian extract LI 156 compared with oxazepam in the treatment of non-organic insomnia--a randomized, double-blind, comparative clinical study.
Eur J Med Res. 2002 Nov 25;7(11):480-6.
Ziegler G, Ploch M, Miettinen-Baumann A, Collet W.(Institute fur Psychomatische Forschung,Germany.)
被験者:18-73歳、202名。不眠症の期間は平均3.5ヶ月間。
試験方法:マルチセンター、二重盲検、無作為化、並行群間比較試験。
用量:バレリアン抽出物「LI 156」(商品名:Sedonium)を600 mg、または、oxazepamを10 mg。
投薬期間:6週間
試験結果:バレリアン投与群は、睡眠の質(Sleep quality(SQ)が向上し、oxazepam投与群と少なくとも同等の効力を示した。他の指標(覚醒時のfeeling of refreshment(GES),夜間の精神的安定度および疲労度、夢の記憶,睡眠の持続時間など)でも、両方とも類似の効果が確認された。

Effectiveness of Valerian on insomnia: a meta-analysis of randomized placebo-controlled trials.(meta-analysis)
Sleep Med. 2010 Jun;11(6):505-11. Epub 2010 Mar 26.
Fernandez-San-Martin MI, Masa-Font R, Palacios-Soler L, Sancho-Gomez P, Calbo-Caldentey C, Flores-Mateo G.(Servicio de Atencion Primaria Litoral, Institut Catala de Salut, Barcelona, Spain.)
過去のバレリアン製剤の無作為化プラセボ比較試験(RCTs)を検索・スクリーニングし、18件を抽出。
量的または客観的測定データでは、バレリアンは睡眠改善効果を示していなかったが、質的なニ者択一の(qualitative dichotomous)結果では、バレリアンが不眠症の主観的改善に効果がありうることを示している。
研究グループは、より効果が期待できる他の治療法を調査することを推奨。

Complimentary and Alternative Medicine for Sleep Disturbances in Older Adults(Review)
Clin Geriatr Med. 2008 February; 24(1): 121–viii.
doi: 10.1016/j.cger.2007.08.002
Nalaka S. Gooneratne(Division of Geriatric Medicine, Center for Sleep and Respiratory Neurobiology, University of Pennsylvania School of Medicine)
臨床試験上の論点は、使用しているバレリアンの成分が違う点。複数の無作為化プラセボ対照試験で、400~900mgのバレリアンが使用されている。
結果にばらつきあり。主観的評価では改善効果があっても、客観的評価では効果が高くない。プラセボ効果が高すぎてバレリアンとの主観的改善度に有意が差がなかった試験もあり。
過去の文献サーベイの結論として、バレリアンは複数の無作為化プラセボ対照試験で、特に2週間以上服用した時に、主観的評価では穏やかな睡眠改善のエビデンスがあるように思える。客観的試験では結果に一貫性がなく、効果はほとんどないか、または皆無。いくつかの報告では徐波睡眠が増えている。
既存文献では、方法論の制約、非標準化製剤の使用、小規模試験のため、良質で規格化されたバレリアンが開発されれば、さらに大規模な研究が必要である。

A systematic review of valerian as a sleep aid: safe but not effective.(Review)
Sleep Med Rev. 2007 Jun;11(3):209-30.
Taibi DM, Landis CA, Petry H, Vitiello MV.
Women's Health Nursing Research Training Grant, Department of Family and Child Nursing, University of Washington
バレリアンの有効性に関する診療試験結果をデータベース検索で調査したところ、36論文(37試験)が抽出された。
うち29件が有効性と安全性のための比較対照試験、8件が安全性のみを評価した非盲検試験。
大半の研究でバレリアンとプラセボでは、睡眠障害または不眠症患者でも、健康な被験者でも、その効力に有意な差が見られなかった。
近年の研究は、方法論上非常に厳格であり、バレリアンが副作用がまれな薬草であるという説は支持しているが、不眠症患者ための睡眠補助として、バレリアンの医学的有効性は支持していない。

Treating primary insomnia - the efficacy of valerian and hops.(Review)
Salter S, Brownie S.Aust Fam Physician. 2010 Jun;39(6):433-7.
過去のバレリアンに関する臨床試験報告の簡易な一覧リストあり。試験概要と結果が比較できる。
 試験概要の比較項目:試験実施年、被験者数、年齢(中間値)、投薬量・期間
 試験結果の比較項目:合計睡眠時間、入眠までの時間、徐波、中途覚醒、睡眠の質
研究成果にばらつきが多いため、研究結果の比較と解釈が難しい。
各研究設計の相違点は、睡眠障害の定義と測定方法、被験者のスクリーニング基準、投薬量・期間。
さらに、エキス抽出方法によって、異種のハーブに含まれる有効成分の組成・凝縮度が異なることも、試験結果の相異をもたらしているかもしれない。植物の組成は、栽培方法、種、気候と季節、地理上のロケーション、抽出技術によって変化する。
多くの研究の制約条件は、投薬期間の短さ(例:1日のみ)、被験者数の少なさ、クロスオーバー試験でのウォッシュアウト期間が不十分、薬草、ハーブエキス製剤方法の違い(例;エタノール抽出vs水溶液)、投薬量の違い、睡眠パラメータを測定するためのツールの違い、プラセボの不使用。

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備 考
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入手した情報を読んだ個人的な印象としては、GABAのサプリメントを摂取しても、GABAが脳内にそのまま取り込まれて神経伝達物質として使われることはないため、耳鳴りを引起している脳内の神経活動を抑制する働きはないように思える。
迷走神経などの別の神経系統を通じて、精神安定効果はあるようなので、耳鳴りの聞こえ方や感じ方が変化し、耳鳴りが緩和されたと感じることは、ありうるのかもしれない。
信頼性の高い臨床報告が見当たらないので、GABAのサプリメントやGABA含有食品を摂取しても、耳鳴り緩和効果があるかどうか、かなり疑わしい気はする。

バレリアンは、臨床試験結果のばらつきが大きく、臨床試験で効力が確認された特定の医薬品を除いて、品質が異なるサプリメントを摂取しても、安定した催眠効果が得られるのかどうか、わからない。

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利用上の注意
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日本語訳は厳密な精度を期したものではありません。
正確な内容は英文原文をお読みください。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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