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耳鳴り治療のための認知行動療法(1) バイオフィードバック療法
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バイオフィードバックの定義
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バイオフィードバックは、健康やパフォーマンスを改善する目的で、個人が自らの生理学的活動を変化させる方法を習得できるようにする一つのプロセスである。
人間の体内活動(脳波、心臓の機能、呼吸、筋肉活動、皮膚温など)は、従来は制御することが不可能であると考えられてきた。
この生理学的活動を精密機器により測定し、その情報を画像や音の形で使用者が意識できるよう、迅速かつ正確に呈示(フィードバック)する。
この情報のフィードバックは、しばしば思考、感情、行動面の変化と結びついて、望ましい生理学的変化を起すことにつながり、最終的には、計測機器を継続的に使用しなくても、これらの変化が持続する。
バイオフィードバックは、医療面では、気管支喘息,高血圧,不整脈,頭痛,てんかん,手足の冷え,過敏性腸 症候群,円形脱毛症,自律神経失調状態など種々の病態の治療やその予防に活用されている。

<バイオフィードバックの定義>
日本バイオフィードバック学会|バイオフィードバックとは?
Association for Applied Psychophysiology and Biofeedback|About Biofeedback



<参考>バイオフィードバックで用いる指標
1) 筋電図 (EMG) <筋肉の緊張・弛緩をみる>
2) スキンコンダクタンス (SCL) <情動性発汗をみる>
3) 皮膚温 (TEMP) <皮膚の温度をみる>
4) 容積脈波 (BVP) <末梢血管の収縮拡張をみる>
5) 呼吸 (RESP) <呼吸のパターン・深さ・速さをみる>
6) 心電図 (EKG) <心臓の働きをみる> (バイオフィードバックでは主に心拍数と心拍変動)
7) 心拍変動 (HRV) <自律神経の機能の指標>
(出典:[COLUMN <MIND-BODY THINKING.COM-こころとからだの対話->])


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耳鳴り治療のためのバイオフィードバック療法概要
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"Biofeedback & Neurofeedback: Tools to Reduce Tinnitus"
(耳鳴緩和手法としてのバイオフィードバックとニューロフィードバック)[Arches Natural Products,Inc] (以下、要約)

バイオフィードバック療法の手順
バイオフィードバックとニューロフィードバックは、耳鳴緩和に役立ちうる相互に関連性のある療法。
両者が拠っている基本原則は、一旦技術的にトレーニングされれば、以前はコントロールできないと考えていた身体の自動的な機能に対し、影響を与える能力を持つようになる、ということ。
この2つの療法では、感知できる身体的信号をピックアップする多種類のセンサー機器を使用し、電極を患者に付けて、機器と接続する。
ピックアップされた信号はコンピューターに送られ、ストレス、皮膚温、血圧、脈拍、脳波のレベルを表わす視覚的または音声信号として、表示される。
患者は、思考や感情を変化させて、画面上の変化と関連づけるように促され、コンピューターは患者の思考・感情が変化した結果を"フィードバック"する。
数週間で、患者は意識的に身体的機能をコントロールする方法を習得する。

バイオフィードバック療法は、ニューロフィードバック療法よりも長期間にわたり実践されてきた療法であり、多くの症状に対してその有効性を示す40年間のデータの蓄積がある。
例えば、一方の手の温度を他方の手より5-10度(華氏?)上昇させるように訓練することができる。
動物でも訓練可能。ある実験では、食物報酬を得るために、実験用ラットが両耳の間で温度差を生み出すことができるように訓練した。

バイオフィードバックで訓練を受けた人は、自分の手を普通の時よりもすぐに温かくすることができるし、偏頭痛をショート(short-circuit)させるにも効果がある。


バイオフィードバック療法で使用される測定技術
バイオフィードバックで使われている測定技術は主に3種類:筋電図(EMG)、温度、電気皮膚反応(GSR)。それ以外に、脈拍や血圧モニターなど。

筋電図(EMG)
筋肉の緊張を測定する。
2つの電極をモニターする筋肉の上に付ける。最も一般的に使われる筋肉は額の前頭筋、そしゃく筋(顎の筋肉)、大菱形骨(ストレスと感じたときに曲げる(hunch)する肩の筋肉)。
電極が筋肉の緊張をピックアップすると、センサー装置がカラーのライトや音で信号を出すので、自分の筋肉活動を継続的に目や耳でモニターできる。
この身体内のプロセスにさらに気づくようになるにつれ、日常生活でいつ緊張が始まり増していくのかを認識し始める。
緊張が増して他の身体的問題を引起す以前に、緊張をコントロールするように、バイオフィードバック技術を使うことができる。
EMGが活用されているのは、緊張性頭痛、腰痛、頚部痛、耳鳴、ストレス関連病(ぜんそくや潰瘍など)。

温度
皮膚温をモニターすることで、ある種の循環障害に有効。
通常、センサーを足や利腕の中指・小指につける。
緊張・不安状態になると、血液が筋肉や内臓といった身体の内側に還流するため、皮膚温は低下する。
皮膚温測定はストレスマネジメントを学ぶために役立つ。

電気皮膚反応(GSR)
皮膚電気反射(EDR)としても知られている。
汗腺の活動と関連している皮膚内の伝導度を測定する。
感情的になればなるほど、汗腺はより活発化し、皮膚の伝導度が大きくなっていく。
GSRは恐怖症、不安症、過剰発汗、時に吃音の治療に有効。嘘発見器にも使用。

バイオフィードバック・セッションは、通常30~60分間。
治療期間は症状によって左右されるが、一般的には約15セッションが上限。
バイオフィードバックは、他のリラクゼーション技術、催眠療法、心理療法などと組み合わせて行うと、さらに効果的。


耳鳴り治療のためのバイオフィードバック療法
バイオフィードバック療法は、House Ear Institute in Los Angeles と Tinnitus Clinic at Oregon Health Sciences Universityで、耳鳴治療に使われている。

House Ear Institute:
耳鳴患者に対し、1時間のバイオフィードバックを10~12セッション実施。
セッションから6~12ヶ月後フォローしたところ、患者の半数以上が改善、悪化した患者はゼロ、数人の患者は劇的に改善した。

Cornell University:
中程度~重度の慢性耳鳴患者7人に、毎週バイオフィードバックを行う5ヶ月のプログラムを実施。
耳鳴りの大きさに変化はなかったが、患者たちは訓練に満足感を得ていた。3人は耳鳴に対処するうえで、実質的に心理学上の効果があり、2人は緩やかな改善、残る2人はmodest gains(穏やかな効果)。

Dr.Murray Grossan:
1970年代に耳鳴りマネジメントにおけるバイオフィードバックの効果を報告した最初の研究者の一人。
彼は、基本的なバイオフィードバック療法は、自宅で数分間で行うことができる、この療法を使った患者で良い成果が得られたと記している。
耳鳴患者は、鏡の前に立って自分の顔がリラックスする見ることで、リラックス状態と通常状態の違いがわかる。
4秒間息を吸い、6秒間息を吐き出す。息を吸うことよりも長く息を吐くことが重要で、タイミングはそれほど大事ではない。自分の顔が全体的にリラックスして顎が下がってきて口が開く(drop open)ようにする。この練習を10分間、週に2回行う。より深くリラックスしていると感じ、そうなることがずっと容易になるまで続ける。
最初の訓練期間後、2-4週間の間、1時間につき1分間、この訓練を行うと耳鳴が改善するはず。
この療法は顎関節(TMJ)患者にも良い効果があるという。


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バイオフィードバック療法による耳鳴り治療の論文
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文献レビュー
"Bhramari Pranayama and Alternative Treatments of Tinnitus: In Pursuit of the Cure"(By Sidheshwar Pandey)[159頁~。 画面上は7/18頁]

バイオフィードバックを耳鳴り治療に応用した報告例は、1977年のHouse他による。
Grossanの論文(1976年)では、身体機能情報を電子的に表示する装置を使って、バイオフィードバック療法により、患者は自分自身のある身体機能をコントロールすることを習得。
Shulmanの論文(1997年)では、患者が自分自身のストレスレベルや耳鳴りをコントロールするのに役立つリラクゼーション手法を使って、患者を訓練するよう設計されている。
Podoshin他の論文(1995年)では、リラクゼーション手法が筋肉の緊張緩和にどう影響しているか観察するために、EMGの活動データが使われている。
このような手法を使ったバイオフィードバックが、耳鳴りに効果があるというポジティブな報告は複数発表されている。


バイオフィードバック療法に関する論文検索
- Pubmed検索結果(英語論文)(検索語:biofeedback AND tinnitus )
- 国立情報学研究所(NII) CiNii検索結果(日本語論文)(検索語:バイオフィードバック AND 耳鳴)
※上記の検索結果はノイズを含む。ニューロフィードバックの文献の一部が含まれている。


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臨床試験
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臨床試験
"Psychophysiological Treatment of Chronic Tinnitus"
(公式研究名称:"Evaluation of Psychological and Psychophysiological Effects of a Biofeedback-Based Cognitive-Behavioral Psychotherapy for Chronic Tinnitus-Sufferers")
Philipps University Marburg Medical Center/German Research Foundation

研究期間:2005年3月~2008年3月
被験者数:130名
-耳鳴の重度、精神的沈滞、知覚された耳鳴りの大きさの計測、他の心理学的変数(抑うつ度や自己効力感)を療法グループと対照グループで比較。
-処置前後・待機中に、異なるストレス条件下での精神生理学的反応(頭と肩の筋肉活動(EMG)、皮膚温、ガルバニック皮膚反応)を計測する。
-耳鳴患者と健康な被験者との筋肉活動を比較。(耳鳴患者は、健康な人よりも頭や肩の筋肉活動がハイレベルかどうか、研究されていなかったため)
-療法の効果に対して、主観的な病気認識の影響度を評価。 (身体的な病気という認識をもつ患者は、心理的な病気という認識のある患者よりも、精神生理学的療法の方がより効果が高いという仮説がある)


臨床試験報告
"Biofeedback-based behavioral treatment for chronic tinnitus: results of a randomized controlled trial."
J Consult Clin Psychol. 2008 Dec;76(6):1046-57.
Weise C, Heinecke K, Rief W./Section for Clinical Psychology and Psychotherapy, Philipps University of Marburg,

-耳鳴り患者の多くは、耳鳴りが器質的要因によるものだと信じているため、心理療法よりも医学的療法を探し求めている。
-耳鳴はネガティブな評価, dysfunctional attention shift、精神生理学的活動の高まりに関連していることが明らかになっているため、認知行動療法やバイオフィードバックが治療法として一般的に提案されている。
-130人の耳鳴患者。ランダム化試験。療法群と待機リスト対照群。
-試験方法:3ヶ月にわたるバイオフィードバックベースの行動療法を12セッション実施。療法群が予定された治療を終了した後、待機リスト対照群が療法実施。
-結果:耳鳴りの煩わしさ、毎日の音量評価、「コントロールできる」という感覚について、明らかな改善。改善効果は6ヶ月間のフォローアップ期間中持続。効果規模は中~大。
-この療法は、精神身体的な相互関係を明示することにより、患者のもつ身体的な病気という認識を、より心身症的な視点へと変えることが可能。


関連する臨床試験報告
"Physiological and psychological stress reactivity in chronic tinnitus."
J Behav Med. 2008 Jun;31(3):179-88. Epub 2008 Jan 12.
Heinecke K, Weise C, Schwarz K, Rief W./Section Clinical Psychology and Psychotherapy, Philipps-University of Marburg,Germany

-目的:耳鳴りのない対照群と比べて、耳鳴患者は生理学的覚醒レベルを増加させ、より激しいストレス反応パターンを示しているかどうか、また、心理的緊張感を増大させているかどうか、研究する。
-耳鳴患者70人、対照群55人。数種類のストレステストを実施。
-筋肉活動、末梢の生理学的覚醒、緊張度を評価。
-結果:
1)ストレステスト中、対照群に比べて、有意な緊張感の高まりを示した耳鳴群の被験者はほとんどなし。生理学的反応パターンもグループ間で有意な差異はない。
2)生理学的データは、過剰反応仮説を部分的にしか支持していない。緊張感の報告と生理学的データとの関連性は極めて少ない。
3)耳鳴患者はストレスに曝されている間、不適応評価を進めていたが(maladaptive appraisal processes)、生理学反応は僅かに影響を受けたのみ。
-代償機能不全の耳鳴症状がある患者用治療プログラムは、ストレス状況下での評価プロセスと対処メカニズムを考慮するべき。


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備考
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記事中の日本語訳文は、英文情報を抜粋要約したものです。
正確な内容については、英文原文をお読みください。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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