クセナキス/Herma,Evryali,Mists 

2012, 04. 20 (Fri) 18:00

ギリシャの現代音楽作曲家クセナキスは、建築家としてル・コルビュジエに協力して、斬新な設計手法を考案したという、極めて珍しい経歴を持っている。
大学で数学と物理学を学んだので、それを建築に生かすことができたし、また、メシアンに数学を作曲に応用するようにアドバイスされて、数学の論理を援用した作曲技法と作品を生み出した。

クセナキスは「音楽を物理的音響現象として数学的に捉える立場に立ち、コンピュータを駆使する独自の創作技法を用いて活動を続け、20世紀音楽史の中にあって独自の世界を開示した作曲家」として、稲盛財団の第13回「京都賞」を1997年に受賞。
受賞記念講演は「我が道」。(イアニス・クセナキス 記念講演会講演録(日本語) [PDFダウンロード])
クセナキスがフランスへ渡るまでの人生について語っている。
数学と物理の勉強がしたかったため、アテネ工科大学へ入学。初めから建築家を志していたわけではなかったらしい。音楽が好きで、それも演奏ではなく、作曲を学びたいことが自分でもわかってきたという。
第2次大戦中、ギリシャで戦闘中に負傷後、フランスへ渡り、そこで建築家ル・コルビュジェの事務所に就職。
彼は技師として計算ができるので、建築と音楽の二つの分野に従事するという類稀な人生が始まった。
講演では、この後で、彼の音楽理論・作曲手法が年代に沿って紹介されている。


<クセナキス関連情報>
Iannis Xenakis(Friends of Xenakis Associationの英文サイト)
ヤニス・クセナキス(Wikipedia)
前衛爆裂現代音楽 ヤニス・クセナキス
◎IANIS XENAKIS(イアニス・クセナキス)の音楽について(ごく簡単な概要)
「ヤニス・クセナキス研究 建築と音楽をつなぐパラメータ設定についての考察」加藤伸昭[PDF]

                      

クセナキスのピアノ作品で有名なのは、《Herma》と《Evryali》。
彼のピアノ作品を聴いていると、数学的というか、幾何学的な音の配列やパターンを視覚的に連想してしまうようなところがある。
管弦楽曲だと、その色彩感と音響の多様さがピアノ作品よりもよくわかるはず。


 《Evryali》(1973年)
私が聴いた3曲のピアノ独奏曲のうち、一番聴きやすいのが、《Evryali》。
ジャワ島のガムラン音楽を取り入れた作品。
初めはミニマル的な主題が登場するけれど、これがかなり多彩に変形・展開していく。
抽象的な音のパタ-ンで様々に組み合わされていくので、ロマン派音楽のような歌謡性はないけれど、抽象的な世界独特の歌謡性(らしきもの)が感じられる。
それに、色彩感もリズムも豊かで、和声の響きも歪みが少なくて綺麗。まるで、音符たちが自由におしゃべりしたり、ダンスしているようで、とても面白い。
ある種の現代音楽に感じられるような曖昧さや混沌としたつかみどころの無さは感じない。
逆に、どこまでも明晰で、幾何学的な線・図形が組み合わされているようなイメージが浮かぶ。
これもクレナキス特有の数学的な作曲技法のせいだろうか。
それに、ジャズのインプロヴィゼーションを現代音楽風に演奏したら、こういう音楽になってもおかしくない気もしてくる。

Iannis Xenakis - Evryali, for solo piano (Claude Helffer)




 《Herma》(1962年)
数学の集合論を応用した作品。
《Evryali》とは違って、非パターン的。硬くてキラキラと煌くガラスの破片があちこちに飛び交っているようで、まさしく「音の蜘蛛」のよう。
一般的に、現代音楽を演奏する場合は楽譜を置いていることが多い。
さすがにこの曲は暗譜しないと弾けないと高橋さんは言っているし、演奏風景をみると本当にその通り。

Yuji Takahashi_Herma(Iannis Xenakis)



<参考記事>
Xenakis "Herma"の解説と演奏後記(楽譜の風景)
高橋悠治という知性①‐悠治/ヘルマ(ヤニス・クセナキス)(酔夢亭通信・awamusica53)




 《Mist》(1981年)
曲名どおり、霧のもやもやした塊りが変幻自在に動き回っているイメージ。
硬質の高音は、まるで霧の結晶のような鋭い粒子が煌きながら舞っているような響きと動き。
《Herma》よりは視覚喚起的。《Evryali》のようなカラフルな色彩感やリズムのバリエーションが少ないので、少しパタ-ンが単調に聴こえる。

Iannis Xenakis- Mists (1/2) (Aki Takahashi) 



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