*All archives*



マインダース ~ 歌曲ピアノ編曲集(シューベルト、シューマン、ブラームス、マーラー)
フレデリク・マインダースのピアノ編曲集は、シューベルト、シューマン、ブラームス、マーラーの歌曲のピアノ独奏版を収録。
マインダースは、ピアニストとしてもかなりの腕前らしく、全て自作自演なので、作曲者の作曲意図がストレートにわかる演奏ばかり。

 シューベルト歌曲 
試聴した時に、シューベルトの編曲版がとてもよい印象だった。
実際にCDで聴いてみても、第一印象どおりとても素敵な編曲。
でも、歌曲を聴き慣れた人にとっては、やっぱりリートで聴く方が良いのかもしれない。
シューベルトの歌曲(だけとは限らないけれど)とは、あまり相性が良くないので、こういう時は編曲ものを聴くと意外に好きになれたりする。

マインダースの編曲は、有名な《野ばら》、《セレナーデ》のほかに、《春に》、《きみはわが憩い》、《笑いと涙》の全5曲。
特に好きなのは、《セレナーデ》と、初めて聴いた《春に》、《きみはわが憩い》。
《笑いと涙》もちょっとユーモラスなところが、ベートーヴェンの歌曲にも似ている気がして面白い。
マインダースの編曲で聴くと、シューベルトの歌曲を聴くときによく感じる"硬さ"がなくて、とってもロマンティック。
特に、《きみはわが憩い》は、ややまどろむようにゆったりしたテンポと、しっとりとした叙情感でとても暖かみのある曲。歌曲でも聴いてみたくなる。
《セレナーデ》は、このアルバム中、左手のための唯一の作品。ぼ~と聴いていると左手だけで弾いているとは気づかなかったけれど、注意して聴いてみると、高音部と低音部を同時に打鍵していないのがわかる。ペダリングで響きを持続させながら、離れた音域の音を弾いている。

シューベルトの歌曲のピアノ編曲版なら、リストの編曲が有名。
《セレナーデ》を聴き比べてみると、リスト版に比べて、声部が絡み合ってかなり装飾的で、旋律の流れもずっと流麗。
和声の響きも柔らかくて、ずっとロマンティックな雰囲気。
それに、マインダースが弾くピアノの響きが、砂糖菓子のように甘くてきらきらと煌めくよう。彼自身の編曲と演奏によく似合っている。

シューマンの歌曲はどれを聴いても、あまり旋律が印象的に残らなかったので、ピアノ編曲版を聴いてもやっぱり同じ。
もともとピアノ作品自体との相性もあまり良くないので、仕方がない気がする。


 ブラームス歌曲
ブラームスの編曲版は、シュライアー(伴奏はレーゼル)の歌曲集で最近よく聴いているので、知っている曲が多い。
それに15年くらい前に、ノーマンやオッターの歌曲集でもときどき聴いていた。
初めて聴く曲もいくつか。ブラームスの曲なら、好みの問題はあっても、どの曲もしっくりと馴染めてしまう。これは作曲家との相性の良さ。
マインダースが編曲したのは、《野の寂寥》、《眠りの精(砂の精)》、有名な《子守歌》、《乙女の唇はバラのように赤い》、《サッフォー風のオード》、《わが恋は緑》、《あの下の谷では》、《われらはさまよい歩いた》、《ことづて》、《メロディーのように》。
彼の編曲はどれも旋律がメロディアス。一度聴けば、ブラームスの曲だとすぐにわかるくらいに印象的なものが多い。
ブラームスはドヴォルザークを"メロディメーカー"だと言っていたけれど、ブラームスの歌曲を聴けば、ブラームスだってとても素敵な"メロディメーカー"だと思えてしまう。

《野の寂寥》は、タイトルほどに寂寥感はなく。長調の明るさに時折短調の陰翳が差し込み、しっとりした叙情感が綺麗。
《眠りの精(砂の精)》は、清々しく明るい色調の旋律が、クリスマスに似合いそうな気がする。
《わが恋は緑》は、歌曲でもそうだったけれど、印象的なメロディと曲想でとても情熱的。この曲はとても好きな曲。
《われらはさまよい歩いた》は、タイトルの印象とは違って、甘く爽やかな叙情感に満ちた曲。
でも、曲名を《ぼくらはそぞろ歩いた》と訳していることもある。歌詞を読むとこっちのタイトルの方が内容に合っている気がする。
タイトルでかなり印象が変わるので、やっぱり(当然のことながら)、歌曲は歌詞を知っていないといけない。
《ことづて》と《メロディーのように》は、明るく爽やかで感情があふれ出るようなドラマティックな曲。

《ぼくらはそぞろ歩いた》については、マインダース自身の珍しいライブ映像が残っている。
2002年にかの有名なフーズム城音楽祭にビジターとして聴きに行っていたところ、出演予定だったハンガリーのピアニストGyorgy Sandorが急病のため、急遽代役を依頼されたという。
いくら自分の編曲作品とはいえ、マインダースは多作家でもあり、いつでもどんな曲でも暗譜で完璧に演奏できるというわけではないに違いない。
楽譜をfaxで取り寄せたが、実質的に練習時間もなく、楽譜を譜面台に置いて弾いている。
室内でのアマチュア録音らしく音質が悪いけれど、ロマンティックな曲想に合わせるように体を揺らして弾いている様子がわかる。

Brahms/Meinders. Song [Youtubeのライブ映像]


 マーラー歌曲
マーラーの歌曲は好きなので、特に管弦楽曲伴奏でよく聴いていたけれど、ピアノ編曲版は珍しい。
マーラー自身、ピアノ独奏・協奏曲の作品はほとんど残していないので、編曲もしていない(たぶん)。
交響曲の方は、いろんな作曲家がピアノ独奏、連弾、2台のピアノ用に編曲したものがある。
歌曲なら、《若き日の歌》をベリオなどが編曲した管弦楽版があるらしい。

マーラー歌曲のピアノ編曲版を聴くと、その旋律や和声が交響曲を連想させるところがある。
マインダースが編曲したのは、「私は喜んで緑の森を歩いた」、「ラインの伝説」、「私はこの世に忘れられ」、「誰がこの小唄を思いついたの?」、「シュトラスブルクの砦に」、「死んだ少年鼓手」の6曲。
初期の歌曲集を除いて、ピアノ伴奏と管弦楽伴奏の両方をマーラーが書いている。
マインダースのピアノ編曲版で聴いても、他の3人のロマン派作曲家の編曲版よりも、旋律の装飾性が少なく、声部のからみもすっきりして、和声もシンフォニックな響きがする。

ただし、マーラー歌曲のなかで最も好きな《リュッケルトの詩による5つの歌》の第4曲「私はこの世に忘れられ」は、原曲とはかなりイメージが違う。
このピアノ編曲だと、右手で弾く旋律が、中~高音部に多く配置されているので、音色が甘すぎて響きも軽やか。
この歌曲のように、スローなテンポで息の長いメロディアスな旋律をピアノで弾くのは、ヴァイオリンと違って、ちょっと難しい気がする。
それに、原曲を聴き慣れていると、タイトルが表わしている如く、静寂さのなかに寂寥感と厳粛さが漂う奥深さは、男声の低い声が良く似合っているといつも思う。
原曲から離れて聴けば、静けさのなかにピアノの澄んだ響きとリリカルな旋律が流れて、とても美しい曲なのは間違いなく。

CDのブックレットにマインダース自身が解説を書いている。
それによると、彼が影響を受けた編曲者はレオポルド・ゴドフスキー。その和声と対位法的な作風と左手のための作品群に最も魅せられたという。

Plays Schubert, Schumann, Brahms, Mahler Frederic Meinders Plays Songs By Schubert, Shumann, Brahms, Mahler
(2008/11/24)
Frederic Meinders

試聴する


<収録曲>
 Schubert
1. Heidenröslein /野ばら
2. Schwanengesang, No. 4: Ständchen /『白鳥の歌』~セレナード
3. Im Frühling /春に
4. Du bist die Ruh /きみはわが憩い
5. Lachen und Weinen /笑いと涙

 Schumann
6. Myrthen Op.25,No.14: Hochländisches Wiegenlied /『ミルテの花』より ~ ハイランドの子守歌
7. Lieder und Gesänge II, No.2,Op.51: Volksliedschen / 『歌曲集第2集op.27』より ~ 民謡
8. Liederkreis No. 6, Op. 39: Schöne Fremde /『リーダークライス』より ~ 美しい異郷で
9. Frauenliebe und-leben No.5,Op.42: Helft mir, ihr Schwestern /『女の愛と生涯』より ~ 手伝って、イ妹たち
10. Frauenliebe und-leben No.4,Op.42: Du Ring an meinem Finger /『女の愛と生涯』より ~ わたしの指の指輪よ
11. Myrthen No. 7, Op. 25: Die Lotusblume /『ミルテの花』より ~ はすの花

 Brahms
12. Feldeinsamkeit Op.86,No.3 /野の寂寥
13. Volks-Kinderlieder No.4: Sandmännchen /『子どもの民謡』より ~ 眠りの精(砂の精)
14. Wiegenlied Op.46,No.4 /子守歌(『5つの歌曲』Op.46)
15. Deutsche Volkslieder No. 25: Mein Mädel hat einen Rosenmund /『49のドイツ民謡集より』 ~ 乙女の唇はバラのように赤い
16. Sapphische Ode Op.94,No.4 / サッフォー風のオード(『5つの歌曲』Op.94)
17. Meine Liebe is grün Op.63,No.5 /わが恋は緑(『9つの歌曲と歌』)
18. Deutsche Volkslieder No. 6: Da unten im Tale /あの下の谷では(『9のドイツ民謡集 第1集』WoO33)
19. Wir wandelten Op.96,No.2 /われらはさまよい歩いた(『4つの歌曲』 Op.96)
20. Botschaft Op.47,No.1 /ことづて(『5つの歌曲』 Op.47)
21. Wie Melodien zieht es mir Op.105,No.1 /メロディーのように(『低い声のための5つの歌曲』)

 Mahler
22.Lieder und Gesänge No.7: Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald /私は喜んで緑の森を歩いた(『歌曲集』)
23.Des Knaben Wunderhorn No.7: Rheinlegendchen /『子供の魔法の角笛』より ~ ラインの伝説
24. Rückert-Lieder No. 4: Ich bin der Welt abhanden gekommen /『リュッケルトの詩による5つの歌曲』 ~ 私はこの世に忘れられ
25. Des Knaben Wunderhorn No. 4: Wer hat dies Liedlein erdacht? /『子供の魔法の角笛』より ~ 誰がこの小唄を思いついたの?
26. Lieder und Gesänge No. 10: Zu Strassburg auf der Schanz /シュトラスブルクの砦に(『歌曲集』)
27. Des Knaben Wunderhorn No. 13: Revelge /『子供の魔法の角笛』より ~ 死んだ少年鼓手

tag : マインダース シューベルト シューマン ブラームス マーラー

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。