シューベルト/糸を紡ぐグレートヒェン (歌曲&リストのピアノ編曲版)

リストが編曲したシューベルトの《セレナーデ(セレナード)》を聴いていて思い出したのは、キーシンが弾いていたリスト編曲版のシューベルト。
1990年録音のDG盤は、《糸を紡ぐグレートヒェン》、《セレナーデ"「聞いて下さい,青空に舞う雲雀の歌を"》、《水車職人と小川》、《水の上で歌う》。
2003年録音のRDA盤は、歌曲集「白鳥の歌」より有名な《セレナーデ》と《すみか》 、歌曲集「美しい水車屋の娘」より《さすらい》《どこへ?》。他に《魔王》と《ます》。

シューベルトの歌曲はあまり好きではなかったので、昔はもっぱらピアノ編曲版で聴いていた。
ピアノソロで好きな曲をいろんなソプラノ歌手で聴いてみると、やっぱり歌曲も良いなあと思えてくる。
ピアノ編曲版を聴くときは、ほとんど歌詞を確認せずに音だけ聴いている。
歌曲を聴くときに歌詞を読んでみると、曲に篭められた意味がわかるので、印象も随分変わってしまった。
やはりピアノソロで聴くときでも、歌詞は知っておかないと...。


糸を紡ぐグレートヒェン/Gretchen am Spinnrade D118 (歌詞:ゲーテ) [作品解説:梅丘歌曲会館 詩と音楽]

歌詞と解説を読むと、(タイトルからイメージしていた)素朴な乙女グレートヒェンが糸を紡ぐ姿を歌ったのではなく、グレートヒェンの「ファウストへの思慕と恋情、愛欲に満ちた歌」。
キーシンのピアノソロは、冒頭は主題旋律がつぶやくようなかなり抑えたタッチで、音色も雰囲気も暗め。歌曲よりもずっとウェットな叙情感がする。
ピアノの右手で弾く分散和音も、メカニカルで規則的なタッチというよりは、左手の主題旋律に合わせて、しなやかでちょっとねっとりしてニュアンス濃厚。
終盤は、感情が昂ぶったように力強くパッショネイトなタッチに変わり、最後は糸車がゆっくりと止まっていくようにフェードアウト。
ピアノ編曲版を聴いていると、グレートヒェンの熱く身を焦がすような感情世界が伝わってくるようにドラマティック。


Evgeny Kissin Schubert Liszt Gretchen am spinnrade




歌曲は名曲なので録音多数。ポップ、ノーマン、ボニー、etc..と、誰の歌で聴くか迷ってしまう。
初めてこの曲を聴いたのはアップショウのCD。(アップショウと言えば、グレツキの《悲歌のシンフォニー》で有名)
ポップの歌だと格調高く聴こえるこの曲が、やや舌足らず(?)の甘やかな声のアップショウの歌だと、グレートヒェンの"女性性"が肌で感じられる。
それに、アップショウのちょっと艶かしい歌声と少しまとわりつくような表現は、生身のグレートヒェン的な感覚がするので、情念に彩られた歌詞の内容によく合っている。

ピアノが右手で弾く分散和音と左手の規則的なリズムの伴奏は、糸車がころころと規則正しく回転しているイメージ。
似たようなパッセージでも、歌曲のピアノ伴奏の方が、ピアノソロよりもずっとメカニカルで規則的。
歌詞と歌の感情的なトーンとは対照的で、その2つが糸のよう絡み合っていくところが面白い。

Dawn Upshaw - Gretchen am Spinnrade


タグ:シューベルト フランツ・リスト キーシン アップショウ

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コメント

焦燥感が

こんにちは。この曲のピアノ部分を聴くと、まるで誰かに追われているような焦燥感を感じます。
普段はボニーを聴くことが多いです。アップショーのはなんだか焦った感じがじわじわとあって味がありますね。

ボニーの歌声は素敵です

ポンコツスクーターさま、こんにちは。

糸車のコロコロ回るようなイメージがするピアノの旋律なのですが、歌詞を読むと抑えきられない感情に追い立てられているのでしょう。
女声歌手は好きなのでCDはいろいろ集めましたが、ボニーのCDは北欧ものなど持ってます。少し甘めの癖のない素直な声質でとても聴きやすいです。
この曲のボニーの録音をさっきYoutubeで聴きましたが、ゆったりとしたテンポと抑えたトーンで、清純な乙女のグレートヒェンという感じでしょうか。ボニーの歌も良いですね~。
Parsonsのピアノ伴奏も、ボニーの歌のトーンにぴったり合わせていますね。

アップショウは現代歌曲のレパートリーも多く、表現の幅がかなり広いように思います。
ゴリジョフの「Ayre」など、やや風変わりな歌詞と雰囲気の歌はとても上手いです。肌にまとわりつくというか、生理的感覚に訴えてくるところがあります。
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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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