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アイスラーのドキュメンタリー映画音楽 (2) 雨を描く14の方法
今は消滅しているドイツ民主共和国(DDR/東ドイツ)の国歌『廃墟からの復活』の作曲者として知られるアイスラーは、短編ドキュメンタリー映画の劇伴音楽として、変わった曲名の《雨を描く14の方法》("14 Arten den Regen zu beschreiben" Op.70 ,1941年)を作曲している。(この曲名を見ると、なぜかポール・サイモンの《恋人と別れる50の方法》という曲名がすぐに浮かんで来る)
初めは何かの実験音楽?と思ったけれど、これは無声ドキュメンタリー映画の劇伴。
無声映画なので、主役の雨模様の街の映像と同等以上に、音楽の存在感が強いのが面白い。
アイスラーは、かつての師シェーンベルクに、この曲を献呈している。

記録映画『Regen』(雨)は、1929年に製作された白黒映画。
製作者はオランダ人の映画監督ヨリス・イヴェンス(Joris Ivens)。アヴァンギャルトな作風で、ドキュメンタリー映画の世界ではとても有名な人らしい。
全編わずか12分あまりの短編ドキュメンタリーで、ストーリーのある物語ではなく、1920年代のアムステルダムで雨の降る街の様子を撮影したもの。
この映画の音楽は2種類残っている。ルー・リヒトフェルト(Lou Lichtveld)作曲の1929年版とアイスラーの1941年版。
アイスラーは、現代中国と日本との戦争・抗日運動の歴史を描いたイヴェンスの映画『The 400 Million』 (1939年)の音楽を担当したことがあり、それが縁でこの古い記録映画の音楽をアイスラーが書き直したのかもしれない。

"European foundation Joris Ivens"の『REGEN(1929)』作品解説によると、雨が降り注ぐ生活の一日を映した雰囲気が移っていくとても詩的な映画で、晴れたアムステルダムの街から、運河に落ちていく雨粒や、雨、窓・傘・バス・街路に降り注ぐ雨、そして雨が止み、再び太陽が差してくるまでを映し出している。
1932年にリヒトフェルトに初めて作曲を依頼している。1941年には、この映画を見たアイスラーが創作意欲を刺激されて"Fourteen ways to describe rain"を作曲した。
当時アイスラーは"Film Music Project"を手がけており、様々なタイプの既存の映画(短編アニメーションからドキュメンタリー、物語まで)のために新しい音楽を作曲するというもの。(ロックフェラー財団が助成し、1940-1942年にかけてNYにある"New School for Social Research"で運営されていた)

アイスラーの作品は調性音楽ではないので、慣れていないと聴きづらいところはあるけれど、師シェーンベルクの12音技法の作品よりは、概してアイスラーの作品はわかりやすい。
映画音楽として聴きやすいかというと、ぼ~として聴いているとどれも似たような曲に聴こえてしまう。
普通の映画音楽なら、テンポや調性(長調・短調)や曲想をいろいろ変えて14種類の雨を表現するだろうと思うけれど、無調となると、ちょっと違う。
調性の変化でコントラストをつけているわけではないので、やや不安げな雰囲気が一貫して流れている。
映像にあわせて、使われる楽器や音の配列が変わっているので、この映像ならこういう音楽になるのかと、いろいろ考えながら聴く種類の音楽だろうか。
雨が降る前の明るい街、雨に急に降られて慌てる人達のユーモラスさ、降り続く雨、雨上がりの落ち着いた街など、無調ながらも曲想がコロコロと変わっていくのが、段々とわかってくる。

Hanns Eisler/Joris Ivens: Regen (1929/1941)




こちらは、1929年版の音楽。全く正反対の方向性の音楽がついているところが可笑しい。
Joris Ivens - Regen (1929)



<関連記事>
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