2012_09
23
(Sun)12:00

アラウ ~ ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第13番《幻想曲風》 

ベートーヴェンの標題付きソナタの中で、珍しくもベートーヴェン自身が「幻想曲風ソナタ」と標題をつけたピアノ・ソナタ第13番。
Op.27は第13番と第14番の2曲。ファンタスティックな第1楽章をもつ第14番「月光ソナタ」(これはベートーヴェンがつけた標題ではない)が有名すぎて、この第13番の方はあまり聴かれていない気がする。
「月光ソナタ」の第1楽章よりも、第13番の第2楽章の方がなぜか好きなので、この曲もよく聴いている。

アラウはこの第13番が好きだったのか、リサイタルでもよく弾いていたらしい。
残っている録音は4種類。Philipsのスタジオ録音新・旧盤、ライブ録音はAura盤(1971年)、BBC盤(モノラル録音、1960年)。
アラウは太めの響きとしっかりした骨格でゴツゴツしたところがあり、感情移入も深くて(ウェットな情緒過剰なところはない)、重量感のある演奏。この独特のコクのあるところがアラウらしい。

アラウの録音で一番良いと思うのは、イタリアのアスコーナ音楽祭のライブ録音。
1971年のライブにしては音質がとても良くて、音がクリアで残響も豊かで美しい。
まだ60歳代後半の録音なので、技巧の大きな衰えもなく、テンションも高い。
美しいソノリティと深い感情移入が篭められた"ライブが本領"のアラウの演奏が聴ける。

このBOXセットは、1962年のスタジオ録音の全集盤(Philips旧盤)。
長らく廃盤状態で、ようやく最近リイシュー盤がリリースされた。
ピアノ・ソナタ全集と変奏曲集がまとめて聴ける。ディアベリ変奏曲は1952年の旧盤を収録。
残念なのは、ピアノ協奏曲全集(ハイティング指揮コンセルトヘボウ管)が収録されていないこと。
Complete Piano SonatasComplete Piano Sonatas
(2012/05/08)
Claudio Arrau

試聴する(米amazon)


同じく1962年のスタジオ録音の全集盤(Philips旧盤)。ピアノ・ソナタ全集、変奏曲集、ピアノ協奏曲全集(ハイティング指揮コンセルトヘボウ管)を収録。ディアベリ変奏曲は1983年の新盤。(廃盤。amazon.comでダウンロード販売中)
Complete Piano Sonatas & ConcertosComplete Piano Sonatas & Concertos
(1999/11/09)
Claudio Arrau

試聴する(米国amazon)



1971年、イタリア・アスコーナ音楽祭のライブ録音(Aura盤)
PLAYS BEETHOVEN, LISZT AND CHOPINPLAYS BEETHOVEN, LISZT AND CHOPIN
(1999/12/28)
Beethoven、Liszt 他

試聴ファイルなし



1960年の放送用録音(BBC Legends盤、モノラル)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番/シューマン:幻想曲 ハ長調/シェーンベルク:3つのピアノ小品 Op. 11 (アラウ)(1959, 1960)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番/シューマン:幻想曲 ハ長調/シェーンベルク:3つのピアノ小品 Op. 11 (アラウ)(1959, 1960)
(2010/11/16)
Arnold Schoenberg、 他

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ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 "Sonata quasi una fantasia" Op.27-1 /作品解説[ピティナ]楽譜ダウンロード[IMSLP]

第1楽章 Adagio sostenuto
単純な和音と短いスケールのシンプルな主題は、とても優しげ。
アラウはゆったりとしたテンポで、まどろむような柔らかいタッチは、何の憂いもなく安心した気分に浸っているような雰囲気。
すっかり目覚めたように、中間部のallegroは一転してフォルテになり、練習曲風な細かいパッセージが上下行する。
再現部に入って、再びうとうとまどろむような主題に。まるでさっきの中間部は全くなかったかのように思えてくる。
夢のなかで遊んでいたのかも。

 HOMMAGE à CLAUDIO ARRAU - Beethoven Piano Sonata in E flat major Op.27 No.1 - Ascona 1971 - live (第1楽章~第2楽章) [Youtube]


第2楽章 Allegretto
憂鬱な気分の冒頭のアルペジオ。漠然とした不安が漂うモヤモヤとした響きで低音部から上行し、高音部では逆に哀しげな響きで下向きの分散和音。この響きがファンタスティック。
最後は、そういう思いを絶つかのように、突如フォルテに。
中間部は、馬がトロットするように行進曲風で力強く。(途中でてくるトリルは馬のいななきのように聴こえる)
再現部では、落ち着かなくざわめく心を表わしているかのように、主題が左右で1音ずらされている。

スタジオ録音よりもアスコーナのライブ録音は、ライブ特有の高いテンションのせいで力感が強め。
残響が長めで音色も綺麗で、旋律もずっと滑らかなレガート。
高音部はスタジオ録音の方がはっきり聴こえてくるので、哀感が強いように感じる。


第3楽章(第3楽章序奏) Adagio con espressione
平和的でのどかな安らぎに満ちた楽章。
アラウはゆったりしたテンポとややテヌート気味のタッチで、情感深く。

 HOMMAGE à CLAUDIO ARRAU - Beethoven Piano Sonata in E flat major Op.27 No.1 - Ascona 1971 - live (第3楽章~第4楽章) [Youtube]


第4楽章(第3楽章) Presto agitato
駆け回っているような軽快な躍動感と明るい開放感がとても気持ちよい。
スタジオ録音に比べて、アスコーナのライブ録音はタッチがシャープで音色も明るく輝き、とってもエネルギッシュ。
第2楽章の中間部とこの第4楽章を聴くと、第18番《狩》と間違ってしまいそうになる。
和音で繋がる旋律や左手のオスティナート的に続く伴奏とか、リズム感や曲の雰囲気が似ているせいかも。
151小節~164小節はちょっと雰囲気がかわって、格好良くてダンディ。これがなぜかジャズ風に聴こえる。
最後は、序章のテンポに戻って、第1楽章のAdagioの平和的な主題が意外にも再現される。
このまま静かにフェードアウト...と思ったら、Prestoのコーダで再び軽快な旋律が現われ、明るく快活にエンディング。

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