グールド&ラレード ~ バッハ/ヴァイオリンソナタ全集 BWV1014~1016 

2012, 05. 19 (Sat) 15:01

久しぶりにバッハのヴァイオリンソナタの録音をいろいろ聴いていたら、以前はどうも居心地悪くてしようがなかったグールド&ラレード盤が、なぜか面白く感じられるようになっていた。
最近は、シューベルトもだいぶ普通に聴けるようになったし、年をとっていくと昔よりはこだわりがなくなってくるせいか、どうしてなんでしょう。

グールドが録音したバッハのヴァイオリンソナタは2種類。
全曲録音(1975年、1976年)のヴァイオリニストはハイメ・ラレード。第4番BWV1017は、メニューインとのテレビ録音(1965年10月)が残っている。
メニューインと録音した第4番はオーソドックスと言ってもよいくらいにまっとうなので、こちらは昔から普通に聴ける。

それとはかなり違うのがラレードとの録音。グールド独特のクリスピーなノンレガート、凝ったアーティキュレーション、超スローテンポなど、他のピアニストの演奏とは明らかに違っていて、極めて個性的。
レガートで弾いていることもかなり多く、音色はやや艶めかしさのある滑らかなベルベットのような肌触り。
緩徐楽章はテンポがスローなことと、小節やフレージングの区切りが感覚的にわかりにくく、拍節感が曖昧に感じるので、いつも聴いている曲とはかなり違った曲に聴こえてくることも多い。
急速楽章はテンポが速いせいか、そういう印象の曲は少なくて、タッチは全体的に軽やかで優しく、柔らかい響きには温もりがあって、とっても聴きやすい。ちょっと訥々としたタッチも可愛らしく聴こえる。

グールド&ラレードの演奏を聴くと、斬新というか何と言うか、今まで未発見のバッハのヴァイオリンソナタを聴いている気分がしてくる。
ヴァイオリンよりもピアノの存在感の方が強く感じるせいか、何度聴いても、ついピアノの方に耳が吸い寄せられてしまう。
ピアノが受け持つ2つの声部が、ヴァイオリンが弾く声部とそれぞれ同じくらいの音量で鮮明に聴こえてくるし、装飾されたフレージングが面白く、ヴァイオリンの旋律よりもはるかに情報量が多い。
もともとピアノパートだけ弾いていても、独立した曲に聴こえてくる部分が多い曲なので、ヴァイオリン独奏付きのピアノ・ソナタと言っても違和感がないくらい。
ピアノソロはどうもしっくりこないグールドのバッハが、このヴァイオリンソナタだけは、何回も聴いているとだんだん自然に思えてくるのが不思議。といっても、個性が強すぎるので、定番で聴くとなるとやっぱり聴き疲れしてしまう。

Bach: Six Sonatas for Violin & HarBach: Six Sonatas for Violin & Har
(2007/09/04)
Glenn Gould

試聴する(米amazon)[別盤の試聴ファイルにリンク]



最初の曲は、第6番BWV1019の第3楽章。珍しい鍵盤楽器の独奏楽章。
こんな風に弾くピアニストはいないと思うくらいに、グールドらしい演奏。
様々な装飾音を使っているだけでなく、フレージング自体を装飾して弾いたりして、アーティキュレーションが面白い。
それに、前半部分では最初はノンレガート主体、リピートのときはレガート主体と、弾き方を変えている。
チェンバロ演奏だと、リピートのときに装飾音をいろいろ使って弾くけれど、ピアノだとそれ以上に弾き方のバリエーションが豊富。
続く第4楽章もいつも聴いている曲とはかなり違って聴こえる。意外に曲想に似合っているので、こういう弾き方もありかなと思えてくる。

J. S. Bach - Sonata for Violin and Clavier in G Major BWV 1019 (2/2)



第4番BWV1017の第1楽章と第2楽章。
J. S. Bach - Sonata for Violin and Clavier in C Minor BWV 1017 (1/2)



これはメニューインと演奏した第4番BWV1017全曲。
録音方法の違いもあるのだろうけど、メニューインのヴァイオリンは、ピアノと対等かそれ以上にしっかりした存在感がある。
ラレード盤とは違って、ピアノパートはあまり装飾音を使わず、面白さはあまりないけれど、ノンレガートの独特なタッチでも至極まっとうな演奏に聴こえてくる。

Glenn Gould-Yehudi Menuhin-J.S. Bach-Violin Sonata No.4 (HD)



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