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『レーゼルの芸術 ピアノ独奏曲編』 ~ シューベルト/幻想曲ハ長調(グラーツの幻想曲),アレグレット ハ短調,etc.
なぜか今は珍しくもシューベルトモード。未聴のままで長らくラックの奥深くに眠っていたシューベルトのCDを探し出して聴いている。
ピアノ・ソナタと即興曲集は何枚も持っているけれど、あまり有名でない小品主体の選曲がユニークなのは、レーゼルの独奏曲BOXセットのなかの1枚。1974-75年の録音なので、レーゼルが30歳くらいの演奏。

収録曲中、1820年以前に作曲された作品は似たような旋律や曲想が多い。
一番有名な曲は、たぶん《3つのピアノ小品 D945》(「即興曲」と副題がつけられていることも多い)。
初めて聴いた《アレグレットハ短調》はとても美しい曲。《幻想曲ハ長調(グラーツの幻想曲)》は次から次へと旋律が変わっていき、長いわりに冗長さを感じさせない。

Works for PianoWorks for Piano
(2008/07/08)
Peter Rosel

試聴ファイルなし


 幻想曲ハ長調(グラーツの幻想曲)/Fantasie(Grazer Fantasie) D605A (1818年作と推定) [楽譜ダウンロード(IMSLP)]
1962年に発見され、71年に出版された作品。録音はあまり多くはないらしい。
レーゼルの明るく暖かい音色と丸みのある響きが優美な曲想によく似合っている。
主題部分は古きよき時代のレトロな雰囲気。途中で短調が入り混じってファンタスティックに。
その後にはポロネーズ風舞曲の躍動的な曲想に変わり、また主題が登場しては、全く別の旋律が現われたりと、次から次へと調性や旋律・リズムがいろいろ変化していく。"Fantasie"というタイトルどおり。
演奏時間は13分前後と長くても、珍しくも冗長に思えない。多彩な変化があるので、聴いていても面白い。曲の構造はつかみにくいけれど、そういうことは全く気にならず。

レーゼルの音源がないので、ピティナ・ピアノ曲事典の登録音源で。
シューベルト/幻想曲 ハ長調(グラーツの幻想曲),D605A/演奏:今井顕



 メヌエットとトリオイ長調 Menuett mit Trio D334(1815秋以前年)
優しげな冒頭主題が、ピアノ・ソナタ第13番の第1楽章に雰囲気が少し似ている。
音源がYoutubeにほとんどないので、有名な曲では全然ないらしい。


 アレグレット ハ短調(1827年) Allegretto in C minor, D.915 [楽譜ダウンロード(IMSLP)]
これはとても美しくて、アンコールピースには絶好の曲。時々ピアノ・ソナタとカップリングされているCDも見かける。
ソナタ形式みたいに同じような旋律が両端に出てくるけど、演奏時間は5分少々とシューベルトにしては短い。
楽譜を見ると音を押さえるのはやさしそう。自分でも弾きたくなってくる。

冒頭は弱音で始まり、短調から長調にすぐに移る主題を2回繰り返し、その後で出てくる短調のフォルテの旋律で悲愴感が強まっていく。ここの旋律がとても綺麗。
レーゼルは音色に透明感があり、クレッシェンドするフォルテも滑らかに盛り上がっていくので、それほど強弱のコントラストがきつくない。さらさらとした叙情感で静けさを湛えた哀感が綺麗。

レーゼルの音源がないので、ポール・ルイスのライブ録画で。
レーゼルよりも、細かなテンポの揺れと強弱の変化が多くて、やや表現が濃いめ。(レーゼルの弾き方の方が好きだけど)
今、ルイスのシューベルト録音を集め始めたところなので、ルイスの演奏は好感度大。
数枚リリースされているルイスのシューベルトのCDに、この曲は収録されていない。

Paul Lewis‐Schubert:Allegretto in C minor D915



 2つのスケルツォ 2 Scherzi D593(1817年)
変ロ長調と変ニ長調の2曲。


 3つの小品 Klavierstücke D946(1828年) [ピティナ作品解説] [楽譜ダウンロード(IMSLP)]
これは有名な曲集なので、録音は多数。緩徐系の第2曲(変ホ長調)が人気があるようだけれど、私は急速系で変ホ短調の第1番の方が好き。
ポリーニが1986年東京公演のアンコールで弾いていたのを聴いて、シューベルトにもこういうハイテンションの曲があるんだと思ったもの。
第1番は、解説にあるとおり、「ABACAのロンド形式」が初稿で、結局、最後のCA部分をシューベルトが削除。その最終版を弾く人が多い。
レーゼルの演奏は、最後のCA部分を加えたバージョン。主題が再現された後の7:50から、聴き慣れない旋律を弾いている。再び、9:20から主題が再現されてエンディングへ。(演奏時間は11分。最終版の演奏だと8~9分台)
レーゼルにしては、主題部でかなり強いアクセントをつけている。右手高音部はやや線が細くて、音が軽い感じ。いつもながら両手で弾く和音の響きは充実している。
展開部はテンポもかなり落として、とてものどかで安らか。ペダルの入った高音部の甘く煌く音色がとても綺麗。
ブラームスのインテルメッツォOp.118-2と同様に、こういう雰囲気の曲を弾く若かりし頃のレーゼルのピアノは、透みきった美しさと自然な情感が流れている。
削除された部分は2種類のモチーフが使われいるけれど、最初の展開部ほどに旋律は美しくもなく、曲の流れもあまりスムーズではなさそうな..。両方聴き比べると、最終版の方が音楽の流れが良く、全体的に曲が引き締まった印象。

変ホ長調の第2番も久しぶりに聴くと、第1番よりも緩急・明暗のコントラストが強く、記憶の中にある曲よりもずっと好きなタイプの曲だった。
これもロンド形式で短調部分の旋律が印象的。特に、最初の主題再現部の後に出てくる変イ短調の旋律は、哀感を帯びて、駆け抜けていくような流麗さがとても綺麗。レーゼルの澄んだ高音の響きとさらさらとした叙情感がよく映えている。
シューベルトはこういう明暗・緩急や短調・長調の対照的な曲想が頻繁に交錯する。
美しく平和的な旋律が流れていると思っていたら、突如暗雲が立ち込めては強い通り雨が吹きつけて、その後でまるで何事もなかったかのようにまた優美な旋律に戻っていく。
こういう形式に慣れていくと、シューベルトを聴いているとよく感じる冗長さも、だんだん気にならなくなるのかも。


 アダージョ ホ長調/Adagio D612 (1818年)
ハ長調ピアノ・ソナタD613(未完)の緩徐楽章(らしい)。
これもやや懐古調の優美な曲。高音の甘い音色が夢見るようにロマンティック。

Schubert - Adagio E major D612(Piano:??)



<関連記事>
 ポリーニの東京リサイタル(1986年) ~ シューベルト/3つのピアノ小品第1番,ベートーヴェン/熱情ソナタ


tag : シューベルト レーゼル

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感想 & ご返答
こんにちは。夜寝る前にこちらのサイトを覗き、気になる曲を再生しながら他のサイトも探索するようなことをしています。今回は、シューベルトのアレグレットを聴かせていただきましたが、何とも言えず美しい曲ですね。旋律そのものに力があるというより、ピアノ表現のなせる技だと思いました。強弱の表現の「弱」に音が引っ込んだ刹那に引き込まれました。

ところで、私のピアノペーパークラフト製作へのコメントありがとうございました。何度か放り出してしまおうと思いながら、数か月ぶりに目覚めて少し進め、またやめてを繰り返しながらどうにかこうにか完成できました。

音楽関係に興味を持っていると、小物や持ち物にピアノや音符や楽器のデザインのものに目が行ってしまいます。ピアノをデザインした小物に溢れた部屋で静かに音楽に身を委ねて過ごす時間はまさに宝物ですね。
ルイスのシューベルトとピアノグッズ
chokujin様、こんばんは。

シューベルトは今まであまり得手な作曲家ではなかったのですが、好きな演奏家で聴いてみると、意外とぴったりくる曲だったりします。
曲の好みもあるのでしょうが、誰の演奏で聴くかはとても大事ですね。ピアニストによって曲のイメージが全然違うことはよくありますので、初めて聴く曲の場合は特に気をつけるようにしています。

アレグレットを弾いているポール・ルイスは、シューベルト弾きとして有名な若手ピアニストです。
彼のシューベルトは私には馴染みやすいのですが、特に神経質でも情緒過剰でもない弱音の表現は、心のひだに分け入っていっていくようです。
試聴した感じも良かったので、ルイスのシューベルトのCDを3枚注文してしまいました。

ペーパークラフトのミニチュアピアノというのは、初めて拝見しました。とっても珍しいものですね。
自分で作れないだろうと当然予想できましたが、一体どうやって作るんだろうかと興味があって、型紙までチェックしてしまいました。(やっぱり型紙を見て、これは私には無理だとわかりましたけど)

オルゴールも好きなので、私にはピアノ型オルゴールがインテリアグッズのなかでも最強の組み合わせです。
ピアノたちとその音楽に囲まれている時間と空間は、ほかでは得がたいものがあります。本当に宝物のような至福の時ですね。
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<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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