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耳鳴り治療のための音響・音楽療法(10) ハイデルベルクモデルの音楽療法 (アップデート版)
[ ”Long-term effects of the "Heidelberg Model of Music Therapy" in patients with chronic tinnitus.”の論文概要を追加]


"Heidelberg Model"(ハイデルベルクモデル)とは、German Center for Music Therapy Researchがハイデルベルク大学耳鼻咽喉科クリニックの協力を得て開発した革新的な音楽療法アプローチ。それは、音楽的にコントロール可能な聴覚プロセスの中に耳鳴音を統合する試みである。

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German Center for Music Therapy Research (DZM)
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German Center for Music Therapy Research(Viktor Dulger Institut, DZM e.V.)は、1995年に設立された欧州で最大の音楽療法研究機関。
当初の名称は"Heidelberg Institution of Music Therapy Research"。
2000年に現在の名称に変更し、設立を推進したハイデルベルクの企業グループ"ProMinent Group"の会長名をつけて、"Viktor Dulger Institute"とも呼ばれる。

DZMは、国内外の医療機関・医科大学と協力関係を結び、共同研究・開発を長年にわたり行っている。
現在の研究領域は、子供・大人に関する慢性的な苦痛、腎臓病患者の生活の方向づけ(existential orientation)、治療法改善のための医療ソフト開発全般、特定の音楽療法技術の評価。
音楽療法・心理療法・基礎研究以外にも、マネジメント・コンサルティング、環境経済など様々な領域の事業を行っている。

進行中のプロジェクト(耳鳴関係)
A study of the effectiveness of music therapy for patients with chronic tonal tinnitus.
A study of the effectiveness of music therapy for patients with chronic non-tonal tinnitus.
A study of the effect factors of music therapy for patients with chronic tonal tinnitus.

研究内容概要
抄録,scientific posters,プレゼンテーション(参加した科学関係会議で発表)の一部紹介


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ハイデルベルクモデルの音楽療法に関する論文
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"Music therapy for patients suffering from chronic pain – Evaluation of an interdisciplinary treatment approach"
10th World Congress of Music Therapy Oxford, 23rd to 28th July 2002
Thomas Hillecke, Anne Nickel, Hubert J. Bardenheuer,Hans Volker Bolay/German Center for Music Therapy Research, Pain Center of the University Hospital Heidelberg


"Music Therapy in Chronic Tinnitus - A Prospective Pilot Study"(2005)[独文]
H. Argstatter, A. Nickel, A. Rupp, S. Hoth, H. Bolay/Centre for Music Therapy Research, University of Heidelberg

-German Centre for Music Therapy Research(DZM)とハイデルベルク大学との共同研究で、慢性耳鳴患者への革新的音楽療法に関する臨床試験。
-療法コンセプト:耳鳴り音をコントロール可能な音楽的聴覚プロセスに組み入れることが目的。
-患者個々人の耳鳴音と同等の音を生成する。この音が能動的・受動的音楽療法の相互作用の基礎として作用する。
-目的変数(指標)は、試験前後にインタビュー、問診(TQ)で検査。さらに脳イメージング手法(MEG)も加えた。


"Music Therapy for Tinnitus Patients-A Prospective Pilot Study"(2005)
Heike Argstatter , Sebastian Hoth , Anne Kathrin Nickel ,Hans Volker Bolay, Gerhard Dyckhoff,Hagen Weidauer
Deutsches Zentrum fur Musiktherapieforschung (German Center for Music Therapy Research)
HNO Klinik, Universitat Heidelberg、Fachhochschule Heidelberg (University of Applied Sciences Heidelberg)
抄録(PDF)poster(PDF)

-被験者:慢性耳鳴り患者20人。無作為抽出により、音楽療法群と対照群の2グループ(各10人)に分ける。
-試験方法:全員が包括的な耳鳴カウンセリングを受ける。音楽療法群は50分間の音楽療法の個人セッションを12回実施。対照群は個人セッションなし。
-評価データ;tinnitus variables (TQ, Goebel & Hiller, 1998)、心理学的指標を試験前後と24週後のフォローアップ時に測定。
-結果:耳鳴症状は療法実施中に継続的に減少。音楽療法群でTQ-Scoresが53%低下。対照群で5%低下。
-被験者数は少ないが、医学的・統計的に有意な効果があった。
-脳イメージングなどによるさらなる研究が有益と思われる(計画中)。

[注記:被験者数が抄録(10人)とposter(20人)と異なるのは、抄録は対照群の被験者数を含めていないため。]

<この論文の紹介記事>
"A German neuroscientific study attested positive results with the implementation of sound therapy against Tinnitus"[Tinnitus Self-help,DisMark GmbH])
ドイツの大学病院とGerman centre for music therapyの研究グループは、医学的イメージング手法を使い、初めて慢性耳鳴り患者における音響セラピー療法の神経科学的な効果を立証した。
Dr. Krick とProf Dr. Bolayは、 脳内のミクロな自律的変化と医学的症状の緩和とは、決定的な関連があるという症例を証明した。
MRI画像は、音響セラピー療法は脳領域(医学的症状の増幅に関連していると疑われる)を活性化させることを示した。



"Music therapy for tinnitus patients: an interdisciplinary pilot study of the Heidelberg Model"
HNO. 2007 May;55(5):375-83.
Argstatter H, Plinkert P, Bolay HV./Deutsches Zentrum für Musiktherapieforschung (Viktor Dulger Institut) DZM e. V., Heidelberg.
[注記:2005年の論文と同じ臨床試験]


"Music therapy in chronic tonal tinnitus. Heidelberg model of evidence-based music therapy"
HNO. 2008 Jul;56(7):678-85.
H. Argstatter, H, Krick C, Bolay HV./Deutsches Zentrum für Musiktherapieforschung, Heidelberg.

-耳鳴治療を必要としているのは、ドイツ人で100万人以上。その約50%は、周波数がほぼ特定できるいわゆる"tonal"耳鳴り。
-新しい音楽療法のコンセプトは、診断・治療において、心理学的・聴覚的・機能イメージング的手法で評価され、科学的に検証もされている。
-この療法の利点は、充分な実証データのある既知の音響的手法と心理療法技術を統合している点。特別な音楽療法的手法に転換されている。(resonance training、聴覚神経皮質再プログラミング、耳鳴の脱感作)
-190人以上の慢性トーナル耳鳴患者で治療効果あり。治療期間、効果、フォーローアップ時の安定性の点で、通常の療法よりも優位。
-脳イメージングの成果は、耳鳴りの神経学的モデル調査や議論に有益。


"Music therapy for noisiform tinnitus. Concept development and evaluation"
HNO. 2010 Nov;58(11):1085-93.
H. Argstatter, H, Krick C, Plinkert P, Bolay HV./Deutsches Zentrum für Musiktherapieforschung (Viktor Dulger Institut), Heidelberg, Deutschland

-慢性トーナル耳鳴り患者に対する"Heidelberger model"音楽療法は効果的な治療法であり、神経科学および心理学的評価により検証されている。
-音楽療法アプローチに、音質と心血管系への影響を考慮した。
-評価基準:心理学的耳鳴り負荷(psychological tinnitus load), 精神生理的変数、脳イメージング手法
-心理学的結果:23人中21人(90%以上)が症状の安定的緩和が見られた。(TQ scores: pre: 40.1 ± 11.4; post: 27.9 ± 12.8; at 3ヶ月のfollow-up: 24.0 ± 12.2).
-イメージング検査結果;被殻とインスラ(島)で神経の可塑的変化あり。精神生理的検査では心血管系への影響あり。
-療法の成否は耳鳴の音質に左右されるため、これを考慮すべき。
-心拍数の能動的コントロールが長期治療成果の重要な予測変数である限りにおいて、心血管系への影響は重要。
-総合的には、脳イメージング情報は耳鳴生成のトップダウンモデルを裏付けている。

”Long-term effects of the "Heidelberg Model of Music Therapy" in patients with chronic tinnitus.”
Int J Clin Exp Med. 2012;5(4):273-88. Epub 2012 Aug 22.
Argstatter H, Grapp M, Hutter E, Plinkert P, Bolay HV./German Center for Music Therapy Research (Deutsches Zentrum fur Musiktherapieforschung (Viktor Dulger Institut) DZM e.V.) Heidelberg, Germany.

- 研究目的:慢性耳鳴患者におけるハイデルベルク式音楽療法の長期的効果(治療後、最長で5.4年間)を研究する。
- "Heidelberg Model of Music Therapy for Chronic Tinnitus"はマニュアル化された短期間治療 (5日連続して個人ごとにカスタマイズされた50分間の治療セッションを9回実施)
- 短期的な耳鳴緩和効果は証明済み。
- 対象とした被験者は過去にこの療法を行った206人。そのうちフォローアップ用アンケート回答107件を分析。フォローアップ時期は2.65 (標準偏差 1.1) 年。
- 耳鳴スコアでは確実に緩和効果があるのは被験者の76%。Mini-TQで測定された耳鳴苦痛度は11.9 (SD = 4.9)から7.4 (SD = 5.2)へ低減。
- 87%の患者が治療実施中の処置に満足している。71%の患者が、治療後は継続的に治療していない。治療法の要素(elements)に関する評価では、患者が”役立った(helpful)"と評価したのは音楽療法による特別治療のみ。
- 耳鳴りに関係する要素(耳鳴のピッチ、大きさ、持続時間)は治療効果に影響しない。女性、ポジティブな治療関係、当初のMini-TQ scoresがより高い..という条件は、より良い治療効果が得られる可能性が高い予測変数となることが明らかになった。
- ハイデルベルク式音楽療法は長期的な治療効果があると思われる。治療効果量(outcome effect size)(d' = 0.89)では、治療効果が大きく、他の治療法に比べてかなり上位の範囲にある。


Neurologic Music Therapyの定義[NEUROLOGIC MUSIC THERAPY TRAINING INSTITUTE]
人間の神経システムにおける神経学的疾患に対して、音楽療法を治療技術として認識・感覚・運動機能へ適用したもの。
Neurologic Music Therapyは研究ベースのもので、その治療手法は音楽の知覚と創造、非音楽的脳領域と行動機能面でそれがもたらす効果に関する科学的知識に基づいている。
対象とする治療分野は、脳卒中、外傷性脳損傷 パーキンソン病、ハンチントン氏病、脳性小児まひ、アルツハイマー病、 自閉症、その他の認知・行動・コミュニケーションに影響する神経学的疾患。

※ハイデルベルク大学による音楽療法関係の臨床試験例(うつ病治療)
Receptive Music Therapy for the Treatment of Depression(University of Heidelberg)

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臨床試験
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"Neuro-Music Therapy for Recent Onset Tinnitus: Evaluation of a Therapy Concept"
German Center for Music Therapy Research/University Hospital for Ear, Nose, and Throat, University of Heidelberg & Clinic of Diagnostic and Interventional Neuroradiology, Saarland University Clinic

被験者数:60名(予定)
研究開始;2012年1月
研究終了:2013年7月
データ収集完了予定:2012年12月

研究目的:"Heidelberg Model of Music Therapy"の有効性試験。急性耳鳴患者に対して、音楽療法が耳鳴の重度・苦痛度に及ぼす効果を評価する。
手法:ランダム化、並行群間比較 、オープン試験
研究概要:この療法は、マニュアル化された短期間の音楽療法で、50分間の個人治療セッションが連続9セッション続く。
心理学的状態をマネジメントし、基底にある神経生理学的な再構築状態を修復するという統合戦略。
この療法の基本となる概念は、音楽刺激同様、耳鳴も聴覚的な知覚表象としての経験であるということ。
本療法の傑出した特徴は、被験者が能動的に自らの症状に影響を与える方法である。これにより、自己効力感が改善され、症状に対してずっと異なった捉え方をするようになる。

被験者:最近耳鳴りを発症し、その症状が薬物療法後も持続している被験者群と耳鳴り症のない対照群。
試験方法:
(1)治療群:20人の被験者を無作為抽出し"Neuro-Music Therapy"をすぐに開始。
"Neuro-Music Therapy"は5日間で、50分間の個人治療セッションを連続9セッション行う。
治療直前および直後すぐに、広範な診断実施(心理学的評価、機能的神経イメージング、電気生理学的検査)

(2)待機リスト群:20人の被験者を無作為化抽出し、6週間を超えない待機期間終了後、療法実施。
待機期間内は、治療実施群と全く同じ検査・診断手順で検査。

(3)対照群:20人の耳鳴り症のない被験者に対し、音楽療法的ストレスコーチングプログラム実施。
急性耳鳴に対する"Neuro-Music Therapy"の主要な療法技術(耳鳴特有の要素は変更)に基づく。
5日間のコーチング実施前・実施後すぐに、対照群は療法群被験者と同じ診断手順で検査。

評価手法:
-心理テストと精神心理学的検査:Tinnitus Questionnaire (TQ, Goebel and Hiller 1998)、Tinnitus-Beeintrachtigungs-Fragebogen (TBF-12, Greimel et al. 2000))
-タスクベースfMRIの枠組み(Paradigm)使用:耳鳴り知覚と慢性化に関与していると思われる神経回路内の変化を調べる。
-耳鳴周波数および電気生理学的指標(皮膚温、ガルバニック皮膚反応レベル、脈拍、呼吸数)
-Attention and Performance Self Assessment Scale (APSA, Görtelmeyer et al. 2012)


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備考
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記事中の日本語訳文は、英文情報を抜粋要約したものです。
高い精度の訳文ではないため、正確な内容については、英文原文をお読みください。

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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