レーゼル 『ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集 7 』 ~ ピアノ・ソナタ第25番「かっこう」 Op.79 

2012, 05. 15 (Tue) 12:00

レーゼルの『ベートーヴェンの真影』シリーズは、リサイタルの演奏が2011年10月に完結。CDもVol.7とVol.8が1月下旬にリリースされたので、全て完結。
Vol.7は、2011年10月2日の東京・紀尾井ホールでのリサイタルのライブ録音(と前日のセッション録音)を収録。
Vol.8(最終巻)には第1番、第2番、第31番、第32番の4つのピアノ・ソナタを収録。この4曲以外で未収録だった残りの5曲-第24番「テレーゼ」、第25番「かっこう」、第11番、第7番、第13番がVol.7に集められている。

テレーゼ、第7番、第13番はよく知っているし、第11番は誰の演奏で聴いても今のところ好きな曲とはいえない。
意外に面白かったのが第25番「かっこう」。もともとはソナチネなので、ベートーヴェン中期の曲のなかでは、技術的には易しいし、譜面をみても構成はシンプル。
初めて聴いたのは若い頃のポリーニのスタジオ録音。これがやたら元気で騒々しかったので、この曲に変なイメージを持ってしまった。そのせいか、その後まともに聴いたことがない。(聴き直してみたら、やっぱりポリーニで最初に聴いてはいけない...)

レーゼルが弾く第25番を聴くと、印象が一変。元気というよりも、快活でありつつしなやかで優美。
短い曲といっても3楽章あり、リズムや曲想がクルクル変わるので、意外に面白い。

ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集7ベートーヴェンの真影 ピアノ・ソナタ全集7
(2012/01/25)
レーゼル(ペーター)

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 ピアノ・ソナタ第25番ト長調 Op.79 「かっこう」 (1809年)[Wikipedia作品解説]

元々はソナタではなく、ソナチネ。演奏時間も10分未満と小規模の曲で弾くのも容易。
「かっこう」という副題が付いているけれど、これはベートーヴェンがつけたものではない。
ちなみに、「かっこう」は、英語Cuckoo、フランス語Coucou、ドイツ語Kuckuck、オランダ語Koekoek。
日本人には"かっこう"と聴こえるけれど、欧米人には"クークー"と聴こえるらしい。

第1楽章 Presto alla tedesca
"alla tedesca"とは、ドイツ風舞曲。
冒頭はオクターブで弾く3音(G,B,G)のモチーフ。これが第1楽章を通して、頻繁に現われる。
スタッカート気味に元気良く弾くので、明るく快活な曲...というイメージがしてくるけれど、この後の第12小節から始まるアルペジオの美しいこと。
ここは、ペダルを長く踏まずに弾いている演奏も多い。レーゼルはペダルをしっかりいれて、アルペジオの重なる和声の響きの美しさがはっきりわかるように弾いている。今まで気がつかなかったけれど、この部分はファンタスティック。

第2主題はニ長調の速いテンポのスケールとアルペジオのパッセージで、とても優雅。
レーゼルはここでもペダルをかなり入れているので、柔らかいタッチの和声の響きが美しい。
第59小節以降、左手を右手に交差させて弾く重音。スタッカートで弾くフレーズは、まるで"かっこう"の鳴き声のよう。
第67小節は"dolce"の指示通り、で優しくさえずっている。
レーゼルの演奏は、歯切れ良いノンレガートやスタッカート、柔らかいレガートのタッチをとりまぜ、ペダルを使いながら和声の響きも硬軟・長短と対照的に変化するので、コントラストがとても鮮やか。
以前はやや一本調子で単調な気がしたこの楽章に、本当はいろんな表情があるのだと聴かせてくれる。
表情づけが多彩で細やかだけれど、流れが滑らかなので表情の変化がとても自然。快活でありつつ優美さが漂っていて、とても品の良い「かっこう」。

第2楽章 Andante
ト短調の冒頭主題は8/9拍子(ベートーヴェンにしては珍しい拍子らしい)で弾かれる哀感のある旋律。
途中で長調の明るく優しい第2主題が挟まれ、すぐに冒頭主題に戻っていく。
左手の伴奏は、初めは規則的な雨音のようで、それから長調になるとアルペジオに変わり、寄せては引いて行く波のようにうねっていく。
この楽章を聴いていると、メンデルスゾーンの『ヴェニスの舟歌』よりも、チャイコフスキーの《四季》の「舟歌」のメロディが浮かんで来る。

第3楽章 Vivace
3つの楽章とも全然違った曲想で、第3楽章は軽快でユーモラスなタッチ。
両手ユニゾンで弾く単音の旋律が特に諧謔めいていて面白い。
旋律や伴奏の音型自体は単純。リズムや調性がコロコロ変わり、主旋律が右手と左手で交代で現われたり、クロスリズムも入ったりして、展開が目まぐるい。あっという間にエンディング。


レーゼルの音源がないので、バレンボイムのライブ映像で。
バレンボイムの演奏はベートーヴェンに限らず、かなり個性的なものが多いので、いつもは聴かない。
でも、この「かっこう」はタッチの使い分けが細かく、表情の変化も多彩。残響も豊かで聴きやすい。

Barenboim plays Beethoven Sonata No. 25 in G Major, Op. 79, 1st, 2nd and 3rd Mov.



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