ピエール=ロラン・エマール 『カーネギー・ホール・ライヴ』 

2012, 05. 29 (Tue) 12:00

ピエール=ロラン・エマールのライブ録音『Pierre-Laurent Aimard At Carnegie Hall』。
試聴した時にかなり良い感触だったし、選曲にバラエティがあって、好きな曲も多いので、米国のamazonで購入。
このライブ録音がわずか4ドル台で、海外送料込みでも1000円以下。
米国amazonでは、音楽配信の影響からか、異常に安いCDが結構多い。(マイナーレーベルやリリース年の古いもの、現代音楽など)

カーネギー・ホール・ライヴカーネギー・ホール・ライヴ
(2002/06/26)
エマール(ピエール=ロラン)

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原盤はTeldec。これはワーナーの国内盤。

6月20日に発売予定の『ワーナー録音集』は6CDのBOXセット。
ドビュッシー(映像、練習曲集)、アイヴズ、リゲティのエチュード(6曲抜粋)、メシアンの《幼子イエスにそそぐ20のまなざし》(全曲)、ラヴェル、カーター、ブーレーズ、それにこのカーネギーリサイタル(全曲)を収録。
ピエール=ローラン・エマール、ワーナー録音集(6CD)ピエール=ローラン・エマール、ワーナー録音集(6CD)
(2002/06/26)
ピエール=ローラン・エマール

試聴ファイルなし


カーネギーのライブ録音は、試聴した時に感じた通り、音の美しさ、弱音のニュアンスや色彩感の豊かさなど、ソノリティと音響が素晴らしく、特に現代物はどれを聴いても楽しめた。
残念だったのは、期待していたベートーヴェンとリスト。試聴では良い感触だったんだけど。
今は《熱情ソナタ》はレーゼル、《伝説》のパウラはケンプの演奏が刷り込み状態になっているので、それと比較してしまうのがいけないに違いない。
それでなくとも古典・ロマン派音楽に優れたピアニストもその録音もたくさんあるので、やはりエマールを聴くなら現代ものが一番得るものが多い。

ベルク/ピアノ・ソナタ Op.1
柔らかい色彩感豊かな音で音響豊かなベルク。
ベルク特有の濃密な叙情感が稀薄だったけれど、やたらベタベタウェットなベルクを聴くよりは、ずっといい。

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第23番 Op.57 「熱情」
音は綺麗でも、フォルテの力感がちょっと弱い感じ。とても気になったのは、音が濁りがちなところ。(第2楽章の冒頭主題の和音移動など)
現代音楽だとエマールの多層的で豊かな響きが映えるのだろうけど、好みの問題として、古典派はもっとすっきりした音で聴きたい。

リスト/「伝説」第2曲 波の上を歩くパウラの聖フランチェスコ
音響的にはダイナミックで重層感があるし、弾き映えする曲なのは実感としてよくわかるけれど、もう一つ感情的にシンクロできない...。神々しさとか、精神的な高揚感というようなものがもう一つ感じられなかった。
実際にホールで聴いていれば、また違うのだろうし、実演はもともとCDで聴くものでもないので。

ドビュッシー/映像第1集:水の反映、映像第2集:金色の魚
多彩な音色の美しさと自由自在に動き回る躍動感で、音が生命力を持ったように生き生きとしている。
いつもは静謐な水面が、波打つクように揺れ動き、水しぶきが跳ね回ったりと、ダイナミック。
この2曲はあまり好きではなかったので、エマールの演奏で聴くと生気が溢れていて、こういう曲だったのかとようやくわかった気分。

プログラムの演奏時間が短い気がしたけれど、アンコール曲が5曲と多いので、トータルの演奏時間としては80分ほど。

リゲティ/練習曲集第1巻第2曲「開放弦」&第6曲「ワルシャワの秋」、練習曲集第2巻第10曲「魔法使いの弟子」
ベートーヴェンの時とは違って、エチュードということもあるのか、シャープでクリアな打鍵が冴え、練習曲とは思えない美しい音のタペストリー。
《開放弦(Cordes a vide)》は、くぐもった音色のなかから、ぽっかりと気泡のように浮き出てくるような音の感触が面白い。

Gyõrgy Ligeti by Pierre Laurent Aimard - Cordes à Vide (スタジオ録音)



《ワルシャワの秋(Automne à Varsovie)》は、下行を何度も繰り返す音の不安感と不安定感で眩暈がしてきそう。しとしと降る落ちるガラスのように冷たい雨粒のイメージが浮かぶ。

《魔法使いの弟子(Der Zauberlehrling)》というと、デュカスを思い出す。
"Der Zauberlehrling"は有名なゲーテの詩。この詩をもとにデュカスが交響詩《魔法使いの弟子》を書いた。
練習曲の楽譜を見ると"prestissimo,staccatissimo,leggierissimo"(プレストのスタッカートをレガートで)と指定があり、さすがに練習曲らしく簡単に弾けそうではない。音の塊りのなかから、アクセントのついた音が浮かび上がってきたり、高音からきらきらと結晶のように輝いて下行してくるところが綺麗。

メシアン/幼子イエスに注ぐ20のまなざし~「第11曲 聖母の最初の聖体拝領」
クリスタルように冷たく鋭いクリアな音のベロフに比べて、エマールは、特に緩徐系の曲の柔らかな弱音のニュアンスが多彩。
この曲(だけではなく他の曲でも)を聴くと、作曲時期が近いせいか、2台のピアノのための《アーメンの幻影》にとてもよく似た旋律や和声がよく出てくる。

Olivier Messiaen - Vingt Regards sur l'Enfant Jésus, XI-XII (スタジオ録音)
Pierre-Laurent Aimard, piano



ドビュッシー/12の練習曲:第6曲8本の指のための


<参考サイト>
エマールのリサイタル・レビュー(来日リサイタル) [楽譜の風景/雑記帳(2003/4)]
- 2003/4/28 ピエール=ロラン・エマール(2) 彩の国さいたま芸術劇場ピアノリサイタルに行ってきました
- 2003/4/26 ピエール=ロラン・エマール(1) 紀尾井ホールリサイタル行ってきました

リゲティ《練習曲集》の作品解説
- Ligeti Études pour piano ピアノのための練習曲集[楽譜の風景]
- リゲティ ピアノのための練習曲集 第1巻第2巻[ハインの好きなクラシック]

タグ:ベルク リゲティ メシアン ドビュッシー エマール

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4 Comments

matsumo  

Yoshimiさん、こんにちは

最近は米国amazonを覗いていないので最近の価格は知りませんが、日本amzzonやタワーレコード等で売っている輸入のボックスCDは安いですね! 例えば、前者で販売していたトスカニーニ大全集(CDが84枚+DVDが1枚)が7,500円、私が先日、後者で入手したフィッシャー・ディスカウのCDが11枚組が2,290円でした。大昔より、CDを入手している者にとっては、腹立たしくなることがよくあります。

2012/05/29 (Tue) 17:38 | EDIT | REPLY |   

yoshimi  

最近は新規録音まで安いですね

matsumo様、こんにちは。

大昔の音源はバーゲンセールですね。
これからクラシックを聴く人には大助かりでしょう。
あちこちで何度も再販した音源は、レーベルもしっかり元をとっているので、それも仕方がないかなと思います。

最近は、新規録音まで安値になっている上に、廃盤や廉価盤化するのが早いです。
新しい録音はリリース当初買ったものが多いので、廉価盤になると、損した気分になることがよくあります。(廉価盤を買うこともありますから、一概には言えませんけど)

最近のマイナーレーベルは優れた演奏家も増え、録音もユニークな選曲が多く(現代音楽も多いですし)、大手レーベルよりも活気があるように思います。プレス数が少ないので、在庫切れや廃盤になるのが早いのが難点です。

2012/05/29 (Tue) 22:29 | EDIT | REPLY |   

ken  

これは愛聴盤です

久しぶりです。この録音は大好きです。音、演奏ともに好みとピッタリ。リゲッティやメシアンの音の美しさに引き込まれます。ボクはリストやベートーベンをあまり聞かないので、逆に楽しめます。
ミケランジェリやホロヴィッツは好きなのですが、生者の演奏は概して録音がいいので、そのように楽しめますね。

2012/06/21 (Thu) 05:16 | REPLY |   

yoshimi  

エマールはやはり現代曲が良いですね

ken様、こんにちは。

エマールの色彩感の美しさ、音の微妙なニュアンスの多彩さが素晴らしいですね。
ベルクも良いのですが(これは硬質でクールな叙情感のグールドがマイベストなので)、ドビュッシー、リゲティ、メシアンの方がずっと印象的です。

若かりしベロフのメシアンは、緊張感が漂い、音の圧力も強くて耳には重いのですが、エマールは音が柔らかくて聴きやすいです。

そういえば、7月末にエマールのドビュッシー前奏曲集(新譜)が発売されますね。映像・練習曲は録音していますが、前奏曲を録音していなかったのだと気がついて意外でした。

2012/06/21 (Thu) 08:36 | EDIT | REPLY |   

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