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アラウ/ベートーヴェン・フェスティバル・リサイタル ~ ピアノ・ソナタ第30番 Op.109
"ベートーヴェン・フェスティバル"というと、世界各地で開催されているらしい。
ベートーヴェンの生地であるドイツのボンでも、毎年9月にベートーヴェン・フェスティバルが開かれている。
アラウもこのフェスティバルでリサイタルを行い、1970年と1977年のリサイタル映像はDVDでリリースされている。

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(2011/06/27)
Claudio Arrau

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DVDでは、Disc1が1977年のライブ映像(カラー)で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタから、第3番、ワルトシュタイン、第32番。
Disc2が1970年のライブ映像(モノクロ)で、第13番、月光ソナタ、告別ソナタ、熱情ソナタ、第30番のソナタ。

1970年と1977年では、アラウの全盛期(の最期あたり)になる1970年の演奏がずっと良い。
音が少し篭もっているけれど、技巧的にも安定して余裕があるし、Philipsの1960年代のスタジオ録音(旧盤)と比べると、ライブ特有のテンションの高さ、深い感情移入が篭められている。
力強さとしっとりとした潤いのある深い叙情が融合して、自然に音楽が湧き出てくるようなところは、スタジオ録音とは違った良さ。

1977年のリサイタルでは、74歳という年齢のせいか、かなりミスタッチが多く技巧的な切れが鈍くなっている。
1970年の演奏を先に聴いていると、余計にそう感じてしまう。(第3番は、技巧的に安定感があるけれど)

第32番は、1970年の放送用録音のDVD(EMI盤)がかなり以前にリリースずみ。
旧盤のスタジオ録音よりもさらに深く思索しているような演奏なので、第32番のアラウのライブ・スタジオ録音のなかでは、これが一番良いように私には思える。

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(2005/09/14)
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 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109 [ピティナ作品解説]
ベートーヴェンが書いた最後のピアノ・ソナタ3曲のうち、一番若い作品番号がついている第30番。
昔から、第31番と第32番の方が好きだったのに、最近レーゼルのライブ録音を聴いてこのソナタもとっても良いなあと思い始めて、アラウの録音もまた聴き直し。

アラウのスタジオ録音は、Philipsの旧盤・新盤の2種類。
第32番には、以前からスタジオ用録音のDVDがリリースされていたけれど、第30番と第31番のライブ映像が見当たらなかった。
この第30番のライブ映像は、1965年のスタジオ録音(62歳頃のPhilipsのスタジオ録音(旧盤))から、5年後の演奏。
スタジオ録音も好きだけれど、テンションが高く生き生きとしたエナジーを感じるライブ録音の方が魅力的。
ライブ録音は音がやや篭もっているけれど、残響が長めで、解釈もより深まり、自然に湧き出る生気と深い感情移入を感じるせいか、叙情感もずっと強い。

第1楽章 Vivace, ma non troppo
スタジオ録音は冒頭から、強弱のコントラストがかなり強くて、ちょっと元気が良すぎるような...。
スタジオ録音よりもフォルテがやや抑えたタッチなので、しっとりとした潤いのある音色と濃密な叙情感がタペストリーのように織り込まれている。
線がしっかりとしたやや粘りがある音は、時々マルカート気味に聴こえる。
鍵盤を強打せずとも重量奏法で、弱音でもしっかりした発音で、フォルテも濁らず力強く深みのある響きが綺麗。

第2楽章 Prestissimo
スタジオ録音は、フォルテの打鍵が強くて重みがあり、拍子を刻むような硬くきちょうめんな感じがする。
いくぶん落ち着きすぎているような冷静さを感じるところがあり、全体的に勢いがあまり良くはない。
ライブの方は打鍵に切れがあり、リズム感がよく、緩急のメリハリも強くなっているので、演奏に勢いがある。こちらの方が音楽の流れとしてはずっと良い感じ。

第3楽章 Andante molto cantabile ed espressivo
第1楽章と同じく、冒頭から潤いのある濃密な叙情感。スタジオ録音の方は響きがすっきりとして、たっぷりルバートを使っていても、少しさらりとした情感。
変奏ごとの性格がくっきりと浮かび上がって、多彩なバリエーションがおりなす宇宙は魅力的。
(レーゼルが「シンプルなテーマのヴァリエーションのなかに、ほんとうに豊かな宇宙が凝縮されている。変奏ごとに多様な音楽内容が凝縮されているのが素晴らしく」、この曲がとても好きだと言っていた。)

アラウは、ベートーヴェンの後期ソナタはルバートを使って弾くものだと言っていた。
アラウの場合は、ルバートを利かせても、ベタベタと感傷的にならない品の良いロマンティシズムがあって、とても優美。
この最終変奏は、スタジオ録音とは違ってテンポが速めで、勢いと躍動感がある。(演奏時間はスタジオ録音より1分近く短い)
フーガから最終変奏に入って鳴り続けるトリラーは、左手で弾く低音のトリラーが力強く、右手の高音部のトリラーへ移るとあまり強く浮き上がらせず柔らかく優しい響き。
この最終変奏も、スタジオ録音では感じられないような高いテンションが漲り、やはりライブで聴くアラウはスタジオ録音とは別人みたい。
最後に主題が再現されると、長い旅路が終わって眠りにつくかのように、徐々にテンポが遅くなり、静かなエンディング。


1970年、ベートーヴェン・フェスティヴァル(ボン)でのリサイタル映像。
この映像の良いところは、アラウの細いしなやかな指で鍵盤に吸い付くような独特なタッチが、アップで克明に映し出されているところ。
アラウはとても小柄な人だったけれど、手だけは大きくて、指揮者のコリン・ディヴィスが「大きなひづめに似ている」と言っていた。たしかに、映像で見るとその通り。鍵盤上で10度は楽々と届いたらしい。

Claudio Arrau Beethoven Piano Sonata No. 30 (Full)


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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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