ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第6番,ロンド・ア・カプリッチョ 「なくした小銭への怒り」 

2012, 05. 26 (Sat) 18:01

あまり有名ではないベートーヴェン初期のピアノソナタ第6番ヘ長調 Op.10-2。[ピティナ作品解説]
Op.10の3曲の第2曲。ベートーヴェンらしい疾風怒涛風のハ短調第5番と、初期の作品としては規模が大きく演奏機会の多い第7番に挟まれているせいか、どうも地味な感じがする。

第6番の3つの楽章とも、冒頭主題を聴けばすぐにこの曲だとわかるけれど、自分で思い出そうとすると(弾いたことがないこともあって)、旋律がすぐには浮かんでこない。
それでも、第3楽章はとっても面白い。小さな白ねずみが運動会でもしているように、ちょこまかと走り回っているような曲想が可愛らしくてユーモラス。
こういうユーモア漂う曲も書くベートーヴェンって、やっぱり好き。
耳で聴いていると旋律はシンプルなので、かなり速く弾けそうな気もするけど、実際はそうでもないらしい。
いろいろ録音を聴いていると、グルダ(演奏時間3:30)がいつもながらかなりの猛スピード。時々指がもつれがちというか、音の粒立ちが悪く声部の分離が悪くなって、ごちゃごちゃっと雑然と聴こえる。でも、速いとコミカルさが強くなるので、これはこれで結構面白い。
演奏時間は、ケンプ(3:41)、ブレンデル(3:45)、ルイス(3:54)くらいがほどよい感じ。
レーゼルやアラウは4分少々。一音一音しっかり打鍵してかっちりした構築感が出るけれど、ちょっと重たい感じがするのと、スピード感がもう一つ。(スピード競争するような曲でもないだろうけど)
ポール・ルイスの演奏を聴くと、柔らかいタッチで軽やかな疾走感があって、とても可愛らしい感じ。

Beethoven Piano Sonata nº 6, Op. 10/2 (3rd mov.) Paul Lewis


Complete Piano SonatasComplete Piano Sonatas
(2009/11/10)
Beethoven、Lewis 他

試聴ファイル(英amazon、分売盤にリンク)



                              

この第3楽章とちょっとだけ雰囲気が似ている気がするのが、初期作品の中でも好きな曲の一つ《ロンド・ア・カプリッチョ ト長調》Op.129
「なくした小銭への怒り」という俗称の方が有名。聴けばわかるとおり、俗称のイメージにぴったりの曲。
作品番号こそ晩年のものだけれど、実際は1795~98年に書かれたとされている。
自筆譜は未完のままで(伴奏部分などが書かれていない)、ベートーヴェンの死後出版されたが、出版者のディアベッリが未完部分を補筆したと言われる。[ピティナ作品解説]

この曲と第3楽章の着想に少し似ているものを感じるのは、作曲時期がピアノ・ソナタ第6番(1796~97年)と重なっているせい?
《ロンド・ア・カプリッチョ》は、技巧的難易度がかなり高い(らしい)し、第6番の第3楽章よりもずっとコミカル。
演奏時間は、速い場合で5分台半ば。6分台の演奏も多いけれど、速く弾けば弾くほど、面白さが引き立ってくる。
演奏時間は、キーシン(5:24)、ソコロフ(5:36)、ウゴルスキ(5:41)。キーシンはさすがに速いけれど、跳躍部分で一瞬、間が開くことが多い。
もっとも鮮やかに弾き切っているのがソコロフ。あたふたと大慌てで、亡くなった小銭を家中探し回り、街中を駆けずり回っているようなシーンが浮かんで来る。
抜群のスピード感に加えて、テクニカルにも安定し、タッチの精密さ、美しい音の色彩感と表情づけも細やか。
これだけコミカルな面白さと、音の美しさ、表情の豊かさとが両立した演奏は、何度聴いても惚れぼれしてしまう。
ソコロフのスピード感が刷りこみ状態になっているので、6分台で弾いている演奏では遅すぎて、聴けなくなってしまった。

LV Beethoven Rondo alla ingharese quasi un capriccio Op 129 Grigory Sokolov


Complete Recordings-Bach/Beethoven/Schubert/BrahmsComplete Recordings-Bach/Beethoven/Schubert/Brahms
(2011/11/15)
Grigory Sokolov

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