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耳鳴り治療のための認知行動療法(3) Multidisciplinary Management
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Multidisciplinary Managementによる耳鳴治療法の概要
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"Multidisciplinary Management"(MDM)は、多くの分野の専門医が緊密な連絡のもとに治療を行うチームアプローチ。

 "New effective treatment for tinnitus"
(オランダ・マーストリヒト大学のニュースリリース、2012年5月25日)(以下、要約)

Rilana Cimaの研究チーム(マーストリヒト大、ルーヴェン大、ブリストル大、ケンブリッジ大の研究者で構成)は、ランセット誌上で、新しい耳鳴治療法の臨床試験結果を発表し、認知行動療法が耳鳴患者の日常生活行動を改善しうることを示した。
臨床試験では、耳鳴にまつわるネガティブ思考・感情と耳鳴リ症状を低減させることを目的とし、492人の耳鳴り症被験者を12ヶ月間フォロー。
革新的な耳鳴治療のプロトコルは、認知行動療法で構成される段階的な治療であり、心理学・聴覚学の要素を統合したもの。exposure techniques、運動&リラクゼーション療法、マインドフルネスベースのアプローチも取り入れ、さらに音響知覚レベルの問題に対処するTRT療法の要素も加えて補完している。
この新しい治療法は、聴覚学者・聴覚訓練士(audiologist)、心理学者、言語療法士、作業療法士、理学療法士、ソーシャル・ワーカーなど、multidisciplinary(多面的な、多角的な、多くの専門分野にわたる)治療チームが行う。
研究プロジェクトは、Netherlands Organisation for Health Research and Development (ZonMW)が助成。研究責任者は、Johan Vlaeyen教授(behavioural medicine at KU Leuven and Maastricht University)。

試験結果は、この革新的で専門化された(specialized)耳鳴り治療法が、既存療法よりも効果的であるという説得力のある証拠を提示している。
治療後、被験者の全般的な健康、症状の重篤度、障害度について改善が見られた。さらに、ネガティブな気分、機能的な障害があるという思いこみ(dysfunctional beliefs)、耳鳴りが引起す不安感についても、既存療法より改善効果が高かった。
耳鳴りの重さが比較的軽い、または重い患者の両方に対して、治療効果があり、研究者たちは、この新しい治療プロトコルを幅広く導入するよう提言している。

<関連記事>
「海外論文ピックアップ Lancet誌より ~ 耳鳴りには順応療法を取り入れた専門的ケアが有効」(日経メディカルオンライン 2012/6/8)
オランダで一般的な標準ケア(Usual Care)に関する記述があり、「ステップ1では、聴覚検査の後に、耳鳴り治療のためのマスカー機器(大きめの雑音を発することにより耳鳴りを消す)または聴力を高める補聴器(聴力の低下が大きい場合)を処方し、それらの調整を行いながら耳鳴りの評価を行う。ステップ2ではソーシャルワーカーが患者に接触して、カウンセリングなどを継続的に行う」というもの。

"耳鳴りの苦痛を緩和する新治療、オランダ大研究"(AFPBB News 2012年05月29日)



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臨床試験
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 "Cost-effectiveness of Multidisciplinary Management of Tinnitus"
Maastricht University Medical Center

実施機関:オランダ・マーストリヒト大学メディカルセンター
研究開始:2007年9月
研究完了(予定):2011年3月
予定被験者数:198人
手法:ランダム化、Parallel Assignment(並行群間比較)、二重盲検
登録NO:NCT00733044

試験方法:
(A)新療法群:Specialized Care(Multidisciplinary care) - 総合的耳鳴りマネジメントによる段階的治療(2段階)
<第1段階>
- 耳鳴りの苦痛がマイルドな(軽度な)患者は、第1段階の治療のみで満足感が得られると期待できる。
- 聴覚的診断・処置、耳鳴り教育のグループセッションおよび臨床心理学者との個人カウンセリング。
<第2段階>
- 耳鳴りの苦痛が中度~重度の患者には、第2段階の治療を実施。
- 認知行動療法(CBT)、Attention Diversion(AD)(注意分散、気を逸らすこと)、exposure techniques、リラクゼーションセラピー(RT)を組み合わせた統合的治療。

(B)対照群:Usual Care - 標準的耳鳴治療
- オランダ国内の各地域に存在するaudiological centresで実施されている治療法
- 電話調査による現行治療法の調査結果に基づき、本臨床試験で実施する通常治療プロトコルを決定。
- 治療法:聴覚的な診断・処置。必要な場合は、ソーシャルワーカーとの1回以上のカウンセリング(1時間のセッションを最大10回実施)

評価方法:
1)全般的な生活の質:Health Utilities Index Mark IIIによる。
2)耳鳴りの重篤度、全般的な苦痛、耳鳴りの認識、耳鳴り特有の不安感、治療コスト

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臨床試験結果
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 "Specialised treatment based on cognitive behaviour therapy versus usual care for tinnitus: a randomised controlled trial."
Lancet. 2012 May 26;379(9830):1951-9.
Cima RF, Maes IH, Joore MA, Scheyen DJ, El Refaie A, Baguley DM, Anteunis LJ, van Breukelen GJ, Vlaeyen JW.
Clinical Psychological Science, Maastricht University, Maastricht, Netherlands.

試験期間:2007年9月~2011年1月。
実施場所:Adelante Department of Audiology and Communication (Hoensbroek, Netherlands)
被験者:耳鳴治療を行った経験のないオランダ人。スクリーニングした被験者741人のうち、492人(66%)が治療対象。
グループ分け:ランダム化抽出。specialised care(専門的治療)群247人、usual care(通常治療)群245人。治療を受けるブロックサイズは1グループあたり4人。
試験方法:specialised careは、認知行動療法およびsound-focused(音響面に焦点をあてた)TRT療法。
評価指標:
- 主要評価指標:health-related quality of life (health utilities index scoreで評価)
- 二次評価指標:tinnitus severity (tinnitus questionnaire score), tinnitus impairment (tinnitus handicap inventory score) (以上、治療前およびランダム化抽出後3ヶ月・8ヶ月・12ヶ月の時点で評価)

試験結果:
専門治療群は、12ヶ月間の生活の質(quality of life)が改善、耳鳴苦痛度(tinnitus severity)と耳鳴障害度(tinnitus impairment)も低減した。(臨床試験では副作用も見られなかった)
認知行動療法に基づいた専門的治療(specialised care)は、耳鳴りの重篤度の異なる患者に対して幅広く適用しうる法である。

(ClinicalTrials.govの登録number:NCT00733044)

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注記
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Lancetに掲載された臨床試験結果論文の抄録では、新治療法は認知行動療法に基づいた療法とTRT療法..としか記述されていない。
認知行動療法とTRT療法を組み合わせた治療法は従来から行われており、それだけでは特に新規性があるとは思えない。
マーストリヒト大学のニュースリリースおよび米国の臨床試験データベースの情報では、心理療法として、認知行動療法に加えて、運動療法(作業療法)、リラクゼーション療法、マインドフルネスベースの療法などの専門的治療が総合的に行われている。
この療法の新規性は、耳鳴り治療に関連する多数の専門分野の医師・医療技術者が連携して、多面的・総合的に治療を行う"Multidisciplinary Management"(集学的治療マネジメント)にあるということだと思う。


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備考
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記事中の日本語訳文は、英文情報を抜粋要約したものです。
正確な内容については、英文原文をお読みください。

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

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好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

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