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耳鳴り治療のための認知行動療法(4) インターネットベースのセルフ・ヘルプ・トレーニング
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)は、慢性化した耳鳴りが引き起す障害(impairment)を緩和するのに効果的であると証明されてきた。
認知行動療法の実施手法として、最近開発されたのが、インターネットベースのセルフ・ヘルプ法
スウェーデンの研究者(Andersson et al., 2002; Kaldo et al., 2007; Kaldo et al., 2008)により有望な結果が発表されている。

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臨床試験
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"Comparison of an Internet-based Guided Self-help and a Group Therapy for Chronic Tinnitus”
(慢性耳鳴り治療として、インターネット上で訓練されるセルフ・ヘルプ法とグループセラピーの比較)
Johannes Gutenberg University Mainz(Germany)、Linkoeping University(Sweden)

研究計画
研究目的:インターネットベースのセルフ・ヘルプ・トレーニング(自助訓練)の有効性を評価する。比較に用いた手法は、従来型の認知行動療法(グループ治療)とオンライン・ディスカッション・フォーラム・グループへの参加。

手法:ランダム化、クロスオーバー試験、オープン試験
予定被験者数:120人
研究開始:2010年5月
研究完了(予定):2012年3月

試験方法
1)実験群:インターネット経由で訓練されるセルフ・ヘルプ法(Internet-based guided self-help)
- インターネットを利用して、認知行動アプローチに基づいたセルフ・ヘルプ・トレーニングを10週間実施。
- 18モジュールの耳鳴り対処戦略:(例)応用リラクゼーション(applied relaxation)、ポジティブイメージ、注意を逸らす訓練(attention shift exercises)、認識の再構築、睡眠マネジメント、集中力マネジメントなど。
- 全モジュールは、説明用テキスト、詳細な実施方法要領、ワークシート、課題(宿題)で構成。
- 各モジュールの終了時に、被験者とセラピストがメールでコンタクト。被験者はレポートを提出し、どのような問題を経験したか報告する。
- セラピストは、トレーニングの進め方について、フィードバック、サポート、助言を行う。

2)実験群:認知行動グループ療法(cognitive-behavior group therapy)
- Hiller&Haerkötter 2005)により確立された手法。毎週90分のグループセッションを10週間実施。
- 厳格にマニュアル化されたプログラム。慢性耳鳴り患者向けに特化したメニュー構成:教育、リラクゼーション技術、認識の再構築、耳鳴り知覚に対する注意処理過程(attentional processes)のルール、回避行動(avoidance behaviors)分析、耳鳴りとヘルスケアシステム、再発防止策
- 各セッションは、資料、訓練、課題(宿題)で構成。被験者をそれらにより理解を深め、新しい情報を日々の生活に取り入れる。

3)対照群:ディスカッション・フォーラム・グループ
- 被験者は10週間の待機期間の後、インターネットベースのセルフ・ヘルプまたはグループ治療を行う。
- 待機期間中は、耳鳴り対象のオンライン・ディスカッション・フォーラムにアクセスする。(治療ではない)


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臨床試験結果
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"Internet-based therapy relieves persistent tinnitus:A German-Swedish study shows that internet-based self-help training for tinnitus is as successful as group therapy"
(インターネットベースのセルフ・ヘルプ・トレーニングが鳴り止まない耳鳴りを緩和:ドイツ-スウェーデンの研究で、インターネットベールのセルフ・ヘルプ・トレーニングがグループセラピーと同等の耳鳴り緩和効果があることが明らかになる)
(Johannes Gutenberg-Universität Mainz, press release、2012年3月7日)

要旨
認知行動療法は耳鳴症状に対処する有効な手法でありうるが、誰もが心理療法のコースを受診できる機会や希望をもっているとは限らない。
中度~重度の慢性耳鳴患者に対して、10週間にわたって、数種類の異なるアプローチで治療を行った。
インターネットベースの治療法とグループ治療セッションの両方で、オンライン・ディスカッション・フォーラムだけに参加した対照群よりも、結果は良好。インターネットベースの治療法は、耳鳴り症状に対する有効な療法だと証明できた。

今回のドイツ-スウェーデンの研究により、インターネットベースの治療プログラムは、通常の認知行動療法と同等レベルの治療効果が期待できる。耳鳴り患者は、個々人で積極的な耳鳴り対処戦略を使うことができるようになる。


研究結果
研究目的:スウェーデンで開発されたトレーニングプログラムが、ドイツ人患者に適用された場合の有効性を評価する。

実施機関:Clinical Psychology and Psychotherapy division of the Institute of Psychology at Johannes Gutenberg University Mainz (JGU)、Department of Behavioral Sciences and Learning at Linköping University in Sweden.

試験結果:
1)苦痛度(Tinnitus Handicap Inventory)
インターネットベースのトレーニングコース治療:平均で"moderate/中度"(40ポイント)から "mild/軽度"(29ポイント)へ変化。
認知行動グループ療法:44ポイントから29ポイントに低下。
オンライン・ディスカッション・フォーラム参加:開始時40ポイントから完了時37ポイントとほとんど変化なし。

「インターネットベースの治療法は、耳鳴りの苦痛度の低減(言い換えれば、被験者の耳鳴許容レベルの向上)という点で効果がある。」(Dr. Maria Kleinstäuber of the Clinical Psychology and Psychotherapy division at JGU)

2)治療手法の選好
かなり多くの被験者が、当初はインターネットベースの治療コンセプトに対して懐疑的で、グループ治療を好ましく思っていた。
被験者をランダムに治療群に割り当て、インターネットベースの治療が完了した時、その治療効果がグループ治療と変わらなかったという結果がわかり、被験者全員が驚いた。

「インターネットベースの治療コンセプトに対して当初は懐疑的であるにも関わらず、グループ療法と同等のポジティブな結果をもたらす。」(Kleinstäuber)

最初の評価では、2つの手法とも、6ヶ月後も治療効果が持続している。

研究者の提言
インターネットベースの治療手法は、耳鳴患者の心理療法においてもっと使われるべき。
さらに、この治療法への患者の懐疑心に関する研究(特に、長期間の待機期間と外来患者用の治療手法がないという観点から)が必要。


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備考
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日本語訳文は、英文を抜粋要約したものです。
正確な内容については、英文原文をお読みください。

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