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マルクス・ベッカー ~ バッハ=レーガー/ピアノ・トランスクリプション集
レーガーが編曲したブランデンブルク協奏曲を聴いて、たしかレーガーのバッハ編曲集がHyperionから出ていたのを思い出した。
Hyperionは、バッハのピアノ編曲集の編曲者別シリーズをVol.10までリリース済み。
編曲者は、ブゾーニを始め、ジロティ、レーガーから、サン=サーンスやイギリス人作曲家まで、聴き比べるには面白そう。
他に、ヒューイットのバッハ編曲集、リストのピアノ作品全集でバッハ編曲物のCDとかも出ている。

レーガーのバッハ編曲集(シリーズVol.7)は、マルクス・ベッカーによる録音。
ベッカーといえば、レーガーのピアノ作品全集(Thorofon盤)の録音で知られている。バッハのゴルトベルク変奏曲(CPO盤)も録音している。
Thorofon盤では、編曲作品は録音していなかったはずなので、これは聴いてみたくなる。

Bach Piano TranscriptionsBach Piano Transcriptions
(2009/06/09)
Markus Becker

試聴する(Hyperionウェブサイト)
2008年9月録音。演奏時間約108分のCD2枚組(録音時間から言えば、実質的には1.5枚分くらい)。1枚ものと同価格なのでHyperionにしてはお得なセット。

CDレビュー
Markus BeckerのJ.S.Bach/Regerピアノ・トランスクリプション集 ["Piano e forte"]
全曲聴いてみると、やはり演奏内容はこのレビューの通り。
レーガーの音が過密で重厚な編曲のために、インテンポではなく、ルバートが多くなってしまうのは仕方がない気がする。
リスト編曲版でしか聴いたことのない《前奏曲とフーガ BWV548》はこのCDを買って良かったと思わせてくれる曲。
バッハ編曲集 第7弾 [Bach with Piano]

                          

レーガーのオリジナル作品はいろいろ聴いたことがあるので、編曲版の方向性は大体想像がつくところはあったけれど、CDで全曲聴くと試聴したときよりも、作品と演奏の両方とも予想以上に良かった。
ブゾーニの編曲版(聴いているのは主にポール・ジェイコブスとレーゼルの録音)は、レーガーと比べれば、すっきりした響きで端正さと古典性を感じさせるところもある。
ベッカーのピアノの音自体が、潤いのある柔らかい響きとカラフルな色彩感があるので、レーガーのオルガン的なソノリティが楽しめる。

レーガーの編曲は、ブゾーニよりも音が過密な上に、響きが重なりあって、重厚で荘重なスケール感がある。
音色の色彩感も、声部が多いために、さらにカラフル。
ベッカーは柔らかいタッチの微妙な変化により、声部の色彩感の違いを際立たせ、強弱の変化も細かて表情豊か。かっちりとした構築感よりも叙情性の方が強い。
重層感のある響きは、オルガン的。音色も色彩感が豊かで、声部の分離も明瞭なので、声部の動きがよくわかる。
音が過密なパッセージや和音の響きが混濁しないように細かなペダルワークをしているようで、特に過密な和音が速いテンポで連続するとペダリングのバタバタという音がする。(ゼルキンのペダリング音よりは静かだけど)
音が過密なところに、主旋律、対旋律、ペダル鍵盤に相当する左手低音部の声部それぞれが明瞭に聴こえるように弾き分けるというのは、かなり至難の技。
その上、音楽的に表現しなければならず、それを全て満たそうとすると、速いテンポのところで、テンポが揺れたり、流れが淀むのは、無理ないように思える。その代りにオルガン的な多彩な色彩感と響きの重層感が味わえるので、トレードオフのようなもの。
ブゾーニ編曲版とはまた違った趣きがあって、レーガーの編曲したバッハは新鮮な響きがするので、とても素敵。
探してみても、レーガー編曲版の録音はあまリ見かけないので、このベッカーの録音は貴重。

収録曲は、《前奏曲とフーガ》3曲(BWV532、BWV552'St Anne'、BWV548'The wedge')。
《トッカータとフーガ》はニ短調のBWV565のみ。
他にはオルガンコラール作品の編曲版16曲。これは知らない曲がほとんど。ブゾーニ編曲ばかり聴いていたので、初めて聴く曲が多いというのもこのCDの良いところ。

Prelude and Fugue in D major, BWV532
《前奏曲とフーガ》の中でも一番好きな曲がBWV532(とBWV543)。
ブゾーニ版のフーガは、レーゼルが歯切れ良いタッチで勢いよくインテンポで弾き切っている。
レーガー版は、前奏曲のなかで高音部の旋律にトリルが数ヶ所連続して使われている小節があり、これはブゾーニ版では聴き慣れないフレーズ。ちょっと可愛らしい響きが面白い。
ベッカーは柔らかいタッチで、しなやかなで優美なところもある。フーガの終盤は厚みのある和音が連続したり、跳躍するので、インテンポでは弾き切れていないけれど、色彩感が豊かで重層感のある響きがオルガンのような雰囲気がして良い感じ。
ペダルワークが煩雑なのか、バタバタとペダルを踏みかえる音が時々聴こえてくる。

Durch Adams Fall ist ganz verderbt, BWV637
ブゾーニ編曲版あり。下降する旋律が溜め息のようで、やや重苦しく抑制された哀感が美しい曲。

Ach Wie Nichtig, Ach Wie Fl|chtig, BWV 644
Herzlich Tut Mich Verlangen, BWV 727
ブゾーニの編曲版はなし。どこかで聴いたことがあるような、哀感のある旋律が綺麗。

Valet will ich dir geben, BWV736
この曲も聴いた気がすると思って記憶を辿ると、シューマンの「ペダル・ピアノのための練習曲(6つのカノン風小品)」に似ている。
似たような音型が頻繁に現われ、声部間で受け渡されていく。ハープのような流麗なスケールの響きは、色調が明るくてとても華やか。
オルガンよりもピアノ演奏の方が音色が柔らかくて、蝶のように軽やかなファンタジー。

これはTon Koopmanのオルガン演奏。
J.S. Bach Valet will ich dir geben, Bwv 736.wmv



Prelude and Fugue in E minor 'The wedge', BWV548
リスト編曲版で有名な曲。リストのバッハ編曲は、リストの他の編曲物とちがって、かなりシンプルな旋律に和声なので、この編曲版も静謐で透明感のある瑞々しい叙情感がある。
旋律と和声に厚みのあるレーガー編曲版は、リスト編曲版とはかなり違った趣きで、重厚感と叙情性が融合して荘重。

Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ, BWV639
これはブゾーニ、ケンプの編曲で有名な曲。レーガーにしては、かなりシンプルな編曲で、それほど重苦しさはなく叙情的。

An Wasserfl|ssen Babylon, BWV 653b
ゆったりしたテンポで明るい色調の曲。こういう曲想の編曲が多く収録されていて、ベッカーの暖かく柔らかい響きとふんわりと包み込むような情感がよく映えている。
葉巻のヘビースモーカーで大酒飲みの巨漢レーガーが、こんなに優しげな曲を書いていたというのがなぜか面白く。
(レーガーは、不摂生がたたってか、心筋梗塞のために旅のホテルで43歳で早世してしまった)

Komm, Heiliger Geist, BWV 651
明るく伸びやかで開放感のある曲。高音部の主旋律は夢想しているように楽しげで美しく、対照的に低音部で時折ボーンボーンと和音が響く。

Toccata and Fugue in D minor, BWV565
ブゾーニ編曲版あり。有名な《トッカータとフーガ ニ短調》。


ベッカーの音源がないし、元々録音・演奏機会も少ないので、Youtubeで見つけた音源で。
Bach ”Ich Ruf' Zu Dir, Herr Jesu Christ, BWV 639” (Reger's piano transcription)



ベッカーに比べると、Laurialaは残響が短めで響きがすっきりし、表現もシャープでややあっさりした感じ。
Johann Sebastian Bach ,Toccata D minor BWV 565 Transkription für Klavier (Piano:Risto Lauriala)


tag : レーガー バッハ ベッカー

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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