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携帯音楽プレーヤーの難聴リスクとEUの規制動向
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[調査報告]パーソナル音楽プレーヤーおよび音楽再生機能付きモバイルフォンによる騒音暴露の潜在的健康リスク
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Potential health risks of exposure to noise from personal music players and mobile phones including a music playing function : Preliminary report (2008)
(Scientific Committee on Emerging and Newly Identified Health Risks、SCENIHR)

過度の騒音は世界的に聴力障害の主要因の一つ。その原因は職業上の騒音で、成人の聴力損失障害の16%がそれによるもの。
ディスコやパーソナル音楽プレイヤー等で余暇の時に聴く音の大きさも過剰なレベル。
社会的な騒音にさらされている若者の数は約19%(1980年代の3倍)。一方、職業上の騒音は減少。
ポータブルオーディオ機器(MP3プレーヤーを含む)の販売台数の増加は、EU内では過去4年間にわたり驚異的なレベル。
販売台数:ポータブルオーディオ機器全体は1億8400万~2億4600万台、MP3プレーヤーが1億2400万~1億6500万台。

騒音が原因の聴力損失は、騒音レベル(大きさ)と暴露時間との掛け算の産物。
その対策として、EU指令"Noise at Work Regulations"が2006年2月に発効。
1日8時間(または週40時間)の労働時間に対して、等価騒音暴露制限値(equivalent noise exposure limit)で80dB(A)という最小源の安全レベルを確立。このレベルを下回る場合、聴覚に対するリスクは無視しうるものだと思われる。
8時間等価レベル(Lequ,8h) は、産業界の聴覚損害リスクに対して幅広く使われている基準。余暇における騒音暴露に対しても同様に適用可能。

PMPs(ポータブル音楽プレーヤー等)の最大の音量コントロール設定は、機器によって異なり、自由音場(free-field)の等価騒音レベルが約80~115dB(A)。さらに、イヤフォーンのタイプの違いの影響もあり、このレベルは7~9dB分は修正可能。
暴露時間の平均時間は、1週間につき1時間以下~14時間の範囲。
PMPsと典型的な音量コントロール設定を使って音楽を聴く1日あたり(または週単位)の時間を考えれば、PMPsによる加重平均した8時間等価騒音暴露レベルは、75~85dB(A)と算定される。
この程度のレベルでは、大半のPMPユーザーにとって、聴力障害リスクは最小。
しかし、リスナーの約5~10%は、聴き方の好みやレベルパターン、聴取時間のためにハイリスクの状態にある。ハイレベルの音量設定で毎日1時間以上音楽を聴いているリスナーが該当し、EU圏内では250~1000万人と算定。

過度の騒音は、耳の複数の細胞型にダメージを与え、耳鳴りや一時的または恒久的な聴力損失(難聴,deafness)につながる。
公開されたデータでは、最大または最大近い音量で極度に激しくPMPsの音楽に曝されると、一時的または可逆的な聴力障害(耳鳴または軽い難聴)になることを示している。
PMPユーザーの騒音起因の恒久的聴力損失については、公表された研究(ポジティブ・ネガティブ両方)の結果に大きな矛盾(食い違い)が存在する。
慢性的に音楽にさらされているティーンエイジャー(PMOユーザーも含む)では、非ユーザーよりも耳鳴りや聴覚的な疲労を経験することが多いかもしれない。
聴覚的影響に加えて、PMPsの過剰リスニングがもたらす有害で持続的で不可逆的な非聴覚的影響も想定できる。不注意とマスキング効果に加えて、心循環系への影響、認識力が含まれる。
しかし、PMPsの音楽が、そのような影響をもたらすリスクの構成要素であるという充分な証拠はない。

PMPs使用が増加することで聴力(と耳鳴)リスクも増加する事態に直面しているが、次のデータが欠如している。
a) 現在のPMP使用パターン、時間、出力レベル、その他の高い音量音源へのユーザーの暴露
b) 子供や若者における聴覚的な問題や認知・注意力の欠点に対する騒音の寄与
c) 聴力に関するPMPsの影響を評価し、より高いリスクのある潜在的サブグループを特定するため、さらに高感度の測定値(例えば、耳音響放射)を使用した長期的研究。(サブグループの例:遺伝学的なサブグループ、騒音環境にある仕事や学校に通っている人など環境的なサブグループ)
d) 騒音に対する個々人の感受性と薬物療法による効果の生物学的根拠
e) 過度な使用を自発的に行っているPMPリスナーが、そのノイズが止んだ後で、永続的かつ不可逆的な認知・注意力の欠陥に繋がるかどうか。

(以上、要約)


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パーソナル音楽プレーヤーに対するEUの新規制
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EUのパーソナル音楽プレーヤーに関する情報(規制情報・調査報告など)は、Official website of the EU(欧州連合)の公式ウェブサイト"Personal Music Players & Hearing"に掲載されている。

パーソナル音楽プレイヤー(PMPs)の定義:携帯オーディオ装置。CD/カセット/MP3プレーヤー、および音楽再生機能付きモバイルフォンなど。


<新聞報道>
EU、MP3プレーヤーに音量制限 聴覚障害防止のため、MP3プレーヤーのメーカーに安全な音量レベルをデフォルト設定にすることなどを義務付ける。[ITmedia、2009/9/29]
欧州委、難聴予防で携帯音楽プレーヤーの音量規制へ[ロイター、2009/9/29]


<EUの規制動向>
CENELEC(欧州電気標準化委員会)の新規制案:"Sound level limits for personal music players and mobile phones" 
   (Brussels, Belgium, 2011-02-09 News Release)

CENELEC Technical Committee(欧州電気標準化委員会の技術委員会) 108Xは、‘Safety of audio, video and similar electronic apparatus’ (EN 60065:2002)と、Safety of information technology equipment (EN 60950-1:2006)という既存の欧州規格の改正案2件を策定し、EU各国のNational Standardisation Committeesの公式採決により、2010年末に可決ずみ。

標準規格に適用されたアプローチは、85dBAの音量制限がベース。これは、合理的に予測できる全ての利用条件下で安全と考えられる音量レベル。
しかし、最大100dBAまで音量レベルを上げることができるよう、ユーザーがその上限をオーバーライドする選択ができる可能性もある。
この場合、ユーザーがパーソナル音楽プレーヤーを20時間聴く毎に、ユーザーにリスクを繰り返し警告する必要がある。

2011年早期に改正案のドキュメントが公布され、その後設定される24ヶ月の移行期間中に、国家基準の公布によって国レベルで標準規格が導入されることになる。
移行期間終了までに、産業界は自社製品を標準規格へ適合させるよう着手しなければらなない。
その間、ワーキンググループは付託業務の次段階として、放出音(sound dose)の測定値を元にして、パーソナル音楽プレーヤの過剰な音圧レベルに対して保護を提供する"スマート"な方法の開発作業に着手予定。

参考:STANDARDISATION MANDATE TO CEN, CENELEC AND ETSI IN THE FIELD OF DIRECTIVES 1999/5/EC, 2006/95/EC AND 2001/95/EC FOR HEALTH AND SAFETY ASPECTS OF PERSONAL MUSIC PLAYERS AND MOBILE PHONES WITH A MUSIC PLAYING FUNCTION(Brussels, Brussels, Belgium, 2011/2/28)
「パーソナル音楽プレーヤーと音楽機能付きモバイルフォンの健康・安全性に関して、EU指令1999/5/EC, 2006/95/EC AND 2001/95/ECの分野における欧州標準化委員会(CEN)、欧州電気標準化委員会(CENELEC)およびヨーロッパ電気通信標準化協会(ETSI)に対する標準化義務付け」

参考:職場の騒音に対するEUの規制基準 
- Table 3: The examples of equivalent time-intensity levels referred to the action levels 
(according to the Directive 2003/10/EC,2006年発効)
- EU Action levels for noise protection at work

《職場における3つの推奨保護基準》 (1日8時間の労働時間に相当する騒音レベルに基づく)
80 dB(A):労働者に利用可能な保護(例:イヤープラグ(耳栓)、イヤーマフ)によって、保護されるべき。
       この基準以下の音量では、聴力に対するリスクは無視できるものと推定(assume)される。
85 dB(A) :労働者保護が必須
87 dB(A) :暴露音量の上限

例えば、パーソナル音楽プレーヤーで、95dB(A)の音量で1日15分音楽を聴くことは、職場で80dB(A)の音に1日8時間曝されることに相当する。(これらの暴露が長期間にわたって繰り返されるという前提)

参考:職場の騒音に対する国際規格
国際規格(ISO 1999:1990; NIOSH revised criteria, 1998)では、職業上の騒音暴露上限値は、等価音圧レベル(Lequ, 8h)で85db(A)(A特性音圧レベル、8時間労働時間-加重平均)。
しかし、この制限値では労働者の聴覚システムへの安全を保障するものではなかったため、EU指令「Directive 2003/10/EC」が制定された。


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日本語参考資料
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<東京都による調査報告>(生活文化スポーツ局消費生活部生活安全課)
危険!イヤホンからの音楽で周りの音が聞こえない(平成20年3月17日)
イヤホンの使用が聴覚に及ぼす影響についての調査結果【概要】(同上)
イヤホン使用による聴覚感度の低下の体感サンプル音(平成18年度及び平成19年度「イヤホンの使用が聴覚に及ぼす影響についての調査」による)

<日本音響学会ホームベージ:「Q and A」>
Q:ヘッドホンで大きな音を聞いていると難聴になるという話を聞いたのですが本当ですか?
Q: 携帯音楽プレーヤを大音量で聴き続けると聴力を失う危険があるそうですが,実際どれぐらいの音量で聴いているのでしょうか?

ヘッドフォン難聴 [耳鼻科50音辞典]
- 特に高い周波数の音の方が内耳に与えるリスクが大きい。
- 同じボリュームで同じ音楽を聞いていて、 よりヘッドフォンは高音域の周波数帯に強い音を含む音楽を聴くことになる。

ヘッドホン難聴にご注意 [gooヘルスケア]

若者に増えている急性音響性難聴と心因性難聴(2007年2月),ヘッドホン難聴の予防(2009年2月)[学校保健ニュース高校版/監修:笠井耳鼻咽喉科クリニック 笠井創]


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参考情報:音響外傷とイヤープラグ
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強大な騒音に長期間さらされて徐々に進行する難聴は騒音性難聴、爆発音などの強大な音響のために突発的におこる難聴は音響外傷。

音響外傷に関する最近の研究調査報告
72 % of Teenagers Experienced Reduced Hearing Ability After Attending Concert
米国ロサンゼルスにある聴覚関係の非営利研究機関 House Research Institute(HTI)(旧House Ear Institute)が公表した研究結果(2012/3/21)によると、「ティーンエイジャーの72%がコンサート参加後に聴力低下を経験」。

ポップ・ロックコンサート後に経験する聴力損失は永続的なものではないと一般的には信じられている。これは一時(的)閾値移動(temporary threshold shift)と言われ、普通は16-48時間以内に消滅し、以前の聴力レベルに回復する。

House ClinicのM. Jennifer Derebery医師によると、「ティーンエイジャーはコンサートやパーソナルなリスニング機器で過剰な騒音を一度聴いただけでも聴力損失につながることを理解する必要がある。85dbを超える騒音に度々曝された場合、有毛細胞が機能停止し、聴力損失が永続するかもしれない。」

この研究では、実際にロックコンサートを聴いたティーンエイジャーの聴力の変化を調査。

<調査概要>
- 被験者はティーンエイジャー29人。ロックコンサートのステージ正面の席で3時間26曲を聴く。研究者も同席。
- 被験者は、聴覚保護としてイヤープラグの着用を勧められるが、使ったのは3人のみ。
- コンサート中に、音圧メーターで1645件の音量レベル値を計測。測定値の範囲は82-110dBAで平均98.5dBA。平均値で100dBAを超えていたのは、26曲中10曲。
- コンサートの音量レベルは、職場における許容基準(Occupational Safety and Health Administration (OSHA)による基準)を超過。OSHAの安全基準ガイドラインでは、85dBの音量に対する暴露時間制限が設定されている。
コンサート中に記録された音量は、30分未満におけるOSHA基準を超えている。
- ティーンエイジャーの1/3が、大人の職場では許容不可能な一時的な閾値移動(聴力損失)を示していた。
- コンサートに続いて、過半数の被験者で歪成分耳音響放射(Distortion Product. Otoacoustic Emissions: DPOAE)testの結果が大きく低下。(DPOAEは耳の外有毛細胞の機能をチェックする試験)

客観的試験結果を概括すると、コンサートを聴いたティーンエイジャーの72%が閾値移動をすぐに経験したか、または、DPOAE amplitude testでの低下が見られた。
コンサート後、53.6%が(以前と)同じように聞こえていると思わないと回答し、25%はコンサート前にはなかった耳鳴が聞こえた。

研究者が特に関心を示しているのは、最新の全米健康栄養調査(NHANES)で、2005-2006年では、若者の20%に少なくとも軽度の難聴があることがわかり、1988-1994年の調査結果よりも31%増加しているためである。
今回の試験結果により、ティーンエイジャーに対する騒音暴露ガイドラインを見直す必要があるか、また、ティーンエイジャーの耳が大人よりも騒音により敏感かを決定するために、さらなる研究が必要なのは明らか。

Derebery医師は「イヤープラグ使用を推奨されているのに、ティーンエイジャー29人のうち3人しか使わなかったが、これは10代のリスナーの多くに典型的な行動である。従って、我々は安全なレベルに音量を引き下げる責任がある。」
研究者達は、スマートフォンで利用できるいろいろな音量メーターアプリを使って、自ら聴覚を保護するために積極的に行動するよう、若者達に勧めている。
さらに、コンサートプロモーターとミュージシャンたちがコンサートに参加する若者達に聴覚保護(イヤープラグ)の使用を奨励するとともに、音量レベルを引き下げるよう期待している。

(以上、要約)

<参考記事>
 レスター大学の研究(騒音暴露による耳鳴り発症メカニズム)


イヤープラグ
ロックコンサートなどの大音量の音楽イベントの場合は、イヤープラグ(耳栓)使用が推奨されている。
睡眠中にはめるような耳栓ではなく、ミュージシャン向け、コンサート用の耳栓は、普通の耳栓よりも機能が高いらしく、価格も1000円以上(数千円のもある)。

英国のエリザベス女王も、ロックコンサートに参加している間、耳に黄色いイヤープラグをつけている写真が英国のオンラインニュースサイトに掲載されていた。(出典:Turn it down! Queen wears earplugs at Buckingham Palace Jubilee rock concert/Mail Online,2012/6/5)

<イヤープラグに関する参考サイト>
- ATA Shop(米国耳鳴協会のオンラインショップ)で販売されているイヤープラグEarPeace: 11-17dB High Fidelity Hearing ProtectionEtymotic Research ER-20 Hi-Fidelity Earplugs

- ライヴと音響難聴と耳栓[ハマハナ帳]
- ライブ用耳栓[音問題研究所]


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備考
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日本語訳文は、英文情報を抜粋・要約したものです。正確な内容は、リンク先の原文情報をお読みください。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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